Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュージェイムス下地(Rooftop2014年10月号)

1970年代と今を繋ぐ作品作り

2014.10.01

 永く愛されている"ルパン三世"。ルパン三世の相棒であり人気キャラクター"次元大介"を主人公にした作品が今年公開。ハードボイルドな世界観を見事に表現し、期間限定特別上映という小規模な劇場展開ながら多くの熱狂的ファンに支持をされた今作。映像と共に作品を彩った音楽はどのように生まれたのか。音楽を手がけたジェイムス下地氏に迫り、魅力あふれる曲作りの秘密に迫る。(interview:柏木 聡/Asagaya/Loft A)

70年代の匂いを感じる曲作り

──本作品を手がける経緯はどういったものだったんですか。

ジェイムス:監督の小池(健)さんからDMで「ルパンを作ってるんだけど、音楽を作ってもらえますか」と連絡が来て、「もちろん喜んでやります」ってことでお話が来た形になります。

──DMだったんですか、今時の依頼方法ですね(笑)。

ジェイムス:はい、今風です。個人的にもルパンは昔からのファンだったので、お仕事が来た時は紅白に出たような気分でした(笑)。

──曲の依頼の際に小池さんからオーダーはあったんですか。

ジェイムス:1970年代の匂いを感じ取れるトーンが欲しいとは言われましたが、ほぼお任せでした。唯一あったのはマルタの曲で、希望を感じる曲にして欲しいというオーダーはありました。

──今回の作品はTVシリーズ『LUPIN the Third 〜峰不二子という女〜』がもともとの流れとしてあり、音楽は菊地(成孔)さんからのバトンタッチですが、そのプレッシャーはありませんでしたか。

ジェイムス:TVは不二子メインのストーリーで音楽もメロウで耽美的なものだったので、今回のハードボイルドな作品とは違う流れということもあり、そこからのプレッシャーはなかったです。ただ第1TVシリーズに繋がっていくストーリーなので、大野(雄二)さん・山下(毅雄)さんが制作された曲がどうしても脳内再生されてしまい、それを意識しながらも新しいもので作品の世界観を表現するということのほうがプレッシャーになりました。

──特にどういった点を意識されましたか。

ジェイムス:小池さんもプロデューサーの浄園(祐)さんもファースト・ルパンが好きで意識されていたので、曲作りの際も山下さんの世界観を意識して曲を作りました。ただ、どうしてもああはならないですけどね(笑)。

──ばっちりハマって格好良かったです。私の周りのルパン・ファンも「今年一番良い映画。ストーリーも音楽も最高、劇場で見ないと損だ」と言っています。

ジェイムス:ありがとうございます。TVだとオンエアーが難しい雰囲気もありますが、金曜ロードショーなどでもやって欲しいとは思いますね。

──不二子の流れがあるので少しエロティックなシーンもありますからね。

ジェイムス:小池さんはサービス精神旺盛な方ですから、コンテの段階ではもっと凄くて、尺の都合でかなり短くされていました。

──コンテを見られた段階で音楽は作り始めていたのですか、それとも映像を待ってからですか。

ジェイムス:マルタが劇中で唄うシーンでは先にないと作画できないので、先に作りました。あとは小池さんから「EDテーマが聴きたいんだよね」というリクエストが来たので、その2曲だけ先に作りました。あとは画が出来てきたのを見ながら作りました。

──劇中の曲は映像に合わせる都合上フルでは使用しない曲もあると思うのですが、そこを意識しながら作るというのは難しくはないのですか。

ジェイムス:BGMに関して言うと、映像を先にいただけている場合、僕は尺の分しか作らないんです。今回は先にいただけていたので、尺や話の流れに合うように作ることができました。

──凄い、職人のようなお仕事ですね。

ジェイムス:不器用なのでそんな作り方しかできないんです。

──夜のシーンも多い作品なので、そんな中で曲のコントラストの違いを表現することは難しいように思うのですが、どうでしたか。

ジェイムス:サスペンス色が強いですからね、こういった作品は初めてだったので手探りではありました。ただ、作品の世界観や話の流れを捉えることはできていたので、そこは大丈夫でした。

──今回はどれぐらいの期間ですべての曲を作られたのですか。

ジェイムス:基本的なものを作ったのは2週間ぐらいです。そこから仕上げということで、ディティール調整などでさらに1ヶ月ぐらいかかっています。今回は生でやりたいということを自分の中で決めていたので、レコーディングの際も画に合わせて細かいオーダーをやっていただけました。レコーディングは10日ぐらいかかっています。演奏者の方にもこだわっていただけて、たとえばベースは根岸(孝旨)さんで曲ごとにベースを選んで演奏していただきました。

