Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューQomolangma Tomato('09年5月号)

変化と進化の末に見出したステージへ
溢れ出る感情を叩き付けた『camouflage』という新境地

2009.05.01

 作品ごとに色を変えながら音楽と真摯に向き合い、新たな表現に挑む4人組、Qomolangma Tomatoの1年ぶりの3rd.アルバム『camouflage』がリリースされる。前作『Limelight Blue on the Q.T.』に比べて格段の変化を感じさせる今作は、都会の喧噪から解放された場所での集中的な合宿で制作が行なわれ、濃密な時間と情熱を注いだ作品となった。また、これまであまりコードについて意識的ではなかったバンドが、「コードを意識して制作した」とインタビュー中に何度も言っているように、『camouflage』ではコードや音感、バンドのアンサンブルに拘った結果、彼らの核は崩さないまま楽曲のバリエーションが増え、より幅広いサウンドを聴かせているように思う。ようやくスタート・ラインに立ったという彼らの快進撃はここから始まっていくだろう。(interview:やまだともこ+椎名宗之)

コードに対する意識の高まり

──今回3rd.アルバム『camouflage』が発売されますけど、2nd.アルバム『Limelight Blue on the Q.T.』はもっと攻撃的な楽曲が多かったので今作は余計に変わったという印象を受けたんです。前作から1年が経ち、音楽に向き合う姿勢は変わっているんですか?

石井成人(vo.):音楽に向かう姿勢は変わってないです。でも、アルバム毎に新しいことを取り入れたり、バンドの可能性を探っていこうと思っているので、前と違って聴こえるというのはすごく嬉しいです。

──前作をリリースして以降も精力的にライブをされていましたが、それがこのアルバムにフィードバックされているんですか?

石井:ライブは出来た新曲を試す場所になっていたので、そういう影響は受けていないかもしれないです。2月15日のシェルターでのライブで試してみて、それからレコーディングに入ったんですよ。

──制作は前作をリリースして以降に取りかかっていたんですか?

石井:3曲目の『動揺』から作ったんですけど、これはセカンドを作った後の反動がまだある時に作った曲です。それから1年間、レコーディングギリギリまでずっと作っていたと言えば作っていたし、サボっていた時期ももちろんあるんですけね。

小倉直也(gt.):セカンドを作ってもっとこうしたいなというもの...『動揺』を作り始めたのをきっかけに、例えばバンドのアンサンブルとかコードとか音感に重点を置いていろんなことをやってみようということで1年間作ってきました。

石井:合宿に行って作り込んだ曲もあるんですよ。

大工原幹雄(Dr.):群馬と埼玉の間ぐらいのところにあって。

石井:焚き火とかして。車じゃないと何も買いに行けないという場所だったんです。

──共同生活をして作っていたという感じなんですね。

石井:うん。1週間ぐらいですけど。

小倉:合宿に行って曲を作ったのは初めてです。

──合宿環境から受けた影響はありますか?

石井:イメージするスケール感が変わりました。今までは都内のスタジオで曲を作っていたんですが、作る場所で曲が変わるだろうと思っていたので、そういうところで作れたのは良かったですね。

──環境が違うと変わります?

小倉:惑わされるものが周りにない環境ですからね。

山中治雄(Ba.):飯食って曲作って、昼飯食って曲作って、夜飯食って曲作って寝るみたいな。電車とかにも乗らないし、帰り道もないからすごく集中して作れました。

──そこから帰ってきてスタジオに入って?

石井:はい。

──セカンドの時は、コードや音階に対しての意識は今回ほどではなかったんですか?

石井:もともとコードとかへの意識がなかったバンドなんです。セカンドの曲は気付いたら1曲目から4曲目まで全部Cコードから始まっているんですよ。暗いとか明るいとか、景色とか匂いとかってコードで変わるから、今回はコードを意識した感じのものを作ろうと思ったんです。4人でセッションして「できた!」っていうものももちろん好きだけど、今回は自分のために作りたいと思ったんです。

──自分のために?

