Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー大川竜弥(32歳・無職)

無職の履歴書

2014.03.19

なんとかなるんじゃないですかね

――無職歴2年になる今、不安はあったりしますか?

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大川 いやあ、今までもっと不安なことがあったんで、もうそんな気にしないですね。ライブハウス時代の、働いても働いてもお金にならないっていう不安の方が精神的にも肉体的にも金銭的にも辛かったので、それに比べたら何とかなるでしょって。あと、自分がいけなかったんですけど、当時は余り誰かに相談をしなかったんです。ネットもそんな使ってなかったですし、すごく狭い世界にいたから身の回りにいる人しか話し相手や相談相手がいなかったんですね。でも今は幸い、いろんな人に会えるじゃないですか。ネット上でもそうですし、いろんなところに顔を出していろんな人に会える機会があるから、何かあれば誰かに頼れる。だからそんなに、精神的な不安感はないですね。

――以前イベントで仰ってましたけど、人と会うことに貪欲ですよね。

大川 そんな積極的でもないですけどね。でも、自分の写真素材も結局人に会わないと使ってもらえないんですよ。例えば僕が地方にいたら、今ほど普及してないと思うんです。東京にいて、それこそ中川淳一郎さんとかお世話になってますけど、ニュースサイトの編集者として写真を大きく使ってくれる人に実際会うとか、そういうことが大事だなって思ってます。あとはイベント出演もライターの仕事も、全部人の紹介で来るんです。ネットを見て依頼が来るのは本当にごく一部で。なので自分の足を動かさないと話は来ない。そういう意味ではどんどんいろんなところに行かないといけないなとは思いますね。

――ご自分の人生を振り返って、組織に所属していたときと今を比べるとどちらが楽しいですか?

大川 今の方が全然楽しいですよ。

――どんなところが楽しいですか?

大川 身軽じゃないですか。面白いことがあったらすぐ行けますし。会社に勤めながら今と同じようなことをやっていたら、明日こういうことあるんですけど出てもらえませんかって言われても、出られないじゃないですか。会社にいて収入が安定してて自由に動けないよりも、ちょっと収入が不安定だけどいろんなチャンスがある方が楽しいですね。選択肢が多いというか。あと、身軽っていうイメージが大事なんです。あの人すぐ動けるからお願いしよう、っていう。金額とか内容を全く見ない訳じゃないですけど、基本的に仕事は断りませんし、そういう使い易いっていうイメージが大事なのかなって。

――何でも屋さんみたいなイメージ?

大川 できることは何でもやりますね。デザインしろって言われてもできないですけど、何か書いてくれとか喋ってくれとかモデルやってくれだったら何とかなるかなって。

――今後、更に無職の人が増えていくと思われます。

大川 そういう人に勇気を与えたいっていうのはありますよね。僕を見て、ああいう人がいるんだから別にいいんじゃないかって思って欲しい。

――無職でいるうえでのコツは?

大川 唯一のコツは、精神的にタフであることじゃないですかね。精神的に落ちて「どうしよう…」ってなるのは良くないじゃないですか。仮にそうなったとしても表に出さなければ良いと思うんですけど。だからネット上でも絶対ネガティブなことは言わないですし、広く何でも受け入れる姿勢を作っておけば何とかなるんじゃないかなって。
 もし地方にいたら日雇いのバイトもないかもしれないですけど、都心にいる分には、全く仕事がないっていうことは、選ばなければないと思うんですね。地方の人からはそういった仕事もないとか人と会うチャンスもないって聞きますけど、だったらこっちに出てくれば良いですし。

――お話を伺っていると、無職であることにもスキルが必要なんだなと思えてきます。

大川 以前開催された『無職説明会』(2013年5月4日に阿佐ヶ谷ロフトAで開催)のレポートが日本経済新聞の電子版に掲載されたときにも、そういうツイートを見かけましたね。まあ自分ではよく分からないですけど、特にスキルは要らないと思いますよ。ただお金を稼ぐ力は必要じゃないですか。それこそネットで何かやって毎月コツコツお金が入るでも良いですし。動かないと何もできないですよね。

