Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー松永天馬(アーバンギャルド)(Rooftop2015年10月号)

毎回違ったゲストを招いて新たな世界を学んでいく実験的トークライブ「松永天馬脳病院」を開院!

2015.10.01

トラウマテクノポップバンド「アーバンギャルド」のボーカル・コンセプターである松永天馬。一方でバンド活動と平行しながら小説家や某教育番組での役者の仕事など、その活動は多岐にわたる。あらゆる分野やジャンルを問わず、活動を広げる松永天馬は、果たして何者になりたいのか? 今回はアーバンギャルドとしてよりも、ソロとしての活動を中心に話を聞いた。[interview:稲村菜子(LOFT / PLUS ONE)]

正直、壊れる寸前です(笑)

──今回はソロでの活動について中心にお聞きしたいのですが、去年辺りからソロでライブ出演も増えてきましたよね。
松永天馬(以下、天):自然にオファーが増えてきた感じですね。ライブは2014年の頭に新代田FEVERでやったのが最初です。バンドがベスト盤を出して一段落したので、個人の活動のほうに目を向けていけるようになったというのもあります。
──集英社さんから小説の執筆のお話はいつ頃来ていたのでしょうか?
天:2013年辺りにお話はいただいていました。2年くらいお待たせしてしまって、ようやく書き始めたという(笑)。ちょっと僕自身のほうが小説を執筆しようという体勢になかなかなれずにいました。基本的にはバンドを第一義に考えているので、自分自身の気持ち的な余裕と言うか、上手く余白が出来た時にソロ活動の仕事が上手くいくケースが多いですね。
──ソロでのライブに曲提供、小説執筆まで幅広くこなすバンドマンってなかなか珍しいですよね。
天:ここまで「バンドマン」という肩書きに違和感のあるバンドマンもなかなかいないと思うんですけど(笑)。いろいろやっていると自分の気持ちを切り替えることが大変ですね。大きい会場でワンマン・ライブをやった翌日に家で一人で小説を書いたりして……。
──前日に800人とかの前に立っていたのに、急に集中できないですよね。
天:そうそう。そのスイッチの切り替えみたいなものが上手くいかない時もあります。正直、壊れる寸前です(笑)。ただ、やっぱりひとつひとつ作品というつもりで、たとえば評論やトークゲストみたいな仕事にしても自分の中で創造的にこなしていくことが大事なのかなと。楽曲提供の仕事はアーバンギャルドの曲を作るのとは全く違う感覚です。アイドルだったり女の子に提供することが多いんですけど、アニメの「キャラソン」のような感じで作っています。凄く80年代的な感じなんですけど、歌手の名前を歌詞の中にあえて入れたり。上坂すみれさんだったら「すみれ」とかを歌詞の中にあえて入れたりだとか、ちょっとした遊び心を持たせることを意識してますね。
 

表現すること、そして音楽の未来とは?

