Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューおとぎ話('08年10月号)

世知辛い世の中に鳴り響く、極上のポップ・ミュージック

2008.10.01

青春時代のドキドキやイライラ、夢と勇気をユーモアに包んで21世紀の今を生きる永遠のBOYS & GIRLSへーー。1st.の『SALE!』から約1年。おとぎ話が2nd.アルバム『理由なき反抗』をリリース!! 今作に至るまでに、バンド内で知らない間にできていた見えない壁を今一度取っ払うことにより、メンバー全員がキラキラとしたポップ・ミュージックに向かって改めて同じ意識を持って作ることができた作品。おとぎ話としてのサウンドが確立し、胸を張ってメンバー全員がこのサウンドを鳴らしているということは、アルバムを通して感じ取ることができる。また、決意も新たに進み出した彼らが、何の迷いもないことを証明する1枚とも言えよう。
今回もボーカル・ギターの有馬和樹を迎えて話を訊いた。彼の揺るぎない感情は、これからも多くの人の心を揺さぶり続けることだろう。(interview:横山マサアキ)

ずっと成長期です

──2nd.アルバム『理由なき反抗』がリリースされますが、今年3月には『ハローグッバイep』をリリースしているのでリリースのペースはかなり順調ですね。

有馬:1st.の『SALE!』を出して『ハローグッバイep』まではどんどん出したいという焦りがあったんです。焦って地に足が着いていないという部分もありました。今回は早かったと言えば早かったですけど、5月に「今後もおとぎ話として続けていくなら腹括らないとだよね」っていう話をメンバーとできたのが大きかったですよ。それを経ての制作になるので、一日一日ちゃんとやっている感じはします。

──1st.のインタビューの時に次の段階が見えてるっていう話をしていたので、常に先へ先へ気持ちが行っているというのは感じていましたよ。一個形にしたら次のものを作りたいっていう気持ちがあるんですね。

有馬:僕個人としてはあったんですが、気づいたら僕だけ意識が先に進んでいるような状態になってしまっていたんです。でも、これからもおとぎ話を続けていくとなると、僕だけが進んでいても良くないのでメンバーと一度話をしなければいけない時期だったんですよ。最悪の話、バンドを抜けると言われてもしょうがないって思っていたんですが、予想以上におとぎ話のことも僕が作る曲も愛してくれているのがわかった事が大きかった。そこで「やるしかない」って。今まで話せなかった部分も今は話せるようになりましたし、バンドがすごくいい状態になっています。

──バンドとしてやっていくことが明確に見えたということですね。

有馬:はい。そこから、もっとポップにもっといいアルバムを作るために、キラキラさせようぜというところで昇華させようとしたんです。

──1st.はいろいろとやりたいことが詰まっていたけれど、今回はどっしりと最初から方向性がひとつに向いて作っている感じでしたね

有馬:わかりやすい作品なんだけど、よく聴くと「なんだこれ」と思わせるものを作りたかったんです。

──4人だけの世界にならず、外側に向けて音が鳴っているからファーストよりも完全に窓口が広くなったような気がしますね。メロディーひとつ取ってもわかりやすいですし、そういうところがおとぎ話の魅力だなって思います。改めて自分たちの魅力がわかって、勝負しようというのが伝わりました。

有馬:そこは意識が変わってきましたよ。これからどういうライブをやりたいかとか全部見えるんです。今まで難しく考えたこともあったんですが、そういうことを考えなくなった分、普段生きていてもラクになりましたよ。

──バンドを始めた頃は自己顕示欲とかコンプレックスがあるから打ち付ける感じになると思うんですが、包容力がある感じになりましたよね。歌い方も包み込む感じの歌い方になってきましたね。

有馬:歌に関しても以前より楽に歌えるようになりました。

──成長期ですね。

有馬:ずっと成長期ですよ。

ポップにすることが使命

──大きなフェスにも出演し、前は自分の近しい人だけに発信していくことのほうが多かったと思いますが、最近はたくさんの人に注目されるようになってきましたね。

有馬:せっかくいつもとは違うお客さんの前でライブができるんだったら、その人たちに届けなければいけないってすごく悩んでプレッシャーをかけていた部分があったんです。でも、最近は自分がやりたいことをちゃんとやれば、わかってもらえると思えるようになりましたよ。

──自信が付いたんですね。

有馬:自信というか、自分がやりたい表現を認められるようになりました。だから最近のライブは本当に楽しいんです。

──きっかけがあったんですか?

