トップ > インタビュー > 宇宙を飛ぶ宇宙船や人工衛星にとって『格好良い』って何だろう? 2.5(火)夜ロフトプラスワン開催「マツド・サイエンティスト・ナイト2 〜ART of Spacecraft〜」

 外側から誰も見ない空気も無い宇宙ではスマートな形も意味がない? そんな宇宙を飛ぶ宇宙船や人工衛星にとって『格好良い』って何だろう? 実際に宇宙機を設計するエンジニア、機能とスタイルを共に追求するインダストリアルデザイナー、衛星を萌えとして本を作る作家、衛星のコスプレイヤーらが、全く違った視点から宇宙の『格好良い』を語る「マツド・サイエンティスト・ナイト2」。このイベントをぜひロフトプラスワンで自由に語ってみたいと言ったのは、宇宙機エンジニアである主宰の野田篤司さん。第2回目の開催前に、宇宙に対しての願望、なぜトークライブ開催を希望されたのかを、野田さんにうかがった。(Interview:斉藤友里子)

遠くへ。自分で自由に空を飛ぶ宇宙船で行きたい

──まず、なぜ宇宙に行きたいのかを教えていただけますか。
野田:遠くに行ってみたいんです。「この先のどこまでも遠くに行ってみたい」そういった根源的な欲求があります。みなさんにもありませんか?
──旅のはじまり、あるいは自転車をこぎはじめて、その先の広がった景色をみたときにそう思うことが多々あります。
野田:こどものような気持ちのある人にも誰でもある欲求かもしれません。その究極として僕は宇宙の果てに行ってみたい、という願望があります。それが「宇宙へ行きたい」という気持ちの最初です。
──宇宙飛行士になりたい、とは思わなかったのですか。
野田選抜された限られた人間、かっこいいエリートというような形で宇宙へ行くのではなく、僕は自分で自由に空を飛ぶ宇宙船で行きたい。
──現在の方法ですとソユーズ(※)、かつてはスペースシャトル(※)がありましたよね。それではない方法を望まれていると。
野田そうです。車に例えると、連れていってくれるバスやタクシーではなく自分で運転できる乗用車に乗って行きたいですね。僕は、誰かに連れていってもらうのではなく、自分が行きたいから宇宙へ行く、そういった想いが原点にあります。宇宙で好きに乗り飛ばせるような船に乗りたいんです。
──それがないから作りたい、と。
野田「ないものは作る」がオトコノコ的に基本です(キリッ)。

宇宙で何をしたいのか

──「遠くへ」というのは最低限どのくらい先からになるのですか。
野田遠いところといったらまずは太陽系の外だね。
──目的にしたいところはありますか。例えばアンドロメダ星雲まで、とか。
野田アンドロメダ星雲、行けるものなら行ってみたいねぇ。行きたいところの近場でいえば隣の恒星(※)までは行ってみたいし、銀河バルジ(※)のところ、そこも抜けていってみたいね。

──星々が集まって、ブラックホールもあるかもしれないところですよね。すごい景色が想像されます。実際に宇宙へ行ってやりたいこともありますよね。以前、ある実験をしたいとおっしゃっていた記憶が。
野田いっぱいあるけど、まずひとつは反物質エネルギーの実験(笑)
──失敗すると大規模にいろんなものがふっとぶといいますか、消滅しちゃいますね。
野田そうね、国土を消してしまったりする危険性がない場所、自分ひとりしかいない空間であればやってみたい実験ですね。ほかにもしたいことはありますよ。人が住む小さなコロニーも作ってみたいし、もし宇宙人がいるならぜひ会ってみたい。
──コロニーですか?
野田自分のサイト(※)にも書きましたが、小惑星(※)にとりついて居住空間を広げることもやってみたい。宇宙にはかなりの小惑星があるし、それを利用して航行、小惑星から小惑星へ移り住んで、新たな小惑星でまた小惑星開拓用宇宙船を作ってさ。地球から何かを持っていくという考え方ではなくて、そこで作り出すことを考えたらいいんじゃないかって僕は思う。
──地球に還ることを前提としない、と。
野田そう。行ったら行きっぱなしでもいいじゃない。

