近頃の関西ギター・ロックシーンの急激な盛り上がりは、その筆頭とも言うべきバンドの存在がメディアでも多々取り上げられているが、Brian the Sunの「我」流で突き詰めてきた、その活動による貢献は大きい。
そんな彼らにバンド史上最長のツアーにチャレンジするきっかけとなったミニ・アルバム『彼女はゼロフィリア』の作品についてと「今」の心境について伺ってきました。常に前を見ている彼らの発言はとても頼もしく感じます。(interview:樋口寛子/新宿LOFT)
みんな仲良くなったんじゃないでしょうか?(田中)
──東名阪・ワンマンツアーを終えた今の心境を聞かせてください。
白山:無事終えられたことに正直ホッとしています。
小川:やっぱりワンマンって特別で今はやりきったー!感がありますね。でも次に向けてもっともっと行くぞ!っていうキッカケにもなったかな。
田中:まずほっとしてます。あとは次の目標に対して自分が今、何をできるのか考えてます。
──皆さんにとってどんなツアーになりましたか?
白山:バンド史上最大の規模のものになったので、挑戦と自分たちでは思っていましたが、予想を超える嬉しい反応ばかりでした!
小川:東名阪ワンマンをやって47都道府県ワンマンをするのが楽しみになりましたね。
田中:とても楽しいものでした。同時にこれだけの人が自分たちのライブを観にきてくれるんだと思うと背筋が伸びました。
──今だから話せるようなワンマン・ツアーでの出来事がありましたら聞かせてください(笑)。
白山:衣装の帽子のロゴのプラスチックのところが移動で割れてしまって、前日必死にアロンアルファでくっつけてました(笑)。
田中:特にないですけど、あえて言うとみんな仲良くなったんじゃないでしょうか? 前が仲悪かったわけじゃないんですけど、腹を割って話せるようになったと言うか。会話が多くなった気がする(笑)。
森:一言で言うと、ほっとしています。終わってみてから色々振り返ってみると、これからの音楽活動に影響を与えるような大切なツアーであったなとも思います。
と言うのも、表現者として自分が何を求められているかっていうのは、のーみそで考えてなくても、心のどこかではやっぱり気になっているもので、常々そのもやもや感みたいなものが無意識のうちに募っていたんです。
例えば、僕らくらいのステージにいるバンドだと、表向きに公表されるものの数も少なくって、最大公約数的な意味合いを込めたものを自分たちの総意として表に出すじゃないですか。でもそれって、僕らの持っているほんの一部分だったりするわけですよね。でも、世間はそれを僕らだと思うわけです。確かに、その「一部分」も僕らを形作っている要素だし、好きでやっていることには変わりはないので、それもやりたいし。とかってなるとやっぱり、自分たち的にも作品として表にでているもの(PVとかCDとか)に照準を合わせて、そこにそってライブを構築したくなるわけです。
で、ですね。今回のワンマン・ライブで「一部分」以外の部分をみんなにも聴いてもらえる機会ができたんです。そして、ライブで演奏してみて、それをすごく快く受け入れてくれたように感じたんです。おかげで自分たちが勝手に作っていた自分たちのイメージから脱却することができたのかな、と。
バンドの息使いを感じるという意味では「一発録り」の方が良いと思い、チャレンジしました(森)
──ワンマン・ツアーを廻るきっかけとなった新作『彼女はゼロフィリア』についてお伺いしたいのですが、この作品はいつ頃出来上がりましたか?
白山:前作のアルバム『NON SUGAR』が出来上がった後に、「次のリリースをどうするか」と話し、昨年夏頃からイメージがあったので、形にするのは早かったですね。ボーカルには常に曲のイメージがあるから、メンバーとしても今回はスムーズに作れましたね。
──『彼女はゼロフィリア』には、ライブを積み重ねてきたものがきちんとパッケージされている印象が、今までの作品の中で最もあると感じました。またアルバム・タイトルにもなった『彼女はゼロフィリア』という言葉がとても気になりました。
森:「ゼロフィリア」は嫉妬愛という意味があり、嫉妬されることもすることもどっちにも愛情を感じるものがあると、その意味を知った時に面白いなと思ってつけました。どちらかと言えば言葉を先に知り、イメージが広がって書いた曲でもあります。
白山:歌詞が出来上がった時に、メンバー一同「おおっ! こうなったか」と思ったね。また「ゼロフィリア」って響きがかっこ良いよね。
森:今回は録音を全部一発録りでレコーディングしました。
白山:今回は出来るスタジオ環境だったのでチャレンジしてみました。今まで作品とは僕らが聴いても違うかなと思いますね。
小川:バンドの空気感が凝縮されて録音されましたね。
森:今回はバンドの色がそのままストレートに出るように考えた時、バンドの息使いを感じるという意味では「一発録り」の方が良いと思いチャレンジしました。みんなのタイム感を理解していないと出来ないので、そういった意味では今回は集中してレコーディングが出来ましたね。「これをミスしたらもう一度録らないといけない」という緊張感があって、気合いが入りました。
聴いてくれた人が色んな解釈をしてくれると良いよね(小川)
ー楽曲ごとにお伺いしたいのですが、1曲目「ロックンロールポップギャング」はどんな感じの曲でしょうか?
