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INTERVIEW

トップインタビューMystery Girls('08年10月号)

本当は怖い話なんてキライ…(T_T)
身の毛もよだつ怖〜い話を友達感覚で話す新世代ユニット、早くも第2弾作品集を発表!

2008.10.01

前号に引き続き、現役女子大生2名による謎のユニット、ミステリー・ガールズのインタビューをお届けする。話題の携帯サイト『私の心霊体験』に寄せられた200〜300話の中から厳選された体験談、彼女たちが実際に見聞きした話をリアレンジして収録した初の作品集『私の心霊体験 其の壱』に続く『私の心霊体験 其の弐』が早くも今月末に発表されるが、物語の内容と完成度はもとより、彼女たちの表現力が飛躍的に増しているのが大きな特徴だ。前作同様、友人同士で話す口調ではあるが(いや、だからこそと言うべきか)、十二分に恐怖感を味わえる。喋りと効果音のみで聴き手のイマジネーションを膨らませる所作は並大抵の力量では成し得ぬはずで、本作はこの短期間で彼女たちが格段の成長を遂げた何よりの証左と言えるだろう。聴覚と想像力だけで充分に楽しめるミステリー・ガールズ独自の心霊エンターテイメントは、思いのほか早く確立されるのかもしれない。(interview:椎名宗之)

怖さも効果音も倍増の『其の弐』

──『私の心霊体験 其の壱』が発売になって、周囲の反応はどうですか。

香穂里[Kaori No.2](以下、No.2):周りの友達が少しずつ心霊に興味を持ち始めてくれてる感触はありますね。ただ、まだ認知度も低いので、これからも頑張って私たちの活動を浸透させていきたいと思ってます。

──インストア・ライヴなど、人前で心霊話を披露する機会も増えたと思いますけど。

No.2:レコーディングとはまた違ったいい経験ができましたね。その場の雰囲気もお客さんによって全然違いますけど、どんな状況でもちゃんと対応できる力を身に付けたいと今は強く思います。

歌織[Kaori No.1](以下、No.1):CDでは親しみを込めた話し言葉なんですけど、ライヴとなるとお客さんは自分たちよりも年上の方が多いじゃないですか? そんな目上の人たちに対して友達感覚で話していいのかどうか、かなり悩んだりもしたんですよね(笑)。

──ブログを拝見すると、稲川淳二さんの"MYSTERY NIGHT TOUR"に足を運んで熱心に研究されているのが窺えますね。

No.1:今年は2回も拝見させて頂いたんですど、本当に勉強になりますね。

No.2:会場に入った瞬間から独特の雰囲気がありますからね。最初は凄く気さくなお喋りから始まって、本編の怪談話になるとグッと引き込まれるんです。本当に凄い。

──それにしても、思いのほか早いペースで『私の心霊体験 其の弐』が完成しましたね。

No.2:はい、有り難いことに。怖さも『其の壱』に比べて格段に増してると思います。効果音も増えたので、そのぶん私たちの喋りも負けちゃいけないなと思って。

No.1:効果音の録りは、今回私たちも参加させてもらったんですよ。ハイヒールを履いて足音を立てたり、走り込んでみたりとかして。

──収録された心霊話には、おふたりが取材してまとめたものもあるんですよね。

No.1:そうですね。怖い話はどうしても似た内容が多いので、色の違う話はなかなか見つけづらいんですよ。だから自分たちでいろんな方に話を聞いて、その中で面白かったものを吟味して形にしたんです。「長い髪の女」は知り合いの美容師さんから伺った話だし、看護師さんから伺った病院の話は「閉ざされた部屋」になってますし。"場所"にフォーカスを当てた怖い話っていう切り口も今後のテーマとしては面白いと思うんですよね。

No.2:学校や病院、スタジオとかね。

──まぁ、まさか「ダンススタジオ」までが心霊スポットだとは思いませんでしたけど(笑)。

No.2:ちょっと異色ですよね。この話は私の友達から聞いた話なんですよ。

──選りすぐりの14話なのでどれも充分に怖いし聴き応えもあるんですが、特にオススメな話はどれですか。

No.2:私は1号の話す「閉ざされた部屋」ですね。話の内容自体も怖いですけど、効果音が怖さを倍増させてるんですよ。

──確かに、部屋のドアをノックするあの音は尋常じゃない怖さですよ。

No.1:あれは怖いですね。あくまで聴覚のみで怖がらせる作品ならではの持ち味をよく出せたと思ってます。あと、話の内容で言うと、「霊を呼ぶルール」は最後の最後まで聴かないと醍醐味が味わえないと思いますね。

