次に進む為にここで歌っておかなければならない歌
── 『ナモナキヒト』は、誰にでも生きる価値があるという意味が込められているように思いましたが、この曲を作ったきっかけと、どんな思いを込めているのかを教えて下さい。
「この曲は渋公が終わった後すぐに出来た曲なのですが、ライブを見に来てくれた人達やamazarashiに関わってくれた人達について、僕が思うところを曲にしました。それぞれがそれぞれの日常を生きていて、たまたまその日amazarashiと関わって、またそれぞれの日常に帰って行く中で、お互い頑張ろうな、という気持ちで作りました」
── 『ハレルヤ』では、自分たちは宇宙の塵でしかないけれど、それでも明日が素晴らしい日であることを願うし、それでも今を生きてみてぇと唄われています。秋田さんは、今をどう生きていますか?
「分からないですけど、今を生きている実感はあります」
── では“ごめんなさい ちゃんといえるかな?”という歌詞のインパクトが強い『アポロジー』が出来たきっかけを教えて下さい。
「amazarashiの曲は恨みつらみとか、ルサンチマンが原動力になっていた部分が多かったのですが、今になってそういうものが薄まっている実感があって、もうそういう所で歌を作っている場合じゃないな、と思っていました。そこから次に進む為にここで歌っておかなければならない歌だと思います」
── 日々後悔しながら生きている人が大多数だと思います。私ももちろんそうで、特別に何をすることもなく今まで生きてきましたが、この『アポロジー』を聴いて、“明日から生まれ変わるから そう言って今日に至りました”の歌詞を読んでハッとする部分がありました。秋田さんは、ご自分が書く歌詞やご自分が歌うことによって、誰かを励ましたり、誰かを勇気づけたりしたいと考えながら歌詞を書いたりしているのでしょうか? それともご自分を鼓舞するために書かれているのでしょうか?
「褒められたい、認められたいという気持ちは強いですけど、それは本能みたいなもので、そこを拠り所にしてしまうのは止めておこうと思っています。自分が聴きたい、歌いたい歌を作るのが自然なので、というか楽しいので、そうするようにしています」
── 『カラス』はピアノの旋律が美しいと思った曲でした。この中で“むつ市”という言葉が出てきますが、青森はそろそろ暖かくなってきたのでしょうか? 先日テレビでむつ市を拝見しましたが、自然が多くとても良いところですね。
「暖かくなってきましたがまだストーブはつけています。ずっと住んでいると何も無いし、つまらない所だなと思ってしまうのですが、東京に行ったりして帰ってくるとホッします。やっぱりいい所だなと思います」
── 『ハルルソラ』ですが、青空や晴れた空を見て、全てが晴れ晴れとしてリセットされる感じというのは、秋田さん自身日常で感じたりしますか?
「あります。青森のからっとした青空は気持ちがいいです」
── 天気の良い日に外へ出て、歌詞を書いたり、曲が思い浮かんだりすることはありますか?
「アイディアを思いついたりはあります。実際作るにはパソコンの前に座って、しっかり集中してやらなきゃ駄目なのですが」
── また、これまでに比べると、『ナガルナガル』や『ハレルヤ』『ハルルソラ』のように、サウンドが明るくなったというのが第一印象でした。何か意識をされた上でこういう形になったのでしょうか?
「自然にそうなってしまったので、多分そういう気持ちなんだと思います。『ハルルソラ』は明るい事が皮肉になっていて、意図して明るくしました。青森に多くある原発、その関連施設についての歌です」
── 今回カタカナの曲タイトルが多いですが、意図していたのでしょうか?
「カタカナの曲が多かったので、いっそ全部カタカナにしてしまいました。それでアルバムとしてのまとまりが出るかなと思って。別に大きな意味はないのですが、そういう細かいディテールはやらないよりやった方がいいと思っています」
── 東北地方太平洋沖地震があった3月11日の直後に『祈り』を書かれましたが、当時と今では見据える未来や希望に秋田さん自身変化はありますか?
「分からないです。日本も自分自身の人生も、先は見えないのですが、無理にでも奮い立つ事が必要なのかなと思っています」
amazarashiはまだまだこんなもんじゃない
── 今年は1月28日に渋谷公会堂でのライブ、そして追加公演としてSHIBUYA-AX、umeda AKASOのライブがありましたが、それぞれどんな手応えがありましたか?
「渋公はメンタル的に良かったですが、バンドとしてのまとまりはAXの方が良かったと思います。大阪はメンバー全員緊張が大きくて、ぎこちなかったかなと思います」
── ライブ3回目にして渋谷公会堂のステージを踏むのは異例の速さだと思っています。プレッシャー等もあったかと思いますが、実際に渋谷公会堂でライブをやっていかがでしたか?
「箱の大きさは覚悟していたのですが、それより関わる人が増えた事の方がプレッシャーだったかもしれません。ここでしくじる訳にはいかない、みたいな物が重荷になってしまった感じはありました。今思い出すと考え過ぎでしか無いんですけど、もっと強くならなくてはと思っています」
── 東京や今回の大阪でライブを行った際に起きた、思いがけない事件やエピソード等ありましたら教えて下さい。
「細かいトラブルや失敗は沢山あったのですが、特に言う事の程ではありません」
── ライブも行ない、今の秋田さんが歌う意味とはどんなものだと感じていますか?
「楽しい事、自分の意思表示です。義務や仕事になってしまったら終わりかな、と思います」
── 余談ですが、ライブではスクリーンがステージ前方に設置され、映像が流れ続けていますが、ステージに立っている方にはどう見えているのですか?眩しくないですか?
「意外とお客さんの顔は見えています。どんな表情をしているか分かります。眩しくはないですよ」
── そして、ついに東名阪と福岡でのツアーが決定しました。意気込みを聞かせて下さい。
「ライブのリハーサルはこれからなので、がっつり仕上げていきたいです。もっと上手くなりたいです」
── 今後どういうところでライブをやってみたい等はありますか? 機会がありましたら新宿ロフトや下北沢シェルターでもお願いします。
「やりたいです。あと、青森でも。昔お世話になった人達や、応援してくれていた人達に見てもらいたいです」
── 最後にRooftop読者に向けてひと言お願いします。
「最近創作意欲が溢れているんですよ。もっといい歌を作って、もっといいライブがやりたいんです。amazarashiはまだまだこんなもんじゃないと思い知らせたいです」