トップ > インタビュー > 榊原秀樹 De+LAX / カリキュラマシーン × いとうかなこ('08年08月号)

"GEORIDE"〈ジオライド〉に所属するアーティストの中でもとりわけ異彩を放つ存在なのが、今年メジャー・デビュー20周年を迎えるDe+LAXの榊原秀樹によるソロ・ユニット、カリキュラマシーンである。ZIZZ STUDIO代表の磯江俊道がe.o.e.として参加している彼らもまた『咎狗の血』を始め数々のゲーム・ソフトに音楽を提供しており、レーベル・メイトであるいとうかなこやワタナベカズヒロとのライヴ共演も当然のことながら多い。前頁から続く"GEORIDE"レーベル特集の締めとして、インタビュー前日に"D+X 20th Anniversary Extra Festa!!"を大盛況のうちに終えた榊原と、そのステージを客席で熱く見守っていたいとうによるレーベル義兄妹対談をお届けしよう。(interview:椎名宗之)

クセがありそうでクセがある歌声

──月並みですが、両者のファースト・コンタクトの話から聞かせて下さい。

榊原:磯江君の家でカリキュラの制作をやっていた時に、たまたまかなちゃんが歌入れか何かをしていたんだよね。俺たちもまだデジターボではなく、ライヴ会場とネット販売限定の音源を自主的に作っていた頃で。

いとう:そうそう。6年くらい前ですかね。

榊原:で、コーラスを入れたいと思って、その場の思い付きでかなちゃんにお願いしたんですよ。全くの初対面なのに(笑)。でも、かなちゃんは凄く上手くてね。綺麗な声をしていて、素晴らしいなと。

いとう:私はカリキュラやDe+LAXのことを全く知らなかったんですよ(笑)。PERSONZとかは大好きだったんですけど、男性のバンドは全然聴いたことがなくて。BOφWYもちょっとだけ知ってたくらいで。女性ヴォーカルのほうが真似できるじゃないですか。

榊原:ああ、なるほどね。他にはどういうバンドが好きだったの?

いとう:レベッカとかですね。NOKKOさんの声が凄く好きで。高校の時はPERSONZのコピー・バンドもやってたんですよ。

──カリキュラマシーンの諸作品にはいとうさんが常にコーラス参加しているイメージがありますけど。

いとう:オマケでちょいちょい参加させてもらってますね。頼まれると「ハイ、喜んでー!」って感じで。

榊原:俺が割と低い声をしていて、唄っている1オクターブ上をかなちゃんがすんなり唄えるので、カリキュラではひとつの形として定着したと俺は勝手に解釈しているんですけど(笑)。かなちゃんの声は、クセがありそうでクセがあるところがいい。ちゃんと存在感があるし、単なるコーラスで終わっていないと言うか。俺はそういうコーラスが欲しいんですよ。

──記名性の高い歌声というわけですね。

榊原:うん。そうじゃないと面白くないですからね。当たり障りのないコーラスなら自分でハモったほうがラクだし、かなちゃんのコーラスは歌詞に説得力を生んでくれるんですよ。

いとう:そうなんですか。自分では存在感を薄めてコーラスに徹しているつもりなんですけど(笑)。

榊原:いやいや、充分存在感あるよ(笑)。曲を作っている時も「ここは絶対かなちゃんに唄ってもらおう」っていうのを考えているからね。実際にコーラスを入れてもらっても、絶対にハズレがないし。

──ライヴでもすでに何度も共演されていますよね。

いとう:一緒にやる機会は多いですね。カリキュラのライヴは観ているととにかく暴れたくなるんですよ。本当に楽しい。

榊原:3人ともやりたい放題だからね。特に磯江君が(笑)。

いとう:文句なしに格好いいし、ちょっと他にない感じがありますよね。私はカリキュラのライヴで大抵踊ってますから(笑)。

榊原:かなちゃんのライヴは独自の歌の世界と言うか、異次元に連れていってくれる感覚があるね。伸びやかで綺麗な歌声が瞬時に違う場所へといざなってくれる。歌声にどこか浮遊感がある一方でZIZZの演奏は力強くて、そのバランスも観ていて面白いよね。

──いとうさんの歌声は、秀樹さんが本来好きな女性シンガーの系統なんでしょうね。

榊原:そうなんでしょうね。まぁ、人となりの部分はさておき(笑)。かなちゃんは酔うとどんどん盛り上がるタイプだよね。

いとう:酔うとどんどん楽しくなるんですよ。気絶する前にお家に帰ろうとは思ってるんですけど、最近は気絶しながら喋ってるらしいですね(笑)。

榊原:それも凄いね(笑)。俺は最近、酔うの早いんだよ。長い時間酔えなくなっちゃって、昨日のDe+LAXのライヴの打ち上げも1時半には帰っちゃった。量も呑めないし、身体はダルいし、まるでいいことないよ(笑)。ちょうどDe+LAXのレコーディングとリハーサルが重なって長丁場のライヴだったし、ゲスト枠もあったから相当疲れが溜まっていたんだろうね。

