トップ > インタビュー > THE STREET BEATS('08年11月号)

1988年11月21日、『NAKED HEART』でデビューを果たしてから今年で20年。聴く者の心を激しく揺さぶる魂の詩を唄い続けてきたTHE STREET BEATSが、『裸心凛風』と題されたハートフルなベスト・アルバムを発表する。彼らの大きな魅力のひとつである"心に響く詩たち"をコンセプトとした本作は、剥き出しの心のまま変化を恐れずに今日を生き抜くすべての人たちに捧げるもうひとつのオリジナル作品である。誰しもが抱える失望や挫折を優しく包み込む詩、何処までも美しく流麗なメロディ、それらを確かな説得力と共に補完するソリッドでパワフルなサウンド。そのどれもが掛け値なしの逸品であり、ロックが消耗品ではなく魂を鼓舞する生きる糧であることをビーツの音楽は思い起こさせてくれる。熱い、泣ける、ぐっとくる。凡庸な言葉かもしれないが、その3つの要素を十二分に満たしてくれる成熟したロックが他に何処にある? 決して色褪せることのないビーツの詩は、現在・過去・未来の時空を超えて無垢な輝きを煌々と放つのだ。(interview:椎名宗之)

その時々でやれることはきっちりやってきた

──今回発表されるデビュー20周年記念ベスト・アルバム『裸心凛風〜HEARTFUL BEST〜』が『20th ANNIVERSARY BEST 1984-2004 ★REBEL SONGS★』(結成20周年を記念して'04年3月に発表された2枚組ベスト・アルバム)と違うのは、ビーツの大きな魅力である詩に重きを置いた楽曲を集めたという点ですね。

OKI(vo, g):そうですね。4年前に作ったベストはその時点でのオール・タイム・ベストで、今回はベストと言えども切り口の違ったスタンスで組んでみたんですよ。1枚のフォーマットに対してオール・タイム・ベストを半分に凝縮するだけでは何の意味もないので、編集盤とは言え作品性の高いものを打ち出したかったんです。そこで詩に比重を置いた楽曲をコンセプトとして定めたんですよ。それに、『★REBEL SONGS★』からこぼれた曲や、それ以降に発表したオリジナル・アルバムからもフォローしたかったし。

──全22曲中、4曲もの曲が『ETERNAL ROCK』から選ばれていて、アルバム単位では最も高い比重を占めていますね。

OKI:やっぱり『★REBEL SONGS★』以降の作品でもあり、今のライヴでもメインを張ってる曲が多いですからね。『ETERNAL ROCK』は自分たちにとっても再スタートを切る意味合いのあった作品だし、今のビーツを語る上で欠かせないアルバムでもあるし。

──構成も見事ですよね。ファースト・アルバムの『NAKED HEART』と目下最新作である『凛として風の如く』を組み合わせた『裸心凛風』というタイトル通り、1曲目の「NAKED HEART」から2曲目の「凛として風の如く」への流れ、21曲目の「BOYS BE A HERO」から新曲「そして、新しい風が」への流れが20年前と現在を自由に行き来するようで。

OKI:うん、そういった流れにはかなりこだわりましたね。

──「夢の跡」と「MY HOME TOWN」という2曲のアコースティック・ナンバーが続く構成もとても美しいですね。「MY HOME TOWN」の後半はバンド・アンサンブルになるから、その後の「孤独な王様」にも綺麗に橋渡しをしていくし。

OKI:通して聴いて、これもひとつの独立した作品として感じてもらえるようにしたかったんですよ。そこは今回、凄く意識した部分なんです。

──今改めて『NAKED HEART』などの初期の作品を聴いて、気恥ずかしい部分はありませんか。

OKI:いや、全くないです。それはあり得ないですね。言ってらっしゃる意味が判らなくはないですけど。

SEIZI(g, vo):その時々でやれることはきっちりやってきたので、恥ずかしさみたいなものは全くないんですよ。むしろ逆かな。やっぱりちゃんとやりきっていたことを再確認できたと言うか。

──たとえば「運命をあやつれ」には音に時代性が表れていて、今聴くと逆に新鮮さすら感じるんですよね。

OKI:今はすべてプロトゥールスで終わらせてしまうレコーディングが、80年代後半から90年代初頭にかけては48トラックのマルチを回していたんですよ。デジタル・レコーディングと言いながらもちゃんとテープを回していた。ある意味アナログなわけですよ。でもそれを今聴くと、恥ずかしいどころか非常にクオリティが高いんです。その時代特有の青さが随所にあるんだけれども、それでこそバンドの歴史を表せるわけですから。まぁ、単純に若いな、っていうのはありますけどね。でも、人として生きて、その生き様を作品に刻み込んできたわけだから、そういう青さがあって然るべきだと思うんです。親子くらい歳の違う楽曲が収められているわけですからね。

