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INTERVIEW

トップインタビュー能町みね子(2011年9月号)「"あなたは悪くないんだけど、何か言いたくなっちゃう"というのをまとめた本です」

「“あなたは悪くないんだけど、何か言いたくなっちゃう”というのをまとめた本です」
『ドリカム層とモテない系』発行間近!

2011.09.01

 本誌では"中野の森BAND"を執筆して頂いている、能町みね子さんの『ドリカム層とモテない系』が10月5日に発行される。このシリーズには『くすぶれ!モテない系』(文庫/2011年2月発行)、『呻け!モテない系』(2009年4月発行)があり、女子を"モテ系"と"モテない系"に分類、その生態を観察し、"モテない系"女子から絶大な支持を得ている。今回発行される『ドリカム層とモテない系』はブックマン社サイト内で掲載していたコラム+αがまとめられたもの。こちらを読んで、共感出来ること多々、能町さんとお話をしてさらに共感すること多々。結果的に自分は"モテない系"なんだと改めて実感。この本を読んでどうなるかと言われてどうなるのか私にもわからないが、価値観のひとつとして取り入れるのは良いのかもしれない。(interview:やまだともこ)

“モテない系”?“ドリカム層”?

04-.jpg── ゆるっと始めましょうか。
「無駄話を(笑)」
── 今回発行される『ドリカム層とモテない系』は、ブックマン社さんのサイト内で掲載していたコラムの書籍化ということですが、どんな内容になっているんですか?
「以前『くすぶれ!モテない系』という本を出して、その時は“モテない系”と“モテ系”とおおざっぱにふたつに分けていたんですけど、どっちつかずの人たちをもっと取り上げたいと思ったんです。モテ系と言ったら昔はエビちゃん(蛯原友里)が象徴的で、ファッションだけじゃなくて性格的な面でモテたいという考えについてなんのうしろめたさもない、女性性を活かせる人たち。“モテない系”は自意識が過剰な人。そのどちらでもなくて、普通に女性らしさはあるんだけど、趣味も特になさそうだし、特徴もない、という人たちのことを無理矢理まとめていこうと思って、それを「なんとなくドリカムが好きそう」ということで“ドリカム層”と呼ぶことにしたんです。ミュージシャンとしてのドリカムって、一番メジャーで誰にも嫌われにくいところにいると思うんです。ドリカム層はホワッとした、毒にも薬にもならないような感じの人たちで、やわらかいものだけが好き。自分が女性だという自意識もさほど強くなくて、結果としてすごく家庭的。ステレオタイプなところにキレイにハマっていく人たちみたいなところを書きたかったんです。ドリカム層の子は本当に考え自体が見えないので、実はモテない系が一番苦手な部類なんですよ」
── WEBでの連載が基本に?
「そこにオマケとして、“シティリビング”というOL向けのフリーペーパーに連載していたモテない系の相談コーナー(モテない系よ ゆるふわの森に呻け)から気に入ってるものを十何点か加えて、あと集英社の“小説すばる”に書いた“セックスとモテない系”というコラムを入れてます」
── 『くすぶれ! モテない系』では、「これを読んでもモテ子にはなりません」といった序章がありましたが、今回はどういう気持ちになるんでしょうね。
「どうなるんだろう。モテない系が、自分のマイノリティーぶりと世間との折りあわなさとを再認識するような感じになっちゃうんでしょうね(笑)」
── 人を観察したり、分析したりするのが好きなんですか?
「観察は好きです。分析も好きです」
── となると、能町さんの周りのドリ子さん方(=ドリカム層)がこの本のモデルになっていることもありそうですよね。これ私じゃないかと言われたりしないですか?
「ドリカム層の子は、これを読むと自分がドリカム層だと思うみたいで。それが意外だったんです。そういう自覚があるんだなって」
── 能町さんは御自身を何系に分類してますか?
「モテない系になるんじゃないんでしょうかね。自意識が薄いワケないですから。でもドリカム層について書いてみて、“モテない系”とか“モテ系”の部類にいても、子供を産む事によってだいたいドリ子になっちゃうんだなということも思っています。子供にかかりっきりというのは、自意識が少し薄れちゃうことなんじゃないかって。だから、女性の大半は私の中ではドリ子だと思っています」
── 私もどちらかと言えば“モテない系”の部類に自分を括りましたよ。あと、先ほど子供を産む事によって、モテない系もドリ子になるとおっしゃいましたが、今赤ちゃんを産む予定とか全然ないんですけど、“ママ友”と言われるグループに自分が入っていけるのかと考えるだけで憂鬱で仕方ないんです。
「ママ友とか辛いですよね(苦笑)。ドリ子って育児界にサラッと行けるんですよ。私はそれが悪いことだとは思ってなくて、むしろ向こうのほうが幸せだと思います。でも、ラジオとか聞いてて自分のことを“ラジオネーム・よっくんママ”なんて名乗る人がいると、自分はどこに行ったんだって思っちゃいますね。なんでそれが許せるのかって思っちゃうんですよ。ドリ子は、当たり前のことを当たり前に出来る人たち。感動大作の映画を見て超泣けましたって言えるし、売れてると言われる商品を買うし、ディテールにこだわりがない。ただ、あからさまに批判できるほど悪いことをしてるわけじゃないんですよね(笑)」
── アクが強いわけでもないですからね。
「“あなたは悪くないんだけど、何か言いたくなっちゃう”というのをまとめた本です(笑)」
── 私の意見を聞いてくれと。
「そうですね(笑)。で、わかるわーってだけで良いんです。責めるわけでもないですし。ただこっちが勝手に苛つくだけで、その子は悪い事はしていない。ピュアだから責められないんですよ」

