今年で結成10周年を迎えるDr.DOWNER。これまでにメンバーチェンジやパートチェンジ等を経て活動してきた彼らが、2014年2月16日に、自身初となるワンマンライブ「爆裂地下室GIG」を下北沢SHELTERで決行する。これまでの活動について、今後の展望、楽曲製作の課程、そしてワンマンへの意気込みを猪股ヨウスケ(Gu.Vo)に訊いた。今回は同郷である下北沢SHELTER店長・義村がインタビューを行い、何度も地元話へ脱線したが、猪股氏の人柄を伺うことができ、ワンマンのステージでどの様なパフォーマンスを見せるのかますます楽しみになってきた。(interview:義村智秋 構成:上里環)
Dr.DOWNERを辞める覚悟で、ギターボーカルに
──バンドは結成10年を迎え、今回2/16に下北沢SHELTERで初ワンマンライブが開催されます。この10年の間に猪股さんはベースボーカルからギターボーカルへパートチェンジされてますが、きっかけは何だったんですか?
猪股:当時は自分のバンドの活動が退屈になり始めていて、他のバンドのサポートもやっていたし、Dr.DOWNERは辞めようと思ってました。それでも違うやり方を模索していた時に、「自分がギターボーカルになってダメだったら諦めよう」という考えに至ったんです。
── 特に発表もなかったですけど、バンドにとって今後を左右する大きな決断だったんですね。
猪股:これによってバンドがうまくいく自信もなかったから、パートチェンジをあまり大っぴらにはしなかったけどね。ある日のスタジオで突然星野(Bass)に「俺もうベース弾きたくないから頼むわ」って言って。星野はかなり戸惑っていたんです。それによって、これまでの曲も全然変わったし、また一から新しいバンドを始める感覚でした。
繰り返される「ゼンモンドー」と地元への愛
── ボーカルのパートチェンジは楽曲制作にも影響するとは思うのですが、いつもどのように行なっているのですか?
猪股:何かが決まらないとなかなか動きだせないタイプなんです。ライブやリリースが決ってからフル稼働という感じで。そのスイッチが入れば自分でも止まらないぐらいで。スタジオに籠って一気に2、30曲まとめて作ります。
── そんなに作るんですね。で、そこから選んで…という感じですか?
猪股:勢いづいてまとめて作るんですけど…、まぁ、「最初のがいいよね」という結論に落ち着くことはよくありますね。
── その方が納得いくこともありますよね。歌詞に関してはどうですか?
猪股:だいたい夜中に泥酔して書くパターンが多くて。家帰って、日記みたいな感覚で「今日はノートを開きながら酒飲むか」ってなりますね。起きてから読み直すと解読不能な字も結構あったりしますが、生かせるフレーズもあるので、酔っ払っているときのテンションを維持しつつ、そのあと修正していきます。
── その感じは確かに所々見受けられました(笑)。これまでのDr.DOWNERの曲は、歌詞の中で「ゼンモンドー」という言葉が多用されているように感じましたが、特別な思い入れがあるのでしょうか?
猪股:たまたま出会った言葉なんですが、言い易いんですよね。これは仏教用語で「答えのない問いを永遠に繰り返して真実を見つける」みたいな意味で。音楽活動をしているとそんなことを思う時が多々あるので、自然とよく使っているんだと思います。自分はバンドがやりたいのか、音楽がやりたいのか、はたまたバンドを通して他の人と“何か”をしたいだけなんじゃないか、とか。ライブハウスのブッキングでもそうなんじゃない?
── 確かにそうですねー。自分も本当にバンドやハコのためを思ってブッキングできているのだろうか、と悩む事はよくありますね。また、歌詞からは“地元への愛”も伝わりますね。
猪股:散歩が趣味なんですよ。定番の散歩コースがあって、天王町から石川町まで…(この後、猪股氏の散歩コースについて同郷の義村と地元話に花が咲き話は大きく脱線しました。個人名が頻出しましたので、割愛させていただきます)。飲みながら地元を散歩して、そのまま家に帰って歌詞を書くことが多いので、反映はされていると思います。
これまでの集大成であり、これからの展望を担う作品『幻想のマボロシ』
── Dr.DOWNERはこれまでにアルバムを3枚リリースしていて、その中でも最新作『幻想のマボロシ』(2013年7月3日リリース)が僕はすごく好きな作品なんですけど、猪股さんにとってはどのような位置づけの作品なんでしょうか?
猪股:3年ぐらい前にベースボーカルからギターボーカルになって、気持ちを新たにギター・ボーカル・シンガーソングライターとして色々頑張ってきて、その集大成とも言えるようなアルバムになったと思います。これまでのように“テンションで押し切る”のではなく、ちゃんと“音楽”として聴かせられるようなものを意識して作りました。
── 歌詞がしっかり届いてくるというか、歌を全面に出した仕上がりになっていますね。
猪股:作り始める前にプロデューサーの後藤さん(ASIAN KUNG-FU GENERATION)に「お前が持ってるモノ全部出せ」と言われ、「最初から俺もそのつもりだけど」という覚悟で挑みました。その結果、勢いだけじゃないものを作れたと思ってます。
── やはりバンドで活動していくうえで、後藤さんからの影響は感じていますか?
猪股:なにしろ有名人ですからね。それまでのレーベルcosmicnoteの宇宙さんとやってたときは主にハードコア界隈の人たちに知られていったけど、後藤さんになってからはこれまでとは違うジャンルの人たちにもより広くの人に認知されていってる感じがあります。
── なるほど。確かにライブでの対バンの幅も広がりましたよね。
猪股:そうなんです。その新しいお客さんたちに今まで対バンしてきたようなアンダーグラウンドシーンを見せることができたらいいですね。まだ知らない世界を見て欲しいというか…。見て、合わなければダメでもいいんだけど、見ないうちに終わってしまうと残念だから。その垣根をなくしていくきっかけになれたらいいな、と思いながらやっています。
Dr.DOWNER初ワンマン「爆裂地下室GIG」
── 今日のインタビューで地元愛も充分感じましたけど、今回は下北沢にあるSHELTERでDr.DOWNER初となるワンマンをやって頂きます。SHELTERでの開催にはどのような経緯があったのでしょうか。
猪股:バンドを始めて10年経つし、そろそろワンマンをやってもいいのかなと思って。やるならまさに「今でしょ!」ってところで踏み切りました。せっかくやるのなら下北沢にも他にはライブハウスがあるけれど、義村くんはF.A.D.で働いていた時代から面識があるから、地元でのつながりもあるSHELTERが良かったので、選びました。
── ありがとうございます。それではワンマンに向けての意気込みをお願いします。
猪股:とにかくソールドアウトしたいです。これまで自分たちがやってきたような、ライブハウスに慣れてるバンドや、お客さんの感覚だと「当日行ってもなんとかなるだろう」的なノリで人がワッときたりするんですが、これまでギリギリソールドアウトはなかったので。状況の変わった今だからこそ、ソールドアウトが目標です!
── ありがとうございます。ワンマンのタイトルが「爆裂地下室GIG」ですもんね(笑)!
猪股:そう。ソールドアウトが目標と言いながら、いかにもライブハウスっぽい名前だよね(苦笑)。何年か前にWALLで企画したときの名前なんです。今回、公式と別にもう一つ著作権上公表出来ないデザインのフライヤーも個人的に撒いてるんだけど、そんなことも含めてアンダーグラウンドとオーバーグラウンドの垣根をなくしていきたいんですよね。