詩の通りに生き続けてきたからこその説得力

──ただ、親子くらい歳の違う楽曲でもビーツの詩には一切ブレがないことをこの『裸心凛風』を聴くと痛感しますね。生きることに対して愚直なまでに真摯であることや、守るべきものは人生を賭けて守り抜くという強い意志であるとか。近年の代表作のひとつである「I WANNA CHANGE」を聴くと、変わり続けることほど変わらないものはないことを強く感じます。

山根英晴(b):ビーツの詩は、俺がバンドに加入する前から本当に素晴らしいと思ってましたからね。詩が凄くリアルだから、演奏してると自ずと感情を移入してしまうんですよ。ライヴのMCで発せられる言葉もぐっとくるし、沁みますよね。

谷元敦(ds):自分は決して強い人間じゃないから、ビーツの詩に背中を押してもらうところがあるんですよ。それはビーツの詩に一度でも触れたことのある人なら皆同じだと思いますけどね。

──OKIさんが20代前半に書かれた詩が古さを全く感じさせないのは、当時からある種達観していたからじゃないかと思うんですが。

SEIZI:それは、あんちゃんがこの詩の通りに生き続けてきたことに他ならないんですよ。強靱な意志を持って生きてきたからこそ、あれだけ普遍性の高い詩が書けるんだと思う。それが証拠に、俺には同じような詩は一切書けませんから。別に自分を卑下するわけじゃないんだけど。やっぱり、その生き様なり哲学が詩にそのまま出るものなんですよ。

──SEIZIさんがヴォーカルを取る「孤独な王様」も普遍性の高い詩じゃないですか。"今という名の宝石"なんて至言だと思いますよ。

SEIZI:自分が唄う曲の中で詩に重きを置いたものと言えば、これかなと思って。他にも候補はあったんですけどね。

──こうしたベストは、ビーツ・ファンなら誰しもが何回も作っているでしょうね。

OKI:そうでしょうね。聴く人それぞれがマイ・フェイヴァリット・セレクションを作ってるだろうし、今ならパソコンを使って簡単に編集できますしね。きっとそれぞれベスト・ナンバーは違うだろうし、曲と出会ったドラマもあるじゃないですか。100人いたら100通りのベストが出来ることは判ってるわけですよ。そこで改めてビーツから発信するものとして提示した形というのは、ひとつのアルバム作品としていろんなバランスを考慮したものなんです。100人全員に満足してもらうのは困難だし、当然のようにフォーマットの時間的な制約もある。だからさっき話に出たようなアコギの曲の流れであるとか、そういった部分を楽しんでもらえたら嬉しいですね。

──今のこの4人で新たに録り直す発想はありませんでしたか。

OKI:リメイクの必然性は感じてないですね。何かしら特別な意味があれば話は別ですけど、今の音を提示するのはライヴという武器があるので。

──新曲として最後に収録されている「そして、新しい風が」はOKIさんの歌とSEIZIさんのアコースティック・ギターのみで奏でられる、シンプルの極みを行く楽曲に仕上がりましたね。

OKI:これだけの大作の最後に相応しい、映画で言うエンドロール的な心の安まる小品にしたかったんです。それに加えて、次の作品に繋がる匂いをさり気なく醸し出そうと思ったんですよ。"to be continued..."のクレジットが入るような余韻を残して。最後にこうした真っ新な曲を入れるところに、バンドが現在進行形であることの意味があると思うんですよね。

SEIZI:こういう曲が最後にあるとないとじゃ印象が全く変わると思うし、ビーツのこれからに向けた橋渡し的なニュアンスをうまく形に出来たと思いますね。

支えてきてくれたファンには心から感謝している

──ここ数年、あの華やかなりしバンド・ブームから20年が経って、解散したバンドの再結成も盛んじゃないですか。同時期にデビューしたビーツは、メンバー・チェンジはあれど20年間ずっと疾走を続けているのがやはり有無を言わせず凄いと思うんですよ。

