本公演と呼ばれる真面目な演劇から、軽妙なコントまでを幅広くこなす「劇団カメハウス」。そんな彼らの主催イベント『禁じられたハロウィン』の開催が決定! 今回は代表の亀井伸一郎と演出助手・役者のプリン松にインタビューを敢行! 劇団カメハウスとイベントの詳細について語ってもらった。(interview:平野 風&平松克規[Loft PlusOne West])
劇団カメハウスとは一体何者?
──まず、演劇を始めたのはいつ頃なんでしょうか。
亀井:もともと僕は近畿大学の芸術専攻でコンテンポラリー・ダンスをやってたんです。そのダンスの中に台詞を入れていってたら、いつの間にか演劇になってましたね。
──それが劇団カメハウスの母体だと。
亀井:そうですね。同じ大学のメンバーと外部の人間で、6年前に旗揚げしたのがカメハウスです。
──プリン松さんから見て、劇団カメハウスってどんな劇団なんでしょうか。
プリン松:〈ビジュアル的な要素の強さ〉を持った〈毎公演ごとにコロコロ変わる作風〉の劇団だと思ってます。
──〈ビジュアル的な要素の強さ〉というのは?
プリン松:亀井くんはダンスをやってたんで、芝居の中でもダンス・パフォーマンスの場面がよく出てくるんです。
──劇中のダンスにはどのような意味があるんでしょうか。
亀井:僕は芝居を書くと、どうしても長くなってしまうんです。長く書けって言われたら何時間でも書いちゃうんで……。それならダンス・パフォーマンスで3、4日間の話を一気に説明しちゃおうと。時間短縮にもなるし、お客さんも観てて楽しいですしね。
──なるほど。〈毎公演ごとにコロコロ変わる作風〉とのことなんですが、そんなに変わるんですか?
亀井:はい。その時ハマってるものに凄く影響されるんです。
プリン松:毎公演、全然違うんです。私たちは身近にいるから、「これにハマってるから、こういう芝居やねんな……」って分かるけど、お客さんは凄い驚いてますね。
亀井:好きなものがコロコロ変わるんです。前回の公演の『まつりのあらし』はドラマの『ウォーターボーイズ』に影響されましたし、もう1個前の『罪ツツミツツ蜜』は夢野久作とか京極夏彦をたくさん読んでたから、謎解きもある頭を使う話でした。
──ちなみに、今ハマってることは何ですか?
亀井:今は寄生虫と人食いバクテリアに凄くハマってますね。昆虫を乗っ取れる寄生虫がいたり、自殺したくなるとか鬱になるのも、人間の脳にパラサイトした寄生虫の仕業なんじゃないかって仮説が立ってたりして。それが楽しいなぁって。
──どんな暗いのを作ろうとしてるんですか(笑)。では作品はどこから作ってるんですか。プロットですか? 人物ですか?
亀井:どちらでもなくて、僕は画から作るんですよ。まず芝居の中で核となる情景が、何シーンか思い浮かんでくるんです。そこからその情景を描くためには、どういう人物・台詞が必要で、どういう物語だと良いのかを考えていきます。それで簡単に設定だけ書いて、必要な資料を読んで全部頭の中にインプットして、1ヶ月くらい芝居のことを何も考えずにフラフラしときます。もういよいよ書かないとな、ってなったら書き始めますね。
プリン松:だから週刊誌みたいに毎週台本が届くんです。しかも後半の台本は、稽古場であったこととか、役者の雰囲気とかが反映されてて……。
亀井:稽古場で役者と話してて、「この子にこれさせたい」「この子、絶対これをしたら面白いな」ってことを取り入れていくんで。とにかく思いついたことは全部やりたいんですよ。台本には物語が破綻するくらいにいろんなことを入れて、演出の段階で削っていくんです。公演中でもドンドン変えていきますし。
──それで公演の最終日には完成型になってるんですか。
亀井:いや、また直したいところが出てくるんですよ。だからDVD化する時に見直すのがイヤなんです。これ、お客さん「粗いな」って思わへんのかな? って。でも皆さん満足してくれてるんですよね。多分、僕が見てるからそんなふうに思ってるだけなんですよ(笑)。
ガス抜きがイベントに? 『禁じられた』シリーズとは!?
