2008年4月に神戸で結成された"踊ってばかりの国"。最初、このバンド名は作品のタイトルだと思っていたぐらいパンチの効いたバンド名である。メンバーは、下津スズメ(唄と四本)・滝口カピバラ(飛び道具六本)・林プードル(六本)・ギフト券(太鼓)の4名(このうち平成元年生まれが2名!!)。バンド名もスゴイが、メンバーの名前もスゴイ。スズメさんがいて、プードルさんがいて、カピバラさんがいて...と動物の名前で揃えているのかと思いきや、ドラムはギフト券さん("さん"を付けるかすら悩む)。カピバラさんの風貌は、このページに掲載している写真ではわからないのが残念だが、一目見て相当良いキャラをしているだろうと思う。しかし、ギフト券さんは動物で揃えることもなく、なぜにギフト券という名前にしたのだろうか。他3人のメンバーを見るに見た目もかなり濃いが、彼らとは対照的な彼・ギフト券。だからこそ彼の名前がさらに気になるところのひとつである。本当は一番濃いキャラ故に、シンプルな装いをしているのだろうか...。この妄想だけを膨らませていたら、このテキストの文字数を超えてしまいそうなので話を進めよう。
踊ってばかりの国は、80年代後半に巻き起こったキャプテンレコードを始めとするインディーズロックムーブメントが、平成生まれの若者によって新解釈されたサウンドが奏でられている。本人曰く"プリプリサイケポップ"と名付けられた楽曲。今回リリースされる『おやすみなさい。歌唄い』は、以前自主制作盤でリリースしており、1週間で500枚というインディーズにしては驚異的な枚数を売り、リニューアルして流通盤で登場。
『僕のラジオ』で始まるこのアルバム。ラジオのチューナーを合わせる音に続いて聴こえるのは、粘りけのあるギターのメロディーや、けだるいボーカル、スローテンポのリズム隊。作品の幕開けを飾る1曲目にしては、1日で例えたらすでに太陽が上がりきり、昼食も食べ終え、何をするのも面倒だと感じてしまう午後の時間帯と言ったところだろう。しかし、続いて2曲目の『死ぬな!』はサウンドが極端に変わる。タイトルもキョーレツだが、このタイトルから感じられる力強さは、お祭りのような華やかなリズムを聴かせる楽曲となり、踊らずにはいられない1曲。ライブで盛り上がること必至。そしてまたふにゃっとした質感を持った『写陰邪陰』へと続く。『緑の汽車に乗って』は始まりのアコギに続き、かなりポップな楽曲で聴かせる。途中で挟まれるコーラスがとても心地よい。『四色パノラマ』では、さらにテンポの良いリズムで、フロアを熱くすることだろう。さきほどの『死ぬな!』に近いのだが、「生きよう」という歌詞から発せられるエネルギーはより強いものとなっている。そして、最後の『毛が生えて騒いでる』。これは私としては問題作である。曲が始まったと同時に聴こえてくるのは、カピバラさんによる「アッア アーン」という不可解な声。途中で若干大きくなったり小さくなったり、微妙な抑揚がつくところが憎たらしい(笑)。そのバックで薄く流れている演奏は、含みがあり、さらに歌詞はだいぶディープである。いろんなことを考えさせる1曲。全曲を通して聴いても、歌詞にはハッピーさがあまりないというか、ひとりぼっち感が漂っているように思う。ひとりでポツンと唄っている主人公を想像してしまうのだ。しかし、この楽曲を10代が作っているとは、彼らの未来は今後もっともっと輝いたものになることだろう。(Rooftop:やまだともこ)