1月9日より公開され驚異のロングラン上映となった「KING OF PRISM by PrettyRhythm」。アニメファンのみならず多くの人が次々と足を運び、熱狂的ファンを増やし続けている今作。制作陣も奇跡だという今作はどのように作られたのか、生みの親である菱田正和監督に伺いました。
[interview:柏木 聡(Asagaya/Loft A)]
バトル漫画の要素
—“KING OF PRISM by PrettyRhythm(以下、キンプリ)”はロングランの大ヒット作になっていますが、今の率直な気持ちを聞かせください。
菱田:成功させたいとは思っていましたがコケなくてホッとしているというのが、率直な感想です(笑)。あとは、ファンの皆様に喜んでもらえて良かったと思っています。
—ファンの感想を見られたりしていますか。
菱田:Twitterもそうですし、舞台挨拶や劇場でのメッセージボード、お手紙をもらったりと、いろいろな形で伝わってきています。劇場に人がいっぱい入っているというのが、何より直接的な反応になっています。
—制作するうえではどのような点を意識して作っていったのですか。
菱田:“キンプリ”を作るにあたって、TVシリーズ“プリティーリズム”を見たことがない方にも楽しんでもらえないといけない、と思ったんです。見てくれた方がより楽しんでいただける要素は含んでいるんですが、とにかく初めての方にわかってもらえるようにという事を心がけて作りました。
—60分の中でTVシリーズに繋がる深い部分が伝わってきています。一見さんに向けてということですが、作品に対しての思い入れも感じました。
菱田:“プリティーリズム”を見てくれている方たちは濃いファンの方が多いんです。そういったファンは裏設定も全部知った上で来ているので、中途半端だとツッコまれてしまうんです(笑)。なのでシリーズファンも満足させられるようにと配慮しました。
—内容的に女性向けの作品ですが、男性にもファンが多いことはどう感じられていますか。
菱田:ストーリー展開で考えるとターゲットは男性なんじゃないかとも思っています。
—確かに物語は少年漫画の文法になっています。キャラクターに属性やプリズムジャンプという、いわゆる必殺技のような設定が、バトル漫画のようでワクワクしました。
菱田:そうなんです。バトル漫画の要素なんです。
—特に(仁科)カヅキのダンスシーンは顕著に出ていますが、その要素を入れようと思ったきっかけは。
菱田:TV1期“オーロラドリーム”にも少しあったので、その延長になったんだと思います。3期“レインボーライブ”では主人公の女の子に沿った演出だったので、そこからどれだけ離れられるかが一番大事でした。さらに、カヅキは女性が苦手なキャラなので、なおさら女性から離れた演出をということでああいった形になりました。逆に(速水)ヒロは女性を意識した演出で、愛を振りまく形になりました。
—“キンプリ”を見たあとにTVシリーズを見たという方もいますが、ドラマがしっかり描かれているのでそのままハマってしまう人が続出していて、1回目は楽しいけどTVシリーズを見た後だと心が苦しくなってしまうという方もいらっしゃいますね。
菱田:そうなんです。ココは笑うシーンではないんだけどなと思うことがあります。
そこが伝わっていたのは嬉しかった
—応援上映をご覧になって正直なところ、ココで盛り上がるんだ、ココで笑うんだといった意外なところはありましたか。
菱田:僕は電車でヒロが走るところは笑う人はいないと思っていたので意外でした。(神浜)コウジが去ったあとヒロが手をついて号泣しているところを観て笑っている人がいることにも驚きました。あと(氷室)聖が後ろ髪をファサっとやるたびに笑う人がいて、そこ笑うのかと思いました。確かに現実でずっと後ろ髪触っている人がいたら面白いですよね(笑)。
—逆にこういう反応が欲しかったというところはありますか。
菱田:やっぱり「なーに」と「ありがとう」のシーンです。実はあそこはアフレコの時に声をとっていたんですが、最終的に全部外してファンに賭けました。字幕を入れるかも悩んだんですけど、そうすると興ざめだなと思ってやめました。そこが伝わっていたのは嬉しかったです。
—トキメキサイクリングには字幕が入れてありますが、コチラもアフレコしていたんですか。
菱田:そこはとっていません。女性スタッフの意見としてこの手のアニメで女性の声が入っていると興ざめしてしまうというのを聞いていたので、女性の声を入れられないなら、来ている人に喋ってもらおうという意図です。
—演出という面ですと作品のアングルが全体的に低めだなと思いました。ライブはステージなのでそこを意識してだと思うんです。日常のシーンにも多いように感じたのですが、女性目線を意識してなのですか。
菱田:ダンスシーンは京極(尚彦)君の趣味です。日常シーンでそう感じられたということであれば、富野(由悠季)さんの影響で、カメラの高さは90cmというのが刷り込まれているのかもしれないです。主人公が上手(かみて)、ライバルは下手(しもて)というキャラクターの立ち位置も影響を受けているのかもしれないですね。
—2つの場所で起こっていることを交互に見せて同時進行させているシーンもあり、60分とは思えない情報量になっています。
菱田:今回で終わりになる可能性が高い状況だったので、60分でやりたいことを全部出してやろうということでやった結果です(笑)。
—その情報量の多さがリピーターを増やす要因にもなっていると思います。
菱田:そうみたいですね。観る側は混乱するという感想もあるので、そこは反省しています。ストーリーの流れだと(如月)ルヰに会ってからライブに行くというのが正しいんですが、最初にライブから入って盛り上がってもらいたかったので、その気持ちが出てしまったんだと思います。
—楽曲が重要な作品だとライブシーンが見たいという思いもありますから、ライブシーンから始まるのは正解だと思います。ライブシーンは実際の会場で感じるインパクトを映像化しているように感じたんですけど。もとにされたものはあったりしたのですか。
菱田:どうなんでしょう。TVシリーズ含めると5年前からずっと作り続けているので、その中で見たライブやショーの蓄積なんだと思います。何かを特別に取り入れてというものはないです。僕より原案のゲームを作っている加藤(大典)さんがショーを見に行くのが大好きな方なんです。多分それを受けて作っているものを僕たちが膨らませた結果じゃないかと思います。みんなの力で作っているということです。
—シーンで言うとボロアパートで神戸ビーフなど豪華な食事をする場面や、裸のシーンも多くてついツッコんでしまう箇所もありましたが意図的なんですか。
菱田:食事のシーンは確かに違和感があるかもしれないですね。あれは1口コンロで作ってますから、すごいですよね(笑)。そんなに裸は多いですか。
—ライブ衣装は古代ギリシャをテーマにした露出が多い衣装ですし。無限ハグは全裸のキャラが無限に飛んできているのでそう感じました。
菱田:“プリティーリズム”では服を着るという要素があったのと女児向け作品なのでいやらしく見せられないということがあったので、その反動が出たのかもしれないです。あとは、抱きつくときは服脱いでいたほうがいいんじゃないかなと(笑)。脱がせてやろうという意図はないですよ。