今年3月にシングル『ユラリユララ』を発表した後はアコギ・ツアー"一人フラリフララお前に途中下車!"を約1ヶ月半にわたり断行するなど精力的に活動を続けている中島卓偉がおよそ6年振りに新宿LOFTへ還ってくる。それも"男子限定GIG"という一風変わった趣向のプレミアム・ライヴでだ。その端正な風貌と相反するように武骨で男らしい彼が市松模様のステージで魅せる迫真のライヴが一体どんなものになるのか、リハーサルを目前に控えた本人を直撃した。(interview:椎名宗之)
旧LOFTは僕の青春
──卓偉さんが新宿LOFTに出演するのは“BEATSONIGHT! Vol.5”(2005年9月6日)以来ですよね。
卓偉:そうですね。それ以前は小滝橋通りにあった頃のLOFTにしか出たことがなくて、6年前に出たのは歌舞伎町へ移転してから初だったんです。僕の青春は旧LOFTだったんですよ。
──旧LOFTに出演したのはソロ活動の初期ですか?
卓偉:いや、バンド時代です。昼の部のオーディションを兼ねたライヴで、店が立ち退きになる1、2年くらい前の時期でした。“KEEP the LOFT”というLOFTの存続を訴えたイヴェントもやってましたよね。
──よくご存知で。LOFTを愛する数多くのバンドマンが集まって、'94年7月に日比谷野外音楽堂で“KEEP the LOFT 〜で で で 出てけってよ〜”という大掛かりなイヴェントをやったんですよ。卓偉さんはお客さんとしてもLOFTへ足繁く通っていたそうですね。
卓偉:一番よく見たのはライダーズでしたね。あとはスター・クラブとかニューロティカとか、ジャパニーズ・パンクばかりで。
──卓偉さんを「自慢の後輩」と呼ぶ森重樹一さん率いるジギーをご覧になったことは?
卓偉:ギターの松尾宗仁さんが復帰した時にジギーを名乗らずにキング・オブ・ジプシーズという名前でシークレット・ライヴ・ツアーをやったことがあって、それは見に行きましたね。
──やはりLOFTの市松模様のステージには格別の思い入れがありますか。
卓偉:もちろん。LOFTと言えばあのステージの模様がイメージとして強いですから。LOFTの20周年を記念したイヴェントが日本武道館であったじゃないですか。遠藤ミチロウさんからスピッツまで錚々たる面子が出演して。
──“ROCK OF AGES 1997”ですね。スピッツはミストラルというLOFTにあったインディーズ・レーベルからCDを出したことがあるんです。
卓偉:そうでしたよね。その武道館のイヴェントは2階席の一番後ろのほうで見たんですけど、その時もステージがちゃんと市松模様だったし、LOFTと言えばあのイメージですね。僕にとっては歴史の重みを感じるライヴハウスです。
──そんなLOFTで“男子限定GIG”という趣向を凝らしたライヴを断行されるわけですが、こうした一風変わったライヴは今まであまりなかったですよね。
卓偉:以前から男子限定でライヴをやろうとずっと考えていたんですが、今回ようやく実現できることになったんです。僕のライヴは男性客も多いし、男子限定のライヴをシリーズ化できたらいいなと思って。
──“Real Hot Bollocks!”というタイトルも面白いですよね。セックス・ピストルズかい!? っていう(笑)。
卓偉:そうなんですよ。判るヤツには判るって言うか、“コイツ、判ってるんだな”って思えてもらえたら嬉しいですね。あと、男だけの初めてのライヴということで“Cherry”って言葉を使ってるんですけど(笑)。当日に販売するTシャツも、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのバナナに対抗してサクランボでお送りしようと思ってます(笑)。これは完全に男子限定Tシャツなので、女の子は彼氏に買ってきてもらうしか手はないかもしれません(笑)。ただ、男子サイズだから女の子に合うサイズは作りませんけどね。
──パブリック・イメージとしては卓偉さんのライヴに男性客が数多く詰めかけていることを意外に思う人は多いかもしれませんね。僕は拳を振り上げてライヴを楽しむ男性客を何度も目撃していますが。
卓偉:「卓偉さんのライヴは女の子ばかりかと思ったら男も多くて嬉しくなりました」っていう声をいつももらいますからね。女性であろうと男性であろうと、楽しんでもらいたいという気持ちは同じなんですけど。
──男性客は卓偉さんと同世代の人が多いんですか。
卓偉:僕よりもちょっと下くらいが多いんじゃないですかね。でも、10代の子もいれば年輩の方もいるし、幅広い層がライヴに足を運んでくれますよ。年代は意外と散らばってる気がしますね。
──卓偉さんのことを“アニキ!”と慕う男性客もいるんでしょうね(笑)。
卓偉:どうでしょうね(笑)。自分はまだ32なので、もうちょっと歳を重ねればそんなふうに呼ばれることもあるんでしょうけど。ただ、僕はソロ名義で活動をしていながらもバンドっぽい音作りをしているせいか、バンドをやってる男子も多いみたいですね。それは凄く嬉しいことです。
LOFTに縁の深いバンドのカヴァーも!?
