Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー宮本浩史[東映アニメーション株式会社](Rooftop2014年6月号)

作画アニメの表現を取り込んだこれからのCGアニメ

2014.06.02

 『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY』『プリキュアシリーズ』『仮面ライダーシリーズ』と、その高いクオリティーで業界からも注目されている東映アニメーション株式会社 デジタル映像部。その中で一翼を担う"宮本浩史"。日本のアニメの歴史を黎明期から支え、今なお進化し続ける同社はどのように新しい分野を開拓していくのか。第一線でリードする一人、宮本氏はどのように3DCGを取り入れ、これから発展させていくのか。注目のクリエイターに迫る。(interview:柏木 聡/Asagaya / Loft A)

アニメーションという表現方法

──3DCGのお仕事をされていますが、2Dアニメは考えられなかったんですか。

宮本:新卒で入ったのがスクエアエニックスというゲーム会社で、その頃はアニメに関してあまり興味がありませんでした。そこに元々アニメーターをされていた方がいて、アニメ会社の話をたくさん聞かせて頂いていて、面白そうだと感じたのでアニメ業界に来たという経緯です。見るようになったのは、アニメに関わるようになってからです。

──ゲームとアニメはかなり違うと思いますが、すぐに馴染めました?

宮本:文化も表現方法もかなり違ったので、そのギャップは当時感じていました。

──東映アニメーションに来るきっかけは何だったんですか。

宮本:以前、所属していたProduction I.Gでの作品を東映アニメーションにも制作で参加してもらっていて、その頃につながりができました。その後もお仕事を頂いていた流れもあり、誘って頂いたのがきっかけです。

──東映アニメーションの3D作品は、クオリティーの高さが話題になっていますよね。

宮本:素直に嬉しいですね。ちょうど本格的なインフラ整備も同時期に始まった時で、『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY』でも、それをうまく活かすことができました。そこは強みなのかなと思います。

──東映アニメーションで一番最初に携わった作品は何ですか。

宮本:最初から『星矢』ですね。

──『星矢』と言えばファンも多い作品ですが、どのような点を心がけて制作されたんですか。

宮本:原作で大きな方向性は見えていたので、それを元にしました。監督の“さとうけいいち”さんのやりたいことが「根幹のテーマを元に新しく構築する」ということで、象徴的な部分を崩さずに表現することを心がけました。

──確かに、原作の持つ良さが損なわれずに表現されていますね。

宮本:私自身、一番テーマにしているところです。日本は2D・3Dそれぞれ独自の文化があり、分断されていました。今は2Dアニメの良さを学ぼうという流れが出てきています。アニメの根幹の部分、キャラクターの感情表現や格好良い・可愛いという大事な部分を誤魔化さずに向き合っていける流れが出てきています。

──特に『星矢』は表情にこだわりがあるということですが。

宮本:監督がアニメ寄りの表情にしたいとおっしゃられていて、仕組みから作っていきました。その技術は他の作品でも互換できるようにサイクルができています。

──まさに二人三脚で作られていったわけですね。さらに『星矢』の魅力のひとつにクロスがありますが、どのようなこだわりがありますか。

宮本:3Dの魅力がハイライト表現だと思っているんです。面や角の取り方で格好良く見えるデザインがあるので、そこはかなり意識して構築していきました。

──『仮面ライダー鎧武』にも携わられてますよね。今回のスーツは『星矢』のクロスに近いように感じてます。アニメと実写で違いがありますか。

宮本:実物があるかないかという点が一番大きいですね。『ライダー』に関しては写真があるので、実際のものをなぞることができるんです。ただ、コンセプトモデラーと呼ばれる人たちがやられているデザイン込みでの作業となると、難易度は上がります。他に違うのは見せ方ですね。格好良く見せる・可愛く見せるというのは、トレースでできるわけではないですから。初めて『プリキュア』に携わった時は、全く通用しませんでした。

──そういった意味では、カメラワークやライティングなども注意しないといけないですね。

宮本:特に『ハピネスチャージプリキュア!』のEDは後半パートで積極的にライティングを入れて演出をしていったので、いろいろと学ぶべきことは多かったなと感じました。

──3D技術ですとモーションキャプチャーが特徴的なもののひとつだと思いますが、どのように利用されてますか。

宮本:キャプチャーを使うと演技の統一につながるので、使い方次第で活きてくる技術だと思っています。『星矢』では要所で使い分けました。ただ、『プリキュア』EDはほとんどアニメーターの演出です(笑)。

──アニメっぽさを出すための表現の仕方によって、腕を大きくしたりなどキャラクターのフォルムを変えることもあるということですが。

宮本:アニメ会社は当たり前のようにやってますね。『星矢』では少ないですが、『プリキュア』はかなりやってます。

──『星矢』は実写寄りの演技なんですか。

宮本:アニメーション的な表現も取り入れているんですが、『星矢』では物理シミュレーション【註1】をかなり取り入れているんです。その分リアルな表現ができましたが、制限が出たところもあります。逆に『プリキュア』はそういった制限がなかったのでアニメーターは大喜びしていて、やっぱりやりたかったんだなとは思いました(笑)。

──3Dだからできることというのはありますか。

宮本:素材ごとの質感を複雑に表現できることです。『星矢』は3Dでやることが前提だったので、質感の多様化にもこだわってますね。

──そういった意味でも劇場の大画面で体感してということですね。

宮本:そうですね。キャラクターの表情や見せ方も含めて見て頂きたいです。

──作品が変わりますが、東映アニメーションの3Dということですと今期の『ハピネスチャージプリキュア!』はバンク【註2】でも3Dを多用されていますが、どういった理由で?

宮本:シリーズディレクター【註3】の長峯達也さんは積極的に取り入れていこうという考えを持ってくれている方で、「ここで3Dを使えない?」という提案をどんどん頂いています。

──3Dに関してアレルギーのような反感はなかったんですか。

宮本:東映アニメーションではないですね。逆に認めてくれてると感じています。スタッフ同士の仲も良く、良い共存関係が築けてると思っています。

 

聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY

平成26年6月21日全国ロードショー
劇場窓口にて(一部劇場除く)プレゼント付き前売り券発売中
前売り券料金(税込):一般 1,300円/中学生・小人・幼児 800円

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