新春のロフトの名物ライブと言えば、今年で6回目となる「(有)さるハゲロックフェスティバル」だ。しりあがり寿の奇画(プロデュース)と少年王者舘・天野天街による幻演(演出)による創造と混沌の祭典。今回は「宇宙旅行」というテーマを掲げ、人類の未来と夢を薔薇色の科学に託して旅立つ、一大スペクタクルが展開する。新宿ロフトの限られた空間に4つのステージを設け、パラレルワールドのように繰り広げられる出来事に、あなたもきっと幻惑されてしまうはずだ。ROOFTOPではいつものように幹事に集まってもらい開催直前座談会を行った。(構成:加藤梅造)
寿 まあ、やってることはあまり変わらないので、以前の原稿をそのまま載せてもらってもいいですよ(笑)。
河井 いやいや、変わった所もありますから。まず一昨年からテーマ性を設けるようになりました。
──2012年は「翼」でしたよね。
寿 そう。開催日の2週間前に急に思いついて。
河井 急すぎてお客さんはもちろん出演者にすら伝わってなかった。
──それで去年(2013年)のテーマは「不老不死」でした。
河井 はい。イベント自体はテーマに沿ってうまくいったんですが、1つ反省点があって。
寿 ロックフェスとしてはやはり毎回テーマを設けて、その時代に向けたメッセージを送らなければいけないと思い、それで誰もが願っているだろう「不老不死」をテーマにしたんです。でもやってみたら不老不死ってなんか暗いなあと。いいテーマだと思ったんだけど…。
河井 まあ不老不死って、言ってみれば現状維持ってことですから。
寿 だから今年は思い切って明るいテーマでいこうと。それで「宇宙旅行」にしました。ポジティブなイメージを出すというのが1つと、もう1つはこれから理系の人と一緒にやっていかないと日本はダメだと思ったんです。それこそ原発問題とかもひっくるめて。いくら文系が騒いでいても何も解決しない。理系と文系がいかに融合するかが重要なテーマではないかと。だから今年は「理系ロックフェス」です! テクノロジーでブレイクスルーするしかない! つまりそれは…、もういいか(笑)。
──ちなみに、しりあがりさん自身は文系側ですよね。
寿 もちろん。数学とか全然だめだった。文系と違い、理系ってちゃんと方法論があるじゃないですか。仮説を立てて、実験をして証明するという。
河井 理系は揺るがない所がありますよね。寄って立つものがはっきりしている。
寿 その点、文系はダメだね。ボーっとしてて。そういうフニャフニャしたものをもっと覚醒させないと! といって大したことはやらないんだけど(笑)。
河井 具体的に何をやるってわけでもない。
寿 終わってみたらもっとボーっとしてたりしてね。
●超ひも理論とか相対性理論とか
河井 あと、今回もメインビジュアルを作ってくれた天野天街さんが、イラストを作った後に「しまった!」って言ったんです。「Saru Fesだから略すと“S.F.”だよ!」って。それで後からSFのロゴマークを作ったんです。
──なるほど、さるフェスは最初からSFだったんですね! また新たな謎解きが…。
寿 そう。これってすごいことかもね? そうでもないか(笑)。
河井 いやすごいですよ。細かいことですが。
寿 フェスが終わった頃にちょっとでも宇宙の謎が垣間見えるといいなあ。今回、理系枠としては3つあるんです。物理学者の菊池誠さんによるサイエンティッシモと、ロケット開発のなつのロケット団(牧野一憲、八谷和彦)、出渕裕さん&とり・みきさんの総統&名誉臣民ズ。まあ最後のは理系と言っていいかどうか微妙ですが(笑)。ちゃんと探せば他にも理系の人いそうだけど。いないかな?
河井 いま気づきましたが、パスカルズって理系っぽくないですか?
寿 ホントだ。いるじゃない。あと金星ダイヤモンドも金星だし、ダイヤモンドもなんとなく理系?
河井 ダイヤモンドは鉱物だから理系ですよ!
寿 水中、それは苦しいも水中じゃなくて宇宙にしてくれないかな。宇宙、それは苦しい。もうみんな宇宙って付けようよ。スペース・バナナシスターズとかさ。
──宇宙剛連合とか、強そうですね。
ハヤマ あ…、そういえば僕の兄貴が数学の博士です。
寿 えっ!そうなの。もっと早く言ってよ!
ハヤマ 研究所で働いていて、昔から数式だけあってまだ証明されてない難問とかを研究しているんです。
竹内 フェルマーの最終定理とかですね。
寿 そのフェルマーをさるフェスで解こうよ! あと、超ひも理論とかも。
河井 では、超ひも理論とか相対性理論とか、そういうアカデミックな理論も今回は盛り込んでいきましょう。
──もはやロックフェスなのかどうか分かりませんが…。
寿 ものすごい早弾きしたら相対性理論でギターがちょっと短くなるとか。早く弾いたら曲が短くなった!とか…そりゃ当たり前か(笑)。
(写真)しりあがり寿率いる宴会パンクバンド「親戚」。代表曲は「オヤジの小言、その1」「オヤジの小言、その2」「オヤジの小言、その3」
●ロック的な魂のフェスティバル
──名物オリジナルフードコーナーも楽しみの1つですが、今回も「さるハゲカレー大会」で優勝した「母がほとんど作ったドライカレー」が出店するということで。
寿 まあ罰ゲームですね。優勝したのに。今年は12種類のカレーがエントリーされてそれを勝ち抜いたカレーだからかなり美味しいですよ。
──他にもカレー大会からはマサラ・スイーツなるものも出店されるんですね。
竹内 クッキーやムースなどが出ます。
河井 自己表現と言えばバンド、という安易な方法論に警鐘を鳴らしたいという意味もあるんです(笑)。
寿 ロックの良いところって、いろんなものを取り入れて形を変えながら進んでいくことじゃないですか。だからさるフェスは、音楽のロックのフェスじゃなくて、ロック的な魂のフェスティバルなんです!
──おお!ロックを背負うような発言が出ましたね。
寿 ごめんなさい、降ろします。でも決して珍奇なものを狙っているわけではなく、一番楽しいって何だろう?と考えた末、ロックもあり、演劇もあり、手品もあり、カレーもあり、しかもお酒もあっての13時間。そういう楽しさのパッケージを試行錯誤して作っています。
河井 最近はロフトのスタッフもこちらの意図を汲んでやってくれるのでありがたいです。
寿 こっちから言う前に開催日が決まったりとか(笑)。
──止めるに止めれないじゃないですか。
河井 ロフトじゃなくてもいいから続けて下さいって言われました。
寿 でも毎回毎回、出たいって方が多いのが嬉しいですね。今回も時間の都合で出ていただけない人がたくさんいて。もう、いつ2デイズになるか心配です(笑)。
──2デイズだと体力が持つか心配ですよね。毎年、終わった後に幹事が倒れるし。
寿 体を蝕むフェスだからな。
河井 不老不死なんて言ってる場合じゃないです。