OKI:今日まで立ち止まらずに疾走してきたことが誇らしくもあるし、ここまでやってこれたことが有り難くもありますね。いくらバンドをやり続けたいと言っても、聴いてくれる人がいなければ成り立たないわけで。だからビーツを支えてきてくれたファンには心から感謝していますよ。周囲を見ると、今もこうしてワンマンでツアーを続けていること自体が奇跡的な状況だと思いますからね。ただ、そのぶん昨日を重ねて今日を凌いできたわけで、それに対する自負はあります。時代の変化と共にメディアのフォーマットも変化していったり、淘汰されてみたり、見直されてみたり...。その目まぐるしい変化の中で、ビーツという発信の場を失いそうなピンチは正直何度もあったけれど、そこは自分たちなりに闘ってきましたし、いつもその繰り返しですよね。いい時もあれば悪い時もある。だから、限られた状況の中で常にベストを尽くしてクオリティを追求していくだけですね。ないものねだりはできないし、無い袖は振れないから。

──がんじがらめの困難な状況を耐え凌いできたからこそ、『裸心凛風』のような作品を生み出せたとも言えますし。

OKI:まさにそうですね。与えられた環境の中でそのギリギリを超えていく。その積み重ねですよね。続けてこれたからこそ、『裸心凛風』のような企画をレコード会社が認めてくれる幸運さもある。今はまた今後に向けての期待感みたいなものがスタッフを含めてあるので、有り難いことですよ。

──このご時世、メジャー・カンパニーと言えども作品作りに対するジャッジは極めてシビアですしね。

OKI:何処も大変ですよ。ラクにやってる人なんて誰もいないですから。それはお客さんも含めてね。昔の感覚で言えば、Rooftopくらいの雑誌が無料で配布されるなんて、とても考えられなかったじゃないですか。でも、今の体裁であることの必然性がきっとあるんだと思うし。とにかくどんな世界であれ、時代に流されず、呑み込まれず、凌いでいくしかないわけですよ。そんな中で音楽をやり続けている以上は、今日を凌いでいる人たちにとって何かしらの力や楽しみになるものだったり、さっき敦が言ったように背中を押せるものを提示していきたいですよね。大人になってもちゃんと聴けるロックと言うか、逆に大人であるがゆえに沁みたり響いたりするロックを。

──確かに、成熟した大人の鑑賞に堪え得るロックを提示できるバンドは少ないですからね。

OKI:ビーツがそういう存在であればいいと思ってます。ロックンロールは本来キッズのものとして誕生し、育ち始めて、我々はそのリスナーだった。そこから徐々に成熟していくのかと思いきや、結局は消費されて終わってしまった。仮に消費され尽くされていなければ、20年前に武道館を埋めていたバンドは未だに武道館を埋められるはずですからね。でも現実はそうじゃない。ビーツのリスナーにしても、ライヴに行きたいのになかなか足を運べない人がいっぱいいます。日々の生活があるし、家庭を持てば小遣いに限りもある。10代の頃よりも音楽にお金を使えない人がたくさんいるわけですよ。だからこそ、そんな状況の中で時間とお金を工面して俺たちのライヴに集まってくれた人たちには本当に感謝しているし、ライヴは目一杯やらせてもらいます。

──今、"消費"という言葉が出ましたけど、ビーツの楽曲が20年の歳月を経ても一向に消耗品となり得ないのは、やはり抑え難いリアルな衝動に基づいているからなんでしょうね。

OKI:作った本人たちが未だに音楽をやり続けてますからね。夢や霞みを喰って生きていけるわけじゃないし、その時々で最善を尽くしてリアルな音楽を作り続けているから。ビーツの最高傑作はネクスト・ワン。常にそう在りたいと思ってます。


DEBUT 20 YEARS BEST ALBUM
裸心凛風 〜HEARTFUL BEST〜

VICTOR ENTERTAINMENT VICL-63159
2,800yen (tax in)
全22曲収録・全曲リマスタリング音源
2008.11.19 IN STORES

amazonで購入

今冬よりビクター盤全曲配信開始! 着うた(R)、着うたフル(R)も配信中!
http://jvcmusic.co.jp/thestreetbeats

Live info.

DEBUT 20 YEARS TOUR Vol.2“裸心凛風”2008
11月1日(土)豊橋 LAHAINA
11月2日(日)京都 MUSE
11月7日(金)福岡 DRUM Be-1
11月8日(土)宮崎 WEATHER KING
11月22日(土)大阪 MUSE
11月23日(日)姫路 Beta
11月28日(金)仙台 CLUB JUNK BOX
11月30日(日)さいたま新都心 HEAVEN'S ROCK VJ-3
12月4日(木)千葉 LOOK[EVENT]

★デビュー20周年記念LIVE★
12月13日(土)広島 NAMIKI JUNCTION
12月20日(土)東京 渋谷 O-WEST[TOUR FINAL]