石井:ちゃんと自分を救ってあげられるようなもの。自分の気持ちをただただすり減らしていくものじゃなくて、心象風景みたいな作品を1つ作ろうと思って作ってみたんです。

──ということは、石井さん主導でやったという感じ?

山中:そういうわけでもないですよ。石井主体というよりは個々が主体。

石井:すごい頑張ったという気持ちは個人的にはありますけど、ちゃんとバンドで作ってますね。

──前回はアレンジをジャムで作られたとおっしゃってましたが。

石井:ジャムももちろんやったし、MTRに入れて重ねていったり、スタジオに入る日の間に各々がアイディアを出していったり、曲作りの作業は「こうなったけどどう?」ってレスポンスも早く求めていって。そういうのを真面目に取り組むようになりました。もともとセッションで曲を固めていくやり方をするバンドですけど、それも大事にしつつ、いろんなやり方であーだこーだ言いながら作っていきました。

──けっこうモメますか?

石井:はい。モメると言うか、言いたいことは言わないと曲は作れないと思うので。昔よりやりやすくなってきてますね。言うこととか言われるということに抵抗がなくなってきたし。

──昔は殴り合って言い争うこともあったんですか?

山中:殴り合いはないです。スタジオに行かないとかはありましたけど(笑)。

石井:感情的になって、スタジオのスピーカーとミキサーを壊したことがあって、お金とかめんどくさかったことはあります。あと、壁に穴開けたりして大変でした。

──今は意思疎通が出来ているところからやっていくから、こういう曲を作りたいんだろうという雰囲気はお互いがわかってきているんですか?

石井:意思疎通がうまくなってきて、まあまあわかってきたという感じです。

動揺をカムフラージュする

──楽曲で言えば、『モザイク』みたいなラップ調の曲は難航しなかったですか?

大工原:あれは難航するどころか...。

山中:元ネタそのまま。詞を書いてもらって、その詞に元ネタのアイディアから展開を当てはめていっただけです。

石井:ちゃんとビートがあれば、ボーカルを乗せるだけで充分面白いものができるんです。初めからヒップホップみたいな感じにしようと思っていて、演奏側の"こういうことをしてみたい"という意図と自分の歌詞をはめていったんです。このアルバムにはこういう感じの曲はないなと思いながら作ってみて、演奏を当てはめて、イメージを摺り合わせて、ゴーストを止めてもらたりとか。

──この曲は言葉の羅列が延々続いていますけど、言葉が内側から溢れて止まらなかった感じなんですか?

石井:パッと思いついたんです。普段から書き溜めたものの断片を使ってイメージとして固めていくんですけど、詞の中にある「テレビの中 モザイクの向こう」は、前のツアーの札幌で思いついたのかな、確か。

──『モザイク』はアルバムタイトルの『camouflage』とリンクしていくのかなと思ったんですが。

石井:最初に作った『動揺』のタイトルで悩んでいたんです。"心象風景"を書いたものをそのままタイトルにするのはちょっと嫌だなと思って、言葉を置き換えようと"動揺"という言葉に変換して、自分の心の動揺を隠すという意味でアルバムタイトルを『camouflage』にしたんです。『モザイク』もそうだし、タイトルじゃなくても歌詞の中で心の動きを描いているものが多かったので、全体的にいろいろな意味がリンクすると思っています。

──自分と他者との関係性を表現している『リレーション』とか?

石井:これは、世界ともっと仲良くなろうという曲です。『camouflage』っていうのはそういうことです。

──音楽を通じて社会と通じ合おうという認識はありますか?

石井:うん。あります。

──自分は音楽がなければ社会と関わりが持てないダメ人間だというような?

