Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューMAMORU & The DAViES

どこまでも転がり続ける炎のパブロッカー、ワタナベマモルのヘイル!ヘイル!なロックンロール・ムーヴィーは荒野をめざす!

2012.04.05

これまでのビデオクリップやライヴ映像の数々、ワタナベマモルへのインタビュー等を収録したMAMORU & The DAViES初の映像作品集『Texas Punk』には、『夢の原子力』と題された新曲が冒頭に収録されている。言うまでもなく、昨年起こったあの福島の原発事故に触発されて生まれた歌だ。60年代のブリティッシュ・ビートのエッセンスを凝縮させた爽快なリズムとメロディに乗せて、原子力が消えてなくなる夢を歌の土台としながら「BYE BYE 原子力 今までどうもありがとう」と高らかに唄われるナンバーである。だが、その歌は原発を糾弾するシュプレヒコールの類では決してない。あくまで老若男女問わず楽しく踊れて心地好い実直なロックンロールなのだ。つまり原発も、マモル自身がこよなく愛するロックンロールも、お気に入りのキャデラックも、荒川の土手から見える情景も、おでんのシミがついたコンバースも、9回裏で無死満塁のピンチに陥ったピッチャーも、ついでに言えばしぼんだキンタマも、唄われる対象はどれも分け隔てなく等価なのである。ノーテンキな日常を生きる中で芽生える感情やそこから見える景色をありのままに、愛とユーモアを交えて唄いたいように唄う。これぞ炎のパブロッカー、ワタナベマモルの流儀なのだ。ただひたすらロックしてロールし続けるその流儀が『Texas Punk』には余すところなく収められている。同時期に発売されるマボロシハンターズのトリビュート・アルバム『マボトリ』を含め、快調にリリースを飛ばすワタナベマモルが体現するロックンロールの真髄に追る。(interview:椎名宗之)

原発がなくならない限り復興したとは言えない1204md_ap1.jpg

──MAGIC TONE RECORDSから発売される映像作品としては、『ニッポンのロックンロール』(ドクター・フィールグッドのトリビュート・アルバム)の発売記念ライヴの模様を収録した『WHAT IS THE DEFINITION OF ROCK'N ROLL?』以来4年振りとなりますね。

ワタナベマモル(以下、M):今まで作ってきたPVが溜まってきたこともあるし、せっかくだから新しい素材を足して売り物にしようかなと思って。

──『MEXiCO MONK』(昨年9月に発表されたオリジナル・アルバム)の後に『Texas Punk』と、タイトルは韻を踏んでいるみたいですけど(笑)。

M:そのまんまの語呂合わせですよ。こないだ出したのが「MEXiCO」だから今度は「Texas」だ、「MONK」の後は「Punk」でいいだろう、みたいな感じで(笑)。

──「BYE BYE 原子力」と軽快に唄われる新曲『夢の原子力』がこのDVDの中ではやはり際立った存在ですが、福島の原発事故以降、これはいつか歌にしなければと考えていたんですか。

M:うん。歌にしなければって言うかね、唄いたくなりました。

──あの事故の直後、ライヴで忌野清志郎さんのカヴァーを唄ったこともありましたよね。

M:何回かカヴァーしたこともあったけど、それよりも自分の言葉で唄いたいことを唄ったほうがいいなと思って。

──紋切り型で「原発をなくそう!」と唄うのではなく、「BYE BYE 原子力 今までどうもありがとう」と唄うのが如何にもマモルさんっぽいなと感じたんですよね。

M:全くもって素直な気持ちですよ。今でも電気を使ってるわけだし。原子力はなくなったほうがいいとストレートに思うけど、いわゆるアンチ原子力っていう感じともちょっと違うんですよね。すぐにでも消えてなくなって欲しいけど、そういうわけにもいかないんだろうし。上手く言えないけど、原発がとにかく大変なものだったんだなと思い知らされたんですよ。昔からないほうがいいと思ってはいたけど、事故が起こってこんなにも大変なものだったんだなって。

──そう言えば、グレイトリッチーズ時代に作ったソロ楽曲『今週週末来週世紀末』には「原発」という言葉が歌詞にありましたよね。

M:まぁ、語呂でね。「原発 散髪 奮発お小遣い〜」っていう歌詞だけど(笑)。そういう言葉を使うのは好きですね。

──テーマは重いのかもしれませんけど、こよなく愛するロックンロールのことや野球やキャデラックのことを素直に唄うこれまでの姿勢と何ら変わることはないですよね。

M:重いテーマなんですかね? まぁ、感じたことをそのまま歌にしてるだけですよ。あの震災と原発事故が起きてから1年が経って、いろんなところで「1日も早い復興を!」って叫ばれてるじゃないですか。それはそれでいいんだけど、僕は原発がなくならない限り本当の意味で復興したとは言えないと思うんです。とても危険なものだし、僕らはまだいいとしても、将来的になくなってくれないと困るなぁ、と思って。だからと言ってデモに行くわけでもないし、ただテキトーな歌を唄ってるだけなんだけど(笑)。