No.2:うん、あれは最後に本気でビックリするよね。

No.1:怖いもの見たさで心霊スポットのトンネルに車を停める話なんですけど、話の構成が今までにない新鮮なものだったので、自分で話していても凄く面白かったです。話が終わったからといってそこで終わりじゃないのが『其の弐』のユニークなところですね。

──「赤ちゃんの夢」も、最後の最後で意外なオチが付いてますしね。

No.1:そうですね。赤ちゃんの幽霊が出てくるのも異色だと思いますし。2号の話す「恐怖のネット映像」も異色と言えば異色ですね。"ネット映像"っていうアイテムが凄く現代っぽいですし、こういう自分にとっても身近なものだと余計に怖いと思うんですよ。

──確かに。しかもこの話、どんなネット映像なのかが最後の最後で...(以下、自粛)。

No.2:そう、だからこの話も本当の最後まで聴くと余計に怖いんです。

──前作の「チャッピー」同様、今回も「おばあちゃんの猫」というハート・ウォーミングな話が収録されていますね。

No.1:そういう心温まる話は必ずアルバムの中に織り交ぜていきたいんですよ。「おばあちゃんの猫」はアルバムの最後を締め括るに相応しい、とても不思議な話だと思いますね。

ライヴハウスの"本当にあった怖い話"

──話のスクリプトもおふたりで書き分けているんですか。

No.2:私たちの取材原稿をスタッフの方に一度まとめてもらって、それを自分なりの伝えやすい言葉に直してますね。

No.1:判りづらい言い回しは直すようにしてます。聴いて下さる人がイメージしやすいような言葉なり言い回しを心懸けてますね。

No.2:言葉遣いひとつで伝わり方が全然変わるので、凄く細かいところまで考えてるんですよ。大まかすぎる言い回しとか、逆に説明が多すぎる部分にはお互いにダメ出しをしてみたり。

──やはり、当たり前のように練習は何度もされているんですよね。

No.2:『其の壱』よりもクオリティを上げたかったので、今回は念を入れて練習しましたね。『其の壱』を完成させた時点で反省点もたくさんあったし、それをひとつずつ解消したかったんですよ。

No.1:『其の壱』を録り終えてから『其の弐』を録り始めるまでの期間がそれほどなかったんですけど、『其の壱』の収録で掴んだ感触と勢いで『其の弐』を収録できたので、とてもいい流れではあったと思うんですよね。毎日怖い話をして経験値を上げたり、友達に怖い話をして反応を窺ってみて、"聴いてる人はここで怖がるんだな"って理解したりとか。

──『其の壱』を録り終えて生じた課題点とは、どんなものだったんですか。

No.1:やっぱり、間合いとか話すスピードですね。

No.2:あと、抑揚の付け方とか。だんだん話していくうちに物語が自分の中に入ってきて、それによって感情の押し引きも変わってくると思いますし。

──意識して緩急を付けて話しているのはよく窺えますよ。「心霊サークル」の"○○ないで..."という一言の間合いと発声を聞いただけでも確かな成長を感じるし。

No.1:ありがとうございます。『其の壱』の時は自分が話すことで精一杯だったんですけど、今回は聴く人の立場をよく考えながら間合いやスピードをコントロールできたと思うんですよ。前回に比べて少しは、ですけど。

──視覚効果に頼ることなく、おふたりの喋りと効果音だけで聴き手のイメージを掻き立てるのは至難の業ですよね。

No.2:でも、だからこそやり甲斐と面白さを感じますよ。ひとりひとり想像の仕方も違うし、発想する怖さも全然違いますからね。

No.1:1,000人いたら1,000通りの女の子(「用務員さん」に登場するキー・パーソン)が頭に浮かぶと思いますし。

──ちなみに、前回のように部屋の蛍光灯が突然切れたり、マイクのノイズが酷かったりとかの不思議な現象は今回もありましたか。

No.1:自分たちは全く体験しなかったんですけど、最後にミックスをして下さった人たちがいろんな不思議な声やノイズを聞いたそうです。効果音として入れたわけではない音が聞こえたらしくて...。

──本誌はライヴハウス発のフリー・マガジンなんですけど、ライヴハウスで起こった怖い話は余りないんでしょうか?