どんな宇宙船がいいのか

──野田さんは具体的にどんな形の宇宙船を望まれているのでしょうか。スタートレックにでてくるような巨大宇宙船ではないですよね。
野田:やっぱり自分で運転できる宇宙船で自分の眼の届く範囲の船がいいね。堀江謙一(※)って知ってる?
──ヨットだけで太平洋横断や世界一周をした冒険家の。
野田:そう。堀江謙一が乗っていたヨットは小さいけれど、人がひとり住めるようなヨットだったでしょ。具体的なイメージと言われれば、それに近いですかね。自分で乗れる宇宙船を持ちたいと10年近くずっと考えていて、そのなかで「どういったものがかっこいいのか」がなんとなく見えてきた。それが今回のイベントに繋がっています。自分が考えていることは他の人とは違うかもしれない。まず僕の考えている「かっこいい」を聞いてもらって、みなさんはどう思われるか。そして、みなさんの「かっこいい」も聞いてみたい。

出演者それぞれの「かっこいい」

──今回のゲスト、山中俊治さんとしきしまふげんさんをお招きした理由、また秋の『』(あきの)さんをシリーズのお相手に選ばれたのは?
野田宇宙船を造ろうというお話が実はメインではないんです。テーマは「宇宙船をかっこよくしたい」でありまして、「かっこよくしなくていい」という人は呼んでいません。宇宙船を造るのが前提ね。作る宇宙船をいかにかっこいいものにするかというのを、イベントの中心にするつもりです。一口に 「かっこよくする」と言っても、それぞれかっこいいのイメージが違います。その極端な例を複数だしてみたい、それをぶつけてみるというのが今回の目的で、 僕は技術面から宇宙船を見る人、山中さんはデザイナーという立場から宇宙船を見る人、しきしまさんは萌えから宇宙船をみる人、秋の『』さんはコスプレという点から宇宙船をみる人、そういった観点でトークを進めるつもりでいます。

「コスプレもできないぐらい、かっこいい宇宙船を造る!」に返した、
秋の『』さんの言葉


──秋の『』さんのコスプレから、というのは?Matsudo_akino.jpg
野田以前、擬人化コスプレヤーとして秋の『』さんと対談したときに、僕が「なんで格好が良いようにと作られたわけではない宇宙機のコスプレをするの?」と尋ねまして、彼女は「かっこいいんです。でも『格好』という点で『かっこいい』が足りないとしたら、それを補うコスプレをしたいと思っています」と言ったんです。で、僕は「コスプレもできないぐらい、かっこいい宇宙船を造る!」と返したところ「いえ、私はもっとかっこいいコスプレをしてみせます」と言ってのけた。そのコスプレ魂、筋の通った根性、もの作りに対する情熱に感服しましたね。

機能だけを追求していけば簡単にかっこいいものになるわけじゃない。
かっこいいものにするためにはちゃんと努力が必要、と言える山中さん


──山中さんについては?Matsudo_Spacecraft_sketch_01.jpg
野田なんの中身も機能もないただかっこいいだけのものではもちろんだめ。でも機能だけを追求していけば簡単にかっこいいものになるわけじゃない。かっこいいものにするためにはちゃんと努力が必要、と言える人なんです、山中さんは。デザインを機能にいかにして融合させるか、それに対してかなり心をさいてる姿勢にとても賛同します。僕はそういったデザインはできないから。山中さんとかっこいい宇宙船を作りたいな、って思っています。

しきしまさんの『現代萌衛星図鑑』は本当にすごい

──しきしまさんは?Matsudo_shikishima.jpg
野田実はまだお会いしたことがないので、当日がとても楽しみです。『現代萌衛星図鑑』は本当にすごいと思う。機関の刊行物より、はるかにいい描き方をされていると思いますね。職場の技術者からもすごく高い評価を聞きます。

かっこいい宇宙船の詳しくは……

──少しイベントから話題は離れますが、いまの日本宇宙開発に対してどう思われますか。
野田ますますよくなくなっていくね。
──どのあたりでしょう。
野田機能もないのに形優先で作ろうとしていて、「かっこいい」を違う方向に使おうとしているように思えます。「かっこいいことをするために宇宙へ行く」みたいなさ。
──目的と手段と成果が裏返しになっているように聞こえます。
野田そうね。僕のかっこいいものに対するポリシーは、例え話をするとこんな話。ご飯を食べに行こうってときに、「ミシュランの星をとっているからおいしいに違いない」って店に連れていくのは、僕にとってかっこいいことではないです。僕は、こないだまで行っていた安くてうまい店が、ミシュランで紹介されて評判になって、このごろ行けなくなっちゃったね、というのがいいの。
──誰かや何かの評定に従って何かを選択するのではなく自分で選びとる。そんな野田さんやみなさんの思うかっこいい宇宙船についての詳しくは、当日ということでしょうか。
野田はい。2/5(火)夜、ロフトプラスワンにてお待ちしています。今回は台風こないと思うし(笑)

