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INTERVIEW

トップインタビュー雨宮処凛 presents『バンギャル ア ゴーゴー』Vol.1 開催記念座談会 seek(Mix Speaker's,Inc.)×雨宮処凛×幸樹(ダウト)

苦節20年のバンギャル・イヴェント、遂に本格始動!

2011.01.17

虐げられた感覚が“好き”を深める

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──seekさんがバンドを始めた12年前と言うと、雨宮さんはバンギャルを一時お休みしていた時期ですよね。

雨宮:そうなんです。当時はちょうど右翼活動真っ盛りの頃で。2000年に『生き地獄天国』でデビューしてから8年間くらいは右翼活動やプレカリアート問題に携わってきたんですけど、一昨年の9月に第2次ヴィジュアル・ブームが自分の中で突如巻き起こったんですよ。2006年に講談社からこの本(『バンギャル ア ゴーゴー』)を出したんですが、これは4年掛けて書き下ろしたものなんです。その間にバンギャル熱がどんどん高まってきて行き場がなくなって、またライヴを見に行きたくなったんですね。30を過ぎてるのにライヴハウスになんか行っていいものかどうか悩んだりしたんですけど、行き出したら歯止めが利かなくなってしまったんです(笑)。

seek:大人になればお金も自由に使えるし、ライヴは存分に見られますよね。学生の頃はコツコツお小遣いを貯めて、買いたいモノを我慢して1本のライヴを何とか見るような感じじゃないですか。でも、その飢餓感や親御さんから反対されることで好きの度合いが深まるものですよね。「それでも私、好きやねん!」っていう。最初からライヴは好きなように見られて家族の理解もあるようじゃ、そこまで好きにならないかもしれない。

雨宮:確かに。私も親や学校といった周囲の弾圧が激しかったですし。

seek:ヴィジュアル系は特に、「ああ、ヴィジュアル系ね…」って色眼鏡で見られることが多いですからね。その虐げられた感覚がヴィジュアル系をより深く好きになるきっかけになるような気がします。

幸樹:ヴィジュアル系に対する理解の幅は広がったように思いますね。僕自身、ヴィジュアル系は大好きだったし、高校生の頃はヴィジュアル系しか聴かなかったほどなんですけど、その当時に比べるとヴィジュアル系に入っていきやすくなったんじゃないですかね。

seek:当時よりもヴィジュアル系がどんどん細分化されていって、ヴィジュアル系という括りだけじゃとてもカテゴライズできないいろんなバンドがいるじゃないですか。状況は確実に変わりましたよね。

──ヴィジュアル系は、今やジャパニメーションと共に海外にも広く浸透しているユース・カルチャーにまでなりましたしね。

雨宮:昔話で申し訳ないんですけど、私がインディーズ時代のLUNA SEAや黒夢のおっかけをしていた頃は海外進出なんてとても考えられなかったんです。だから、10年くらいのブランクから戻ってきた時に凄くびっくりしました。

seek:初めて海外へライヴをしに行く時はちょっと怖かったですね。

幸樹:ああ、確かに。

seek:お客さんなんて誰もおらへんとちゃうん? って思ってましたから。お客さんゼロやったらどうしよう? みたいな。

雨宮:海外での初ライヴは何処だったんですか?

seek:最初はアメリカのアナハイムでしたね。当時はもうインターネットが普及していたので、情報に飢えたアメリカのファンが熱心に調べ上げていたんです。ツアー中にジャパン・タウンに行ってみたら『FOOL'S MATE』や『SHOXX』といった雑誌も売ってたんですよね。知りたいとか調べようとする欲求がどんどん「好きや!」という気持ちに繋がっていたんだろうし、そういう下地があったのでお客さんの盛り上がりも凄かったんですよ。「今日しか見られへんねんで!」みたいな凄まじいテンションで(笑)。最近は日本のライヴにも来られている海外のお客さんも増えてますよね。

幸樹:よく見かけますね。

seek:MCを見ててもおもろないやろなぁ? なんて思いつつ、僕は喋り好きやからついつい喋ってしまうんですけど(笑)。

インターネットには熱量も匂いもない

雨宮:幸樹さんの海外初ライヴはどちらだったんですか?