No.1:ありますよ。昨日聞いたばかりの話なんですけど、都内のとあるライヴハウスの聴講室で、スタッフの方が深夜にひとりで作業をしていたそうなんです。ちょっとウトウトしてたらトントンと右肩を叩かれて、フッと起きて周りを見回しても誰もいない。でも、その部屋で寝そうになると必ず肩を叩かれるんですって。他に誰かがいる時はそんなことは起きないのに、ひとりでいると絶対に叩かれるという話で...。

──うわァ...(笑)。

No.1:こんなのもあります。ステージ上でピアニストが演奏してた時に、すぐそばに男の人が立ってたんです。もしかしたら機材の調整をしに来たのかな? と思いきや、何もせずにずっとその場を動かないんですって。ヘンな人だなと思いながらもライヴをやり遂げたんですけど、楽屋に戻ってステージのモニターを見ても、その男の人が映ってなかったそうなんですよ。でも、その後にステージに戻ったら、やっぱりその男の人が突っ立ってたという...。昔からある古い建物には霊が住み着くってよく言いますよね。

──たとえば、「心霊サークル」の舞台である古い木造の空家とか。

No.1:以前お話しさせて頂いた霊が見える方は、事故現場でよく霊を見るそうです。キレイな姿ではなく、事故に遭った直後の姿で見えるって...。やっぱり、その現場に思いが残るんでしょうね。

本当の意味でミステリー・ガールズになれた

──ところで、この『其の弐』収録直後におふたりはお互いの本音をとことんぶつけ合った話し合いをしたそうですね。

No.1:ミステリー・ガールズの今の在り方や今後について語り合ったんですよ。ライヴになるとこのふたりの掛け合いが特に重要になってくるし、今お互いがどんなことを思っているかを洗いざらい話すことにしたんです。

No.2:性格も真逆なふたりなので、どうしても衝突する部分があったんです。お互いを心の底から認め合うには、一度徹底的に話し合う必要があったんですよね。

No.1:歌舞伎町のファースト・フード店で延々と話し込んだんですが、どこまで話しても一向に考え方が交わらないんですよ(笑)。私からすれば2号の考え方は絶対に理解できないし、その逆もまた然りで。私は基本的に人と判り合えないことは絶対にないと思ってるし、本音でぶつかればいつかは必ず仲良くなれると信じてるんです。それに対して2号は、合わないものは合わないんだから、最初からそっとしておくべきだと考えるタイプで。

No.2:合わないものは仕方ないし、その上で付き合っていくしかないと思うんですよ、私は。

No.1:私はそういう状況がイヤなので、一歩踏み込んで付き合いたいんです。それは2号に対しても同じで、だからこそ話し合いの場を設けたんですよ。

No.2:でも、その話し合いでようやくお互いがお互いを理解できたよね?

No.1:うん。真逆だからこそ相手のことを新鮮に受け止めることができたって言うか、2号は私のキャパシティを広げてくれる存在なんだとよく判ったんですよね。

No.2:それは私も同じです。1号と話していて、"こういう考え方もできるんだな"っていう新しい発見や刺激がたくさんあったんですよ。今さらですけど、このふたりが本当の意味でミステリー・ガールズになれた気がしましたね。

No.1:そうだね。以上がふたりで泣きながら話し込んだ"歌舞伎町の夜"の真相です(笑)。

──ミステリー・ガールズがよりミステリー・ガールズらしく在るためにはどうしても必要なディスカッションだったんでしょうね。

No.1:そうですね。泣きながら本音で話し合えるだけ心を許し合えているんだと思ったし、これからもミステリー・ガールズとして長く付き合っていくつもりだから、今のうちに思っていたことを語り合えて良かったですね。

──その経験は、いずれ発表されるであろう『其の参』や今後のライヴにも活かされそうですね。

No.1:それは間違いなく。自分では思いもつかない考え方をお互い理解できたので、話にも活かせると思うんですよ。私と同じような考え方の人は私と同じ視点で怖い話を楽しんでくれるだろうし、2号と同じような考え方の人は2号と同じ視点で楽しんでくれるだろうし、真逆の視点がひとつの作品に同居しているわけだから、同じ視点よりは聴いてくれる人の幅が確実に広がりますよね。

No.2:ライヴでもそうですよね。一粒で二度美味しいって言うか(笑)。ふぞろいだからこその面白さがあると思うので。

──声質も真逆ですもんね。1号さんはちょっとクールで歯切れの良さがあるし、2号さんは丸みを帯びた柔らかさがあるし。

No.1:真逆だからこそ良かったんだと思うし、これで性格も声質も似ていたらふたりでミステリー・ガールズをやる意味もないですからね。とは言え、名前と血液型は一緒なんですけど(笑)。

──月並みですが、最後に今後の抱負を。

No.1:もっと怖い話をいろいろと取材したいですし、確かな表現力を身に付けて自分たちの幅を広げるのが目標ですね。あと、自分が感じたのと全く同じように相手に感じてもらえるような喋りができればと思います。

No.2:まだまだ未熟者ですし、どんどん自分を磨いていきたいです。ミステリー・ガールズとしても、ひとりの女性としても(笑)。

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