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中島卓偉(Rooftop2012年7月号)

『アコギタクイ ─記憶再生─』と題された中島卓偉のアコースティック・セルフカヴァー・アルバムは、精選されたレパートリーを迫真のアコースティック・サウンドで再構築させた大変な意欲作である。単なる企画物として看過することができない作品であり、原曲の持ち味を損なうことなく新たな魅力を提示する卓偉の手腕を否応なく実感できるはずだ。もしあなたにアコギ=フォーキーという先入観があるのなら、卓偉はその色眼鏡を軽やかに叩き割ることだろう。装飾を極力排したアコギのオーガニックな音色は生々しく臨場感に溢れたもので、エレキをアコギに持ち替えても、いや、アコギに持ち替えたからこそ余計にシンプルでストレートなロックの純度が増し、パンキッシュなアティテュードもより明確になっているのだ。
この『アコギタクイ』シリーズの意図と制作秘話を語ったインタビューを読んでもらえれば分かる通り、現在の中島卓偉の創作意欲はより貪欲になる一方であり、それに比例するように作品のクオリティは一層上がっている。幼少期に離ればなれになった母親との境界線を描いた傑作『3号線』を例に挙げるまでもなく、普遍性を携えながら等身大の自分自身を楽曲に投影させる作風が益々円熟味を増しているのは熱心なファンならよくご存知のはず。細部まで意匠を凝らした卓偉にしか為し得ない音楽は今最も脂が乗っているように思えるが、彼は常に絶え間なく進化を続けている。昨日よりも今日、今日よりも明日。いずれ彼が"リアル・ファースト・アルバム"を発表する日はそう遠くないだろうし、その過程を同時代で見届けられる僕らは幸せ者だと言う他ない。(interview:椎名宗之)

オリジナル・アルバムに向けた理想的な導入部分

──『明日への階段』以降のシングル曲を網羅したオリジナル・アルバムが発表されるのかと思いきや、まさか自身初のアコースティック・セルフカヴァー・アルバムが先に来るとは思いませんでした。

卓偉:実はオリジナル・アルバムのプリプロも同時に進めていて、今年はその制作に入っても大丈夫な状況だったんです。でも、この3年の間に始めた自分ひとりで回るアコースティック・ツアーが今年もあって、それに合わせて“ひとりアコギ”のアイテムがそろそろあってもいいんじゃないかと思ったんですよ。毎回アレンジもセットリストも変えるアコースティック・ライヴを積み重ねてきたことで手応えも感じていたし、せっかくアコースティック・ツアーを回るのならアコースティック・アルバムを引っ提げて回るほうがいいのかなと考えまして。これが20代の頃なら順当にオリジナル・アルバムの制作に取り組んでいたと思うんですけど、物事の順序に対するこだわりがだんだんなくなってきて、今は自分にとって必要なものを最優先に取り組みたいんですよ。そこで学んだものをいずれオリジナル・アルバムに落とし込めればいいなと。

──アコースティック・ライヴをやっていく中で、アコースティック・スタイルの奥深さやリアレンジの面白さに目覚めたこともきっかけとしてありましたか。

卓偉:そうですね。『明日への階段』以降の3枚のシングル曲を入れたオリジナル・アルバムというのは、もしかしたら自分にとって“リアル・ファースト・アルバム”になるかもしれないと思っているんです。そのアルバムへ向けていい意味で寄り道をして、そこで得たものをすべて次の作品に反映させたいんですよ。そうやって順序を踏まえることで、次のアルバムがよりスケールの大きなものになるような気がして。実際、今回の『アコギタクイ』を作ってもの凄く勉強になったし、来たるべきオリジナル・アルバムに向けて理想的な導入部分になりましたね。

──ただ単に過去のレパートリーをアコースティック・アレンジに仕上げた作品ではないのが卓偉さんらしいですよね。スタジオにあったゴミ箱やギターのハードケースなどを叩いてリズムに利用した『PUNK』、ドラムと弾き語りのみで一発録りをした『BADLY NOOOO!!!!』、全編ヴォイス・パーカッションの『Without You』、卓偉さんの声のみで多重録音されたアカペラの『言葉に出来ない』と、アコースティックを主題にしながらいろんなアイディアを具現化している。それに、『HELLO MY FRIENDS』や『鼓動』といったライヴ音源もあるし、『あなたの笑顔が見たいから』や『めぐり逢えた二人』のようにここでしか聴けないアルバム未収録曲もある。随所にさまざまな創意工夫が施されているし、卓偉さんの言葉を借りれば「最高の寄り道」だと思うんですよ。

