Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューDr.DOWNER(Rooftop2014年12月号)

パンクの心で掻き鳴らす土着の“ONDO”で狂い咲き!
血湧き肉踊るキラー・チューンをアナクロニズム溢れるカセットテープで限定リリース!

2014.12.01

 今年の2月に下北沢シェルターで初のワンマン『爆裂地下室GIG』を開催、ソールドアウトにつき満席のフロアを沸きに沸かせて大団円へと導いたDr.DOWNER。彼らの次なるチャレンジは、シェルターの倍のキャパシティを誇る新宿ロフトを含めた東名阪のワンマン敢行だ。また、そのロフトでのワンマン以降、待望の新作がライブ会場限定で発売される。それが『melancholy ondo. EP』と題されたカセットテープ作品(CD付)であり、すでにライブでも披露されているダンサブルな一撃必殺ナンバー「メランコリー音頭」を筆頭に、Dr.DOWNERの持ち味が凝縮した歌心溢れる楽曲とライブの定番インスト、このカセットテープでしか聴けない「おまけ」までを収録。一見、時代錯誤にも思えるカセットテープというメディアで新作を世に問う意図、EPに収録された新曲の数々について、メンバー全員に話を聞いた。(interview:喜多野大地)

Photo by TEPPEI

日本でやってるからこそできるパンク・ロック

──カセット音源は、以前にも『Rock'n' Roll 難民』(2009年2月発表)という作品がありましたよね。
猪股ヨウスケ(g, vo):それも出してるんですけど、10年前にこのバンドを始めて最初に作った音源もカセットだったんですよ。そうだよね?
星野サトシ(b, vo):うん。ちゃんとレコーディングして、パッケージもちゃんとキャラメル包装したものはね。
猪股:当時はもうデモを作るならCD-Rが主流だったんですけど、CD-Rはなんか手を抜いてる感があってイヤだったんですよ。自分がバンドを始めた頃にライブを見てたバンドのデモはたいていカセットテープだったし、カセットテープというメディアには特別な思い入れがあったんです。その頃は1本150円くらいで作れたし、最初にデモを作るならカセットテープがいいなと。それ以降、節目節目にカセットを出してきたんです。CDを1枚出すたびにカセットを1本出すような感じで、今回でカセットは4本目になるのかな。
──最近はカセットテープで作品を発表するバンドも増えてきましたよね。
猪股:リバイバルみたいな感じでね。USインディー界でもダウンロードコードを付けてカセットで出したり、友達のバンドもそういうのをやってますね。
──結成当初からカセットにこだわっているDr. DOWNERとしては、それに便乗しているように思われるのが癪だと?
猪股:いや、思われても別にいいですよ(笑)。最初からカセットを出してるからエラいなんてことはないし、今回も普通の流れで出す感じです。
──EPのタイトルトラックにもなっている「メランコリー音頭」は、「パンクロック音頭」の系譜を継ぐ楽曲という位置づけなんでしょうか。
猪股:そこまで意識はしてなくて、「メランコリー音頭」は単純に語呂がいいかなと思って付けたタイトルなんですよ。でも考えてみれば、「パンクロック音頭」とリズムは一緒か?
高橋ケイタ(g):同じだね。タイトルも似てるし。
猪股:じゃあ、“音頭”シリーズってことにしておこうか(笑)。“音頭”とは言うものの、曲自体は全然“音頭”じゃないんですけどね。
──とは言え、祭囃子を彷彿とさせる土着的なアレンジが耳に残るし、歌詞には「遠くから祭囃子」という言葉もありますよね。
猪股:それは、日本でパンク・バンドをやってるからこそできることなのかもしれませんね。日本やアジアの土着的な音楽をやってるタートルアイランドみたいなバンドに俺はもの凄く影響を受けてて、日本でやってるからこそできるパンク・ロックを自分たちなりにやれたらいいなと思ってるんですよ。根底にあるのは海外のパンクなんだけれども、J-POPや歌謡曲はもちろん、近所のお祭りで聴ける和太鼓や民謡なんかも含めた日本独自の音楽の影響や要素もあるっていう。
──「メランコリー音頭」は図太いリズムがキモの曲だと思うんですが、『幻想のマボロシ』の時と比べて音に野性味が増したと言うか、リズムの躍動感がより強調された音になりましたね。
高橋:確かに、リズムを前に出すのは意識しましたね。
猪股:特に録り方を変えたつもりはないんですけど、前作まではASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤(正文)さんがプロデュースで関わってくれてたんですよ。後藤さんは唄う人だから、歌をメインに出す感じだったと思うんです。俺とエンジニアの人主体で音作りをした今回はリズムを重要視して、その上に歌が乗っかるようにしたんですよね。その違いはあるのかもしれない。
──後藤さんが関わった作品は歌とギターの重なりがクリアに聴こえるように配慮されていた印象がありますね。
猪股:そうですね。上ものがメインな感じと言うか。今回はドラムとベースの録りに時間をかけたんですよ。かけたと言うより、かかってしまったんですけど。2曲で1日かかっちゃったので。
高橋:今回は特にリズムを強調したかったので、丁寧に録らないとそれが出せなかったんです。
猪股:土台をちゃんと固めた上で上ものが乗るようにしたって言うか。俺はもともとベースだったので、割とリズム寄りのギターなのもあって。後藤さんに関わってもらった時みたいに歌やメロディを際立たせるよりも、今回はバンド感みたいなものを久しぶりに出してみたかったんです。カセットテープで音源を出すっていうのも、バンドのもともとのスタイルに立ち返ろうって意味もあるんですよ。
 