――でも大川さんって、余りお金の匂いが余りしません。

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大川 いやらしい稼ぎ方をしない、っていうのは意識してますね。例えば、最近ちょっと有名になるとセミナーをやったりするじゃないですか。デザインとか開発とか誰でも応用が利くことで、ある程度単価の高いセミナーをやるのは良いと思うんですけど、「自由に生きる方法」とかそういう内容で1人数万円とかとったりするのは、僕は詐欺だと思っていて。もちろん「こういう生き方を僕はしてきて、今は自由に生きてます。僕の話は参考程度に皆さん考えてくださいね」っていうトークイベントをやって1500円とか2000円取るのは、エンターテインメントのひとつとして全然良いと思うんですよ。ただ、確実に応用できない話をするだけで数万円とか取るのは……まあ宗教ビジネスみたいなのがいけないとは言わないですけど、それはちょっと僕はできないかなって。インチキ臭いことはやりたくないんですよ。……まあ、フリー素材ってだけで充分インチキ臭いかもしれませんけど、商売としてインチキ臭いことはやりたくないなって。それやっちゃうと後がないじゃないですか。人気があるときは人が来るかもしれないけど、ちょっと陰りが見えてきたら誰も来なくなっちゃいますし。それに来てくれる人に申し訳ないですよね。確実に持って帰ってもらえるものがあるなら、例えば3万円でも良いですけど、3万円稼ぐのって大変じゃないですか。少なくともただ喋って、何か資料見せるくらいじゃ、その労力に見合う分は出せないんじゃないかなって思いますね。
 あと、同業の人に認めてもらえないようなことはやりたくないんです。例えば同じ様に文章書いたりイベントやったりしてる人に、ああいうやり方良いよねって思われたいじゃないですか。あいつセコく稼いでるなって思われたら長く続かないと思うんですよ。

――モデルの次の展開は考えられているんですか?

大川 次はやっぱりテレビとかラジオとか、いわゆる一般的なメディアに出たいですね。僕、ネットは有能ではあると思うんですけど万能ではないと思っていて。結局ごく一部の人しか使ってないじゃないですか。この業界にいると皆がツイッターやったりフェイスブックやったりいろんなサイト見てるって思いますけど、同級生と集まったりすると半分以上はまだガラケーを使っていて、ネットなんてほとんど見ないって人がなんだかんだ多いので、そうなるともうちょっと知名度をあげるって意味では、一般的なテレビとかラジオとか雑誌とか出ないといけないんじゃないかなって思いますね。

――いわゆる「お茶の間」ですね。それはまたいきなりハードルが高くなる気もしますが。

大川 まあ、なんとかなるんじゃないですかね。

――最終的にはタレントを目指している?

大川 そういう風にしていかないと生き残る道がないというか。何か技術さえあれば他の道もあるんでしょうけど、僕にはありませんし。あと僕は、喋って書ければ何とかなるんじゃないかと思っているので、そこを突き進めていきたいなって。

――ちなみに高校卒業後に抱いていた映像や脚本の仕事に就きたいという夢は?

大川 脚本とはちょっと違うかもしれないですけど、道筋を描いてそれを実現させるっていう意味では、今やっていることに若干繋がってるのかなって思います。

――なるほど! では最後になりますが、そろそろ新生活の季節ということもありますので、今から大川さんと同じような道を歩んでいこうと思う若者に何かアドバイスをお願いします!

大川 一通り苦労した方が良いんじゃないですかね。高校や大学を出てすぐ僕と同じようなことをしたら、やっぱり上手くいかないと思うんです。形は違えどネットでちょっと面白いことやってる人たちって、だいたい経歴に一癖あるじゃないですか。そういう経歴が大事で、いきなりパパッとやっても後ろにストーリーがないと薄っぺらくなっちゃう。例えば今、僕が著名な人に会っても変に物怖じせずやっていけるのは、昔サスケさんの仕事とかで芸能の世界を見てきた経験があるからなんです。
 あと、例えば中川淳一郎さんも家入一真さんも、裏を見ればごく普通で謙虚ですよね。僕も阿佐ヶ谷ロフトとかに出たときは、まず来たらお店の方に挨拶しますし、帰るときも挨拶しますし、そういったことの積み重ねが大事というか。それも自分がライブハウスで働いていた時の経験から来たことなんですよね。
 まあ、売れてる人ほど謙虚じゃないですか。現場の世界でそれをよく見てきたので。イベントをやって集客があっても、お店の人に好かれなければチャンスもないでしょうし。イベントって、場所を提供してくれる方がいて、お客さんがいて、成り立つものじゃないですか。皆に満足してもらいたいので。もちろんお金がいっぱいもらえれば嬉しいですけど。その大前提として。

――そういったいろいろなことも、ただ漫然と時間を過ごしてしまったら気付かないことですよね。

大川 ちゃんと一個一個考えないといけないですよね。僕は家が自営業で、小学生の頃から働くってことに関しては考えさせられていましたし、お金の大事さも分かるじゃないですか。だからちょっとした仕事でも手を抜けないというか、中途半端なことはできないなって思う。一個一個やっていかないとチャンスは来ないのは分かってるので、ちゃんとしないといけないですよね。表面上は不真面目でも、真面目に生きないと。

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