ゲームでもロックでもいいものはいい

──そう言えば、De+LAXは『RenaiSSance』以来実に9年振りとなるオリジナル・アルバム『ART+BEAT』が来月発表になるんですよね。

榊原:そうなんです。今までになくストレートな作品に仕上がったと思いますよ。5人編成から4人編成になって、音の作りもシンプルで骨太なものになったんじゃないかな。明るくて突き抜けた印象もあるし、歌詞の内容も前向きな感じで。自分たちからすると「昔はこんな感じだったよな」って言うか、ちょっと初期のテイストに近いものはあるのかもしれない。それをもっとシンプルに削ぎ落とした感じですね。まぁ、削ぎ落とさないと弾けないし叩けないっていうのも正直あるんですけど(笑)。

いとう:昨日のAXのDe+LAXはホントに格好良かったですね。PERSONZも初めて観て、凄い迫力でした。ステージでヴォーカルを取っていた人たちの動き方は勉強になりましたよ。JILLさんも山下久美子さんも、もちろん宙也さんも。私はあんなに激しく動き回ることがないし、ZIZZのみんなも譜面の前からなかなか動けないので(笑)。

──それにしても、ゲーム音楽ファンにもカリキュラマシーンの音楽がだいぶ浸透してきた感がありますね。

榊原:うん、有り難いことに。最初は、聴いてくれる層が広がるのなら何でもやろうと思ったんですよ。

いとう:『咎狗の血』っていうゲームの完成度の高さもあるし、カリキュラの音楽もそれに負けてないですからね。

榊原:そう、『咎狗の血』は凄くクオリティの高いゲームだから、提供する音楽もそれ相応のものを作ろうっていう気合いが自ずと入るよね。あれだけの作品だから絶対に手は抜けない。俺の中では、ゲームもロックの世界も隔たりなく同じラインにあるんです。曲作りを意識的に変えることもないし、ゲームでもロックでもいいものはいいっていう発想なんですよ。ライヴも、ゲーム・ファンだろうがロック・ファンだろうが変わらない。誰を相手にしようとオーディエンスを楽しませなくちゃいけないという使命感が変わらずにあるだけだから。

いとう:そうですよね。私もゲーム音楽の主題歌を唄うようになってお客さんが増えましたもん。ゲームのお客さんは普段ライヴへ行く機会が少ないけど、実際に足を運べばライヴの楽しさがすぐに判る。『咎狗の血』って女の子のお客さんがほとんどなんですけど、女の子は凄くフットワークが軽いんですよね。一度好きになったらどんなライヴにでも足を運んでくれるようになる。

──そういった女性ファンは、普段どんな音楽を聴いているんでしょう?

いとう:どうなんでしょう。ヴィジュアル系が好きな人は多い気がしますけど。

──秀樹さんも元祖ヴィジュアル系みたいなものじゃないですか(笑)。

榊原:いやいや、勘弁して下さい(笑)。

──自戒を込めて言うと、ロック・リスナーよりもゲームやアニメのファンのほうが何の先入観もなくその音楽に触れることができるのかもしれませんね。ロック・リスナーはウンチクの深さが邪魔をして素直になれない時があるから。

いとう:うん、そうだと思いますよ。カリキュラの格好良さとZIZZ BANDの格好良さに分け隔てがないって言うか。ゲーム音楽にはプログレとかも混ざってますからね。BGMでもお客さんはノリノリだし(笑)。

──BGMと言えば、秀樹さんは以前「ゲーム音楽の制作は映画のサントラ作りに近い」と仰っていましたよね。

榊原:うん。俺自身、一時期映画音楽にハマっていたことがあるんですよ。『アメリカン・グラフィティ』から始まって、ミュージカルものを中心に好んでよく聴いていましたね。『ダウンタウン物語』っていう子供たちがギャングに扮する映画があって、そのサントラが凄く気に入っていたんです。

いとう:確かに、ゲームは映画に似てますよね。自分で次のページをめくる映画って言うか。ゲームの世界は、私も磯江さんに出会うまでは全然知らなかったですよ。パソコンも触ったことがなかったし(笑)。

──でも今の時代、ロックよりもゲームやアニメの音楽のほうがCDのセールスもライヴの動員も格段上ですよね。そこに個人的には凄く歯痒さを感じるんですけど。

榊原:まぁ、一言で言えば時代ですよ(笑)。でも、それもまた変わっていくんじゃないかな。凄く流動的な世界だから。

日本のアニメは世界を凌駕するか!?

