Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューbloodthirsty butchers(Rooftop2013年11月号)

瑞々しくも儚く美しい“青春”というココロノ在り方

2013.11.01

穴に合うネジは自分たちで作るしかない

──今度のアルバムはグッと真に迫る音像でありながら薄い膜が間に貼ってあるようでもあり、迸る熱量を感じる一方で清涼感を全体的に感じたり、如何にもブッチャーズらしい決して一筋縄では行かない作品だと思うんです。それを吉村さん自ら「最高傑作の音像」と語っていたのは、皆さんとエンジニアの方々が吉村さんの意図するところを適宜に汲み取っていたからこそなのでは?
小松:吉村さんが理想とする音をエンジニアに伝えるのが凄く難しいんですよ。吉村さんの言葉を額面通り受け取っても微妙にニュアンスが違ったりするし、清志君との呼吸が合うまで凄く時間が掛かるんです。清志君は清志君でアーティスティックなところがあるし、吉村さんと違う方向へ行くと戻ってくるまでが大変なんですよね。こっちはその吉村さんと清志君のせめぎ合いみたいなものをただ見守るしかないんです。これは俺たちにも言えることなんですけど、吉村さんの言ってることが全然分からない時もあるし、多分こういうことを言いたいんだろうなって汲み取る時もあって、それをそのままやればいいのかと言えばそうでもない。吉村さんはずっと悶々としたままだけど、その意向を推し量る俺たちまでもが悶々としちゃうんです(笑)。まぁ、仕方ない面もありますよ。鋲付きベルトの鋲をどこかから買ってくるんじゃなくて、どうやってその鋲を作るかってところから始めるようなバンドですからね、ブッチャーズは。
──「そこら辺にあるようなパーツを工場で組み合わせただけみたいな音楽が多いけど、ブッチャーズはネジ1本から自分たちで作ってるっていう感じ」とかつてアイゴン(會田茂一)さんも言ってましたよね。
小松:既製品のネジじゃダメなんですよ。その穴に合うネジは自分たちで作るしかないんです。
──それにしても、言わずもがなですが収録された全10曲とその構成は掛け値なしに素晴らしいですね。どの曲も瑞々しく冗長なところが皆無で、淀みなく流れていく構成にも必然性を感じます。
田渕:それは前半の畳み掛けるような流れの印象があるのかもしれないですね。
──「アンニュイ」のようにアンサンブルと歌をタイトに聴かせる短い曲で締めるのも粋に感じました。
田渕:「アンニュイ」は歌がちょっとしかありませんからね。構成に関して言うと、曲を飛ばすと“マイナスカウント”が聴けなくなっちゃうんですよ。
小松:「アンニュイ」は、曲としては割と昔のブッチャーズっぽいんですよね。
射守矢:吉村はああいうフレーズの曲が好きなんだよ。キュッとした感じって言うか、ちょっとスカスカな感じって言うかさ。昔で言えば「ROOM」みたいな曲。それをあえてやらないようにしてた節があると俺は感じてた。いっときそういう曲が溢れた時期があったから、そこからあえて離れたんじゃないかな。だから俺がフレーズの曲を出しても吉村は「うーん、ちょっと違うな」って感じだったんだけど、それは意図的な判断だった気がする。
小松:吉村さんの唄い方も、「アンニュイ」だけ真っ直ぐに張り上げて唄ってますよね。メロディが揺れ動くような唄い方じゃなくて、ワンコードのまま行くって言うか。それが昔のブッチャーズっぽいんですよ。
──その辺りが“まだまだアルヨハードコア!”だったんですかね。『〜無題』の時は「自分の曲が多くて“射守矢色”が出せなかった」と吉村さんが話していましたけど、今回は射守矢さん主体の曲があったんですか。
射守矢:いや、特にないよ。みんながみんなどっぷり曲作りをしたんじゃないかな。ここ数年はずっと俺が主体って曲はないから。
田渕:主体って言うか、誰のアイディアを元にしていくかっていう曲の作り方なんです。それで言うと、インストの「Techno! chidoriashi」は射守矢さんのアイディアから始まった曲ですね。
射守矢:3拍子で回していく6拍くらいのフレーズがあって、それを4拍子で追いかけていって、どこかでドッキングしたら面白いなくらいの発想だったんだけどね。採用されなくても別にいいかなって思ってたんだけど、インストだったからなのか、どうやら“予選落ち”は免れたみたいだね(笑)。
──なぜに“Techno”なのかは、吉村さんのみぞ知るですか?
射守矢:うん、さっぱり分からない。
田渕:“chidoriashi”とセットなんじゃないですかね。この2つの単語が対比するものなのかな? どうなんだろう?(笑)
──ひさ子さんのアイディアが元になった曲というのは?
田渕:もうよく覚えてないですね。「アイディアを持ってきたんです!」みたいなことはなくて、誰かがスタジオでポロンと弾いてるフレーズを吉村さんが「それいいね」って採用するんですよ。自分の場合はそうですね。「それ、もう1回弾いてみて」みたいな感じで。

