a flood of circle(以下:AFOC)が、7月17日にニューアルバム『I'M FREE』をリリースした。バンド結成から7年、現メンバーになって2年半。変化せざるを得ない状況もこれまでには幾度となくあったが、現状に満足することなく貪欲に進化をしてきたロックンロールバンドのAFOCが"ロール"していることを証明する12曲を収録。「ゆっくりだけど一歩ずつ進んできてるバンド」と、今回インタビューに答えてくれた佐々木亮介(Vocal&Guitar)が言っていたが、その時間の中で着実に積み重ねてきた経験や様々な思いが音になって表れていた。ロックンロールとは続けていくことであり、今はその転がり続けるという強い意志を持ってAFOCは音を鳴らしている。
秋からは自身初となる47都道府県ツアーも予定され、彼らのロックンロールが全国各地で鳴り響く!(interview:やまだともこ/Rooftop編集部)
今の日本に必要な言葉を音楽にしたい
── まずは6月に行なわれた東名阪のワンマンツアーの話もさせてもらいたいんですが。
「Zepp DiverCityでは編集長自らゾンビになってまして(笑)」
── 当日はゾンビになることに必死で(笑)、実はライブの全編をちゃんと見れてないのですが…。でも、ものすごくたくさんの人がフロアにいて、これだけの人の心を動かしているってすごいことだなと感じましたよ。
「Zepp DiverCityは、今までの中で一番デカいワンマンの会場で、そこをAFOCのロックンロールが充満している感じがわかって嬉しかったです。すごくゆっくりですけど一歩ずつ進んできてるバンドなので、積み重ねてやってきたご褒美みたいなライブでしたね。これまで積み重ねてきた悔しさが間違ってなかったと思えたというか、一歩ずつスタイルでここまで辿り着けたという意味のご褒美。東京に限らず、今AFOCに付いて来てくれている人たちに、もっと良い景色を見せて行きたいと改めて思いました」
── DiverCityでは今作『I'M FREE』に収録されている『ロックンロールバンド』を演奏されましたが、あの時の手応えはどうでした?
「このツアーから初めて演奏しましたけど、バンドにスッと馴染む曲というか、バンドが曲に引き寄せられている感じがあって、ライブでもちゃんと伝わっているのを感じました。東京はMVを撮るよと言っていたのもあって、新曲のわりにはダイバーがいるなって思いましたけど(笑)。即効性のある曲だなというのはわかりましたね」
── AFOCが『ロックンロールバンド』というストレートな曲を出すのは、ついに! という感じもありましたが。
「バンドが失踪や脱退など紆余曲折ありながらも転がってきた歴史があるので。これまではそういった様々な状況の変化に対して、佐々木亮介はどうなのよと個人として問い詰められているところをガムシャラに回答していくという感じでしたけど、今は姐さん(HISAYO/Bass)が入ってから2年半が経ち、自分たちが自信を持って“これがロックバンドでしょ”というものを作れていると思っていて、バンドとして答えを出していくという方向にシフトしてきている感じがしてます。アレンジもそうだし、曲作りの段階でバンドとしての意識が一番強かったのは『ロックンロールバンド』だったなと思います」
── この曲を持っていった時、メンバーのお2人はなんて言ってました?
「なべちゃん(渡邊 一丘/Drums)は“『ロックンロールバンド』かよ(笑)”って言ってましたけど、曲を聴かせたらすごく気に入っていて、姐さんは最近よくライブでお客さんのことをロックンローラーと勝手に言ってる感じとマッチしていて良いんじゃないの? って」
── HISAYOさんが入ってアルバムとしては2枚目になりますが、バンドが形になってきた感じってありますか?
「進化するべき時間を持てたというか、バンドとして固めるべき時間をちゃんと持てたので、姐さんがいるという以上に俺とかなべちゃんの変化もあったと思います。前のアルバム『LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL』は、震災以降何をするかと考えて、まず身近にいる人に伝えていくというのが『I LOVE YOU』だったりしたんです。その後全員革ジャンを着て『FUCK FOREVER』のツアーを廻ったりしましたけど、そこでちゃんと一個AFOCの芯を作れたから、そこを軸にもっと遠くまで届くアルバムを作りたいという感じになったんです」
── 音楽のシーンの中で、AFOCの立ち位置みたいなものがわかって来ている感じってありますか?
「ずっと昔からTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTと比べられたり、Rooftopで鮎川誠さん(シーナ&ザ・ロケッツ)と対談させてもらったり、そういう方々を頂点とする系統を勝手に自分たちが受け継いでいるような気がしていますが、それ以上に日本語のロックンロールの可能性を広げたいというのがあって、アレンジも自由にやっているし、もちろんAFOCの名前をもっと広げて行きたいし、もっとみんなに聴いて欲しいという欲が強くなってきたんです。それで、今日本に必要な言葉を音楽にしたいという思いから、日本中どこを探しても通じるロックンロールじゃなきゃダメだなと思ったんですよ。そうなると閉じた音楽では絶対にダメで、楽器もアレンジももっと自由に広がっている状態にしたいし、俺は自分がやるべきロックンロールをちゃんとここで見せたいなというのはあります」
── 亮介さんにとって、今の日本に必要な言葉を発する場所は音楽であり、ロックンロールだということなんですか?
「俺はそれが性に合ってるんですよ。だから『I'M FREE』みたいに世の中にケチを付けてるような、思ったことを全部書くこともアリになっていると思うし、『Blues Never Die (ブルースは二度死ぬ)』みたいにラップっぽく歌っているものもあるし、そういう歌詞を書いて良いんだという開き直りもあるし、それでもロックンロールという言葉からずれることなく出来てるんじゃないかなと思ってる。『月面のプール -Naked ver.-』のようなバラードを今やっと出来たというのも意味があって、ただ思ったことを言うだけじゃなくて、抽象的な歌詞でフワッとした大きいメロディーでも今の俺たちなら出来ると思いますし、メッセージの部分でもタフになってきていると思うので、ただ尖ってヒリヒリしていて暴力的でという感じじゃないところに行きたいということは考えてます」
── 良い意味で尖った部分がなくなったという感じはありますね。ケチも付けてるし、文句も言ってるし、誰かに楯突いてる感じもあるんだけど、これまでとは包み込み方が違うというか。
「ライブも、今は言葉をちゃんと届けたいし聞かせたいという思いもあって、言葉をぶん投げるだけじゃなく強引にハグしたいというか、それが充満している心地良さも感じています。今回はもっとロックンロールを広げて行くことを意識して作ることが出来た一歩目だと思っています」
── 『The Future Is Mine』が一番わかりやすいですけど、ロックンロールに希望があるというのは歌詞を読んでても思いましたよ。
「なんでここまでロックンロールなんて使い古された言葉を言うのかっていうのは、自分でもけっこう考えていましたけど、震災以降世の中はどんどんしんどくなってきているはずなのに、危機感が薄れている感じがしているんですよ。でも、そのしんどい気持ちを持ったままでも踊って良かったり、ギターをジャーンって鳴らせるのがロックの一番良いところで、むしろそれこそが現代的な音楽なんじゃないかと勝手に解釈しているんです。その思い込みがあるから、ロックンロールが今必要なものだと思い込んでやれてると思っていて。そうなってくると言葉やメロディーにあまり迷わなくなるんです。アレンジももっと自由になっても良いなという感じもあって。バンドがロックンロールに可能性や希望を感じているからこそ楽しめてやれているんだと思います」