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アレルギー(Rooftop2014年10月号)

30年の時空を超えて“蘇生”された楽曲の数々

──新たに内藤幸也さんをギタリストに迎えたのは、宙也†幸也からの流れですか。

宙也:うん。知り合ったのはここ5、6年の話なんですけどね。

──意外ですね。てっきりMUTE BEATの頃から知り合いだったのかと思いましたが。

宙也:当時は面識がなかったですね。でも新しくアレルギーを始めるにあたって、幸也の存在は大きいんですよ。オノちゃんはもう連絡が取れなくて、もしまたアレルギーをやるなら幸也しかいないと最初から考えていましたから。

──TOKIEさんに継ぐベーシスト、中西智子さんとはどんなつながりだったんですか。

宙也:女性のベーシストを紹介してくれないかといろんな人に尋ねて回って、何人か紹介してもらったんですよ。みんなYouTubeのURLを送ってくれたんですけど(笑)。そのなかで一番最初に動画を見たのが智子で、直感で選びました。彼女はアレルギーのことを全く知らなかったんだけど、それも大きなプレッシャーにならなくて逆にいいかなと思って。

──華も腕もあるという意味では、アレルギーのベーシストの系譜に相応しい存在ですよね。

宙也:確かに。嬉しかったのは、当時のU子を知っている人たちが智子が入ってからのアレルギーを認めてくれたことなんです。違うメンバーで再結成したバンドは、そういう部分でなかなか認めてもらえないじゃないですか。長いブランクがあったバンドだからこそ、そうやって認めてもらえるのは純粋に嬉しいし、新たなメンバーが加わったことで僕自身フレッシュな気持ちでやれているんですよ。

──今回のアレルギーは期間限定の活動ではなく、この先もずっと続いていくものだと捉えていいんですよね?

宙也:もちろんそのつもりでいます。そう思えたのはやっぱり、今の布陣が揃ったことが大きいですね。{新訳}の時はそこまで思えなかったですから。

──鉄壁の布陣が揃った以上、音源を作りたくなるのはごく自然な流れですよね。今回発表される『蘇生 〜Anabiosis』と題されたニュー・アルバムなんですが、冒頭に新曲が2曲連なりつつも、基本的には不朽のレパートリーが30年の歳月を経て文字通り“蘇生”された構成になっていますね。

宙也:まずは新メンバーで昔の曲をちゃんとした形で録ってみたかったんです。当時は整ったレコーディング・システムで録ることができなかったし、作品として聴けるのもライブ音源が多かったし、ちゃんとマルチで録れたのは『El Dorado(黄金郷)』の片面(Studio Act Side)だけでしたからね。『REBEL STREET』に収録されていた「WAKE UP」なんて8チャンネルだったし。新曲だけでまとめた作品は、この次に出したいなと考えています。

──波間に小舟がたゆたうようなアレンジの「不知火」、漆黒の闇夜に祈りを託した「Eos 〜暁の女神」という新曲は過去のレパートリーと引けを取らない出色の出来だし、過去のレパートリーはいま聴いても新鮮で普遍性があるし、往年のリスナーも昔のアレルギーを知らない世代も満足できる内容ですね。

宙也:そう聴いていただければ嬉しいですね。そんな作品になるのを望んでいたので。マスタリングの当日まで曲順を決めてなかったんですが、新曲は頭に入れるのがいいかなと思ったんですよ。コメントを寄せてくれた上田剛士(AA=)は、「どこからどこまでが新曲なんですか?」って訊いてきたけど(笑)。

──INUの「メシ喰うな!」をボーナストラックとして収録したのはどんな理由からですか。

宙也:同世代のバンドのカバーを入れてみたかったという単純な理由です。町田康とは同い年なんですよ。『メシ喰うな!』ってアルバムはジャケットも含めてインパクトが凄かったし、しかもメジャーから出たじゃないですか。当時自分と同じ19歳だと聞いて、ちょっとしたジェラシーを感じていましたね。ちなみに、カバーは2曲ピックアップしていたんですよ。

──もう1曲は、ライブでも披露しているザ・スターリンの「解剖室」ですか。

宙也:そうです。「解剖室」は何回かアレンジしてみたんだけど、原曲を超えられなかったんですよね。

──過去のレパートリーの選曲基準はどんなところだったんでしょう?

宙也:今のメンバーでライブでやりたい曲、今のメンバーでやってしっくりくる曲ですね。去年ライブを重ねた上でレコーディングに入ったから、選曲で特に悩むことはなかったです。アレンジもほとんどいじらなかったし。バンドのデビュー・アルバムの曲って、デビューするまでにライブでガンガンやるじゃないですか。それと同じですよ。

──だからロック・バンドのファースト・アルバムには名作が多いんですよね。ライブで研鑽を積んでいるから。

宙也:そうそう。セカンドはファーストの勢いで作って、サードで名作が出来るかどうかで真価が問われるんですよね。

 

新曲の2曲は3.11以降に書いた初めての歌詞

──昔の楽曲のアレンジをほぼ崩さなかったのは意図したところだったんですか。

宙也:いじりようがなかったんですよ。よくできたアレンジなのかどうかは分からないけど、どの曲も元のアレンジがひとつの完成形なんでしょうね。凄くコンパクトだし、普通じゃないアレンジなんだけど、それを直したり解体するよりも元のままのほうがいいんです。アレルギーのオリジナル・メンバーは誰も譜面を書けなかったし、すべて感覚でインプロビゼーションから作っていくから、決して一筋縄では行かないんですよ。昔、アレルギーが初めてマルチでレコーディングした時に、エンジニアから「コードがぶつかってるよ」と指摘されたことがあるんです。そんなことは全然気づかずにライブでやっていたんですけど(笑)。でも、この形でずっとやってきたんだし、気持ち悪いと感じる人もいるかもしれないけど、そのままでいいかなと思ったんですよね。