石井:あんまりそうは思ってないです。昔は思ってましたけど。今は曲と自分をもっと摺り合わせていくという感じですね。自分がダメだったらダメなままにしかならないから、ちゃんと自分を好きになれるように頑張って、そういう曲を書こうって。その微妙な葛藤は出ていると思います。自分ではこれでもけっこう開けたつもりでしたけど、まわりの人からは「ダークでポップだね」って言われているので。でも、聴き手の人にいろいろ思ってもらえるのが一番良いですから。あと自分としては、幸せというよりは幸せの近くみたいな質感なのかなと。コード感とかもそうですけど。

──直接的ではなく、みたいな?

石井:幸せの側にいるけど、それを近くで見ている感じ。または、遠からずという状態。決して暗いだけの曲ではなくて、これが好きな質感なんです。

──対象となる音楽と距離感を保っているのが心地良いという感じですか?

石井:うん。そうかもしれないです。カムフラージュってそういう感じですよね。心の中を隠したりしても、外に向かいたい気持ちもあって、結果的にこういうタイトルを付けているので、これが自分なのかなと思います。

──そんな自分を肯定しようというアルバムですよね?

石井:そこがいいとかじゃなくて、ちゃんと自分を認めてあげる方向でこのアルバムは作ってます。バンドだから、バンドが思っていることもちゃんと体現していこうともちろん思ってますけど、歌詞はパーソナルなものでいいんじゃないかと思っていて、今回は自分とちゃんと向き合って書いたんです。それはうまく繋げていると思います。

──『動揺』の歌詞の最後のフレーズは、大げさかもしれませんが"歌と向き合う覚悟"を宣言されているようにも受け取れますけどね。

石井:はい。ちゃんと歌うか、適当に歌うか、二択かなと思うんです。上手く表現できなくてもちょっと嘘っぽくなってしまっても、どっちの歌が救いたいのかというのをはっきりさせようと思ったんです。不器用なままが美しいバンドはいっぱいいると思いますけど、僕は向き合わなきゃダメだと思って作りました。

──音楽にも自分にも?

石井:うーん。自分にはそう言っているんですけど、他のバンドにはいろんな価値観があるというのはもちろん思っていて、なんでそういう歌詞を書いたかと言ったら、そういう意識を自分に持たせようと思ったからなんです。だからちょっと恥ずかしいようなことも書いてみたんですよ。

──詞には内省的な怒りが潜んでいる感じがしますね。

石井:特に拘っているわけではなかったんですけど。そういう歌詞も好きですし、季節感のある普通に良い歌詞もいいじゃないですか。それに近い感覚で全体を作ったんです。その2つがあると考えたら、両方今では持っていると思うので、この曲ではツールとしてどっちを使うかという感じ。3枚目を作ってからそういうものを作りたくなったところもあるし、好き勝手にやってすみませんって感じですけど。

──表現に携わる人ですからいいんじゃないかと思いますよ(笑)。

石井:うん。嘘にならなければ良いのかなと思ったり。コード感とかハーモニーとかそういうところをもうちょっとなんとかしたいと思いながら作ったアルバムのわりには、そんなにポップミュージックの感じにならなくて、曲も長いし、もうちょっと狙った構成とかわかりやすい曲を作ってもいいのかなって思います。

──でも『動揺』は7分近くありましたけど、全く長くは感じなかったですよ。

石井:それは嬉しいです。

──Qomolangma Tomatoの志向するポップ・ミュージックとはどんなものですか?

石井:結果的に1、2、3曲目はメロがあってサビがある構成のものや、1枚目『チョモと僕は柵の中』の1曲目『through your reality』はわかりやすいなって思うし。そういうポップ・ミュージックですね。


敢えてハズす気持ちよさ

──サウンドで面白いと思ったのが、2曲目の『靴の裏と僕は一体だった』なんですけど。4つ打ちのサウンドに乗せて、ギターはセオリーに則ってサンバをやっているというのは芸の幅が広がったような感じがしましたよ。

小倉:このリフはイッシー(石井)が最初に持ってきて、それを改造して作っていったんです。

石井:ドラムをまず叩いてもらったらリフが頭の中に出来たので、リズムから作ったんですよ。

──中間のパーカッシブな感じは?

