Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー阪本順治(映画監督)(Rooftop2016年5月号)

狂に入って作った喜劇

2016.05.02

 阪本順治と藤山直美が16年ぶりにタッグを組んだ映画「団地」。タイトルの通り、団地という小宇宙で奇天烈な登場人物たちが織り成す、おかしさの中にノスタルジックを含んだ人情喜劇は、まさに団地映画・日本映画の傑作。この絶妙なしゃべくりハーモニーはどのように生まれたのか。その一端を伺いました。
(interview:柏木 聡 / Asagaya/Loft A)

この映画はロックです

 
――前作の藤山(直美)さんとの「顔」がシリアスな物語だったので、映画「団地」もそうなのかなと思っていたら、喜劇だったのは意外でした。今作の発想はなんだったんですか。
阪本:藤山さんのスケジュールが空いているということで、彼女ありきの脚本でした。二人で何をすれば面白くなるんだろうと考えたのがきっかけです。そこに子供のころから感じていた「人は亡くなるとどこに行くのか」と「人間は電力もないのにどうして動けるのか」という疑問をぶつけてみるかたちで、脚本ができあがりました。
――藤山さんが決まって、動き出した作品なんですね。
阪本:藤山さんがきっかけではありますが、岸部(一徳)さん、大楠(道代)さん、石橋(蓮司)さんの4人が揃ったというのも大きいです。
――書き始めて1週間くらいで脚本を書き上げられたということですけど、もともとプロットなどはあったのですか。
阪本:ないです。狂に入ったということなんでしょうね。
――藤山さんは久々の映画なので怖いとおっしゃっていたそうですね。
阪本:そう思ってくれるからすごいんです。藤山さんは舞台俳優でNo.1の方だと思いますが、映画に臨むときに、舞台の技術は持ち込まないと決めているそうです。越境するんだ、と怖がってきてくれるからいいんです。
――スクリーンからその雰囲気は全く出ていなかったので、後でそれを聞いてびっくりしました。
阪本:舞台と映画では表現方法が全く違いますから。わからない時は素直に言ってもらえるので、それに答えていくのが僕の仕事なんだと思います。
――信頼関係があってこそですね。団地を舞台にしたのはどうしてなんですか。
阪本:団地は外階段が多く、いわば縦長屋ですね。その縦の構造の中で、住民がすれ違うのがすごく面白くて。ビジュアル的にも、昭和の匂いがする風合いがそそられるものはありました。マンションだとオートロックやエレベーターがあるので、こういう話にしようとは思わなかったですね。
――確かにマンションは交流がない感じはありますね。ほかの役者の皆さんのキャラクターも立っていて、演技を見るだけでも面白かったです。
阪本:ロフトのインタビューだから言いますが、この映画はロックです。それぞれがおのおのの楽器を自由に演奏していて、音のぶつかり、役者魂のぶつかり合いなんです。それが最終的に1つのハーモニーになれば面白いかなって思いました。
――すごい役者さんばかりなので、まとめるというのは大変な作業に思いますが。
阪本:普段から仕事に関係なく、ご飯を食べに行って、そこで叱られたり上手に甘えたり、弟のように可愛がってもらっているので大丈夫でした。逆に、若い俳優さんのほうが僕は構えますね。
――それはなぜですか。
阪本:若い人は、僕らとは生活のスピードが違いますら。4人のほうが考え方は近い気がします。
――見てきたものが近いということなんですね。若い方ということですと宅間(孝行)さんや斎藤(工)さんが出演されていますが、いかがでしたか。
阪本:斎藤くんや宅間さんは、リスペクトも含めて上の世代に興味を持ってくれるので、良かったです。斎藤くんのキャラは特殊なので、音楽でいうと「何この音!」ってなっちゃいますね(笑)。
 
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LIVE INFOライブ情報

「団地」.jpg
映画『団地』
脚本・監督:阪本順治   出演:藤山直美、岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工ほか
6/4(土)より全国劇場にて上映開始
 
イベント
6/12(日)
団地団夜 阪本順治監督  最新作「団地」を語る
 
【出演】
佐藤大(脚本家)/大山顕(写真家)/速水健朗(ライター)
今井哲也(漫画家)/久保寺健彦(作家)
山内マリコ(作家)/稲田豊史(ライター) ほか
 
【ゲスト】
阪本順治(映画監督)
 
OPEN 18:00 / START 19:00
前売¥1,900/当日¥2,200(共に飲食代別)
※前売券はイープラスにて「5/7(土)10時より」発売開始!
※映画「団地」半券を持参の人は1ドリンクサービス!!
会場:Asagaya/Loft A
 
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