それぞれの音楽のきっかけ
——将さんは裏方志望だったとのことですが、音楽を始めたきっかけは何だったんですか?
将:学生時代にコピーバンドをやってたんですけど、まさか自分がプロになれるとは思ってなくて、原宿にある音楽の専門学校に入って、エンジニアの勉強をしてました。
卓偉:そうだったんだ。最初はエンジニアをやりたかったんだね。
将:はい、エンジニア志望でした。借金して高いMacを買って、Pro Toolsがまだなかったので、Digital Performerを入れて、いろいろいじってました。
卓偉:今もやったりとかするんですか?
将:少し出来ます。そこからコピーバンドを募集している雑誌に応募したら、「ヴィジュアル系バンドなんだけどやってみない?」って言われて、オリジナルをやるようになって今に繋がっていきました。
卓偉:そうなんですね。でも詩は全部将くんが書いてるんですよね?
将:はい。
卓偉:それは急に書こうって気になったってこと?
将:ボーカルが書くもんだからって言われて。
一同:(笑)
卓偉:間違いじゃないとは思うけど(笑)。でも歌う人が書いた方がいいんだよ、それは。
将:今は書いてて良かったなって思ってます(笑)。
卓偉:やっぱりひょんなきっかけですね。人間、どこでどうなるか分からないですね。
将:卓偉さんは歌うために生まれてこられたんだなって…。
卓偉:いやいやいや、違う、違う! 俺は元々サイド・ギターをやりたかったんだよ。出だしはパンクで、ギターを弾きたいってところでコピーバンドを組んだんだけど、当時のボーカルがしっくりこなくて…。自分がハモってたんですけど、ピッチが悪かったりして上手くハモれなくて。そのバンドが終わって、バンドを作り直すかって時にしょうがないからボーカルやるって感じだったんだよね。本当はギターを背負って、歌ってハモることをやりたかったんだよね。ギター・ソロとかは弾かず、ひたすらバッキングとカッティングとミュートっていう、サイド・ギターっていう役割のギターをずっと弾いて、歌いたいって思ってたんだよね。
将:卓偉さんもそうなんですね!
卓偉:だからボーカルになるなんて全然思わなかったんだけど。ただ、始めたら始めたで欲も出てくるじゃないですか。曲も書けるって分かったんで、「だったらこの人生、ボーカルで頑張ってみようかな」って思ったのが中学生くらいでしたね。だから最初からってことでは、実はなかったんですよね。でも、そういう人もいますよね。実はこうだったとか、バンドのメンバーでもね。
将:うちのギター2人も、どっちもサイド・ギター志望で、どっちが下手に立つかって、最初は取り合ってました。
卓偉:あっ、そうなんですか。リード・ギターになりたくないってこと?
将:ソロには興味がなくて、バッキングをやりたいって感じでした。
卓偉:ソロなんてなくしちゃえばいいじゃん。
将:そうですね。
卓偉:俺の楽曲は、ソロは基本的にないんだよね。間奏っていう雰囲気は好きなんですけど、ギター・ソロに興味がなくて。元々イギリスの音楽っていうのは、そういうのは少ないので。アメリカが悪いんですよ。「はい、ギター・ソロです、どうぞ!」みたいな(笑)。はい、ピンを当てます、みたいになるから、そういう曲作りになっちゃうんですけど、本当は伝えたいのはビートと歌詞とパフォーマンスと、曲の良さが伝われば一番良いわけじゃないですか。だから2人のギタリストに伝えといて。「ギター・ソロなくせばいいじゃん。バッキングでいいじゃん」って(笑)。
将:でも大体長いギター・ソロを付けようとするのはベースなんですけどね(笑)。
卓偉:あっ、そうなんだ。「ギターはソロはやろうよ」みたいな感じで?
将:そうです。「2人もいるんだからやんなよ」っていう感じです。
一同:(笑)
卓偉:ノイズっぽいソロとかだったら好きなんですけどね。メロディックのギター・ソロとかは別になくてもいいと思っちゃうんだけどね。
将:確かに。卓偉さんはファンクとかも結構好きですか? Princeとか。
卓偉:大好きよ。全然聴きます。ファンクって言うか、ファンキーな音楽は全部好きです。だから16ビートのハネの話をしたんですけど、基本的にイギリス音楽でパンクから入っていると、8ビートが好きと思われるんですけど、この前のライブでカバーしていたマイケル・ジャクソンとか黒人の音楽がやっぱり大好きですね。
将:生でライブを観て、少しだけ印象が変わったのが、ブラックなルーツを結構感じたことです。
卓偉:嬉しいね。実はうちの父が家でブラック・ミュージックをひたすらかけてる人なんですね。ジャズとかって基本ハネてるじゃないですか。ベタっとしてる音楽があんまり得意じゃなくて、ハネてる音楽で踊りたいというか。さっきヒロトくんの話をしたけど、ジッとしてられないっていうのは僕も一緒で、音楽が鳴っていると、とにかくリズムを取りたいの。今もジッとしてられないの(笑)。
一同:(笑)。
卓偉:そういう子供だったから、ボーカリストとして何が一番楽しいかと言うと、実は歌ってないところの方が楽しいのよ。間奏とかで歌がないところでいかに自分がリズムに酔えるか、みたいな感覚の方が楽しくなれるって言うかね。分かってもらえると思うけど。
将:逆にそういうグルーヴィー感が僕の中ですごく足りないものだと自覚していたので、たくさん背中を見て、学びたいと思います。
Photo:大参久人