石井:バンドでセッションしてたらそういう感じになっていって、すごく良くなりましたね。あれって、合宿の時にできたんだっけ?

小倉:そうだね。

石井:合宿の開放感が表れた楽曲ですね。野外向けの感覚がちゃんと影響されていて。

山中:最初はジャンベとかも使っていたんですよ。ジャンベをドラムセットの中に組み込んで、ドラムスティックで叩いたら割れてすごい凹んでましたけど(笑)。

大工原:あの皮高いんですよ。

石井:その時の音もすごい良かったんだよね。

大工原:丈夫な皮があれば良かったね。

石井:でも、ジャンベがかわいそうですよね。スティックで叩かれて。

──サウンド・アプローチは全体的に面白いと思ったんですが、『リレイション』はリズムに疾走感があるのに、ギターだけ妙にとろいというのがユニークですよね。

石井:もともとギターとドラムで始まったんだよね?

小倉:フワフワしている中で、突き抜けるようなビートが入って来るというのが狙いだったんです。

──アイディアは各自から出てきたんですか?

石井:そうですね。

山中:前からもそうですけど。

──より精度が上がった感じ?

石井:そういう感じなんですかね? グルーヴ・ミュージックとしてのバンドみたいなところは意識してます。高揚していく感じとか。俺個人がどうかは別ですけど。

──あと、『get back my mind』は、サウンドがかわいらしい楽曲になりましたね。

石井:『get back my mind』は3人の演奏から固めていって、あとで歌を乗せる手法で作った曲です。

──手拍子が入っていたりしましたが、ライブを意識しているんですか?

小倉:ライブとかじゃなくて、曲に必要なものっていうのが一番デカイです。

山中:曲作りとか音を作る部分では、この4人で完結してないと変なことになっちゃうんです。

──『夕暗、泳ぐ』は、バンド史上最も倦怠感度が高い感じがしましたけど。モソッとしていると言うか。

山中:なるほど。音かな。

石井:声?

山中:ベースはわざとモソッとさせてる。

石井:ボーカルもわざとそうさせてるんだよね。メロディーがしっかりしてるからもっとはっきり歌ってもいいんだけど、1番はモワーンとさせて2番からはっきり歌ってる。アルバムの曲順は最後のほうに決めたから、『夕暗、泳ぐ』がどこの位置に入るとかもなかったんですけど、やりたいようにそういうニュアンスを付けて歌ったから曲順が後ろのほうになっちゃったのかもしれないですね(笑)。

山中:キラキラもしているから好きだけどね。

小倉:『夕暗、泳ぐ』はジャムで作っていったんです。ジャムの段階でいろんな断片を構成して記号化していったんですよ。

石井:合宿で1日使って展開を考えました。

小倉:流れに任せてこうするというよりは、展開を組み込んで作っていったんです。

石井:イメージの摺り合わせをして。ひとつのジャムの中の良いところをピックアップしていって、展開としてどういう曲にしていこうかって。自然なもので、客観的に見て構築していく。イントロを付けるか付けないかで話をしたりして。

──ジャムという人為的なものとデジタルなものがうまく融合したんですね。その前の『DOWN FLIGHT』は大絶叫してましたよね(笑)。前半が素っ頓狂だから、余計になんだこれ!? っていう恐ろしい展開で。

石井:グォーーーーーー!!! って行こうと思って。

山中:今回1曲1曲必然性にこだわっていて、『DOWN FLIGHT』は最初その考えに当てはめて取り組んでいたんですけど、途中で無理になって、この曲は考えるのやめた! みたいな。それでああいう感じになったんです。この曲を聴き終えた瞬間に、どういう曲だったか忘れちゃうタイプの曲でもいいやって。それでそのままにしたんです。最初はちゃんとしようとしてたよね。

石井:大きく分けて3部構成にしてたんだけど、1回も戻らない感じになりました。

──『DOWN FLIGHT』も『モザイク』も字余りっぽいところがありますよね。

石井:ミックスをし始めている時に、同時に歌を録っていて、作品としてギリギリのところですけど、こういう字余りの感じもいいなと思ったんです。

──字余りブームが到来しているんですか?

