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吉村智樹(放送作家)(Rooftop2016年4月号)

関西で放送作家として活躍するかたわら、街の珍看板などを撮影しベストセラーとなった『VOWやねん』の著者でもある吉村智樹。ロフトプラスワンウエストにも、イベント運営者・司会・聞き手など、様々な形で関わっている。そして来たる4月21日、彼が「神」と崇めるカリスマ編集者・石黒謙吾とのトークイベントが決定。今月からルーフトップ関西版で連載される新コラム「まちめぐ! 出張版 吉村智樹の街めぐり人めぐり」と、イベントへの意気込みをうかがった。[interview:宮武孝至&平松克規(Loft PlusOne West)]

ライフワーク・珍看板撮影

—今月号から、吉村さんのコラム『まちめぐ! 出張版』がスタートしますが、思わず笑ってしまう珍看板の撮影や、街めぐりを始めたキッカケは何だったんでしょうか。
吉村:30年以上前、僕がまだ高校生だった頃、8mmカメラで自主映画を作ってたんです。撮影のためにロケーションハンティングをするんですけど、場所を覚えておくために母親のポケットカメラで写真を撮ってたんです。それでカメラを持ち歩くクセがついて、街に変な看板があることに気づき始めました。そんな時期に、『宝島』という雑誌で「VOW」という街のオモシロ物件を紹介するコーナーが始まったんですよ。賞金とか、賞品のステッカーとか、雑誌に名前が載ることが嬉しくて投稿にハマりましたね。
—珍看板はどうやって探してるんですか。
吉村:昔はすぐに見つけられたんです。それこそ一筋にひとつは必ずありましたね。でも今は努力しないと見つけられないんですよ。一昨年、『ジワジワ来る関西(WEST)』っていう看板の画像とかをまとめた本を出したんです。せっかく新刊を出すんだから新作をたくさん入れようと思って、1ヶ月くらい関西を旅したんです。でもほとんどの商店街が、シャッターを見事に閉めてるんですよ。そもそも看板って、人のいるところにあるものじゃないですか。もともと栄えていたことが分かるだけに、余計に悲惨なんです。笑える看板を探しに行って、泣いてしまいますから。
—悲しいですよね…。
吉村:看板って誰も価値があると思ってないから、すぐになくなってしまうんです。だから意外と重要なことをしてるのかも、って思いますもん。たぶん路上観察界で看板に焦点を当ててるのって、日本で僕だけなんですよ。
—やっぱり探すのが大変だからですか。
吉村:いや看板に希少価値があるからという訳じゃなくて、簡単すぎるからなんです。他の人は、廃墟・廃路線・工場とかもっと高度なことをやるんです。佐藤健寿さん(世界の珍奇な建築物や場所を撮影している写真家・吉村さんとは昨年LPOWで共演)とかスゴいじゃないですか。雲泥の差ですよ。僕なんて近所をブラブラしているだけですから(笑)。路上観察界のヒエラルキーの中では、最底辺ですよ。
—そんなことないと思いますが…。
吉村:いや、珍看板ってお笑いで言ったら「出オチ」なんです。一瞬笑ったらそれで終わり。廃墟とか工場の夜景とかって、深くて広いじゃないですか。そういうものと比べると、僕のは分かりやすいけど、パッと花開いて一瞬で終わるような、命の短いものなんですよ。自分で珍スポットのイベントを運営しておきながら、自分の看板写真は見せてきませんでしたから。「こんなんやるの恥ずかしいな…」っていうコンプレックスがずっとあったので。最近ですよ、自分のやってることに自信を持てるようになったのは。
—何かあったんですか。
吉村:この前の『R-1ぐらんぷり2016』でハリウッドザコシショウが優勝しましたよね。それを見たことなんです。
—え?つい最近じゃないですか(笑)。
吉村:はい。ザコシショウの「ハンマーカンマー(古畑任三郎のものまね)」ってネタあるじゃないですか。あれは、彼がG☆MENSっていうコンビを組んでた25年くらい前からやってるんです。当時は何が面白いか分からなかったけど、やっと面白いと思えるようになりましたね。それで今年の『R-1』で「ハンマーカンマー」って言ってるのを見て、「貫いてるなぁ」と。しかもそれで優勝できんねや、と感動して。だから自分は路上観察界のハリウッドザコシショウとして、最底辺という誇りでやっていきたいと思いましたね。
 

