Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー30%LESS FAT(Rooftop2015年4月号)

これぞ元祖艶歌パンクの真骨頂!
“走らないけど止まらない”ミドルエイジ・バンドが放つ二度目のファースト・アルバム!

2015.04.01

 艶歌とパンクという水と油の音楽を絶妙なバランスでブレンドさせた"元祖艶歌パンク"を志向する30%LESS FAT(以下、30派)が、自身のスローガンである"SENTIMENTAL PUNK ROCK"を堂々とタイトルに冠した作品を完成させた。2011年に現編成となって以降初のフル・アルバムとなる本作は、キレとコクのある激情メロコア・サウンドと人生の機微を背中で語る一本気な男の哀歌の一体感が過去随一で、結成から16年を経た今こそが30派の黄金期であることを強く印象づける秀作だ。マスタリングを終えたばかりの修豚(vo, g)とソウタ(b, cho)に聞いた、"走らないけど止まらない"バンドの真髄が詰まった本作の醍醐味とは──。(interview:椎名宗之)

男の生き様をムリに共感してもらおうとは思わない

──フル・アルバム発売の間隔が4年も空いていたとは意外でしたね。
修豚:ホントはもっと早く出したかったんだけど、曲が出来てなくてね。出すレーベルも決まってなかったけど、とりあえず出そうぜって決意が4人のなかで固まったのが去年の10月ぐらいの話で、2月、3月でレコーディングするかって話になって。それから急いで8曲ぐらい作った。
ソウタ:今回のアルバムのなかで、それまでライブでやってたのは「我身信道」と「女房きどり」だけだったんです。夏休みの宿題みたいなものですよね。期限がないと曲を作れないっていう。
修豚:ライブでやらずにいきなりレコーディングしちゃう曲ばかりなんて、こんなケースは初めてだったんじゃないかな。俺も全然唄ったことがないくせに、さも唄い込んでるような感じを出したりして(笑)。まぁ、それは4人とも同じだろうけど。
──修豚さんのFacebookによると、かなり最近まで作業を詰めてましたよね。
修豚:ギリギリまでやってたね。昨日ようやくマスタリング済みの白盤が届いたぐらいだから。でも、レコーディング自体は何の心配もなくやれた。このメンバーで録るフル・アルバムは今回が初めてだったんだけど、今の4人ならではのグルーヴ感がちゃんと出てたからね。特にソウタは俺の言ったことをちゃんと吸収して結果を出してくれるし、それは助かってる。サトパーはもちろん、ソウタもマーフィーも出す音は何も言うことないし、3人のことは全面的に信頼してるからね。ミックスの時も、俺はコーラスのレベルとかが気になるぐらいで、あとは3人にお任せだから。
──ソウタさんたちは、修豚さんが如何に気持ち良く唄えるかのお膳立てをするような感じなんですか。
ソウタ:俺もサトパーもマーフィーも、ボーカルを想定した音作りはあまりしてないんですよ。と言うのも、メロコアのサウンドをバックに演歌調の歌が乗ること自体、ジャンルとしては真逆じゃないですか。歌が入ると音が全くの別物になるので、歌のことはあまり気にせずに好き放題やってますね。
修豚:俺自身は気持ち良く唄えればいいんだよね。ただそれだけ。今回も気持ち良く唄えたし、かなりいい感じに仕上がったと思う。
──去年、ニューロティカの再結成に参加した経験が30派にフィードバックされたところはありますか。
修豚:ニューロティカのアルバム用に作った曲を30派に持ってきたのはあったね。「これはあっちゃんが唄う感じじゃないな」みたいな。そこはやっぱり曲の感じが違ってくる。
──本作はグイグイと迫るエッジの効いたサウンドの勢いと、ミドルエイジの男の哀愁を綴った歌のバランスがかなり理想的なバランスで融合しているのが大きな特徴かなと思ったんですが。
修豚:俺が小学生の頃から好きで聴いてきた演歌を中年になってから聴き直すと、当時と違って曲よりも詞に感じ入るところがある。凄く泣けてくるしさ。俺はそれを歌にして伝えたいだけなんだよね。と言うか、他の歌詞が書けない。頑張って前を向いていこうとか、俺にはそういう詞が書けないんだよ。
──でも「我身信道」や「バンカラワルツ」のように、不器用だけどひたむきに生きる男のロマンを描く歌は修豚さんならではじゃないですか?
修豚:まぁ、男の生き様みたいなものはテーマとしてあるんだけど、それをムリに共感してもらおうとは思わない。俺は必死に生きているのをただ唄ってるだけなので。
──今回のアルバムには修豚さんのお母さんのことを唄った「グランマ」(“I”と“II”あり)や母校に思いを馳せた「村山並木道」という曲があったり、修豚さんのパーソナリティが色濃く反映していますよね。
修豚:今回に限らず、自分の人間関係と言うか、人のことを歌にするのは昔から変わらない。恋愛の歌にしても、俺の友達の話を自分なりにドラマティックな詞にしてるから。映像が浮かぶような感じでね。
──青春時代の追憶をテーマにした「センチメンタルレイン」もそんな感じですか。
修豚:あの曲の詞を書いてるうちに、高校の後輩で日本コロムビアのプロモーターだった中原繁って男のことを思い出してね。歌詞を書いてたのがちょうど中原の命日の3月だったし、あいつと横浜でバカ騒ぎしてた20代の頃のことを歌にしてみた。
 