石井:『モザイク』は字余りの感じはしますか?

──言葉がたくさん詰まっていて、佐野元春さんのようなまくし立てる感じはしますね。

石井:一定のビートが頭の中に入っていて、やれる! って思ってやったんです。

山中:最後、ボーカルだけはみ出てるよね。

石井:自分のクセとして後乗りのところがあるんですけど。ズレているのが気持ち良かったり面白かったりしますから。

──それがQomolangma Tomatoの大きな音楽的特徴だと思いますよ。

石井:どうハズすかみたいな。ニュアンスとして、ハズすと意味が出てくるじゃないですか。何でハズしているかって聴き手が考えると思うんです。けだるいっていうイメージを持ったり、前に行こうとしているというか。後乗りにするとグイグイ聴こえてきてグルーブに馴染んでいくんですけど.........とにかく佐野元春さんで良かったです(笑)。

──ズレは意識的なものが大きいんですか?

石井:今は意識してますね。セッションした時は、最初の方は偶然的なものもたくさんあったんです。でもセッションって自分の癖がすごく出るんですよ。こういうリズムの取り方をするんだなとか拘っているんだなとか、日本語っぽく歌おうか英語っぽく歌おうかとかっていうのはセッションしている時に違ったりするんですけど、英語っぽく歌った方がフニャフニャ言ってるんだけどキッチリはまってタイトになるんです。日本語だと大きくはっきり歌っていかないとちゃんと聴こえない。それが面白いなと思いながらやっています。

──でも、本当に先ほどおっしゃった通り、「なんでズレしてるんだろうな」と疑問に思ってました。『Limelight Blue on the Q.T.』では感じなかったので。

石井:前回ってズレてなかったですか?

──曲に勢いがあったから、そんなに気にならなかったのかもしれません。

石井:勢いがあるとそう聴こえるのかもしれないですね。『水槽の中』は尺が8分の7拍子ですけど、ボーカルの録り方とかをメチャクチャにしていて。

──サウンドもカオティックでしたよね。

石井:そういうのとかもわかってやってるところはわかってやってますね。要は、ズレててもいいんじゃないかと思っているんです。

『camouflage』を作ったことで見える次のステージ

──『get back my mind』とか最後の『Are you ready?(I'm not ready at all)』はアコギを隠し味にされてますけど、バンドサウンドをバラしても、アコギだけでも成立する曲こそが良いというポリシーがあったりしますか?

小倉:コード感をテーマにしているので、本当は全曲アコギを入れたいなと思ってたんですけど、それは曲のイメージと違うという話があって、必要なところだけ部分的に入れてみたんです。

──そう考えると、全体的に音楽的なアイディアがふんだんに詰め込まれていますよね。

石井:ありがとうございます。

小倉:これを機にもっとできるんじゃないかって気がしています。

石井:ライブもいろいろできるようになったし、3枚目を出してもっといろいろできるようになるんじゃないかと思ってます。こういうライブをしても何も言われないんじゃないの?って。

──そんな、人の目を気にしなくても...(笑)。でも、ここまで来たらどんなタイプの曲でもできそうな気がしますね。

山中:たぶんちゃんとやれば、何をやっても俺ららしく変化していけるかなと。合宿の時に、ジャンベとかキーボードとかがスタジオにあって、その場でオッと思ったら足して、それを録って自分達がオッケーならオッケー。

──Qomolangma Tomatoらしさとは、自身では具体的にどういうところだと思ってます?