──ロック・ファンがゲームやアニメの音楽に流れるのは稀でも、その逆のケースはかなりありそうですよね。

いとう:と思いますよ。凄く情熱的だし、とことんまで追求するタイプが多い気がします。

榊原:それは多分、ゲームの物語性が背景にあるからだろうね。

いとう:そう、だからこそ感情移入しやすいんでしょうね。「あのシーンで流れた曲だ!」ってボロボロ泣いたりもするし。

榊原:音楽だけを聴いて気持ちが昂ぶるとか、そういうのも今はそうそうないような気がするしね。

いとう:いやでも、昨日のDe+LAXのライヴは音だけで勝負していて凄く格好良かったですよ。秀樹さんはDe+LAXだと二枚目度がアップしますよね(笑)。それに比べて、カリキュラは人情派のカリスマっていう感じかな(笑)。

榊原:ああ、そこは分けていかないとね(笑)。だって、カリキュラで俺が二枚目になりきっていたら、磯江君もMOH-CHAN(ソニー鈴木)もやりづらくて仕方ないでしょ?(笑)

──僕も昨夜のDe+LAXのライヴを拝見したんですが、秀樹さんはMCでもっと前に出てもいいんじゃないですかね?(笑)

榊原:いやいや、出る杭は打たれますから(笑)。この20年、相当打たれ続けてきましたけどね(笑)。

──でも、カリキュラマシーンを始め外部で得た経験がDe+LAXにフィードバックしている部分もあるんじゃないですか。

榊原:カリキュラでやっている用法を今度出るDe+LAXのニュー・アルバムでは導入しましたけどね、自分の曲に関しては。要するに、カリキュラみたいに完璧な状態に近いオケをDe+LAXでも用意したんですよ。ある程度ガイドラインを用意して(高橋)まことさんに叩いてもらうとか。今まではもっとラフに、3人一斉に「せーの!」で録るような感じでしたから。カリキュラ然りゲーム音楽然り、自分の活動を広げることでDe+LAXの懐をもっと深いものにできればいいなとは思っていますね。

いとう:カリキュラの楽曲は凄くヴァラエティに富んでるし、とてもユニークですよね。

榊原:ユニーク? お菓子を黙々と食べ続けている時の磯江君が?(笑)

いとう:はははは。磯江さん、お腹がすくと元気がなくなっちゃうんですよね(笑)。

──新宿LOFTで行なわれるいとうさんのワンマンに秀樹さんが飛び入りするようなことは?

榊原:それよりも、物販で売り子をやったほうが面白そうですね。おにぎりでも握ろうかな。"秀樹のおにぎり"、1個200円で(笑)。

いとう:それいいですね! お茶をサービスで付けたりして(笑)。

──期待しております(笑)。最後に、お互いの今後へ向けてエールを贈って締めましょうか。

榊原:かなちゃんはゲームやアニメ以外のもっと大きな場所に出て行って唄い続けてほしいね。日本のみならずアジアでも、いや世界に打って出るくらいのアーティストになってほしい。

いとう:その言葉、そっくりそのままお返しします(笑)。秀樹さんにももっとガンガン突き進んでほしいです。

──ゲーム音楽やアニメの世界は、世界に打って出る状況がすでに整っているんじゃないですか。

いとう:ヨーロッパでは日本のアニメが凄い人気だし、今はその後をゲームが追い掛けてる感じですからね。ゲームがアニメ化されることが多くなってきたので、今後どういう形で火がつくか判らないと思いますよ。フランス人が『ドラゴンボール』の主題歌を日本語で唄ってるような状況ですから(笑)。この間ロサンゼルスでアニメ・フェアがあって、そこでも純和風な日本のアニメが人気だったみたいですよ。

榊原:じゃあ、カリキュラもヨーロッパに進出してみようかな(笑)。おかしいよね、メイクも衣装もやらされてる感が否めないカリキュラが向こうでウケたら。仮にフランスのチャートの上位にカリキュラが入ったら、俺はフランスの国民性を疑うけどね(笑)。まぁそこまで行かなくても、こうしてかなちゃんやナベちゃん(ワタナベカズヒロ)と一緒になってやっていることがひとつの大きなムーヴメントになれば面白いよね。俺もまだまだ老体にムチ打って頑張りますよ(笑)。

Live info.

カリキュラマシーン 2008 ONEMAN LIVE 第2弾!!
『ちっちゃいトコが好きっ!』
〜祝★40! 逃げちゃダメだ! Happy Happy Birthday to HIDEKI〜

8月18日(月)新宿Motion
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKET:advance-3,000yen (+1drink) / door-3,500yen (+1drink)
info.:Motion 03-6825-5858