メタルコアを基軸としながらも、ジャズ、フュージョン、ファンクといった要素が渾然一体となったミクチャー・ミュージックを標榜する横浜出身の4ピース・バンド、jamming O.P.〈ジャミング オーピー〉が初の全国流通盤となるファースト・アルバム『broken words refuse me』を発表した。結成10年にして初のフル・アルバムを完成させるという鈍牛ぶりもさることながら、年に2、3回しかライブをやらない(それも1週間前に急遽決まる)という活動形態もかなりマイペース。それもそのはず、一度は解散という選択肢を採った彼らがバンドをやる第一義は楽しむことにある。20代特有のギラギラさはなくとも、いい塩梅にアクの抜けたアラサーならではの円熟味がある。がむしゃらさは薄まっても、その規格外の音楽性の深度はグッと増している。言うなればオトナのオルタナティヴ・ミュージック。されど枯れた印象は皆無。これほど無邪気に音楽愛、バンド愛を語るバンドも今どき珍しいし、その純真さが音にも如実に表れている。音楽と生活を両立させてきたメンバー4人が人生の1/3を懸けて遂に完成させた一度きりのファースト・アルバム、その多幸感溢れる音の鳴りと瑞々しい歌声に是非耳を傾けていただきたい。(interview:椎名宗之)
──2年前にファースト・シングル『photograph/calling my name』(自主制作500枚完売、現在配信中)を発表した辺りから活動が俄然活発になってきましたよね。
太田垣哲也(vo, g):あのシングルは、アルバムを録り始めた頃に出すことにしたんです。アルバムは完成までにまだ時間がかかりそうだから、とりあえず出しとくかって(笑)。
──ということは、今回のファースト・アルバムはいつ頃から録り始めていたんですか。
太田垣:3年前の夏ですかね。シングルが出た時点で、ドラムはすでに全曲録り終えていたんですけど。
──じゃあ、アルバムのドラムの音は3年前のものなんですか?
田島博至(b):そうです。録り直してないです(笑)。
太田垣:俺とドラムのチャックがこのなかで最年長で32歳なんですけど、まだ20代の頃の音ってことですね。
チャック(ds):今聴くと、音が若いよね(笑)。
滝 善充(g):ギターとベースは去年と一昨年の音も入ってて、歌は今年のものなんですけどね(笑)。
──根っからのマイペースなんですね。
滝:レコーディングで集まれるのも月に1回くらいしかないんですよ。月に1回集まれる人は俺んちに来て、録れるものを録って、それから呑みに行くって感じですね。ギターとベースを録ったのは俺んちで、歌は川面(晴友)さんっていうエンジニアさんの自宅スタジオで録ったんです。
太田垣:和気あいあいとね。
滝:長いことかかりましたけど、曲自体は最初からあったものなんで。
田島:軽く10年モノだよね(笑)。
太田垣:この間、久々にmixiの日記を読み返したら「アルバムを録り始めた」って書いてあったんで、当時はまだmixiがメインストリームだったんですね(笑)。
──ミクスチャー感溢れる音楽性は10年前から変わらずなんですか。
滝:そうですね。ミクスチャー感は最初からありました。
田島:みんな好きな音楽が違うんで、それぞれが好きなことをやってたらこんな感じになったんですよね。
太田垣:特にルールを決めずにやってきたらこんな感じになっちゃいました、って言うか。
──太田垣さん、田島さん、チャックさんはもともとどんな音楽がストライク・ゾーンだったんですか。
チャック:俺はメタル、パンク、ジャズとかが好きで、ドラム・スタイルで影響を受けたのは、チャド・スミス(RED HOT CHILI PEPPERS)、トラヴィス・バーカー(BLINK-182)、モーガン・ローズ(SEVENDUST)、ラーズ・ウルリッヒ(METALLICA)とか。
太田垣:俺はもともとハードロック/ヘヴィメタル少年だったんですけど、このバンドを始めたくらいから日本のアンダーグラウンドなハードコアやエモを知るようになったんです。具体的に言うとENDZWECK、envy、BLUEBEARDといったバンドから活動の姿勢を含めて影響を受けましたね。
田島:俺は最初にLUNA SEAから始まって、そこからHi-STANDARDへ行ったんですよ。当時はみんなだいたいLUNA SEAかL'Arc〜en〜CielかX JAPANに好みが分かれて、X JAPANが好きな人はそのままメタルに行くんです。LUNA SEAから入った人はいろんなところへ行けるんで、俺はメロコアに行って、ハイスタからthe band apartに行ったんですよ。そのままそういうオシャレな音楽が好きになって、Jamiroquaiとかが好きになって。
──シングルの2曲が顕著ですけど、jamming O.P.の楽曲にはちょっとジャジーなコードが随所で多用されていますよね。あれは田島さんの趣味なんですか?
滝:コード進行はだいたい俺が考えるんですけど、そういうオシャレ系のテンション・コードっぽいのを弾くとタジ君が凄く喜ぶんですよ(笑)。
──かと思えば、アルバム2曲目の「pothead」は90年代中期のメロコア黄金時代を彷彿とさせる楽曲だったり。皆さんの地元のバンドで言えば、popcatcherやCAPTAIN HEDGE HOGみたいな。
太田垣:凄く影響を受けてますね。
滝:「pothead」は何より、俺のなかではWRENCHのイメージなんですよ。
太田垣:俺はFOO FIGHTERSのイメージかな。
滝:やっぱりその辺のミクスチャー世代のバンドの要素が入ってるかなと思いますね。