今の4人で新たにファースト・アルバムを作りたかった

──なるほど。それにしても、お母さんに捧げる歌が2曲も入るとは思いませんでしたが(笑)。
修豚:ホントは“II”だけだったんだよ。だけど「グランマ」って突然言われても何のことだか分からないだろうから、仕方なく“I”で「グランマ」のことを説明することにしたわけ。
ソウタ:プロローグ的な意味合いなんですよね。
──それでアコギとピアノだけで唄われるホンキートンク調の「グランマI」を急遽入れることになったと。
修豚:そうそう。俺のおぼつかないギターだけじゃダメだってことで、エンジニアが俺の知らないうちにピアノを入れてた(笑)。だから“I”は「グランマ」のことを説明したいがための曲で、別にトークでも良かったんだよ(笑)。
ソウタ:でも分かりやすくていいですよね。“I”があることによってチャキチャキ江戸っ子な「グランマ」の人となりが見えてくるわけで。僕とマーフィー、特にマーフィーはこの曲を大絶賛していて、あいつは曲順を決める時に「『グランマ』をなるべくいい位置で聴かせたい」ってずっと言ってたんです。「これぞ30派!」という真骨頂の曲が「グランマ」であると(笑)。
修豚:「グランマII」は俺たちにしてはミドルテンポの曲で、そういうテンポは恋愛をテーマにした曲が多いから、何か別のことを唄えないかと思って。特に狙ったわけじゃないんだけどね。たまたまお袋とメシを食いに行って、それを元に歌詞を書いただけだから。
──母校である明治学院東村山高校をモチーフにしたのもたまたまなんですか。
修豚:それもたまたま。曲が出来て、鼻歌で唄ってるうちに何となくそうなった。
──直感ですか?
修豚:そんなにカッコいいもんじゃないよ(笑)。
──本作のリード曲とも言える「我身信道」はソウタさんも作曲に関わっているんですよね。
ソウタ:そうですね。部分部分で。
修豚:もともとソウタが持ってきた曲で、俺のサビと合体させたら上手くハマったんだよね。
──和洋折衷みたいな感じで(笑)。
修豚:こういう共作は30派では初めてだったね。作曲はほぼ俺がやってきたから。
──作品のクオリティの高さもさることながら、そういう新たな試みができるのは、バンドが今とてもいい状態にあることの表れなのでは?
ソウタ:まぁ、僕らの周りのバンドに比べたら、僕らはホントにバンドと呼べるのか!? って話ですけど(笑)。でも、仲は凄くいいですね。
修豚:優先順位が仕事、家庭、バンドだからね(笑)。俺は家庭が第一だけど。
ソウタ:4人ともムリをしないでバンドをやってるので、それが音にも出てるんじゃないですかね。ヘンなプレッシャーもストレスもないし、ツアーと言っても旅行みたいな感じだし(笑)。
修豚:曲作りも自由にやってるしね。アレンジに煮詰まった時も、誰かが「こうしたら?」って言うと、まず「やってみよう」から始まる。やってダメなら元に戻ることが多々あるね。何日間もやってみて、結局は「最初のがいいじゃん」みたいな。
ソウタ:「グランマII」もアレンジが行ったり来たりしてましたよね。
修豚:リズムを変えたりしてな。「バンカラワルツ」もそうだ。逆に「終の詩」はすぐに出来た。俺とサトパーが話してるうちにソウタとマーフィーがスタジオでセッションしてて、それがカッコ良くてさ。合わせてみたら1時間ぐらいで出来たね。
ソウタ:歌詞が最後のほうに出来た「バンカラワルツ」は僕らがバンカラの意味を調べて、感じをつかんでから録ったんですよ。
修豚:『私立極道高校』って宮下あきらの漫画をふと思い出してね。あれは“バンカラ”な世界でしょ? “ワルツ”は千昌夫の『星影のワルツ』。ちょうど前のツアーの時に千昌夫にハマってたから。だから「バンカラワルツ」は『私立極道高校』と千昌夫が融合した曲なんだよ(笑)。
──修豚さんにしかできない融合ですね(笑)。“SENTIMENTAL PUNK ROCK”という30派が掲げてきた謳い文句をそのままタイトルにしたぐらいだから、皆さんにとっても自信作なんでしょうね。
ソウタ:僕とマーフィーからすると、新しい4人になって初めてのフル・アルバムっていうのもあるし、ここからまた新たな気持ちで30派をやっていこうって意味合いを込めたかったんですよ。今の4人で新たにファースト・アルバムを作ってみたくて、敢えて『SENTIMENTAL PUNK ROCK』というタイトルにしたところもありますし。
 

5th ALBUM
SENTIMENTAL PUNK ROCK

SANDINISTA! Co.,Ltd SAND-1003
定価:2,500円+税
2015年4月22日(水)発売

amazonで購入

【収録曲】
01. 我身信道
02. 終恋孤愁
03. 女房きどり
04. 豪快爛漫
05. 終の詩
06. グランマI
07. グランマII
08. センチメンタルレイン
09. バンカラワルツ
10. 村山並木道
11. 三十派行進曲

*4th ALBUM『AMERICA UDON』のリマスタリング盤(全19曲収録/SAND-1002/定価:1,667円+税)も絶賛発売中!

LIVE INFOライブ情報

今年もやります完全ワンマン! 〜5th ALBUM リリース記念!〜
2015年5月3日(日・祝)高田馬場CLUB PHASE
前売 2,500円/当日 3,000円(共にドリンク代別)
問い合わせ:CLUB PHASE 03-5911-2777
 
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