幸樹:スペインのバルセロナでやらせて頂きました。ウチらの登場はドラムから入って、僕が一番最後なんです。その時に初めてヴォーカルで良かったと思いましたね(笑)。現地のお客さんもかなり熱狂的で、歓声がとにかく凄かったんですよ。バラードをやっても何をやっても反応が同じなので、最初は少々戸惑いましたけど、受け入れてもらえて安心しました。自分たちの音楽でそこまで熱狂的になってくれるのが嬉しかったし、ツアー・ファイナルの日本でのライヴがちょっと物足りなく感じたほどなんです。

雨宮:海外でのMCはやっぱり英語なんですか?

seek:通訳の方に現地で盛り上がる言葉を教わったりしますけど、大して伝わってないような気もしますね(笑)。でも、「OK! OK!」って熱狂的に迎え入れてくれますよ。以前、海外のライヴでお芝居をやったことがあるんです。通訳の方に監修してもらって自分たちで吹き替えをしたんですけど、僕らの英語は「イタリア訛りに聞こえる」と言われましたね。

雨宮:私、イラクでライヴをやったことがあるんですよ。その時はアラブ語の曲を覚えて唄いましたね。

──国内外問わず、自ら貪欲に情報を掻き集めるヴィジュアル系のファンは、20年前のバンドブームのファンによく似ている気がするんですよね。

seek:今の時代、YouTubeとかいろんな動画サイトでそのバンドを見た気になれたり聴いた気になれたりしますけど、今回のようなイヴェントに足を運んでもらえるのが僕らとしては有り難いんですよね。ついついインターネット上の疑似体験で済ませてしまう風潮にありますけど、そこには熱量もなければ匂いもないんですよ。ライヴハウスへ行く独特の怖さも感じられませんしね。昔は怖かったですからね、ライヴハウスに行くのが。周りの人がみんな大人に見えたし、バンギャルのお姉さんたちに怯えながら「どうやって最前列に行こう?」と思ってましたから。

雨宮:今回のイヴェントは、ライヴハウスから遠ざかっていた人たちも是非遊びに来て頂きたいんですよ。元バンギャルで今は結婚している私と同世代の人たちとか。

seek:それはいいですね。この間、LUNA SEAを見に行ったんですけど…。

雨宮:私も行きました!

幸樹:僕も行きました。

seek:僕、幸樹さんを見かけましたよ。「黒服限定GIG」の日じゃなかったですか?

幸樹:2日連続で行ったんですよ。今回ばかりは関係者としてではなく、いちファンとして見に行こうと思ったんです。

seek:僕は黒服限定なのに黒服を着て行かなくて大ひんしゅくを買ったんですよ(笑)。

幸樹:ちゃんと入れました?

seek:何とか大丈夫でした。そんなにキラキラした服は着ませんでしたけど、普段は黒い服をあまり着ないんですよ。でも、場内に入ると黒服ずくめで、あの光景は凄く感動しましたね。今は会社員だったり主婦だったりする人たちが気合いを入れて黒服を着ていて。それを見て、最近はライヴに行ってない人たちも結構いるんやろなと思ったんです。じゃないと、東京ドームにあれだけ集客できないでしょう?

雨宮:ですよね。X JAPANのライヴも子連れのお客さんが多いですし。

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LIVE INFOライブ情報

雨宮処凛 presents『バンギャル ア ゴーゴー Vol.1』〜supported by master+mind〜
2011年1月20日(木)新宿LOFT
出演:Mix Speaker's,Inc. / ダウト
OPEN 18:00 / START 19:00
ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000(共にドリンク代別)
*チケットはぴあ(P:125-639)、LAWSON(L:79755)、e+(http://eplus.jp)、新宿LOFT店頭にて発売中。
問い合わせ:新宿LOFT 03-5272-0382

雨宮処凛 presents『バンギャル ア ゴーゴー Vol.1』〜公開打ち上げ!!〜
2011年1月31日(月)LOFT / PLUS ONE
出演:雨宮処凛 / Mix Speaker's,Inc. / ダウト(Mix Speaker's,Inc.とダウトは数名ずつの参加となります)
OPEN 18:00 / START 19:00
ADV ¥3,000 / DOOR ¥未定(椅子席・自由席、飲食代別)
*チケットはLAWSON(L:34880)にて発売中。
問い合わせ:LOFT / PLUS ONE 03-3205-6864

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