---
※ソユーズ: ロシアの有人宇宙船。最大搭乗3人。1967年に初飛行。改良が重ねられ40年以上たった現在でも国際宇宙ステーション(ISS)へのクルー輸送に使用されている。ISSに結合する「軌道モジュール」、クルーが搭乗の「帰還モジュール」、通信機器や姿勢を保つためのエンジンなどを搭載する「機器/推進モ ジュール」の3区画が連なっている。ロケットに乗せられて宇宙へ行き、地球へ帰ってくる際、区画は大気圏手前で分かれ、クルーが搭乗しているカプセル型の「帰還モジュール」のみ戻る。ISSから3時間30分ほどで帰還可能だが、そのときの体にかかる重力はスペースシャトル着陸時より大きく、自分の体重の4〜5倍以上がかかる。

※スペースシャトル: アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発した有人宇宙船。最大搭乗7人、30トン近くのものが積載可能。ロケットのように打ち上げられ、飛行機のように着陸でき、1981年から2011年まで、ISSの構成部品や補給、人工衛星の運搬、軌道上の宇宙実験などに使用されていた。コスト面などの問題により退役した。「十徳ナイフ」のように、能力はあれど実際にナイフやはさみとして使用するときは使いづらいといった、機能過多の面もあったと評する専門家もいる。

※バルジ: うづまき状の銀河、天体の中心部にあるふくらみのこと。恒星(光を発し、自らの質量が生む重力でおしつぶされずに存在するガス天体の総称。太陽もそれにあたる)が数多く集まっており、そこには超巨大ブラックホールがあり、そのため数多くの星がひきよせられていると考えられている。


※自分のサイト【人類は宇宙へ飛び出そう まずは小惑星から】

※小惑星:名前通りの小さな惑星。太陽の周りを回っている。はやぶさがサンプルをとってきたイトカワもそれにあたる。

※堀江謙一:1938年生まれ、海洋冒険家。1962年に小型ヨットにて
太平洋単独横断航海(西宮〜サンフランシスコ間)、1974年にはヨットで270日間で単独無寄港世界一 周航海、2004年にも単独無寄港世界一周航海を成功させた。2008年、波の力のみを動力とする波浪推進船にて紀伊水道〜ハワイ間の航海にも挑戦し、成功させている。

※台風:2012年9月30日(日)第1回目「マツド・サイエンティスト・ナイト」〜『う』は『宇宙論』の『う』〜」は最大降水量10.5ミリ、最大風速12メートルのなかで行われたのもかかわらず、盛況開催した。

※マツド:野田さんの出身地である千葉県松戸市とマッドをかけて、マツド。

デザインの骨格
山中俊治
(日経BP社)

1,680円(税込)
ISBN 978-4-8222-6470-3
発行日2011/1/29

amazonで購入

現代萌衛星図鑑
しきしまふげん(著)
へかとん(漫画)
松浦晋也(監修)
(三才ブックス)

1,680円(税込)
ISBN-10 4861992060
ISBN-13 978-4861992063
発行日2009/6/10

amazonで購入

秋の『』はやぶさの擬人化写真集
20号小惑星探査機MUSES-S「はやぶさ」擬人化写真集
(ぜろじげん)

当日物販にて

Live info.

「マツド・サイエンティスト・ナイト2 〜ART of Spacecraft〜」

【出演】野田篤司(野田司令/マツドサイエンティスト 兼 宇宙機エンジニア)、山中俊治(デザイナー/エンジニア、慶應義塾大学教授)、しきしまふげん(イラストレーター/『現代萌衛星図鑑』)、秋の『』(コスプレイヤー)

日程:2月5日(火)
時間:Open 18:30 / Start 19:3022:00過ぎごろ予定 ※途中休憩あり
料金:¥1500(飲食別)
場所:新宿ロフトプラスワン
東京都新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2
 03-3205-6864
※当日券あり。開場時間、あるいはそれ以降に直接店頭にお越しください(途中入場可能)
※開場時の入場順はローソンチケットWEB予約、当日券です(開場以降は先着順となります)
前売:ローソンチケット(Lコード:34782)購入ガイドWEB予約

※秋の『』写真集『20号小惑星探査機MUSES-S「はやぶさ」擬人化写真集』ぜろじげん)物販予定(委託販売分等は現在終了、残部少とのこと)。