2011年3月25日、ネイキッドロフトにて開催された鬼ヶ島のメンバー、アイアム野田による伝説の単独ライブ第1回目(鬼ヶ島野田単独ライブ『野田さんがみんなを笑わせたら、僕手術受けるよ!』)から早4年、まさかの第2回目の単独ライブ(『野田単独2〜野田さんだよ、開けておくれ』)が今年7月20日にロフトプラスワンで開催された。
さらに9月13日には、『野田単独ファンミーティング』と称してそのライブを振り返りつつの反省会トークライブがネイキッドロフトで開催された。
このライブレポートは、そんなアイアム野田単独ライブの大黒柱、人気文筆家・せきしろ氏によって『野田単独ファンミーティング』終了後に書かれたものであるが、アイアム野田への愛と尊敬が溢れている。そんなラブレターレポを届けたく思います。[text:鈴木恵(NAKED LOFT)]
野田さんの手のひらの上はどこよりも居心地が良い
孫悟空は結局お釈迦様のてのひらの上だった。
そんなシーンが『西遊記』に出てくる。
僕は野田さんといるといつもこの話を思い出す。いつだって僕らはみな野田さんのてのひらの上にいるからだ。それを笑顔の野田さんがいつも眺めているのだ。
ただ、『西遊記』と決定的に違うのは、僕らはてのひらの上だと最初から気づいていることである。
7月に行なわれた『野田単独2〜野田さんだよ、開けておくれ』の反省会を兼ねたイベントがこの日開催された。
『野田単独ファンミーティング』と銘打たれたイベントは、『まれ』のパロディ動画からスタート。汚れのない白い衣装の野田さんが、周りに誰もいないのに笑顔で手を振りながら走ってくる映像は、まるで白昼夢のよう。どんな種類の夢であれ、野田さんはいつだって僕らに夢を与えてくれる。
単独ライブの最初の打ち合わせの時、野田さんが真っ先に口にした企画は「2015年上半期のニュースを斬りたい」というものであった。野田さんがやりたいというのだからやるしかない。かなり自信もあるのだろう。
実際、単独ライブで野田さんはニュースを斬りまくった。政治、芸能、スポーツと、その切れ味は見事なものだった。さすが野田さんだと感心した僕らは、今回のイベントでも斬ってもらうことにした。
しかし今回はまったく斬れない。「野田ニューススライス!」という掛け声の後に鳴るSEが虚しく響くだけである。
「やり方を忘れた」
野田さんはそう言った。
「30分後にまたやらせてください」
野田さんは続けた。野田さんがやり方を思い出して、またあの日のように斬ってくれるのならば、僕らは30分くらい平気で待てる。
続いて、単独ライブのネタを振り返るコーナーに。単独ライブの打ち合わせで野田さんが真っ先にやりたいと言ったネタ『東京無線』をみんなで見る。
野田さんは世間が抱くイメージとは違い、実はかなりのポップさを持ち合わせている。それを垣間見ることができるこのネタ、実は衣装先行で作られたものであることは知られていない。衣装からネタを作るなんてさすが野田さんだ。
『東京無線』はタクシーの運転手がクラブで踊るという万人が楽しめるリズムネタであり、ネタの中には「あるある」も入っており、かなり完成度が高い。しかし最後はなぜか何も言わず蟹のように横歩きで舞台から去るというオチのために、それまでの完成度が一瞬で消え去る。この裏切りも野田さんならではだ。
ここですでに30分以上経過しているが、野田さんはまったくニュースを斬る気配がないために、『野田の料理番』のコーナーに。
このコーナーは白飯が入った茶碗を持って待つ野田さんを喜ばせるためのおかずを持ち寄るという内容。出演者全員で野田さんにプレゼンしていくと、どうやら野田さんはキングオブコメディ高橋が持ってきた自家製の山形だしが気に入った様子。どれくらい気に入ったかと言うと、高橋に対してマイクフォローしなければいけないところで、山形だしにマイクフォローしたくらいなのだ。もちろん山形だしは何も語らない。語るわけがない。でも野田さんにはなにか聞こえていたのかもしれない。野田さんならおかずと会話できたとしても不思議ではない。
おなかいっぱいになった野田さんは眠そうになっただけでまだニュースを斬らないようなので、単独ライブのネタに出てきたキャラクターの人気投票を行ない、その発表を行なうという特に誰も楽しみにしていないコーナーを先にやることに。
2位の「野田まれ」を抑えて見事1位に輝いたのは「東京無線の人」。このどうでも良い情報に対して、通常よりやや少なめの拍手が起こる。ちなみに最下位は「道に迷った野田」「郷ひろみ」「うさぎ(野田バージョン)」という、何かの暗号のようにも、何かの隠語にも思えてくる3つであった。
こうしてイベントは終了。
結局、あれっきりニュースは斬られることはなく、永遠に野田さんが言う30分後は来なかった。
もしかしたら野田さんは僕らと時間の流れが違うのかもしれない。いつの日か、僕らが忘れた頃に、頼んでいないのに突然斬って驚かせてくれるだろう。
やはり今回も僕らは野田さんの手のひらの上であった。
しかし、そこはどこよりも居心地が良い。
『野田単独ファンミーティング』ライブレポート
2015年9月13日(日)@新宿ネイキッドロフト text by せきしろ
2015年9月13日(日)@新宿ネイキッドロフト text by せきしろ