配信限定楽曲『Satisfaction de No reaction』、ファースト・シングル『Superstar』と今年は攻めの一手を続けるWho the Bitchが"全国デスコ化計画"の余韻も冷めやらぬタイミングで『カリスマヒーロー』と題されたセカンド・シングルを発表した。ドライヴ感に溢れたキレの良いタイトル・トラックは今後のライヴでも必須のレパートリーになること必至のキラー・チューンだが、カップリングも実に多彩。ハーモニーの美しさが光るメロディアスな曲調の『マシュマロ』、"L! O! V! E!"の掛け声ひとつでフロアが一体感を増す底抜けのアッパーさが魅力の『L.O.V.E.』を聴けば、レパートリーの幅広さ、硬軟織り交ぜた絶妙なバランスがWho the Bitchの大きな持ち味であることが判る。言うなれば、彼女たちの音楽はめくるめく音の万華鏡。もしくは、差し込む光によってその色を変える海のようだ。大海の如き底無しの奥深さがそこにはあるから。そして、そんな彼女たちの本領が遺憾なく発揮されるのはやはりライヴ。目下"Superstar vs カリスマヒーロー TOUR"を鋭意敢行中の彼女たちは、ツアー千秋楽の新宿ロフトで一回り成長した姿を必ずや見せつけてくれるはずだ。
このインタビューでは、今回のシングルの要となる『マシュマロ』が生まれるに至った経緯をehiが初めて赤裸々に語っている。貴重な肉声だと思うので、是非熟読玩味して頂きたい。(interview:椎名宗之)
人間の持つ"意外な2sides"
──『Superstar』リリース後に全国各地をデスコ一色に染め上げる行脚が続きましたが、手応えは如何ですか。
ehi(vo, g):"デスコデラックス TOUR"はどの会場も温かく迎えてくれましたね。特に浜松は熱く盛り上がって、予想以降にデスコに染まってくれて嬉しかったです。
Nao★(vo, b):"全国デスコ化計画"の第1弾は無事ミッションを終えた感じですね。
yatch(ds):あと、浜松は僕らのコピー・バンドをやってくれてるという女性2人組のお客さんが現れたのが凄く嬉しかったですね。
ehi:最前列でメッチャ指の動きを見られて恥ずかしかったけどな(笑)。
──日本有数のウナギの特産地で一体何が!?(笑)
ehi:ウチらのコピバンと出会ったのはこれで2組目で、前に渋谷のエイジアで「Bitchのコピバンやってるんです!」って言われたことがあるんです。
yatch:いつの日か対バンしたいよね、全国のコピバンを集めて。
Nao★:エエな。みんながどういう解釈で衣装を着てるのか見てみたいわ。
yatch:ちゃんと一斗缶を使ってくれているかが一番知りたいところですけど(笑)。
──一斗缶のスコアブックが出たらホンモノですね(笑)。
yatch:それでyatchモデルの一斗缶が発売されたら本望です(笑)。
──先のツアーを通じて、『Superstar』が楽曲として一回り成長したのでは?
ehi:『Superstar』は"デスコデラックス TOUR"で最後に勢い良く盛り立てる曲だったんですけど、それをトリに持ってくるのはやり切った感があるんです。今後はその位置を変えていきたいし、『Superstar』だけに頼らずにエンディングを飾るチャレンジをしていきたいんですよね。
──『Superstar』に取って代わる切り札がニュー・シングルの『カリスマヒーロー』ということですか。
Nao★:いずれはそこまで持っていきたいですね。『Superstar』に劣らずアッパーな曲だし、サビの"What you gonna do?"っていう部分も一緒に唄える親しみやすさがあるので、ライヴでのキモになっていけばいいなと。
ehi:ポップ性とBitchならではの世界観が合わさったものにしなくちゃいけなかったし、それを乗り越えようと思って頑張って『カリスマヒーロー』を作ったんですよ。まず第一に判りやすいリズムがいいなと思って、プライマル・スクリームの『ROCKS』みたいなリズムでノリの良さを出そうと。最初はタイトルも『ROCKS』に引っ掛けて『POPS』とか『SHOCKS』にしようと思ったくらいなんです(笑)。判る人には判るかなっていうシャレを効かせて。
Nao★:最後のリフレインで"SHOCKS LOVE!"と唄っていて、辛うじて元のタイトルが残ってるけどな(笑)。
──『Superstar』と『カリスマヒーロー』は連作っぽいニュアンスもありますよね。『Superstar』はこの世に生きるすべての人がミラーボールのように光り輝くべきだという大いなる人間讃歌とも言える曲で、『カリスマヒーロー』は誰しもが持つ人間の二面性にスポットを当てています。作風は違えど、テーマは同じ人間であると言えるのでは?
