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INTERVIEW

トップインタビューLOFT & master+mind presents『Triple Colors Night』開催記念特別対談 ガラ(MERRY)×高野 哲(nil / THE JUNEJULYAUGUST)

絶えず何かを発信し続け、境界線を軽やかに突破する姿勢

2011.03.18

さる2月24日(木)に新宿ロフトで行なわれた「LOFT & master+mind presents『Triple Colors Night』」は、nil、キノコホテル、MERRYという異ジャンルの3組がその個性を余すところなくぶつけ合い、ジャンル間の垣根やオーディエンスの先入観を諸共打ち壊した好企画だった。イヴェントに先駆けて執り行なったガラ、エマニュエル小湊、高野 哲という3組の代表者による座談会に引き続き、当日の打ち上げ時に行なわれたガラと高野の対談をweb Rooftopでは特別に掲載。酔いどれつつも互いのバンドの確たる在り方について真摯に語り合う両者には、今後ともあらゆる境界線を軽やかに突き破り、閉塞した状況に風穴を開け続けて頂きたいものだ。(文・構成:椎名宗之/写真:o-mi)

バンドの本来在るべき姿をnilに見せ付けられた

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──今日は本当にお疲れ様でした。何はともあれ、まずは乾杯と行きましょうか。

高野ガラ:お疲れ様でした![と、互いに発泡酒の入ったグラスで乾杯する]

ガラ:あれ? 何かビールと違いますね。何でこう水みたいにスッキリしてるんだろう?

高野:発泡酒はグイグイ呑めてキケンですよ。とんでもない劇薬です(笑)。

──今日のライヴの手応えは如何でしたか。

ガラ:nilもキノコホテルもリハーサルから見させて頂いたんですけど、それぞれにバンドの特性が出ていて面白いなと思いましたね。リハでの哲さんは「サラッとやります」みたいにラフな感じなんですけど、アイコンタクトで演奏する曲がどんどん変わっていったじゃないですか。その柔軟さはバンドの幹がしっかりしているからこそだろうし、凄いなと思いました。アイコンタクトって、やろうと思ってもなかなかできないですからね。

高野:昔は本番中にやる曲をよく変えてたんだよね。演奏しながら何か違うなと違和感を覚えるとそうしてた。俺始まりの曲だったら打ち合わせもなく違う曲を弾き出しちゃうんだけど、それでも他のメンバーはちゃんと付いてこれるんだよ。ただ、ガラ君が今言ったアイコンタクトっていうのは、多分3人だからやれているんじゃないかな。MERRYみたいに5人じゃ難しいと思うよ。

ガラ:僕はそのアイコンタクトに凄くバンド感が出てるなと思って、リハの時からnilに圧倒されたんですよね。

高野:要するに、手を抜くのが上手いってことなんじゃないかな。上手いことラクして本番に繋げたいって言うかさ(笑)。誤解を恐れずに言えば、俺は本番で一番手を抜きたいんだよね。PAも照明もそのライヴハウスの人にやってもらうから、リハはバンドのダイジェストを理解してもらう貴重な時間なんだよ。ワンマンなら前もって音資料を渡して臨めるんだけど、今日みたいなライヴだとバンドの全体像をダイジェストで見せたほうが理解が深まるんだよね。リハでそういうのを100%出し切っておけば、本番で手を抜いても大丈夫っていうさ。

ガラ:nilの場合、ステージに立って音を出せばそれで成立するという凄くシンプルなスタイルじゃないですか。もしかしたらそれがバンドの最終的に在るべき形かもしれませんね。僕らにはとても真似できないし、やろうと思ってもできることじゃないですよ。僕らもステージ上で見せ場や切り替わりの節目みたいなものがあって、それが自然にできた時は5人の気持ちが一緒になれていて、その噛み合う瞬間が音楽をやる上で一番楽しいと思うんです。nilはそういうのをごく自然体でやれているんですよね。だから今日はバンドの本来在るべき姿をnilに見せ付けられた気がしますし、そういうのは揺るぎない自信がなければできないことだと思うんですよ。

高野:俺は今日初めてMERRYを見て、久しぶりにギターなしでハンドマイクだけで唄ってみたいと思ったな。ガラ君が凄く気持ちよさそうに唄ってたからね。あと、5人それぞれのパートが自分の立ち位置をしっかりと見せ付けながらステージを引っ張っていくって言うか。俺はギター&ヴォーカルだから立ち位置が2つあって、唄い終わったらギター・ソロを弾かなくちゃいけないし、“ああ、面倒くせぇ!”って思うこともたまにあるんだよね(笑)。