──本公演とは別に当店でも定期的に行なっている『禁じられた』シリーズは、どのようなイベントなんでしょうか。
亀井:これは短編のコントを何本もやるイベントですね。本公演で真面目な話を書くと、次はふざけたくてしょうがなくなるんです。でも次の本公演でそれをやっちゃうと、話が破綻しちゃうので……。だから僕のガス抜きのために、コントのイベントをやろうってなったんです。
プリン松:最初の『禁じられた』シリーズは、1ヶ月間毎週1回必ずやってたんです。それも毎回ゲストを変えて、コントも初めの1本を除いて全部新作で。だからもう最後の週はイヤがってましたね。
亀井:「もうイヤや、コント作りたくない」ってなってましたね。ガス抜き過ぎました(笑)。
──コントをやられてるってことは、笑いをとりたいって気持ちもあるんですか?
亀井:うーん……。笑いをとりたいんじゃなくて、人のダメなところを表現したい気持ちのほうが強いですね。役者が能動的にとる笑いじゃなくて、彼らの演じる役柄が発言したことにより自然と生まれる笑いが好きなので。だから役者にも「ここは笑いどころやけど、笑いをとれなくてもいい」って、ずっと言ってますね。
──演じてる役者のダメな部分をコントにしたりはするんですか。
亀井:むしろその人と逆なことをやらせますね。大人しい子に派手な役、派手な人に大人しい役をあてがいます。それがたまにパッとハマったりするんです。
──コントが本公演に活かされることもあるんですか。
亀井:はい。コントでやった手法を本公演にフィードバックしたりしますね。
──なるほど。次回のイベント『禁じられたハロウィン』はどのようなイベントになりそうですか。
亀井:いつもの『禁じられた』シリーズでは、普通にトークしたりもしてるんですけど、今回は違うふうにしたいと思ってるんです。たとえばロフトプラスワンウエストをパーティー会場に見立てるとか、僕らが舞台から降りてパフォーマンスするとか。もっとお店全体を巻き込むようなイベントにしたいですね。
プリン松:12月の本公演は「吸血鬼」がテーマなんです。だからそれに繋げられたら理想的ですね。
亀井:そうやね。次の本公演のダンス・シーンを宣伝として見せたりもしたいです。
──ちなみに『禁じられたハロウィン』でやる作品はもう出来てるんですか?
亀井:これからですね。本公演は余裕を持ってやるんですけど、『禁じられた』はいつもギリギリになりますね。もう頭の中にはあるんですけど、書き出すのが遅いですよねぇ……。
──遅筆なわけではないんですね。
亀井:そうです! 書き出すのが遅いだけなんです!
──(笑)それでは最後に、イベントに行こうか迷っている方々にメッセージをお願いいたします。
亀井:演劇って硬いイメージを持っている人もいると思うんですけど、これはライブと思って来て欲しいですね。僕らは音楽的要素も強いので、気軽に観れるし、飲食しながら楽しんでもらえると思います。あとちょうどハロウィンの時期なんで、外の生半可のコスプレじゃなくて、お店に来て僕らの本気のコスプレを観て欲しいですね。お値段以上のイベント内容を保証します。是非観に来てください!
profile
劇団カメハウス
2009年結成。代表である亀井が作・演出・振付を行ない、静かな密室空間の作品から、ド派手で大掛かりなスペクタクル作品まで多種多様なジャンルを上演し続ける。アニメ・ゲームのようなサブカル・ビジュアルを得意とし、物語に沿ったパフォーマンスは毎公演の名物である。