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高 英起/デイリーNK 東京支局長(Rooftop2013年10月号)

 2013年5月27日(月)新宿ネイキッドロフトにて、世界にも類を見ない、とんでもないイベントが開催された。その名も"K-POP vs NK-POP"。今まで共に語られる事のなかった韓国と北朝鮮の音楽が、両国の音楽に精通しているパネラーを通じ一同に会してぶつかり合った。勝負の結果はNK-POPの圧勝。イベント自体も満員御礼で大好評の内に終わった。次回は10月11日(金)に開催が決まっているこのイベントの発起人でもあり、北朝鮮情報専門サイト、デイリーNK東京支局長でもある高英起さんに、イベントに対する熱い意気込みを聞いた。(interview:小柳 元/Naked Loft)

ヘイトスピーチに対する変化球

naked0527_kpopvsnkpop.jpg── 今回は、高さんが出版された本『金正恩 核を持つおぼっちゃまくん、その素顔』のお話と、10月11日にネイキッドロフトで開催する“K-POP vs NK-POP”のイベントについてお聞きしたいなと思い、インタビューを依頼させていただきました。

高:基本的にはイベント“K-POP vs NK-POP”について話をしたいです。僕個人の思いとしてはこのイベントをネイキッドロフトの定番イベントにしたいという思いがありますので。

──本の中でも“K-POP vs NK-POP”について書いてもらって本当に有難いです。

高:それはイベントの趣旨でもあるんですけど、新大久保に位置するネイキッドでやるということは大いに意味があると思うからです。本にも書きましたけど、とりわけ昨今、新大久保ではヘイトスピーチが跋扈している中で、それに対して、カウンターはたくさんの方がされているのですが、そういうものではなく、違った角度からヘイトスピーチに対して「NO」をつきつけるというやり方がシュ—ルなんじゃないかと。だから煙に巻く訳ではありませんが、変化球でやつらを翻弄したいなと思っているんです。

── 新大久保でのヘイトスピーチへのカウンターというのは、Kポペン(※K-POPファンの意)が最初に声を上げたのがきっかけだったりする訳ですが、今回のイベントでキーになっているのはチョソンクラスタと呼ばれる北朝鮮ウォッチャーの存在ですよね。

高:そうですね(笑)。80年代末だったら彼らは社会主義マニアのようになっていたと思うんです。軍国主義マニアや軍歌マニア、ミリタリーマニアの人達って、閉ざされている状況だけにそういう事に対して興味を持つじゃないですか。今のチョソンクラスタというのも、社会主義マニアみたいな無くなりつつある物に対して情熱を向けているマニアっぽい所があると思うんですよ。ただ時代が違うから、彼らは北朝鮮の事を純粋に冷静に受け止めていて、おおらかで突き抜けていますよね。それにびっくりしています。僕は今47歳で冷戦時代の空気も知っているんですけど、暗い時代のことを知らない人間が北朝鮮とか社会主義とか文化を純粋に捉えているというのは非常に新鮮でした。だから、チョソンクラスタというのは面白いですよ。

 

金正恩はAKB!?

── 高さんは第一回目のイベントでは金正恩がプロデュースするセクシー美女音楽グループ「モランボン楽団」を中心に紹介していました。高さんはやはり音楽が持つ可能性を感じていますか?

高:そうですね。音楽もそうですし、音楽と芸術またはこういうトークライブも含めて大衆芸能ですよね。大衆芸能というのはみんなが思っているよりも力はある。それが新大久保が韓流の街になったきっかけでもあるし、ちょっと前まで見かけることのなかった、Kポペンという女の子達が大久保に来るようになっている。それに、今、韓国と日本は大変な事になっているけど、実際韓国人にとって日本人の印象が変わったというのは韓流ブームのような交流が進む前に日本文化とかドラマとか音楽とかが韓国には大分入っていたからなんです。今でも韓国では嵐が大人気だし、反日と言っても一般の若いレベルでは日本の文化は大人気ですからね。北朝鮮ポップにはそれ以上の人達を作ることは出来ないと思うけど、ただそういう可能性を含んでるのも事実だし、好きにならなくても「なんか北朝鮮ポップってすごいよな」っていう一言でも貰えれば良いわけだし、それによって見方も変わってくるんですよ。北朝鮮の人達は曲を作る人も演じる人も体制側の人達だし、体制の音楽をやってるけども、そこに芸術家としてのスピリット、「こういう音楽をつくってるんだ」という新たな発見というのも見つけて欲しいんですよね。

── 高さんの本を読んでいて思ったのは、金正恩は僕と同じ30歳なんですよ。いきなりロッドマンを呼んで、世界を驚かせたりもしているし、この若い指導者がみんなの注目を集めているというのは面白いと思うんですよね。

