日本のみならず今も世界中で多くのファンを持つ『美少女戦士セーラームーン』。20周年を迎え盛り上がりを見せるなか、新たに作られたアニメがWEBで世界同時配信されることが発表。今最も注目されている話題作はどのように生まれているのか。監督・境 宗久と共に今も愛される作品の魅力に迫る。(interview:柏木 聡/Asagaya / Loft A)
「境 宗久 監督 インタビュー記事お詫びと訂正のお知らせ」
弊社発行のフリーペーパー「Rooftop 2014年7月号」にて本来掲載されるべきではない文面が掲載されてしまいました。
境監督および、『美少女戦士セーラームーンCrystal』関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。
こちらに修正済のインタビュー原稿を再掲載させていただきます。
今後はこのようなご迷惑をお掛けすることないよう、チェックを徹底してまいる所存でございます。
この度の件につきまして、重ねてお詫び申し上げます。
今後も変わらぬご指導のほどをよろしくお願い申し上げます。
作品の変わらない輝きと透明度を新しい形で
──まず、境監督が抜擢されたのはどういった経緯だったんですか。
境:プロデューサーと飲んでいる時に真面目に仕事の話をしていて、「もっとがんばります」みたいなことを言っていたら「ついてはセーラームーンという作品があるんだけどやらないか?」って感じで話をもらいました。
──先に外堀を埋められてしまった感じなんですね(笑)。
境:「がんばる」って言った手前、「ハイ、やります」としか言えなくて(笑)。
──社内で新しいセーラームーンを作るという話はあったんですか。
境:小林(雄次)さんが先にシリーズ構成ということで脚本を作られていました。一緒にお仕事をしたこともあったので「今、セーラームーンやってるんです」とは聞いていて、「すごいですね、頑張ってください」って話はしていました。その頃はまだ完全に他人事でした(笑)。
──どうして抜擢されたんだと思いますか。
境:よく判りませんが、以前のシリーズに関わった人だとどうしても引っ張られてしまうところがあるので、経験がない人を探していたんだと思います。前作は前作で完成された作品なので、新たな作品を制作するという意識があったのではないでしょうか。
──そういった意味では小林さんは特撮のお仕事が多い方で、経歴としても変わっていますね。
境:小林さん自身、「少女向け作品の本を書くとは思いもしなかった」って言ってました。でもやってみたら思いのほか楽しいらしいですよ。
──音楽は高梨(康治)さんですが、決め手は何だったんですか。
境:音楽をテーマとしたある作品でご一緒させていただいた時、コーラスを入れた曲を作っていただいたんです。それが自分はすごく好きで、今回はさらに厚くしたテーマとして壮大な叙事詩のようにしたいと思いお願いしました。
──主題歌は「ムーンライト伝説」ではありませんが、あえて新しいものをということなんですか。
境:そうですね。主題歌も一新していて「ムーンライト伝説」ではない、ももいろクローバーZが歌う「MOON PRIDE」をRevoさんに新しく作ってもらいました。
──20周年の区切りの年にということでプレッシャーはありますか。
境:よく聞かれますが、そこまでではないです。長年愛されていて多くのファンがいる注目度の高い作品だと思います。でも、いろいろ気にしすぎて自分の中でブレが生じてしまうとまとまるものもまとまらなくなってしまうので、しっかりイメージを持って程よい緊張感の中で作っています。
──“Crystal”という言葉がタイトルについた理由はやはり銀水晶から?
境:それもありますが、水晶はいつまでも透明度を失わないので、セーラームーンも変わらない輝きと透明度を保っている作品であるという理由も含まれています。これはプロデューサーの神木(優)さんのアイデアで、武内直子先生が気に入られ即決でした。
──良い理由ですね。もっと前面に出してもいいんじゃないですか。Crystal ってなんだろうと思っている人多いと思いますよ。
境:神木さんはセーラームーン世代で、すごく愛が強いんです。
──一番プレッシャーをかけてくる人ということですか。
境:キャラクターについても「こんなのうさぎちゃんじゃない」「まこちゃんはこんなことしない」って、それを僕は「ハイ、仰せのままに」という感じです(笑)。私服のデザインをこんな感じでって出すと「亜美ちゃんはこんなの着ないです。女の子の普段着としてありえないです」って、女性ならではの視点で意見を言ってくれるので助かっています。
──内助の功をいただいているんですね。
境:そういう意味ではキャラクターデザインの佐光(幸恵)さんも女性視点で、女性らしい仕草をと細かく見ていただいています。
──佐光さんは耽美な世界観の作品が多い方で、今回の艶っぽい女性らしいデザインがより原作に近い形になっているように感じてます。
境:中学2年生にはとても見えないんですけどね(笑)。もちろん皆さんに見ていただきたいんですが、特に意識をしているのが20年前にセーラームーンを見ていた女性の方々なんです。作品を見て懐かしむというのもあっていいんですが、見ていた頃の気持ちをまた思い返して浸っていただきたいというのがあるんです。セーラームーンがカッコイイ、まもちゃんとのロマンスなど、当時持っていた憧れにもう一度浸っていただきたいと思っています。なのでリアルな中学2年生じゃなく、女性の方があこがれるような世界観にということで今回のデザインになりました。
──当時の雰囲気をという事ですと、舞台は現在ではないんですか。
境:置き換えてはいますが、あまりリアルにはしていません。生活環境として現在ではありますが、携帯も出さないですし、細かく機器を置き換えているわけではないんです。
──そういった点は、作品が連載されていた当時を意識されてということなんですね。アレンジもあるのかなと思っていました。
境:今風にするのも味気ない感じがしたので、ある意味ファンタジーということで憧れの世界に落とし込むようにしています。ただ建物は現代のものもあり、世界観を保っていくことは強く意識しています。