──こういうことをストレートに歌として提示するバンドマンが少ないのが僕は不思議で。エンターテイメントとして成立させる以上、多分に婉曲的な表現をしなくちゃいけないのはもちろん分かるんですけど。マモルさんの他には、マモルさんと盟友関係にある山川のりをさん率いるギターパンダが『人類滅亡』という原発事故を風刺した曲を最近発表したくらいじゃないかなと。

M:ああ、その曲のPVは昨日たまたま見ましたよ。何て言うのかな、社会的なフォーク・ソングみたいに言葉だけが先行するような歌は唄いたくないんです。ちゃんとロックンロールしていて、ポップな音楽として成り立つものを作りたい。メッセージだけを届けたいんだったら詩人になればいいだけの話ですから。それか、フォーク・ギターを抱えて声高に唄ってみたりね。そういうのは僕にはできない。もしそんなことをやったら、“何だか暗いなぁ…”って悲しい気分になりそうで(笑)。

際限まで振り切らないと先に進めない性格1204md_ap2.jpg

──『夢の原子力』を敢えてシングルとして出さずにDVDの中で初披露したのは何か意図があったんですか。

M:いや、そういうわけでもないです。最初から計画していたわけじゃないけど、DVDを出すタイミングで『夢の原子力』を録ろうと思ったんですよ。計画はいつも後から付いてくるって言うか(笑)、そこが毎回反省点なんですけど。DVDの中のインタビューも後から付いてきたしね(笑)。

──そう、このDVDにはグレイトリッチーズ時代のことにも触れたヒストリー・インタビューがいくつか挿入されていますね。

M:滑舌が最悪のインタビューがね(笑)。自分でも反省してます、あの滑舌の悪さに。一緒にDVDを作ったヤツが「インタビューも入れよう」って言うんで、じゃあやってみようかっていうことになって。

──マモルさんがこれまでの歩みを振り返る貴重なインタビューだし、もう少し長く見たかったと個人的には思ったんですけど。

M:本当はもっと長かったんだけど、内容が支離滅裂だったし、あまりに滑舌が悪いからあれ以上は見たくなかったんですよ(笑)。もうちょっと滑舌が良くなった頃にまた撮り直します。

──いつまで待てばいいんですか(笑)。あのインタビューで、ファンク色が強まったグレイトリッチーズの後期にマモルさんがかなり煮詰まっていたと話していたじゃないですか。確かにマモルさんの本来の志向性とは異なると思うんですけど、あの時期のグルーヴィーでゴージャスなサウンドがあったからこそ今のDAViESに繋がるシンプルなロックンロールに辿り着いたわけで、あれはあれで必然だったのかなと思ったんですよね。

M:僕としては、やっぱりグレイトリッチーズの後期は辛かったかな。当時はレッチリみたいなミクスチャーが流行ってて、そういうファンキーなロックももちろん好きだったんだけど、そのカテゴリーだけにバンドをハメるのは凄い大変だった。ファンキーな音楽性一辺倒になるのがね。だんだんとライヴも1曲=10分以上みたいな感じになってきて、その後に1曲だけシンプルなロックンロールをやるわけにもいかなくなっちゃって。

──それで息詰まってしまったと。

M:これはどうしたもんかなと。しばらくは意地になって「このまま行っとけ! 1曲=20分でもいいぞ!」なんて感じでやれるところまで行ったんですけどね。でも、最終的にはもうどうにもなんないな、ってところまで行っちゃったんですよ。行き着くところまで行ってみないことには納得できなかったっていうのもあるけどね。だって、ロフトの何周年かのイヴェントで渋公に出た時(1991年9月25日に行なわれたロフトプロジェクト20周年記念イヴェント「GO! GO! LOFT」)、持ち時間の30分は1曲か2曲しかやりませんでしたから。あの時期は末期的症状でしたね(笑)。それでバンドが解散して1人になった時に、自分だけで何ができるかなと考えたら、結局はシンプルなロックンロールだったというわけです。要するに弾き語りの曲にドラムとベースを加えて唄えばいいんだっていうね。何だ、グレイトリッチーズの一番最初の頃と一緒じゃん、と思いましたけど。まぁ、今は1曲=2分半くらいだし、極端に長くなるか短くなるかどっちかなんですね(笑)。そんなふうに僕はけっこう極端な性格で、一度際限まで振り切らないと先に進めないんですよ。

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MAMORU & The DAViES
Texas Punk