ehi:歌詞の捉え方は『Superstar』と違うんですけどね。ただ、『カリスマヒーロー』では自分が短所だと思っている部分が端から見れば魅力的だったりするのが人間の面白いところだというのをメッセージとして込めたつもりだし、人間味のある歌という意味では共通したところがあるのかもしれません。あと、『Superstar』に通じるアッパー感とか言葉遊びっぽい歌詞、サビで平たい言葉を繰り返すのは意識しましたね。もともとリフから浮かんだ曲だし、サビは口ずさみたくなるような感じにしたかったんですよ。
初心を呼び起こす『L.O.V.E.』
──どこまでもポップで大衆性のあるWho the Bitchの音楽性からすると、"カリスマ"も"ヒーロー"という言葉も不相応な気もしますけれど。
ehi:そうですよね。でも、別に皮肉ってるわけじゃなくて、カリスマと呼ばれるヒーローにもお茶目な一面があるっていう意外な二面性をテーマにしたんですよ。完璧な人間なんて面白くないと思うし、ちょっとダメなところがあるくらいが愛しく思えたり、意外性に心が惹かれたりするものじゃないですか。それを女の子の気持ちに立って唄っているんですけど、歌詞の中での彼氏はメッチャ二枚目で、脚も長くて格好いい人を設定してあるんですよ。だけど車の運転はヘタクソで、バカでどうしようもないっていう(笑)。
──カラテカの矢部太郎さんをカリスマヒーロー役に起用したPVも話題ですね。確かに矢部さんは歌詞の通り"脚も長い"かもしれませんが、意外にも程がある人選だなと思って(笑)。
ehi:カリスマヒーローと真逆ちゃうん!? っていう(笑)。『カリスマヒーロー』を聴いたウチのスタッフがPVの主演は矢部さんがいいんじゃないかと提案してきて、オファーをさせてもらったんですよ。有り難いことに快く引き受けて下さって、真夏の炎天下の撮影でも文句ひとつ言わずにやり遂げて下さったんです。
──皆さんが次々と矢部さんに薙ぎ倒されていく決闘シーンも大きな見所ですね。
yatch:あの演技はなかなか面白かったですよ。僕の武器のスティックが飛ばされて、それがご丁寧に光ってるのも芸が細かいです(笑)。
ehi:監督さんが殺陣を考えてきてくれて、ちゃんとした演技指導までありましたからね。また矢部さんがそれを覚えるのが早いんですよ。私たちは自分のパートだけを覚えればいいんですけど、矢部さんは3人分の動きをその場で呑み込んで凄いなと思いました。私は結構マジで矢部さんと格闘してグーで叩いちゃったりして、矢部さんに『ehiさん、一番痛いですよ!』って言われたんですけどね(笑)。
Nao★:激しいシーンばかりだったから、殺陣もつい本気になっちゃうんですよ。矢部さんと格闘してると自然と叫ぶようになったりして(笑)。
──スタンダード性の高い『カリスマヒーロー』を軸に据えて、シリアスなテーマの『マシュマロ』と底抜けのアッパーさが魅力の『L.O.V.E.』をカップリングした硬軟織り交ぜたバランスがとてもいいですね。
Nao★:『Superstar』の時も昔からやってる曲(『Superstar』)と中間で出来た曲(『DICE』)と新しい曲(『Chicken Heart』)っていう並びで、今回もそんな感じなんですよね。そういう部分も連作っぽいと言うか。
──『L.O.V.E.』はWho the Bitchにとって最古参の部類の曲ですか。
ehi:結成して2ヶ月目くらいに作ってましたね。yatchの持つガレージ・テイストと私のメロディが上手く交わった曲だと思います。普通にガレージっぽいことをしても面白くないし、そこで浮かんだのが"L! O! V! E!"の掛け声なんですよ(笑)。それが結果的にWho the Bitch像みたいなものを形作っていったし、初期の名刺代わり的な1曲でしたね。
yatch:最初に作ったデモ・テープにも入れたしね。『L.O.V.E.』と『Cherry』と『Superstar』を入れて、500円で手売りしてた時代(笑)。
──"L.O.V.E. America"というフレーズ然り、"カモン、メキシコ!"というシャウト然り、『L.O.V.E.』には活動初期の無邪気さがよく出ていますね。最近は曲の精度が上がって丹誠を凝らした作風が強まっているので、こういうノリ一発の単純明快な曲は逆に新鮮だなと思って。
ehi:初々しさと勢いだけで作った化学反応が起こった面白い曲だし、ああいう偶発的なことを今やろうと思ってもなかなかできないでしょうね。歌詞を読み返してもバンドの初期衝動を思い起こさせてくれる楽しさがあるんです。ルート66を間違えて逆走しちゃった3人組が日焼けしちゃったとか唄ってるバカな歌なんですけど(笑)、決して平坦ではない道を突き進んで行こうぜ! っていうウチら3人組のことを唄ってるんですよ。バンドをこれから始めていくピュアな思いが詰め込まれているし、今唄うと懐かしさを感じると同時に初心を呼び起こしてくれるから、凄く大事な曲ですね。