卓偉:単純にアコースティック・アレンジのアルバムにする考えもなくはなかったんですけど、せっかくこういうアルバムを作るのならいろんなアプローチをしたほうが面白いんじゃないかと思って。それと、ひとりでアコースティック・ライヴをやっていると、自分の頭の中では実際に鳴っていない音が鳴っていたりするんです。自分の弾き語りだけを伝えようとは思っていないし、「ここでクラップをして欲しい」とお客さんにお願いをしたりもする。「こういうリズムが鳴っている感じで一緒に楽しもうよ!」っていうふうに。そういう僕の頭の中で鳴っている音をある程度再現したかった。

──制作にあたって、お手本となるミュージシャンもしくは作品はありましたか。

卓偉:強いて挙げれば、50年代のロックンローラーですかね。エレキが主体だけど、ちゃんとアコギも使うじゃないですか。エルヴィス・プレスリーのファースト・アルバムも、ジャケットではエルヴィスがアコギを抱えているし。あと、スタイルの面ではニール・ヤングからの影響もあるかもしれないけど、自分なりのアンプラグドな在り方を意識したつもりなんです。アコギ主体だけど、これもまたひとつのロックの在り方と言うか。

──うん、分かります。卓偉流アコースティック・パンクな曲もありますしね。このアルバムについて言えば、アコギ=フォーキーな感じでは決してない。

卓偉:もともとアンプラグドのスタイルが好きだったし、ようやくこういうことをやれる時期が来たのかな? という気持ちもありました。オリジナルを忠実に再現することに物足りなさを感じてきたのもあるだろうし、アレンジは決してひとつじゃないと実感したんです。海外のミュージシャンのアンプラグド・ライヴを見たり聴いたりすると、あれだけアレンジに変化をつけても新たな発見が必ずあるじゃないですか。エレキをアコギに、スティックをブラシに変えて演奏するだけなのに、その曲の違った魅力を提示できる。その素晴らしさを10代の頃に学んだので、いつか自分も同じようなことをやってみたかったんです。だから、この『アコギタクイ』は今までの自分のアンプラグド・スタイルに対する憧れを詰め込んだアルバムとも言えますね。

アコギタクイ ─記憶再生─

UP-FRONT WORKS / zetima EPCE-5871
定価:2,500円(税込)
絶賛発売中

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01. Dearest Friends
02. PUNK
03. BADLY NOOOO!!!!
04. Without You
05. 言葉に出来ない(a cappella)
06. HELLO MY FRIENDS(2012.4.15 LIVE at SHIBUYA BOXX)
07. あなたの笑顔が見たいから
08. BLACKSIDE IN THE MIRROR
09. ALL ALONE
10. Calling You
11. X-RAY MAN
12. BLACK HOLE
13. めぐり逢えた二人
14. 鼓動(2012.4.15 LIVE at SHIBUYA BOXX)
15. 3号線

アコギタクイ ─共鳴新動─

UP-FRONT WORKS / zetima EPCE-5892
定価:2,500円(税込)
2012年8月29日発売
『アコギタクイ─記憶再生─』に続くアコギシリーズ第2弾が早くもリリース!
今回は書き下ろしの新曲と、卓偉と親交のあるアーティストとのコラボレーション作品集となっている。
コラボ参加者は、森重樹一、米倉利紀、和田唱(TRICERATOPS)、Fried Pride、広沢タダシ、そしてつんく♂と才能溢れる個性豊かな面々が顔を揃えた!

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Live info.

ロフトーク vol.3〜記憶再生〜
【日程】2012年7月4日(水)
【時間】開場18:30/開演19:30
【会場】阿佐ヶ谷ロフトA
【出演】中島卓偉
【MC】椎名宗之(ルーフトップ編集局長)
【料金】前売 2,500円/当日 3,000円(共に税込・飲食代別)
【プレイガイド】ローソンチケットにて絶賛発売中(Lコード:35541)
【問い合わせ】阿佐ヶ谷ロフトA 03-5929-3445

中島卓偉『アコギタクイ2012』
《第三弾“東京”》

【日程】2012年7月7日(土)
【時間】昼公演:開場13:45 開演14:30/夜公演:開場16:45 開演17:30
【会場】山野ホール
【料金】4,000円(税込)
★全席自由(整理番号付)
★未就学児童入場不可
【問い合わせ】オデッセー 03-5444-6966(平日11:00〜18:00)

中島卓偉『アコギタクイ“フェス”スペシャル2012』
【日程】2012年9月16日(日)
【時間】開場16:30/開演17:30
【会場】SHIBUYA-AX
【ゲスト】米倉利紀/和田 唱(TRICERATOPS)/Fried Pride/広沢タダシ
【料金】5,000円(税込・ドリンク代込)
★1F 自由席(整理番号付)
★未就学児童入場不可
【問い合わせ】オデッセー 03-5444-6966(平日11:00〜18:00)