ついつい外野から文句を言ってしまいたくなる

── こういうエッセイを書くにあたり、どれぐらいの人に会ったんですか?
「取材もないし、統計もないし、それでいいのかっていうぐらい当てずっぽうと妄想で書いてます。だから、もしかしたらまるで的はずれのことを言ってるかもしれない。取材とかしてもいいんですけど、漠然と普段感じる空気感から無理矢理引っ張り出した方がこういう話は面白いんじゃないかと思って。調べたことと言ったらmixiのママコミュニティーを見たぐらいです。あと、ドリ子はTwitterで芸能人をいっぱいフォローして話しかけるイメージがありますね。私、芸能人から返事が来た人のTLを見るのが好きなんです。そういう人って、四方八方コメントを書いてなんとか相手にしてもらおうとしていて、言っちゃあ悪いけど、すごい見苦しい。相手にしてもらいたい欲がすごいんですよ。普通ちょっと考えれば芸能人は何十万人もフォローされてるし、いちいち返事できないことぐらいわかるだろうに、なんで返事くれないんですか? ぐらいの感じでコメントを書いていて。それが必ずしもドリカム層かと言われたらわからないですけど。あとTwitterの話になっちゃいますが、平気でキャリアを晒しちゃってる人っていますよね。それで芸能人を罵倒するという、このメンタリティーがわからない。男の人でそういうことをしてる人は、『缶ビール男子』なのかなと」
── 缶ビール男子は『ドリカム層とモテない系』でも触れてますね。あれもまた良いネーミングですよね(笑)。
「缶ビール男子はSPA!読者のイメージで、これと言って何のポイントもないフローリングの部屋に住んでいます。ドリ子と缶ビール男子は相性が合うからほっとけば良いんですけど、ついつい外野から文句を言ってしまいたくなるという本だから。あんまり高尚な目的があるわけじゃないんですよ(苦笑)」
── でも、不況だと言われる中で、能町さんはコンスタントに本を出版されてますよね。
「昨年は出させて頂いてますね。『お家賃ですけど』『四巨頭会談—男好きの男と女好きの女と女だった男と男だった女』『おんなふたり、ローカル線めぐり旅 うっかり鉄道』とかがありました。ありがたいです」
── ところで、WEBの連載では最後にギャル母についても少し触れられていましたけど、これは今後に期待しちゃって良いんですか?
「ギャル母の研究は周りにいないから難しいでしょうね。でも、7月にロフトプラスワンで“モテない系女子と非モテ男子”というイベントを一緒にやった大山顕さんに今後話を聞きたいとは思っています。男の人の考え方も大事だなと思うので」
── 大山さんって自分のことを非モテ男子って言ってますが、全然非モテじゃないですよね。
「私も大山さんがあれだけモテないって主張する理由がわからないんです。たぶん学生時代に熟成されたんだとは思うんですけどね。大山さんは『男に友情はない』ということを一番のテーマにしていて、その話を聞きたいんです。女に友情はなくて、男の友情は熱い、というのが一般的考えですけど、大山さんは逆だと言っていて」
── スポーツ系ドラマとか男の友情ばかりじゃないですか。
「あれは一部だって」
── ひねくれてますね。