──インプロビゼーション色の濃い「Doll Or Man」みたいな曲を聴くと、アレルギーの楽曲が決して一筋縄では行かない構成なのがよく分かりますよね。特にこの曲では幸也のギターの特異性が際立っていて、どこかシャーマニズムを彷彿とさせる世界観を増幅させています。

宙也:幸也は真面目なプレイヤーで、いままでは歌を引き立てるギターを弾くことが多かったと思うんです。でも、宙也†幸也を始めてハチャメチャな部分があるのも知っていたから、そこを引き出すにはアレルギーが格好のバンドだと思ったんですよ。

──手練メンバーだけに、録りもそれほど時間がかからなかったのでは?

宙也:時間が限られていたのが功を奏した部分はあります。ごくシンプルに、余計なギミックをしなかったので。楽曲の半分以上はギター1本だけで、重ねたのはほんのちょっとですからね。ギター・ソロだけ別録りしたのも数曲だし。ライブ・レコーディングに近い形だったんですよ。

──さすがに歌は別録りなんですよね?

宙也:いや、ほとんど一緒です。多少の直しはありましたけど。演奏も歌も“せーの!”でやって、それも本番のつもりで唄っているから、歌が先にOKになった曲もあるんですよ。まぁ、30年ぶりに唄うと「ちょっとキーが高いなぁ…」とは思いましたけど(笑)、そこは頑張りましたね。

──「Tokyoフラストレーション」のようにストレートなパンキッシュ・ナンバーもあれば、「行方不明」のように溜めの効いたファンク・チューンもあるし、「笑う土」のように土着的なリズムに重きを置いたカオティックな曲もある。アレルギーが如何に多彩な音楽性を放っていたかがよく分かりますね。

宙也:「行方不明」はE.D.P.Sの影響下にある曲なんですよ。当時のメンバーはみんなE.D.P.Sが好きでね。「Tokyoフラストレーション」は初期の曲だから歌詞もストレートだけど、当時のニュー・ウェイヴをやっていた人たちはメッセージ性を嫌っていたんですよね。U子も直接的な表現を嫌がっていたし。僕の作る歌詞にも手厳しかったしね。

──逆に言えば、U子さんのお墨付きを得らればまず問題なしだったと。

宙也:そうそう。あまり褒めないんですけどね。「やだぁ! やだぁ!」「この歌詞クサイ!」とかよく言われましたよ(笑)。ライブの曲順は僕が考えていたんだけど、「またこの曲を最後にやるの!? やだぁ! 私もうやらないからね!」って言うような子だったんです(笑)。

──「El Dorado 2012」は、{新訳}アレルギーのアレンジに準拠したということですか。

宙也:アレンジと言うより、歌詞を変えたんです。2012年はU子の没後20年だったので、「時を遡る男たちの夢」という歌詞を「時を遡る魂よ」に変えたんですよ。レニ・リーフェンシュタールが撮った『意志の勝利』というナチスの記録映画があるでしょう。あの映画は芸術作品としては素晴らしいけれども、ナチスの宣伝映画だったわけです。アートとして見るか、プロパガンダとして見るかという議論がずっとあったんですね。その映画を、法政大学でやったライブで流したことがあるんです。『意志の勝利』をバックに好きなように表現するのがライブのテーマでね。そのライブのために作ったのが「El Dorado」の原型なんです。

──1曲目の「不知火」には「嗚呼、帰らぬ友よ」という歌詞があるし、図らずも本作の最初と最後はU子さんへのレクエイムで飾る構成になっていますよね。

宙也:……そういうことになるのかな。「不知火」はそれほどU子のことを意識した曲じゃないんですけどね。「不知火」と「Eos 〜暁の女神」の2曲は、3.11以降に書いた初めての歌詞なんですよ。2曲とも締切の間際に作ったんですけど、特に悩むことなく書けたんです。自分がネットで言い放ってきたことやノートに書き残してきたことを全然見ることなく書き上げたんですよ。

 

蘇生 〜Anabiosis

テイチクエンタテインメント TECH-30419
定価:2,857円+税
2014年10月22日発売

【収録曲】
01. 不知火
02. Eos 〜暁の女神
03. Automata
04. Double Think 〜二重思考
05. 不安なアタマ
06. J.B.の夢
07. 行方不明
08. Tokyoフラストレーション
09. 笑う土
10. Doll Or Man
11. El Dorado 2012
12. メシ喰うな![Bonus Track]

Live info.

ART CORE PUNK 宣言
2014年10月12日(日)高円寺 HIGH
出演:アレルギー/SADIE SADS
映像:ササキヒデアキ
OPEN 18:00/START 18:30
前売 3,500円/当日 4,000円(共にドリンク代別途500円)
問い合わせ:高円寺 HIGH TEL:03-5378-0382

ART CORE PUNK 宣言
2014年10月18日(土)札幌 SUSUKINO810
出演:アレルギー/八田ケンヂ/他
OPEN 18:00/START 18:30
前売 3,000円/当日 3,500円(共にドリンク代別途500円)
問い合わせ:SUSUKINO810 011-563- 8575

2015年2月21日(土)京都磔磔
出演:アレルギー/他

2015年2月22日(日)名古屋得三
出演:アレルギー/他

2015年3月14日(土)新宿LOFT
出演:アレルギー/非常階段