──でも、哲さんの場合は弾きながら唄う姿が絵になっているわけじゃないですか。

高野:なっていればいいんだけどね。でも今日は細い身体でハンドマイクを握り締めて唄うガラ君が凄く格好良くて、久々にハンドマイクで唄うのもいいなと思った。

ガラ:凄く嬉しいですね。今日のnilのステージは凄くパワフルでしたし、さっきも言いましたけど「これぞバンド!」っていう音でしたし、ただただ気圧されるままに見ていました。ある程度の決まり事がある上でも敢えて決め事をしないと言うか、その場の空気を純粋に楽しむnilのスタンスが僕は凄く羨ましいんです。本番前の楽屋での僕らはヘンに自分たちを追い込んでしまうところがあるんですけど、nilの場合は「これから遊びにでも行くか?」みたいな佇まいなんですよね。楽屋での哲さんたちのそんな姿を見て、これは場数の違いだなと思いました。

高野:場数と言うより、メンバーとの密度や深さなのかもしれないね。

MERRYはライヴの楽しみ方をちゃんと伝えている

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──楽屋ではリラックスしていたほうがステージで全力を出せるものなんでしょうか。

高野:どうなのかなぁ。ヤケクソが板に付いたっていうのはあるかもしれない(笑)。ヤケクソも10年続けばなるようになるって言うか(笑)。俺は楽屋とステージの気持ちの切り替えをあまり意識していないんだよね。新曲が多いライヴだと“歌詞を覚えてるかな?”とかヘンな緊張をする時はあるけど、さっきも言ったみたいに本番までに100%の準備をしているつもりだからさ。そこまでやっておけば何とかなるだろうって思ってる。それは言葉を変えればヤケクソってことなんだよね。今日はMERRYのお客さんの前でやることを意識して事前に曲順を考えていたんだけど、今朝になってそういうのも違うなと思って、やっぱり現在進行形の自分たちを見せようと思い直したんだよ。

ガラ:nilのステージを見て、音に乗せて音に酔わせるっていうのはこういうことなんだなと思いましたよ。これは自分自身の課題でもあるんですけど、こっちが煽れば確かに反応はあるんです。でも、nilの場合は特に煽らなくてもそれぞれのパートがしっかりとお客さんの反応を促していますよね。

──今日のMERRYのセットリストは、nilとキノコホテルのオーディエンスを意識したところがあったんですか。

ガラ:異種格闘技戦という部分を踏まえつつ、40分の中でどうすればMERRYの持ち味を存分に発揮できるかを考えましたね。どこか一部分でもいいから引っ掛かるところを作りたかったので、頭はガツンと行きつつも真ん中に歌モノを2曲挟み込んだりして。あとは割と自由にやらせてもらいました。nilもキノコホテルも小手先の仕掛けをしたところで勝てる相手じゃないし、そこで何か駆け引きみたいなことをやっても意味がないと思ったんですよ。だったら実直に自分たちらしさを出すしかないんです。ここ最近は異種格闘技のライヴが多いので、自分たちらしさとは何なのかを改めて考えることが多いし、バンドと向き合う機会が増えたんですよね。

──とは言え、対バンのオーディエンスを根こそぎブン取ってやろうというのはバンドとして健全な対抗意識なのでは?

高野:確かにね。昨日、長野でニートビーツやハンサム兄弟とかと対バンして、ニートやハンサムと一緒ならnilのこんな曲がハマるかな? とか考えて臨んだんだけど、逆にしっくり来なくてね。それで今日はMERRYとキノコホテル・シフトの曲順をやめたんだよ。やっぱりまずは自分たちが気持ち良くやれるセットリストじゃないと、お客さんを昂揚させられないよなと思ってさ。俺はMERRYのライヴをいろんな角度から見ていたんだけど、お客さんの反応が凄く印象的だった。今日のMERRYのお客さんの笑顔は凄く良くて、とにかく楽しみたい! っていう雰囲気を感じたんだよ。それが凄くいいなと思って。バンドから煽られてステージを凝視するわけじゃなく、みんな思い思いにライヴを楽しんでいるハッピーな雰囲気があってさ。ライヴを見に来ていたTHE JUNEJULYAUGUSTの(佐藤)統にそのことを話したら、「MERRYがライヴの楽しみ方をちゃんと伝えているからお客さんも自然とそうなるんですよ」って言っていて、まさにそういうことなんだよね。メンバーが「ジャンルのカテゴライズなんてぶっ壊そうぜ!」というアティテュードをちゃんとお客さんに伝えているからこそ、異種格闘技の対バンでもお客さんは貪欲に楽しもうとするし、いい笑顔にもなるんだなと思って。

ガラ:自分たちとしてはヴィジュアル系のカテゴライズから飛び出していきたいと思いつつも、やっぱり言うほどラクじゃないんですよ。自分たちが考えている以上にカテゴライズされているところがあるし、だからこそ今日みたいなイヴェントは僕らにとって凄く重要なんです。こうして哲さんと話せる機会も頂けましたしね。できることなら月一ペースでカテゴライズを突破するイヴェントに出たいくらいなんです。またロフトというライヴハウスのイメージも大きいんですよ。日本のロック史に残るバンドを輩出し続けて、今もずっと新進気鋭のバンドを育てているじゃないですか。それも含めて、ロフトに出るというのは特別なことなんです。どんなバンドであれ、ロフトに出ることは特別な感情があると思うんですよ。

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