──アーバンギャルドの最近の歌詞に関しては、社会批判的な部分がどんどん強くなっているなと感じるのですが。
天:インディーズで出した3枚のアルバムは女の子を中心とした自意識の問題を扱っていたものが多かったんですけど、震災以後、内側に向かっていく以上の表現に必要性を感じたと言うか、一気に視点が外側へと広がったんですね。たぶんそれは震災以前ではどこかで他人事だと思っていた世の中の状況が、個人の心理にまで影響を及ぼすようになった。簡単に言ってしまうと原発だったり安保法案の問題だったり、自分の身の振り方が問われてくるような事案が増えたからではないかと思ってます。今の日本って過激だと言われるバンドとか歌手とかってそれなりに多いと思うんですけど、社会的な意味での過激さを持っている人が少ない。現代の若者のグループの過激さって内側に向かっているだけで、外側にコミットしようとしてないなと感じていて、僕はそこには違和感を覚える。だから世の中の今のトピックを描かざるを得ないと言うか、避けられない話題だと思っています。世の中の空気って常に次に起こる事件を予測した動きになってると思うんですよ。それを敏感に察知することによってある程度次の流れが見えてくる。創作をする人間は現在を表現するのではなく、一歩先の未来を表現してその未来の在り方に警鐘を鳴らしたり、問い直しをするべきだと思っています。そういう意味では自分の書いているものは小説に限らず、ある種SF的な側面があったのかなとも思いますね。予言的と言うと大げさかもですが。
──昨年、詩のボクシング全国大会に出られて、今年もまた出場されることが決まったようですが、始まりは高校生の時に出られたそうですね。
天:そうですね、2000年に出ましたね。今でも詩のボクシングのホームページの一番下のほうに高校生の時の別人のような僕が見れると思うんですけど(笑)。高校生の頃は演劇をやりつつ、その一方で詩や小説を書いていて、詩のボクシングという競技に参加したことで初めてその両方が、自分の演劇的側面と文学的側面がステージの上で合致したんですね。そういう意味で言うと、詩のボクシングでやっていたことの延長がアーバンギャルドになったのかなと。だからアーバンギャルドでの僕の立ち位置って唄と言うより、曲の中での朗読と言うかラップと言うか(笑)。叫んでると言うかアジテートしている表現。あれが生まれてきたのは詩のボクシングがあったからだと思います。今、僕はこうやってミュージシャンという形でやっているんですけど、まさか将来、音楽を生業にしているとは思いもよりませんでしたね。でも高校生の頃に演劇をやって文章を書いて、少しバンドもやってたことが全部一応現在の仕事に繋がっているわけで、やりたいことの根本的な部分は基本的には変わってないんでしょうね。唄だったり詩だったり小説だったり何でもそうですが、言葉を軸として活動をしていきたいと思っています。
──信念と言うか、やりたいことは高校生の頃から変わらずにあったんですね。
天:たぶん青少年時代に影響を受けたものって自分の中でアーカイブになっていて、ナゴムでテクノポップで渋谷系であるとか。それが血となり肉となっているんでしょうね。僕はたぶん情報というものを時代で捉えることのできる最後の世代なんです。僕から下の20代とかはYouTube的な捉え方が普通になる世代で、音楽の年代があべこべに記録されてしまっている。70年代と80年代が並列に捉えられていたり、昔のミュージシャンと今のミュージシャンの違いを認識しづらかったり、カテゴライズや時代の分断がなくなってきていますよね。90年代までは音楽が思想になり生き方となってたけれど、今はその音楽のジャンルがライフスタイルにまで影響を及ぼさなくなってきた。それはアップルミュージック的な音楽の聴き方のせいもあるのかなと思ってます。良くも悪くもBGM的な感じで流し聴きされてしまっているので、ひとつの音楽に対して思い入れを持って思想や服装にまで反映させて……っていうことがなかなかできづらくなっている。それが悪いことではないのかもしれないけど、音楽のメッセージ性のようなものが薄まっていくのかなと思いますね。でもほんとに怖いと思いませんか? Amazonの「この音楽もお好きではありませんか?」みたいなやつ! 薦めてくるものが結構当たってたりするじゃないですか。あれが突き進んでいくと、本当にその音楽が好きでCDを買っているのか、それともその人っていうキャラクターを誰かによって作られていて、それをただロールプレイしているだけなのか……。いつか頭を使わなくてもゆりかごから墓場まであなたはこう生きればいいですよ! って教えてもらえるような世の中になっちゃうんじゃないかなって思ってます。
 

11月3日昼、「松永天馬脳病院」開院!

──なんだかSF的な話になってしまいましたけど(笑)。最後に少しイベントについての話をお聞きしたいと思います。第1回目のゲストは某教育番組で共演されてるラバーガールさんということですが、表舞台に2組が立つのは初めてということですね。
天:そうです。決まって良かったです! 番組のほうはテレビで役者の仕事をするのが初めてだったので、右も左も分からなかったですね。テレビでの役者の仕事は演劇とは違って瞬発力が問われる芝居で、今まで自分がやってた少しずつ練り上げていく感覚とはかなり違いましたね。ラバーガールさんは僕とは違ってかなりテレビ慣れしているので、学ばせていただきながらやっています。2人の雰囲気を見ながら「あっ、今回は大変な回なんだ……」みたいな(笑)。飛永(翼)さんとはメールのやり取りをしたりはするんですけど、大水(洋介)さんは未だに謎が多く……(笑)。まだ自分でもどういった感じになるか全く予測がつかないですが、ぜひ見守りに来てください!
 
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LIVE INFOライブ情報

松永天馬脳病院
【出演】松永天馬、おおくぼけい(アシスタント)
【Guest】ラバーガール
2015年11月3日(火・祝)
OPEN 12:30/START 13:00
前売 2,500円/当日 3,000円(税込・要1オーダー500円以上)
前売券はe+にて発売中!
会場&問い合わせ:新宿ロフトプラスワン 03-3205-6864
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