有馬:ライブの前日にブライアン・ウィルソンの『That Lucky Old Sun』を家で聴いていたんですが、そのCDがめちゃくちゃキラキラしていてドキドキしたんです。ビーチ・ボーイズから40年たっても今でもこれだけキラキラしたことをやりたいんだなって思った瞬間に僕もこういうことがやりたいんだって。そのCDを聴きながら、真っ暗な自分の部屋で覚醒した気がしたんです。それからは、もう大丈夫だって思ってライブをやってます。

──ライブを見たり、CDを聴いたりして影響を受けることは多いですか?

有馬:多いですよ。CDも買いますし、バンドをやっていて僕に話しかけてくれる人のライブにも行ってますよ。そういうライブを見ていると、いろんなものを吸収できるんです。共感出来るものを持っている人ってたくさんいますから。生きている力ももらいますしね。曲を良くしようとか変に固くなっている人よりも、人間がポップな人と一緒にいたいと思うんです。

──何をやってもどんづまり感が世の中に溢れていますからね。

有馬:どんづまりだらけですよ(笑)。

──普通に生活をしていても良くない話がいろんなところから舞い込んできて、憤りを感じることって多々あるじゃないですか? その時に自ら刺激を受けに行って自分の糧にして前に進もうなんて、ふてくされるよりも難しいんですよね。

有馬:だからポップなんですよ。ポップに振り切れると何でもアリなんです。ポップでオーラがあるCDももっと増えたらいいのにって思います。そこで、おとぎ話がアルバムを出せることはすごくいいなと思います。『理由なき反抗』というタイトルを付けた意味を理解してもらい、僕らが何をやろうとしてるのかをわかってもらいたいです。耽楽的ではやってないですからね。これを聴いてバンドを始める人がいたら、また嬉しいですよ。

── 『理由なき反抗』というのも、何かを攻撃するという意味ではないですからね。

有馬:そうです。反抗期の話じゃないですよ(笑)。

──反抗期に対して反抗するみたいなね。これって貴重な気持ちだと思いますよ。

有馬:せっかくライブハウスの雑誌だから言いたいんですけど、下の世代の子とかが音楽に対してポップさとかを信じている人が少なくなっている気がします。それに、バンドをやるなら小さくまとまらず、もっと自由にはっちゃけていいと思うんですよ。

──下の世代とかのバンドを見て危機感を感じます?

有馬:洋楽では、最近アイーダ・マリアって女性ボーカルのCDを買った時にウワーって思ったり、面白いバンドが多いんですが、最近の日本人では少ないです。もうどこかにいるのかも知れませんが、もっとドキドキさせてくれるバンドがどんどん出て来るといいですね。好きなバンドの影響モロってバンドがまだ多過ぎますよね。

──でも、若い時期は何事も物真似から入りますからね。歌が下手だろうが、ギターが下手だろうが自分は自分でしかないってところを見つけて欲しいと思いますよね。

有馬:でも、そういう子たちに「なんでおとぎ話が好きなの?」って聞くとすごくいい言葉が返ってくるんです。その気持ちでやろうよって(笑)。昔、銀杏の峯田(和伸)さんと話をした時に、「君が思ってることはすごいいいね。そのままやってね。頼むよ」って言われたのを思い出して、まさにそれがずっと続いているのかな。せっかく音楽をやって繋がっているんだから、たくさんの面白い人達と出会って下の世代にも繋げていきたいんですよ。ただ、おとぎ話がまだそれほど売れてないっていう事実があって、自分に対する戒めもありますが...(笑)。

──いろいろ話かけられたり音源をもらったりして初めて有馬君に責任感が湧いたということもありますか?

有馬:それはこの1年間で培われましたよ。みんなかわいくてしょうがないんです。

──これからも有馬君の大きな愛で包んで欲しいですよ。

有馬:そこは一心に引き受けているつもりです(笑)。全身全霊を込めて僕はやりますよ。いろいろあるけれど、愛してますよ。

──『おとぎ話の「愛」のテーマ』もありますからね。愛って抽象的なテーマだから、安っぽくも崇高にも取れますが、有馬君にとって愛とは?

