ここ数年じわじわと熱を帯びてきた、ボードゲームを始めとするアナログゲーム業界。2月28日(土)、ロフトプラスワンウエストにて『関西ゲームトークVol.3 〜漫画家・中道さんと編集・丹波さんのボードゲームとマンガにまつわる話〜』が開催される。好評につき3回目となる今回は、漫画『放課後さいころ倶楽部』でお馴染みの漫画家・中道裕大、小学館『ゲッサン』編集部の丹波聖泰がゲスト出演。『関西ゲームトーク』の仕掛け人・タンサンあさと(TANSANFABRIK)、第一研究員カワサキに、ボードゲームについて語ってもらった。[interview:松本尚紀(LOFT PRUSONE WEST)]
今こそ熱い!? ボードゲーム業界
──まず、お2人の自己紹介をお願いします。
あさと:僕はタンサンアンドカンパニーというボードゲームの会社をやっています。ボードゲーム以外にもイベントを企画したり、いろいろしています。
──そんな活動の一環としての『関西ゲームトーク』なんですね。
あさと:そうですね。トークイベントをするにあたって、喋るのが得意な方が欲しいなと思って、カワサキさんに協力してもらっています。
カワサキ:僕はポッドキャストで、『ボードゲーム研究室!』っていうラジオ番組を3年くらいやってたんです。去年終わったんですけど、そんな関係であさとさんと知り合いました。だから第1回目の『関西ゲームトーク』は、ボードゲームのポッドキャストをやっている人たちによるイベントでしたね。出演者が皆それぞれで、ボードゲームのポッドキャストの番組を持っているベテランから若手まで、関西の方のみで固めました。
──実際、『関西ゲームトーク』を開催してみてどうでしたか?
カワサキ:あんなにお客さんが来てくれるとは思わなかったですね。だから、ボードゲーム業界の盛り上がりを、実感として受け取ることができました。
あさと:関西以外からもお客さんが来てましたよね。
──お客さんの中で、ボードゲームのコミュニティがあるのでしょうか?
カワサキ:ありますね。友達同士で遊ぶのはもちろんで、定期的に場所を借りて、そこでボードゲームが好きな人が遊ぶ会を開いてるんです。そこのつながりは強いですね。
あさと:そこにはゲームを実際作っている方も来られていますしね。
──最近のボードゲームの盛り上がりは、全国的なものなのでしょうか?
カワサキ:そうですね。関西もそうですが、やっぱり関東が圧倒的に強いです。大阪でボードゲームのフリーマーケットが行なわれた翌年に、東京でも有志で行なわれたんです。その入場者数が1,000人を超えていましたね。
あさと:個人主催イベントでそれですからね。東京はやっぱりゲームを遊ぶ人、ゲームサークル、制作者も多いんです。
カワサキ:今はゲームマーケットという、企業主催のアナログゲームだけを集めたイベントが年3回行なわれてます。東京で2回、大阪で1回。コミックマーケットのアナログゲーム版みたいな感じですね。
あさと:どんどん入場者数が増えて、東京はビッグサイトでやってますよ。もともとは小さいビルだったんですけど。今年の大阪は3月1日にあって、それには僕も出店します。
ゲーム業界が求めるボードゲームの特徴
──ゲーム業界全体としての、これまでのボードゲームの立ち位置はどういったものですか?
カワサキ:僕がボードゲームを遊んでいた時に、初代のファミコンが発売されて、日本のゲーム文化がそっちに流れてしまったんです。たまに面白いゲームが出れば、注目はされてましたけど。今のような盛り上がりはなかったです。
あさと:最近はたくさんのボードゲームが日本語化されてきて、かなり遊びやすくなっていると思います。やっぱり集まって顔を見ながら遊びたいんですよ。テレビゲームでも、モンスターハンターやスマブラみたいに、集まってこそ楽しいゲームが売れてるじゃないですか。どっちもタブル・ミリオンセラーですし、そういう欲求があるんだと思います。そこに、初めてでもあまり関係なく、カジュアルに遊べるボードゲームが選択肢として入ってきたんじゃないですかね。
カワサキ:ボードゲームの本場はドイツなんですけど、ドイツのおもちゃ屋へ行くと、テレビゲームよりもボードゲームがドン!と売られてるんです。図書館にも置いていて、一家にひとつはあるみたいな感じです。日本もお正月にカルタをする文化があるんで、皆で遊ぶ素養があるんです。だからこそ、最近ボードゲームが知られてきたのかなと思います。
あさと:ドイツって家族との時間を凄く大切にするらしくて。だから家族での時間が作れるボードゲームが、テレビゲームが出ても廃れないんです。日本もWiiの登場で、家族で遊ぶっていう選択肢が普通になってきたと思います。そこで、デジタルじゃないゲームもいいよね、っていうのはあるんじゃないでしょうか。
デザインに特化したタンサンアンドカンパニー
──あさとさんがタンサンアンドカンパニーを立ち上げるに至った経緯を教えて下さい。
あさと:就職したくなかっただけです(笑)。
カワサキ:どんな理由なんですか(笑)。4年ほど前に、大学在学中に起業されたんですよね。
あさと:そうですね。ボードゲームで会社を起こすって、周りからは驚かれましたけど。
カワサキ:今はボードゲームの会社やお店が増えてきましたけど、あさとさんが会社を始めた頃は今ほどボードゲームが流行ってなかったですからね。
──大学内でボードゲームのサークルがあったのですか?
あさと:いや、教室内で流行ってたんです。そんなに大きなものじゃなかったですよ。
──遊ぶことから制作に至ったきっかけはあるのでしょうか?
あさと:大学って課題がありますよね。でも僕はそれをサボってて、ボードゲームしかしてなかったんです。それを正当化しないといけないじゃないですか。だからこれはボードゲームを作るための研究です、っていうことにして作ってました(笑)。でも、作っても評価されなかったんです。だから、販売して売れたら評価してもらえるかなって思って、そこから販売を始めました。
──販売にあたって、アナログゲーム業界にコネクションがあったのですか?
あさと:それが全くなくて、大変でした。
──まずは何から始めたのですか?
あさと:地道にゲームを売っているお店へ挨拶に回りましたね。
カワサキ:狭い業界なので、それをするだけで口コミにはなりますよね。誰かがこういうことを始めたって言って、それを応援する人もいる業界ですし。
あさと:そうですね。だから僕は優しくしてもらいました。あと、あの当時は他にやる人がいなかったんです。ボードゲームを仕事にしてる人がいなかったんで、運が良かったんだと思います。たまたま席が空いていて、そこに僕が座った感じです。
カワサキ:ある意味、あさとさんはパイオニア的な存在なんです。今までゲームマーケットって、コミックマーケットのような感じで、悪く言えばオタクっぽい感じがあったんです。でも、あさとさんみたいな新しい世代の方が入ってきて、デザインの面でスタイリッシュなものが出てきたんです。
あさと:デザインの学校で習ったことを活かして、受け入れられました。
カワサキ:当時、あさとさんはボードゲーム界で相当目立ってましたね。