大工原:いろいろやっても問題がないっていうところがけっこう大きいんじゃないかな。曲の良し悪しで決めてくみたいな。

石井:音楽性とかは考えたことがないですけど、自分はどういうところから影響を受けてバンドを始めたかとか、そういうものの大事さはあります。パンクにも影響を受けましたし、バンドで曲を作ってライブをやって音楽性を壊したり再構築させたり、新しいものを作っていく作業のほうが大事かなと思っているので、もしかしたらこの先に作るアルバムのクオリティーが上がっていくかもしれないから、今は固めたくないんです。それをまわりが「うーん」ってなっても、僕らは良いものとして出しているし、音楽性が大きく変わったところで僕らはブレないと思うんです。聴いてくれる人には、楽しいと思って聴いてもらえるのが一番嬉しいですけど。あと、すごい大きな意味で言えばこれも決めなくても良いことですけど、ボーカルが自分であればいいとか、思っていることをちゃんと書けているとか、自分がちゃんとその風景を見ているという立場で曲を作れるのが良いですよね。そういう観点を大事にしています。風景の一部になっちゃってる曲もあるんですけどね。人から「良い」っていうレスポンスがある曲は風景を曲として作っていて、その曲を見ている視点がちゃんとあって、歌と歌詞にそういうものをちゃんと作っていければ自然にこのバンドっぽくなっていけるのかなって思います。

──ところで、ジャケットの写真もすごくインパクトがありますよね。

石井:自分を被写体にする、ピューぴるっていうアーティストがいて。

小倉:シェルターのライブに来て、ライブが終わった時に「ジャケットはタコをモチーフにする」って言ってて。

石井:築地で18,000円のタコを買って。

小倉:被っちゃったんです。噛まれたって言ってましたけど。

大工原:オカメインコみたいな歯があるんですよね。

──タコの柔軟性が高いところや、自分の色を即座に変化させることが出来るという点は、どんなステージでも客席を自分達の色に染め上げるという意味合いでバンドも共通するものがありますよね。

小倉:保護色に変化するというのはリンクしますよね。

石井:それもカムフラージュだし。

小倉:まだアルバムのタイトルを付ける前だったのに、いろいろな偶然が重なったんです。

石井:これはコラボに近いですよね。彼女の作品は自分を被写体にしているので作品のひとつでもあるし、俺らの作品だし。嬉しいですね。絵の具をたらしていて色がすごいんですよ。

山中:ピンクとか青が入っていて。

石井:でもね、お店に持って行ってちゃんと洗って食べたって言ってました。


やっとスタート・ラインに立てた

──気が早いかもしれませんが、もう次の作品には取りかかっているんですか?

石井:まだです。うまく時間が取れてなくて、ビジョンを考えてないんです。早く作りたいんですけどね。素直に作っていこうと思っていますけど、次はわりとわかりやすいものを作っちゃったりするかもしれないですね。

──次がどういう作品になるかがわからないですからね。このアルバムの中からのこんな感じというのも考えつかないですから、勝手ながら早く次も聴きたいと思ってしまうんです。

石井:アルバムを作るんだったらちょっと違うものを作りたいと思っているんですけど、必ずしも変えていかなきゃいけないという感じではないですね。

小倉:その時に思ったこととか良いことを詰め込んでいくので、今回よりもさらに良いことは間違いないです。

山中:まとめちゃった(笑)。

──『Are you ready?(I'm not ready at all)』で言う"明日が待ち遠しい"の心情ですね。

山中:この曲すごい好きなんです。自分の曲が好きって言えてるのがすごく良かった。

小倉:ちょっと気持ち悪いけどね(笑)。

──3枚作って見えてきたものってありますか?