有馬:でかいものですね。空とかと同意語。それを歌いたいんです。ちょっと前までは恋とか自分のまわりの小さいところしか歌えなかったけれど、今は愛を歌ってみて、恋も同じぐらい大きなものとして歌えるようになりました。結局自分にとって、大切な、大きなモノを歌いたいんだと思います。

──どんどん歌う世界が大きくなっていますね。

有馬:もっともっと大きくなりたいし、もっと社会的なことをポップに歌いたいとも思うんです。

──難しいことを難しい言葉で出してもね。

有馬:そうなんです。ポップにすることが僕らの使命かな。新聞記者ではないですからね。

4人で腹を括りたい

──音的な話をすると、今回は全部自分たちで演奏もアレンジもやられているんですね。1st.はゲストを迎えてましたが、今回は4人だけでやりたいという気持ちが強かったんですか?

有馬:4人で腹括りたかったから、まずは、4人でやれる一番悔いがないことをしようと。だから、今回は選択肢としてメンバー以外の誰かの音を入れるというのは全くなかったです。今そんなことしたら壊れちゃう可能性があったので。

──トリッキーな感じは1st.に比べて潜めているんだけど、その代わりメロディー1個にしても人間がよく伝わってくるし、技術的にも歌の音程が良くなったというよりは言葉を伝えていくうまさが際立ってきましたね。

有馬:意識をそっちに行かせようと思ってるからすごく嬉しいです。結果的になんで自分が演奏しているか、なんでポップになっているか、なんで自分が歌っているかというのをちゃんと4人が考えたんです。プレイヤーとして必要だからここにいてって言ってるわけではないですよね。何か魅力を感じるからこの4人でやっているんだし、おとぎ話でいるんだと思うんです。切羽詰まった感とは違う、良い意識に向いていったのかなって思います。

──難しいフレーズを弾いているわけではないけれど、4人が奏でている音がちゃんと出ているのは1st.では出来なかった感じですね。

有馬:大枠ではアイディアがたくさん詰まっているアルバムですけど、やっていることはシンプル。ザ・フレーミング・リップスとかペイヴメントとかもそうですよね。

──ペイヴメントも最初は卑屈でトリッキーな感じだったけれど、だんだん変わっていったし、ペイヴメントが辿った道を2枚で表現してしまったというところですね。

有馬:だから、この後の作品をどういうものにしようという不安もあります(笑)。次はもっとカラッとさせたいですね。

──おとぎ話は聴き手を選ばないし、音楽の知識がなくても楽しむことができますからね。そこにこだわりを持っているんだろうなと思います。

有馬:そうですね。これしかないだろうって。みんながそれぞれの自信の持ち方をしていて面白い。やっとバンドとしての一体感が出て来ました。

──ライブも楽しくできていると言われてましたが、以前に比べて意識は変わりました?

有馬:ライブの一体感はもちろんありますけど、ポップ・ミュージックってなんなのかっていうのをフェスに持って行けるバンドになれればいいなって思います。モッシュしてダイブしてというのが日本のフェスの象徴みたいになってますが、おとぎ話のライブで風船が飛ぶとかそういうところを見てみたい。そういう面白い存在になっていきたい。

──リリース・ツアーもありますね。全国にこのアルバムを届けてもらいたいです。

有馬:東京はロフトでワンマンなんです。ロフトのワンマンは初めてなので、ロフトの胸を借りるつもりでがんばります。Rooftop大プッシュでお願いします(笑)。

──初めてこのアルバムから聴いてくれる人も、ライブとか見る前にこのインタビューを読む方もいると思いますが、その方々に一言。

有馬:おとぎ話という名前に興味を持ってくれたら嬉しいです。CDを買えとは言いませんが試聴してください。音楽が好きな人なら、試聴してもらえたら買って貰えると思います(笑)。それと、ロフトのワンマンよろしくお願いします!

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理由なき反抗

UKFT-004 / 2,310 yen(tax in)
10.08 IN STORES

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LIVE INFOライブ情報

10月11日(土)CLUB METRO 昼の部<京都ボロフェスタ>
W)向井秀徳、ゆーきゃん、lostage、nhhmbase、他

10月22日(水)NO MARK@代官山unit
W)SION & The Cat Scratch Combo、THE BACILLUS BRAINS(THE日本脳炎)

11月1日(土)宇都宮HEAVEN'S ROCK
W)メガネビジョン、キャプテンストライダム

11月11日(火)大阪BIGCAT<GSGP PROJECT SPECIAL >
W)GOGO 7188、曽我部恵一BAND

おとぎ話「理由なき反抗」レコ発ツアー
11月12日(水)岡山ペパーランド
11月14日(金)広島Cave-Be
11月15日(土)長崎DRUM be-7
11月16日(日)福岡DRUM SON
11月24日(月・祝)名古屋アポロシアター
11月28日(金)新宿LOFT ワンマン

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