バンドを続けてきた中で大きな括りとなる作品

──「ハレルヤ」のサンバのように跳ねるビートは、ブッチャーズにしては一風変わった試みのように感じましたが。
田渕:サンバ!?(笑) そういう捉え方はしてなかったですね。
射守矢:ずっと16ビートだからかな? まぁ、最後までドコドコドコドコ鳴ってる珍しい曲ではあるよね。フレーズを聴いて小松が当てたドラムが凄く良くて採用になったんじゃないかな。ただ、ずっと16のままっていうのもさ、「俺、ベースだよ?」って思わず言いたくなったよね(笑)。単音で16を弾くのは別にいいんだけど、これが和音だったら聴きづらいだろうなと思って、それをどうやれば聴きやすくなるのかを俺なりに考えたんだよね。
小松:ドラムで16をやるってことより、ベースで16をやるっていうのがまず珍しいんじゃないかな。ドラムの16なら今までも「KARASU」とか「nagisanite」みたいな曲がありましたからね。ベースが16でドゥグドゥグドゥグ…っていうのはあまりなかったし、俺の中ではレッチリっぽいイメージがあったんですよ。
射守矢:俺はそれより前の世代でKISSを連想したけどね(笑)。
──「デストロイヤー」は吉村さんが楽曲完成時に「史上最高にポップな曲!」と語っていたそうですが、ブッチャーズの音楽は一貫してポップな親しみやすさがあると思うんです。強いて言えば「デストロイヤー」は史上最高に炭酸のシュワシュワ感があると言うか、この尋常ならざるキラッキラ感は一体何なんだ!? という印象なんですよね。
射守矢:まぁ、一口にポップと言ってもいろんな捉え方があるだろうし、吉村にとって何がポップなのかは分からないよね。
──それを言うなら、『kocorono 完全盤』に収録された「8月」の別バージョンが「俺にとってのサイケ」と吉村さんから聞いたことがあるんですけど、それも一般的な意味でのサイケとは違いますよね。
射守矢:あえて言えば、ハードコアな部分を感じ取ってもらうためのポップと同義語なのかな。
──『youth(青春)』というアルバム・タイトルはどんな捉え方をしていますか。「youth〜」という楽曲はありつつも、僕は去りゆく夏の夕暮れ感が漂う「デストロイヤー」の世界観がそこに投影されているように思えるのですが。
射守矢:どうなんだろうね。アルバムのタイトルを決めたのは多分マスタリングの時だったと思うんだけど、曲のタイトルをそのままアルバムのタイトルにしたということは、それだけ「youth〜」という曲に重きを置いたってことなのかな。そこにカッコで“青春”と付けた真意は今となっては分からないけど、吉村が音楽と出会ってから今までずっとバンドをやり続けてきた中で大きな括りとなる作品が出来たことの自負があったのかもしれないね。集大成って言うと大げさだけどさ。ホントのところは分からないよ? だって、俺がそんなことを言ったところで「そんなこと全然考えてねぇよ!」とか言われそうでしょ?(笑)
──確かに(笑)。4人がライブで演奏した最後の曲が「デストロイヤー」だったなんて出来すぎた話にも思えますが、その曲を始め「サイダー」や「ディストーション」、「コリないメンメン」以外にも今回のアルバムの収録曲をライブで体感したかったですね。
射守矢:他の曲をライブでできないっていうのは非常に心苦しいよね。ずっといい感じで練習してたからさ。
──たとえば「レクエイム」の小松さんのダイナミックなドラムを聴くと、あれを生で聴きたかったなと心底思うんですよ。
小松:家にドラムセットを持ち込めるならいつでも叩きに行きますよ、迷惑でなければ(笑)。
──じゃあ、ギャラを貯金しておきます(笑)。もし「youth〜」をライブでやることがあったなら、「ocean」や「燃える、想い」の系譜に連なる曲になったのでは?
射守矢:ね。ライブでやってみたかったよ。
小松:でも、意外と手こずったりして(笑)。「アンニュイ」みたいな曲は意外とやるのが難しいと思いますよ。聴いた感じは昔みたいにストレートな曲だけど、実際に叩いてみると聴いた感じとはだいぶ違うから手こずりそうですね。「デストロイヤー」はスパン!と行くストレートさがあるけど、「アンニュイ」はそれとはまた違ったストレートさなんですよ。
──ジャケットの絵は、相反する色と力強い筆致で描かれた躍動感に満ち溢れた作品ですが、これはどなたが手がけたものなんですか。
射守矢:しょうぶ学園の濱田幹雄さんという人にお願いしたんだよね。去年の12月に鹿児島へ行った時、ライブの翌日に吉村がそのしょうぶ学園を訪問してさ。そこでいろんな作品を見て、次のCDのジャケットにしたいと考えたみたいだね。それで音源を先方に渡した上でジャケット用に描き下ろしてもらったんだよ。いわゆる抽象画だから、パッと見のイメージだけでもいろんな捉え方ができるんじゃないかな。