──楽器も当時のものを使ってということなのですか。

ジェイムス:そうですね、かなりマニアックにやりました。ギターは窪田(晴男)さんと、当時の雰囲気を知っている方を招いて、皆さんいちいち言わなくても分かるよねって方々でした。

──安心してレコーディングできますね。

ジェイムス:安心できる反面で変なものを作ると舐められるので、お互いそこの緊張感はありました。

──そのメンバーですと、当時のものを今再現するという形だったのですか。

ジェイムス:2014年で考える1970年代の音楽なので、当時とは違ってくるところがあると思いますから、上手く取り入れられるように常に意識はしていました。

──この曲が特に苦労したというものはありますか。

ジェイムス:ないです、苦労嫌いなんで(笑)。全部楽しんで作りました。

──では、お気に入りの曲はありますか。

ジェイムス:一番はEDですね、格好いいものが出来たと思います。あとカーチェイスの曲は変わったことをやろうと思っていて、変拍子でプログレ色のあるものをやってみたのがハマって気に入っています。

──ジェイムスさんと言えば、サントラの支持率が高いということで知られていますが、ご自分ではどういった点が支持をされていると思われていますか。

ジェイムス:ありがたいことですね。変な言い方かもしれませんが、僕のサントラはサントラであってサントラではないんです。音楽として飽きないよう全部サントラ用にゼロから作り直すんです。もちろん、テーマ曲やモチーフは同じものを使い再構成して、ない部分を無理やり付けることはしていません。

──だからサントラの曲も1曲・1曲が聴き応えのあるものになっているんですね。

ジェイムス:次元は静かな曲が多いので、そういう意味では難しいですね。

 

ファンとして見た『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』

──ジェイムスさんはルパン・ファンでもあるということですが、いちファンとして今回の作品を見た時にお気に入りのシーンはありますか。

ジェイムス:どこも格好いいですよね。港のシーンなんかあんなに黒を基調としているのに綺麗で、色彩設計とかも相当こだわっていますよ。悪いシーンと言うか手抜きのシーンがひとつもないんですよね、完璧すぎちゃって。ヤエルが打たれたシーンも凄く凝ってますよね。

──あそこはグロくなりそうなのに綺麗な画になってますよね。

ジェイムス:そうそう、格好いいんですよ。カーチェイスのシーンも凄くて。最初に小池さんから、今回は70年代だけど今の感じにするというのを伺っていたんです。出来上がってきたものを見るとそういうモノになっていました。昔のルパンをリペクトしつつもアップデートしている感じがして素晴らしいです。脚本もよく出来ていますよね。

──ジェイムスさんは映画作りに関する知識も凄いですね。

ジェイムス:そんなことはないですよ(笑)。ただ、分からないことがあるとインタビューをするみたいに聞いていたんです。

──それだけ詳しい方ですと、どういった意図で作っているかをより深く汲んでもらえるので助かりますね。

ジェイムス:白い線で来るのと色が付いてくるのとでは違うじゃないですか。小池さんに色はどんなトーンで来るのかを聞いていたんです。そうするとスウェーデンの映画のように一度ビビッドな色にしたものをわざと落とした空気感で画を作ろうと考えているとおっしゃっていたので。なるほど、そういう質感で行くんだったらどうしようかなと、そこからサウンド・キャンパスをどう作るのか考えました。

──周りの皆さんは音楽に関してどんな感想を持たれていましたか。

ジェイムス:初号を見た時にたまたまモンキー・パンチさんがいらっしゃったんです。見終わった後に「いやー、格好いいね、音楽もいいよ」と言っていただけたので、もうこれでOKだとホッとしました。そこでプレッシャーから解き放たれました。

──ルパンは古くからのファンも多いですから、そういった面のプレッシャーもあったんですね。

ジェイムス:そうですね、コアなファンが多い作品なので酷評覚悟で受けたところもありました。公開後の評判もよくて良かったです。ファンとしては毎年新作を劇場で見たいですね。1時間の作品でもいいので、大きい画面でいい音で見たいです。

──最後に、11月26日に待望のサントラ発売ということでファンに向けてのメッセージをお願いします。

ジェイムス:期待を裏切らない作品だと思うので、楽しんで下さい。

Blu-ray&DVD
『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』

発売日:2014年11月28日
Blu-ray  価格:7,800円(税抜) 品番:KAXA-7160
DVD 限定版 価格:6,800円(税抜) 品番:KABA-10297
DVD 通常版 価格:3,800円(税抜) 品番:KABA-10298
発売:トムス・エンタテインメント/KADOKAWA 角川書店
販売:KADOKAWA 角川書店
原作:モンキー・パンチ ©TMS

オリジナルサウンドトラック
『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』

音楽:ジェイムス下地
発売日:2014年11月26日
価格:2,500円(税抜) 品番:COCX-38843
発売:日本コロムビア

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