ライブに足を運んでもらうための会場限定音源

──後藤さんのプロデュースから学べたのはどんなことですか。
猪股:たくさんありますよ。
高橋:ボーカルが格段に良くなったよね。あと、『幻想のマボロシ』を録った時はドラムテックで三原(重夫)さんに入ってもらったんだけど、エンジニアが三原さんの技を盗んでたよね(笑)。
小石トモアキ(ds):チューニングが三原さん風になってたね(笑)。三原さんには「別に上手く叩けなくたっていい、大事なのはノレるかどうかだ」って教わったんですよね。今回もそういう感じで序盤はやってたんですけど、エンジニアからダメ出しが入ったんですよ。「もっと上手く叩いてくれないと録れないよ」って。
──久しぶりにこの4人だけで録るというのも、もとのスタイルに立ち返る意味があったんですか。
猪股:そうですね。自分たちだけだと気になることが増えるから、第三者的な立場の人がいたほうがいいなとは思いましたけど、いい作品が出来たので結果オーライかなと。
──他の収録曲もどれも聴き応えのあるラインナップですね。ノイジーなギターが炸裂する「刹那のガール」は、惜しくも『幻想のマボロシ』には収録されず、期間限定のダウンロード配信だったとのことで。
猪股:『幻想のマボロシ』の時に後藤さんから「この曲は外したほうがいいんじゃない?」って言われたんですけど、俺もそうだなと思って。歌を重視したアルバムだったから、そこに「刹那のガール」が入ると浮いちゃうかな? と。みんなは入れたかったみたいなんですけど。
高橋:一通りの録りが終わって、「今日はもう『刹那のガール』を録る時間がない」ってエンジニアに言われたんですよ。でも、そこを何とかお願いしたら、「じゃあワンテイクだけね」って言われて録ることになったんです。
小石:ワンテイクだけってどういうことよ!? って感じで、怒りのドラムをバシバシ叩いて(笑)。そうやって録ったのがこれです。
猪股:まぁ、実際はワンテイクだけじゃなかったけどね(笑)。
──「刹那のガール」も「メランコリー音頭」みたいに、後半になるに従って祭囃子血中濃度がどんどん上がっていきますよね。
猪股:根っからのお祭りバンドってことですかね(笑)。
高橋:行き詰まると祭りに逃げるっていう(笑)。
──結成当初からカセットテープというメディアにこだわってきたバンドとしては、デジタル配信という手法をどう考えていますか。
小石:U2がiTunesでアルバムを無料配布したじゃないですか。あれを何回か聴いて思ったのは、無料だからあまり自分のものに思えなくて、大事に聴けないって言うか。確かに便利なんだけど、どうなんだろうなっていう。
猪股:CDショップにはもう売ってない音源が配信で買えると便利ですよね。音源って、今後はもう物販みたいな感じになっていくと思うんです。曲を聴くだけなら配信で買えちゃうわけだし、だったらもう音源のパッケージを作る必要もなくなる。そこでなぜ作るのかと言えば、グッズの一環ですよね。ライブ会場でしか入手できない音源を作ることで、ライブに足を運んで欲しいという意図もあるし。
──とは言え、Dr. DOWNERの客層は、カセットテープが身近じゃなかった若い人たちが多そうですけど。
猪股:今回のカセットにはCDも付いてるんです。まぁ、カセットじゃないと聴けない音源と言うか、「おまけ」も入ってるんですけど(笑)。
──ちなみに、みなさんは普段からテープを聴いたりするんですか。
高橋:この間、倉庫を整理してたらごっそり出てきたんですよ。ブラジャーホックっていうバンドのテープがあったな。
小石:それ、聴けたの?
高橋:うん。ウチに防災用のラジカセがあるから。
猪股:昔の練習テープとか、実家に行けばまだカセットで残ってるかな。
小石:俺はデッキがないので聴けないですけど、テープは捨てられないんですよ。でも、どっかのバンドの盤面に何も書いてないCD-Rとかはけっこう捨てちゃう。
──その感覚は何となく分かりますね。カセットはモノとしての存在感が大きいから。星野さんはどうですか。
星野:カセットはさすがにもう聴かないですね。古いコンポがあるから聴けることは聴けますけど。
 
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melancholy ondo. EP
ODSP-001【カセット/CD付】

価格:1,000円(税込)
2014年12月13日(土)からライブ会場限定販売

【収録曲】
1. メランコリー音頭
2. 刹那のガール
3. グッドモーニング
4. ドクターダウナーのテーマ(ロングバージョン)
*カセットテープには「Dr.DOWNERのオールニャイトニッポソ」を収録。

LIVE INFOライブ情報

Dr.DOWNER 東名阪ワンマン
『爆裂地下室 GIG』
■2014年12月13日(土)東京:新宿LOFT
OPEN 18:00/START 18:30
前売 3,000円(ドリンク代別)
問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
 
『爆裂地下室GIG(地下じゃないけど)』
■2015年1月23日(金)愛知:名古屋 CLUB ROCK'n'ROLL
OPEN 18:30/START 19:00
前売 2,800円(ドリンク代別)
問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
 
『爆裂地下室GIG(地下じゃないけど)』
■2015年1月24日(土)大阪:心斎橋 Pangea
OPEN 18:00/START 18:30
前売 2,800円(ドリンク代別)
問い合わせ:キョードーインフォメーション 06-7732-8888
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