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youth(青春)

キングレコード KICS-1967
定価:3,000円(税込)
2013年11月14日(木)発売

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iTunesStoreで購入

<収録曲>
01. レクイエム
02. コリないメンメン
03. デストロイヤー
04. ディストーション
05. サイダー
06. Techno! chidoriashi
07. Goth
08. ハレルヤ
09. youth パラレルなユニゾン
10. アンニュイ

kocorono【アナログLP】

391tone NAS-2009〜10
定価:5,040円(税込)
1,000セット限定プレス/見開きダブルジャケット仕様/アナログLP180g重量盤(2枚組)/33 1/3rpm
2013年11月14日(木)発売
*ブッチャーズ レーベル「391tone」(www.391tone.com)限定発売
*限定盤となりますので、数量に達し次第販売終了となります。

<収録曲>
【side-A】
01. 2月 / february 親愛なるアレックスさんへ
02. 3月 / march 青空
03. 4月 / april「大人になんか解ってたまるものか!」
【side-B】
04. 5月 / may インスト
05. 6月 / june あめ, アメ, 雨
06. 7月 / july 心
【side-C】
07. august / 8月
08. 9月 / september ぼく
09. 10月 / october 黄昏
10. 11月 / november インスト
【side-D】
11. 12月 / december トウキョウ

bloodthirsty butchers『青春』

写真:菊池茂夫
SECRETA TRADES/disk union STBK-2
A4判/ハードカバー上製/272頁
定価:4,500円(税込)
2013年11月14日(木)発売

amazonで購入

写真家・菊池茂夫氏によるbloodthirsty butchers初の単独写真集。
1992年から2013年までに撮影された膨大な写真の中から、氏にとって思い入れ深い写真を吟味厳選してセレクト。

LIVE INFOライブ情報

吉村秀樹会
〜bloodthirsty butchers New ALBUM『youth(青春)』爆音試聴会〜

●2013年11月6日(水)愛知県:今池 HUCK FINN
OPEN 20:00〜midnight/入場無料
*アルバム試聴は21:00頃を予定しております。
【問い合わせ】HUCK FINN 052-733-8347

『youth(青春)』発売記念!! ドキュメンタリー映画「kocorono」劇場上映
東京都:吉祥寺バウスシアター爆音収穫祭
●2013年11月8日(金)18:30(終映予定 20:30)
チケット料金:前売1,300円/当日1,500円
*一夜限りの爆音上映/220席限定のプレミアムチケット
【問い合わせ】バウスシアター劇場窓口 0422-22-3555、boid通販