MAGIC TONE RECORDS MAGI-0008
定価:2,100円(税込)/2012年4月18日(水)発売
*新曲『夢の原子力』のビデオクリップを含む、MAMORU & The DAViES初の映像作品(約50分)。

amazonで購入

【収録内容】
1. 夢の原子力(PV)*未発表新曲
2. 少年ロック(PV)*アルバム『MEXiCO MONK』より
3. 東京出発風景(ワタナベマモル弾き語りライブ at 前橋クールフール)
4. インタビュー1(グレイトリッチーズ結成など)
5. 森へ行こう(PV)*アルバム『MEXiCO MONK』より
6. ロックンロール賛歌(PV)*アルバム『SESSiONS』より
7. インタビュー2(グレイトリッチーズ解散など)
8. 余裕がない(MAMORU & The DAViES LIVE at 新宿クラブドクター)
9. とりあえずメリークリスマス(MAMORU & The DAViES LIVE at 新宿クラブドクター)
10. インタビュー3(MAMORU & The DAViES結成など)
11. 今週週末来週世紀末(PV)*アルバム『ヒットパレード』より
12. インタビュー4(現在に至るまで)
13. ヒコーキもしくは青春時代(PV)*アルバム『ヒコーキもしくは青春時代』より
14. キャデラック2号(PV)*アルバム『Pretty Swing』より
15. インタビュー5(『夢の原子力』についてなど)
16. キャデラック4号(ワタナベマモル弾き語りライブ at 前橋クールフール)

V.A.
マボトリ〜マボロシハンターズ・トリビュート〜

MAGIC TONE RECORDS MAGI-0007【2枚組CD】
定価:2,100円(税込)/2012年4月1日(日)発売
1993年〜2008年、関西パブ・ロック・シーンを駆け抜けたバンド「マボロシハンターズ」。2008年4月、マシンガンのようなギター・スタイル、そして稀代のソングライターでもあったバンドの中心人物「ツータン」が他界。このトリビュート・アルバムはそんな彼(バンド)の遺した名曲の数々をリスペクトしてやまない、豪華45バンドが参加して作られた、全パブ・ロック・ファン必聴&必携の2枚組CDだ! 今もパブ・ロッカーたちに脈々と受け継がれるスピリットが決してマボロシでないことを体験せよ!

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LIVE INFOライブ情報

リー・ブリロー追悼ライブ
2012年4月7日(土)下北沢SHELTER

OPEN 18:30/START 19:00
料金:前売 2,200円/当日 2,500円(共にDRINK代別)
出演:MAMORU & The DAViES/THE 3CHORDS/ミステルズ/ココロー&ヘルニアンズ/DJ:KAWATO
問い合わせ:下北沢SHELTER 03-3466-7430

マボトリ発売記念ライブ ウーララ編
2012年4月8日(日)京都西院 ウーララ

OPEN 18:30/START 19:00
料金:前売 1,500円/当日 1,800円(共にDRINK代別)
出演:MAMORU & The DAViES/ベルバット/タカダスマイル/三文からす
*オカモトマサヒコ欠席のため、タニー(The Specialty's)がベースを弾きます。
問い合わせ:ウーララ 075-925-8121

DVD発売記念“夢の原子力ツアー”
*無記名はワタナベマモル弾き語りライブ
4月1日(日)仙台 サテンドール2000
4月2日(月)郡山 #9
4月14日(土)上越 メモリー
4月15日(日)新潟 WOODY
4月21日(土)大阪 ムジカジャポニカ
4月22日(日)京都 ウェラーズクラブ
4月23日(月)岐阜 高橋商店
4月24日(火)今池 ハックフィン
5月2日(水)新宿 レッドクロス【MAMORU & The DAViES】
5月3日(木・祝)本八幡 サードステージ【MAMORU & The DAViES】
5月20日(日)新宿 LOFT
5月26日(土)北千住 カブ
6月2日(土)前橋 クールフール【MAMORU & The DAViES】
6月3日(日)静岡 サナッシュ【MAMORU & The DAViES】
6月9日(土)いわき バロウズ
6月10日(日)福島 マッチボックス
6月22日(金)美瑛町 HERMIT
6月23日(土)稚内 BB
6月24日(日)北見 夕焼けまつり
6月25日(月)静内 カバチ
6月26日(火)恵庭 モジョハンド
6月28日(木)南小樽 キッチンぐるぐる
6月29日(金)苫小牧 JAM
6月30日(土)札幌 フライアーパーク
7月1日(日)函館 オウンゴール
7月8日(日)伊那 グラムハウス
7月13日(金)神戸 チューリップハット
7月14日(土)宮津 ホワイトルーム
7月15日(日)島根県大田市 カフェギャラリーポー
7月16日(月・祝)仙台 エン【MAMORU & The DAViES】
7月20日(金)名古屋 ハックフィン【MAMORU & The DAViES】
7月21日(土)大阪 ハウリンバー【MAMORU & The DAViES】
7月22日(日)福岡 エキマエ音舗【MAMORU & The DAViES】
7月28日(土)小田原 鴨宮姿麗人【MAMORU & The DAViES】
8月11日(土)久留米 サンライズカフェ
8月12日(日)宇部 ZAN☆CRO BLUES
8月18日(土)伊勢 バンブーバー
……その他、続々決定中!

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