小川:1曲目は歌詞がとても直球ですね(笑)。
白山:1、2曲目はPVがあって、ストーリー仕立てになっています。
森:CD全体を通して5曲はとても短いと思うのですよ。5曲で19分ですぐ終わってしまうので、それを考えた時に1曲目は「ロックンロールポップギャング」にしました。僕の中での1曲目は「彼女はゼロフィリア」なんですが、リピートして聴いた時に戻ってきた感が2曲目で出た方が良いのかなと思っていて。あんまりそういったことにこだわっていなかったのですが、今回はそんな感じでいきたいなと思っていました。全5曲なのでコンセプティブに作れるし、繋がっているなと感じられる部分も欲しいなと。
小川:今までより1枚のCDとしてとても完成している感じがしますね。
森:メッセージ的には1曲目「ロックンロールポップギャング」は外側に向ってのトンガリ方をしている曲で、2曲目「彼女はゼロフリィリア」は自分に向けている曲ですね。1曲目は大衆に向けてのメッセージが込められ、2曲目は個人の間での人間関係のメッセージが込められています。3曲目「メランコリックガール」はライブハウスに来る、全く知らない女の子のことが気になっている曲です。これは個人的解釈なのですが、ライブハウスに来る女の子は何かを抱えているような気がしてならなくて。その女の子は黒い噂があるけど、それが本当かどうかは分からない。でも、どんどん惹かれていってしまい、最終的に親密な関係性になるのですが、果たして声を掛けてしまうバンドマンが悪いのか、声を掛けられて、ついていってしまう女の子が悪いのかという話になっていて。広い目で見た時に他人に対しての興味や愛情という意味では、そこに目を向けてみるのも面白いのでは? という曲ですね。今までにない感じの曲にはなっているかと思います。
──「メランコリックガール」という言葉は印象に残りますね。
森:言葉の響きとは裏腹に、意味は憂鬱ですけどね。世の中は冷たいし、そのまま進んでいくけど、生きていきましょうという意味も込められていて。
──「メランコリックガール」から4曲目「グラストライフル」は随分と曲のカラーが変わりますね。
森:3曲目で出会った女の子とその後どうなったかは想像にお任せしますが、現実世界を凄く冷静に見ている女の子がいまして。それはあなたが思っていることは現実なのか? 諦めなのか? と思う所があって。冷静に俯瞰して物事を見ている人が果たして本当の意味での冷静なのか?あなたの自尊心が見えているというところから、それってどっちでもいいやというところも含めて未来の話をする曲です。自分が歌ってもらっているという聴き方と自分が発信者になっている時の聴き方があるので、ちょっと意識して聴いてもらったらより楽しんでもらえるかと思う。「メランコリックガール」にある人身事故で毒づいている会社員は、1st Maxi Single「Sister」の時にも触れていて、実は繋がる部分もあったりするんですよ。色んな広がりがあって。
小川:聴いてくれた人が色んな解釈をしてくれると嬉しいよね。人それぞれ考え方や価値観なんて様々だし、自由に聴いて考えて楽しんで欲しいね。
森:どんな解釈をしてもらっても全部正解だし。でも自分の中には正解があるし。みんなに頼りきって訳の分からないことばかり書いているつもりはないです(笑)。
──以前からあったという5曲目「R25」はどんな曲でしょうか?
森:これは2年前からあった曲ですね。今のメンバーと船に乗って目的地に進む時にその船が沈んでしまったとしたら仕方のないことだなって。それ以上良い船は他の人じゃ作れないし、これで沈むということは、何をやっても沈むんだということで、沈んだ時は泳いでいきましょうねと自分なりの前向きなメッセージが込められていますね(笑)。今一番信用している人と一緒にやることが一番上手くいくという曲ですね。