高:なんかちょっとハラハラドキドキする感じ。見ていて「どうなるんだ?」という感じがするよね。本にも書いたけど、歴史上の人物がすぐ傍にいるんだからね。そんな人がこの世界のすぐ傍にいていろいろ仕掛けてくるんですから、それは面白いですよね。金正恩はAKBですよ(笑)。僕はやはり金正恩がズレてはいるんですけど、ヨーロッパに居たという所からいろいろな影響があると思うんです。ちょっとやり過ぎだなって思うんですけど、彼自身の発想というのは悪くないと思う。だから、それを北朝鮮だからと言って切り捨てるのではなくて、敢えてそれを評価しつつ、北朝鮮に変化を促していくという事はあると思うんです。

 

これからの北朝鮮と向き合うために

── 高さんは以前、知人が北朝鮮の闇市を隠し撮りした映像を世界に流すなどの過激な活動をしていましたよね。でも今回のNK-POPを紹介するという活動は以前に比べるとかなりソフトなイメージがしますが、高さんの中で何か変化はあったのでしょうか?

高:今も基本的な所は変わってないですよ。でも、当時は若かったし北朝鮮の体制を潰さなきゃいけないと過激な所がありましたからね。今回のヘイトスピーチとは違いますが、「北朝鮮けしからん!」ばかり言っていたら、「叩けばいい」という単なるバッシングになっちゃう。僕も今でもそういうマインドはあるんですけど、北朝鮮や韓国は叩かれれば叩かれるほど、強くなるというメンタリティなんです。だから一歩引いて褒め殺しというか、ある程度評価すると彼らも戸惑うわけです(笑)。その戸惑いが僕の狙いなんです。

── “K-POP vs NK-POP”は政治的なイデオロギーをあまり感じさせられないのも面白いですよね。

高:そうですね。でも僕自身はわかる人にはわかると思うんですけども、一応左の方からチョソン問題に興味を持ち始めたんですけど、ロフトの平野さんやロフトプラスワンの空気もそうですけども、はっきり言って右も左も関係ないんですよね。左とか右とかいがみ合いながらも、一堂に会したら喧嘩する時もあれば酒を呑む時もある。ただ、ヘイトスピーチにも言えることなんですけど、「奴らと俺たちは違うんだ」と相手を攻撃することによって自分の立ち位置を再確認しようとする態度は、右でも左でもあったと思うんですよ。そこが日本の社会運動の問題点の一つだと僕は思っているんです。平野さんはそういうのを超越したところでロフトプラスワンというトークライブハウスを始めたのですから。イベントの趣旨を知っている方がネタとかノリの裏に真面目なメッセージを込めている、そういうのも全てわかった上でやってくれるという側面で、右とか左とか関係なく面白い事をやっているっていう。僕自身もそういう風に北朝鮮問題を配信していきたいんです。

── 最後にもう一つ質問です。今回東京オリンピックが決まりましたよね。これをきっかけに日本と北朝鮮の関係は変わって行くと思いますか?

高:現状では良い方向には向かってないですよね。それは右翼とか左翼とかに限らず、もちろん北朝鮮自身も悪い部分は沢山あるんですけど、日本が北朝鮮に対して何がしたいのか、どういう関係を築いていきたいのか極めて不透明でわからないですよね。わからない中に緊急課題である拉致問題やミサイル問題があるだけに、どうしても政治家を含めて一歩踏み出せないという所があるわけです。非常に難しいとは思うんですが、そこはどこかで突き崩さないといけないし、逆に言うとこじれた関係があるからこそ、政治的な問題を抜きにしてイデオロギー関係なく、時には相手をバカにしたり称賛したりしながら行なう“K-POP vs NK-POP”などのイベントの重要性があると思うんですよ。実際、北朝鮮を支持する朝鮮総連などは最近の音楽なんて知らないですし、こういうイベントは出来ないですよね。基本的には自分たち万歳ですから。ああいう風にざっくばらんに話し合う事は出来ない。そういう意味では「世界的に見てもどこにもない唯一のイベント」だと思いますよ! 南北朝鮮の、しかも朝鮮の人を交えて、お互いの国の歌を聴きながらお互いをバカにし合ったりもするようなイベントないでしょ(笑)。

── なんかお話を聞いていると、また次回のイベントが楽しみになってきました(笑)。10月11日(金)も“K-POP vs NK-POP”是非よろしくお願いします!!

高:はい。“K-POP vs NK-POP”を通じて、ネイキッドロフトという土地とロフトの持つDNAがスタッフの人や来てくれたお客さん、またその噂をネットで知った人たちに有機的に繋がって行って欲しいです!

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Live info.

10月11日(金)ネイキッドロフト
第2弾 K-POPvsNK-POP ~逆襲のK-POP!「今度は倍返しだ!」〜
【出演】高英起(デイリーNK 東京支局長)
大石始(旅と祭りの編集プロダクション「B.O.N」ライター/編集)
まつもとたくお(K-POP番長/音楽ライター)
カルロス矢吹(音楽ライター)

OPEN 18:30 / START 19:30
前売り 1,500 / 当日 2,000