石井:やっとスタート・ラインに立てたような感覚があって、バンドができることとか、このぐらいのことができるけどじゃあ何を作ろうかみたいなところを含めて、やっとここまで来れたと言うか。クリエイティブなものというのが、この作品ぐらいからできるようになってきた気がしています。作ろうと思ってちゃんと作っていると言うか。まぁ、3枚目、4枚目とは言わずにいっぱい作れたら良いなと思っていますね。

──そしてリリースツアーもかなり先まで決まっていますね。

小倉:長いですよねー。

──まだ初夏なのに秋までスケジュールがギッチリ埋まっていますからね。

石井:ちょっと嫌ですよね(笑)。

山中:しょうがないよ。

石井:その過程の中でかなり変わるものってあると思うんです。ちゃんとしたスピードでバンドが動いていたらファイナルの時には新曲もできているだろうし。どうしようと思ってます。

──心の変化とかもあるでしょうしね。

石井:ありますよねー。またすごい暗くなってるかもしれないですよ(笑)。

大工原:せっかく上がってきているのに。

石井:レコ発は6月12日のO-NESTが初日で、その日はBEYONDSとMOUSE ON THE KEYSと一緒にやるので是非見に来て下さい。

石井:ツアーはメロディックパンクのバンドとかいろんなバンドに声をかけているんで、そちらも楽しみにしてもらって、10月のワンマンもぜひ来て下さい。東名阪でやるので。これはまだまだ先ですけど...来て下さい。...でも、10月のチケットはまだ買えないでしょ?

──ここでボヤかれても(笑)。

山中:まずはCDを聴いて頂きたいですね。

小倉:今回のアルバムは純粋な悪って感じですね。悪の部分もあるんだけど、そこがすごいちゃんと純粋に出ているからポップに聴こえるはずなんです。

──アクは、灰汁という意味にも取れますね。灰汁があるからこそ通り一遍の音楽ではなくなるんでしょうね。

石井:...灰汁、取りたいんですけどね。

──全否定ですね(笑)。

山中:でも、灰汁は重要だと思いますよ。灰汁が出なければ旨みも増しませんからね。

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3rd Album 「camouflage(カムフラージュ)」

初回限定盤(CD+DVD):XQEH-1006 / 2,500yen(tax in)
通常盤:XQEH-1007 / 2,000yen (tax in)
AVOCADO Records
5.13 IN STORES

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1.リレイション
2.靴の裏と僕は一体だった
3.動揺
4.get back my mind
5.水槽の中
6.モザイク
7.DOWN FLIGHT
8.夕暗、泳ぐ
9.Are you ready? (I'm not ready at all)

LIVE INFOライブ情報

5.20(Wed)旭川CASINO DRIVE
5.21(Thu)札幌KLUB COUNTER ACTION
5.23(Sat)盛岡club charge
5.24(Sun)仙台MACANA

Qomolangma Tomato『camouflage』リリースツアー
6.12(Fri)渋谷O-NEST
6.18(Thu)松本ALEX
6.19(Fri)金沢vanvan V4
6.21(Sun)京都磔磔
6.23(Tue)岡山ペパーランド
6.24(Wed)広島ナミキジャンクション
6.26(Fri)福岡VIVRE HALL
6.27(Sat)鹿児島SRホール
6.29(Mon)高知カオティックノイズ
7.01(Wed)松山サロンキティ
7.03(Fri)高松DIME
7.04(Sat)徳島ジッターバグ
7.05(Sun)神戸HELUUVA LOUNGE
7.12(Sun)さいたま新都心HR VJ-3
7.14(Tue)千葉LOOK
7.18(Sat)水戸ライトハウス
7.19(Sun)宇都宮HR VJ-2
7.21(Tue)高崎FLEEZ
8.20(Tue)横須賀かぼちゃ屋
9.06(Sun)いわきSONIC
9.08(Tue)仙台MACANA
9.09(Wed)盛岡CLUB Change
9.11(Fri)函館BAY CITY'S STREET
9.12(Sat)札幌COLONY
9.13(Sun)旭川CASINO DRIVE
9.16(Wed)新潟JUNK BOX mini
10.02(Fri)名古屋HUCK FINNワンマン
10.04(Sun)大阪十三FANDANGOワンマン
10.10(Sat)渋谷CLUB QUATTROワンマン

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