名出版プロデューサー・石黒謙吾

—4/21(木)のイベントで共演される石黒謙吾さんはどのような方なんですか。
吉村:『盲導犬クイールの一生』や、綾小路翔の『氣志團現象』を世に送り出した出版プロデューサーです。僕、出版の世界において神様のように尊敬しているプロデューサーが4人いるんです。それは都築響一さん、北尾トロさん、みうらじゅんさん。そしてもう1人が、今回共演する石黒さんなんです。
—石黒さんとは、どういった関わりなんでしょうか。
吉村:さっき話に出た『ジワジワ来る関西(WEST)』は。石黒プロデュースの本なんですよ。ライフワークとして珍看板を撮ってたけど、「VOW」の担当者が定年退職になって以降、本が出せてなかったんです。そんな話を石黒さんにしたら、片岡Kさんが出版している『ジワジワくる◯◯』ってシリーズの、スピンオフとして出したら面白いんじゃないかって提案して下さって。
—その考え方スゴいですね。別の人が入ったら変、じゃなくて面白いって感じるんですね。
吉村:それも石黒プロデュースのシリーズだから出来る芸当ですよ。石黒さんって多作なんです。著書・プロデュース合わせて200冊以上も本を出してますから。
—そんなに出してるんですか!?
吉村:しかもその内、半分くらいが処女作なんです。Twitterやブログで見つけた、まだ本を出したことのない人を起用するのが石黒さんの特徴なんですよ。犬山紙子も処女作『負け美女』を石黒プロデュースで出版する前までは、ただのブロガーでしたから。
—ネットで見つけた人に声をかけるって、何かロフトっぽいですね。
吉村:そうですね。しかもどの本も売れてて、話題になってますから。でもだからこそ出版界に不満があるんです…。
—何でしょうか。
吉村:ひとつは「『本屋大賞』は何で小説しか獲れないの?」ってことです。石黒さんがどれだけ書店に貢献していると思ってるんだと。もうひとつは出版社に対する不満なんですけど、どの本が石黒プロデュースの作品か、一目で分からないことです。
—確かに誰がどの本を編集しているのかって、簡単には分からないですね。
吉村:そうでしょ。音楽だったら、中田ヤスタカがプロデュースしたから話題になったり、「小室哲哉プロデュースだから聴いてみよう」っていう人がいる訳じゃないですか。音楽の世界ではプロデューサー買いって文化があるのに、なぜ出版はそうじゃないんだと。そういうプロデューサー買いって方法を知って欲しいんですよ。
 

イベントから次のベストセラーが誕生する!?

—だから今回のイベントをやろうと思ったんですね。イベントの詳細はどんな感じなんですか。
吉村:三部構成で考えてて、一部は石黒さんの名著を取り上げて、その本をどうやって出版したのかを聞いていきます。お客さんには「本ってこうやって出せるんや!」ということが知ってもらえたらなと。二部は希望者による本の企画のプレゼン大会。三部は「編集とは何か?」という核心的な部分について話そうと思ってます。
—プレゼン大会をやるんですか。
吉村:はい。石黒さんには忙しい時間を割いて来ていただくので、何か還元したいなと。石黒さんは「このイベントで1冊本を作りたい!」って本気でおっしゃってました。彼は決断の早い方なので、良ければその場で本にすることが決まると思います。関西の人って本を出すことをスゴく遠いことだと思ってるんですけど、石黒さんのような人が常にアンテナを張ってるんです。このプレゼン大会にはもうたくさんのご応募をいただいてます。でもプロのライターは今のところ1人しかいないんです。何でだと思います?
—すでにツテがあるからですか。
吉村:違います。関西のプロライターの仕事って、飲食系の取材ばっかりなんです。そんなところで文章を書いて満足してるから、自分が本の著者になるって発想も企画も無いんですよ。だから応募して来るのは、旅館の女将とか小学校の先生とか、本を出版したいけどどうしたら良いか分からないマグマのように沸騰している人ばっかりなんです。僕はプロの編集者やライターの方にこそ来て欲しいんですが…。
—なかなか応募がないわけですね。
吉村:ライターや物書きになりたい人って、関西にもたくさんいるんです。でも道が無いから、詐欺みたいなライター教室が横行しているのが現状で…。出版の世界も縮小してるし、今の関西はチャンスが無さ過ぎるんですよ。
—石黒さんなら東京の出版社に売れ込んでくれますもんね。
吉村:そうです。普通の人がいきなり、出版社に企画を持って行っても信用されませんけど、石黒さんなら話を聞いてもらえますから。言い方悪いですけど、石黒さんは連帯保証人なんです。そんな役割を自ら買って出てくれる人なんていませんよ。石黒さんには今の関西の状況を知ってもらって、東京とのパイプになってもらいたいです。
—楽しみです!では最後にイベントに来ようか迷っている方に一言お願いします。
吉村:石黒さんの話は出版だけじゃなくて、全ての仕事や人間関係において応用できるものだと思います。全然知らない人に「本を作りませんか?」とアタックする度胸。そのスピードと仕事の的確さは、僕もめちゃくちゃ学ぶところが多かったです。お客さんにはそんな石黒さんの言葉を浴びて欲しいです。あと企画がある人は、ぜひこの機会に石黒さんへアタックしていただきたいです!

Live info.

4/21(木) Loft PlusOne West 2nd Anniversary「まちめぐ!」文化サロンvol.1
「石黒謙吾さん、本って、どうやったら出せるんですか?」 ~カリスマ編集者に訊く出版界の昨日・今日・明日~
 
OPEN 18:30 / START 19:30
前売¥2,000 / 当日¥2,300(共に飲食代別)*要1オーダー500円以上
 
前売券はイープラス、ロフトプラスワンウエスト店頭&電話予約にて発売中!
※ご入場はイープラス→店頭電話予約→当日の順となります。
電話→06-6211-5592(16時~24時)
 
【出演】
石黒謙吾(著述家・編集者・分類王)
【聞き手】
吉村智樹(放送作家)