爆音演奏会
bloodthirsty butchers Live at FACTORY<Director's Cut>

●2013年11月14日(木)21:00〜23:00 ●2013年12月8日(日)20:00~22:00 フジテレビNEXTでOA【HD放送】
出演:bloodthirsty butchers(吉村秀樹/射守矢 雄/小松正宏/田渕ひさ子)
対談@FACTORY:井手大介/吉田 建/鈴木慶一/吉村由美/Bryan Burton-Lewis
愛情出演:綾小路 翔(氣志團)/片寄明人(Great 3)/岸田 繁(くるり)/ダイノジ/怒髪天/日高 央(THE STARBEMS)/山口 隆(サンボマスター)/吉野 寿(eastern youth)


吉村秀樹会
〜東北ライブハウス大作戦 TOUR〜

出演:日高 央(THE STARBEMS)/荒井岳史(the band apart)/五味岳久(LOSTAGE)
●2013年11月19日(火)宮城県:石巻BLUE RESISTANCE
OPEN 16:00〜START 19:00/チケット料金:前売&当日1,000円(ドリンク代別)
【問い合わせ】BLUE RESISTANCE 0222-98-5876
●2013年11月20日(水)岩手県:大船渡LIVEHOUSE FREAKS
OPEN 16:00〜START 19:00/チケット料金:前売&当日1,000円(ドリンク代別)
【問い合わせ】LIVEHOUSE FREAKS 0192-47-5552
●2013年11月21日(木)岩手県:宮古市KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
OPEN 16:00〜START 19:00/チケット料金:前売&当日1,000円(ドリンク代別)
【問い合わせ】KLUB COUNTER ACTION MIYAKO 0193-77-4567


bloodthirsty butchers写真集『青春』発売記念スライド&トークショー
“俺達のbloodthirsty butchers”

●2013年12月1日(日)東京都:UPLINK FACTORY
OPEN 19:30/START 20:00(開演時間は変更になる場合があります)
出演:菊地茂夫(写真家)/大谷ノブ彦(ダイノジ)/上原子友康(怒髪天)/中込智子(音楽ライター)
チケット料金:前売1,000円(ドリンク代別)
*11月20日(水)から12月3日(火)まで、UPLINK GALLERYにて「菊池茂夫写真展 bloodthirsty butchers『青春』」も開催します。
【問い合わせ】UPLINK 03-6825-5503

<小松正宏>
スペシャル GO-BANG'S ショー

●2013年12月4日(木)東京都:渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 18:30/START 19:30
出演:森若香織(vo, from GO-BANG'S)/白井良明(g)/會田茂一(g, from FOE)/佐藤研二(b, from FOE)/小松正宏(ds, from bloodthirsty butchers, FOE)/村原康介(key)/ゆうき(cho, from ダイナマイトしゃかりきサ〜カス)/たろう(cho, from ダイナマイトしゃかりきサ〜カス)
チケット料金:前売5,500円(自由席)、5,000円(立見)
【問い合わせ】duo MUSIC EXCHANGE 03-5459-8716

<射守矢 雄>
第32回 モールスまつり

●2013年12月6日(金)東京都:Shibuya O-nest
OPEN 18:30/START 19:00
出演:moools/SOSITE/射守矢 雄と平松 学/人形劇団 銀座擬人座
フード:飲&YO!
チケット料金:前売2,500円/当日2,800円(ドリンク代別)
【問い合わせ】O-nest 03-3462-4420

<田渕ひさ子>
toddle presents『riddle vol.10』
●2013年11月10日(日)東京都:下北沢THREE
OPEN & START 18:30
出演:toddle/metrofield
DJ:DJ FUKUYOKA
チケット料金:前売1,800円/当日2,000円(ドリンク代別)
【問い合わせ】THREE 03-5486-8804

BIN☆TANG presents『toddle LIVE』
●2013年12月7日(土)青森県:SUBLIME
OPEN & START 18:30
出演:toddle/Ca-p/THE EARTH EARTH/DJ(ASH、atu、オノシンサク、SKMT、hanao、mollipop)
チケット料金:前売2,500円/当日3,000円(ドリンク代別)
【問い合わせ】SUBLIME 017-773-0377

toddle presents『world wide waddle』
●2013年12月15日(日)下北沢THREE
OPEN 18:30/START 19:00
出演:toddle(One Man Show)
チケット料金:前売2,500円/当日2,800円(ドリンク代別)
【問い合わせ】THREE 03-5486-8804

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