──それにしても、キャパシティ550人のLOFTが男だらけになると、さぞむさ苦しいことになるんじゃないかと思いますが(笑)。晩夏とは言え、まだ暑そうですし(笑)。
卓偉:当日はスタッフも全員男だけっていう縛りにしようと思って(笑)。スタッフも女性は来られないっていう、とことんメンズにこだわったライヴにしようかなと。
──“なんで男子限定なの!?”とやっかむ女性客が山ほどいるでしょうね。
卓偉:「USTREAMで生中継はやらないんですか?」という問い合わせも頂いてるんですけど、それじゃダメなんですよ。狭い空間の中、限られた人数の男だけでライヴをやることに意義があるので。まぁ、発表するかどうかはさておき、映像に残しておくのはアリかもしれないですけど。
──イヴェントのPR動画をYouTubeで拝見したんですが、「ライヴのハイライトは上半身裸です」と仰っていましたよね。
卓偉:そうですね。アンコールはシャツを脱いでブンブン振り回すのが一番でしょう(笑)。アップテンポのナンバーで駆け抜けていくつもりなんですけど、この日しかやらない曲もいくつかやろうと思ってます。詳しいことはまだ言えませんが、LOFTに縁の深いバンドのカヴァーもやろうかなと。
──赤坂BLITZの翌日にLOFTでライヴをやるというのは、日本武道館の翌日にLOFTでライヴをやったARBを彷彿とさせますよね(笑)。
卓偉:判りやすく言うとそんな感じですね(笑)。さっきも言ったように、これをシリーズ化できたらベストだと思ってるんですよ。ずっとLOFTでやることにこだわってもいいと思いますし。LOFTって言うと、僕の中では男っぽい硬派なイメージがあるんですよね。自分がティーンエイジャーの頃に通ったLOFTも圧倒的に男性客が多いハコだったので。
──LOFTでの男子限定GIGを含めた東名阪のツアーはタイトルからして夏祭りの様相を呈していますし、セットリストはいつもと違う特別なものを期待して良さそうですか?
卓偉:もちろんです。特にLOFTの場合は男の前でバラードを唄うのもどうかと思って(笑)。それならアップテンポの曲だったり、みんなで大合唱できる曲をやるほうが面白いですからね。あと、LOFTは女子がいないぶんMCが荒っぽいものになると思います(笑)。普段言えないようなことまで言っちゃうでしょうね。
──僕は卓偉さんにインタビューするたびに気骨のある男らしさを感じるし、卓偉さんのMCに野太い声で呼応するフロアが今から目に浮かびますよ(笑)。
卓偉:やっぱり、男子限定のライヴはMCが凄く大事ですよね。メッセージ性が強くなりすぎると説教くさくなるので気をつけたいですけど、僕が32年間生きてきた中で培ってきた“男のグルーヴ”みたいなものを伝えられたらいいなと思って。
──“男のグルーヴ”っていいですね(笑)。
卓偉:まぁ、単純に“男らしさ”でも構わないんですけどね(笑)。僭越ですけど、“男とは!?”みたいなことを伝えたいです。それとLOFTの思い出は絶対に喋りたいし、集まってくれたことに対する感謝の気持ちで迎えたいですね。
──ライヴ見たさに男装した女性が紛れ込んだらどうしますか?
卓偉:そうやって男子限定ライヴに紛れ込む人ってけっこういるみたいなんですけど、今回はNGですね。受付でボディ・チェックをやることにしましょうか?(笑) まぁ、いつか女子限定ライヴもやってみたいですけど、その前にまず男子限定ライヴを成功させたいですね。