「でも納得出来る部分もあったんですよ。バディものみたいなものもありますけど、現実で考えたらそんなにあるかなって。スポーツとか芸人とか師弟関係が生まれるところにはありますけど、文系的なところにはないというか。それに女子の友情がないってことはなくて、私の周りで考えても、昔からの友達で、おばちゃんになっても仲が良い4〜5人で旅行したりとかよく見ますし。所謂女子中高生のドロドロが取り上げられるから、女の友情は汚いってなりますけど、そんなの学生時代や職場のごく一部で特殊例の気がするんですよね。私も学生時代から仲が良い友達もいますし、一緒に旅行も行けるし、女の友情がないなんてこと全然ないなと思って」
── となると、大山さんがどんな学生時代を送っていたのかがすごく気になります(笑)。
「学生時代モテなかったっていうのは本当だと思いますね。運動も出来なかったらしいので。そういう人って学生時代はモテないですからね。でも、大学だの社会人だのである程度のところに達したんだろうなって思いましたよ。男に友情はないというフレーズが強いから、その話を大山さんとしたいんですよ」
── それと、10月には『モテキ』の作者である久保ミツロウさんとの女子限定イベントがありますが、ここでもドリ子をぶった切っていくんですか?
「イベントはドリ子がどうというわけでもなく、私たちはモテないという前提から始まって、それについての恨み辛みをただ言うだけ(笑)。Twitterでも言えない、そこだけで終わりにして欲しい話を用意しています。もともとはある飲み会で参加していた女の人に腹が立って、誰かにグチりたいと思って久保さんに夜中に電話しちゃったんです。どれだけ嫌な女だったかを延々喋って、その間にこれイベントやろうっていう話になって…」
── ということは、出版記念ではなく?
「出版記念にはしますけど、本の内容とはあまり結びつかない。一応“モテ”のキーワードはありますけど、あんまり踏み込まないですね、本の内容には」
── それは聞かせちゃって大丈夫ですか?
「閉じてくれれば大丈夫です。USTとかも絶対やれません(笑)」
 

お詫びと訂正:本誌9月号にて、『ドリカム層とモテない系』の発売日が10月1日となっておりますが、正しくは10月5日が発売日となります。読者および関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びし、訂正させていただきます。

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ドリカム層とモテない系
能町みね子

発売日:2011年10月5日
定価:1,260円
出版社:ブックマン社

amazonで購入

LIVE INFOライブ情報

10月6日(木)ロフトプラスワン
「男子禁制!! 俺たちデトックス女子会」
〜映画『モテキ』公開記念&『ドリカム層とモテない系』出版記念トークショー〜

映画公開と出版を言い訳に、恋愛的底辺の立場を取る久保ミツロウと能町みね子がただ人前で毒を排出します。Twitterにも書けない、別に映画も出版も関係ない宿便的な愚痴をただ垂れ流します。USTなんかやるわけない!こんなん誰が聞くんだ!いや聞いてくれ!
恋愛相談コーナーもあるかもしれませんが、あったとしたら私たちの相談をお客さんに聞いてもらうコーナーだと思います。私たちをカウンセリングしてください…。
※男子禁制です。
開場18:30 開演19:30
料金:前売2000円 当日2300円

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