ドミコが2ndアルバム「hey hey,my my?」のリリース・ツアーの8本目となるファイナル・ライブをクリスマス・イヴの12月24日に新代田FEVERで開催。Sold Outした会場には一概にどういった層と言い切れない多彩なオーディエンスが詰めかけた。

 

ギター＆ボーカルのさかしたひかるとドラムの長谷川啓太からなる2ピースという必要最低限の編成で鳴らされる、シンプルとは言い難い、ガレジージ、サイケ、オルタナ、ブルース、ヒップホップなどを自在に行き交うロックンロール。新作収録の「こんなのおかしくない？」がSpotifyバイラルトップ50（日本）デイリーチャートで１位を獲得、他にも各地のFM局でパワープレイされるなど、明らかに「なんだか気になる」リスナーが増加した結果が見て取れる。

 

 

ひかるが黒、長谷川が白のTシャツで登場するとしばらく長谷川のキック＆スネアがタイトに響き、そこにひかるがザクザクと心地いいカッティングを打ち込み、日本語か英語か判然としないだるそうなボーカルを放つ。続く「バニラクリームベリーサワー」では、彼らのライブ・サウンドの要と言える、ループ・エフェクターを使って、バッキングをループさせながら緩急の効いたリフを自在に弾くひかるに、オーディエンスはノリながらも釘付けになっていく。音源とはイントロのアレンジを変えた「こんなのおかしくない？」では、メインリフが鳴らされると男性の歓声が上がるほど。極悪な太いサウンドのソロでブルージィな側面を見せた「ミッドナイトネオン」も度肝を抜かれた。ループ・エフェクターを用いているとはいえ、複雑なリフとともにグラマラスかつ脱力したロックスターばりのボーカルを聴かせるひかるの天性のセンスをナマで再確認して、ジリジリ前方にたどり着く男性もいたほどだ。

 

 

ドラムレスでフォーキーな味わいを聴かせた「怪獣たちは」や、乾いたブルース「深海旅行にて」ではひかるの歌力が冴える。前作「soo coo？」からカオス紙一重で実は渋いソロをひき倒す「my baby」、ドミコ流ファンキーな「まどろまない」あたりまでくるとフロアの自由なノリが加速して、誰もが好き勝手に気持ちよさそうに体を揺らしていた。また、ダークなサイケデリアが漂う「プライマリケア」ではひかるがマイクを握りしめて歌う姿にことさらロックスター感が見て取れ、一方、長谷川はアウトロに向かってキース・ムーンばりに頭をブンブン振りながらハードヒッターぶりを見せるという、最強に絵になる光景も。

 

「すごい楽しいんですけど、あと2曲で終わりみたいです」とひかるが言うと、フロアからはあからさまな不満の声が上がり、「うるさいんじゃ」と憎たらしいところも見せる。

 

ルーパーも使いつつ、複雑なアルペジオをナマで弾きながら歌う「ロースト・ビーチ・ベイビー」、そして本編ラストは「くじらの巣」。ひかるの歌詞を深読みするのはナンセンスかもしれないし、主体は深海のくじらかもしれないが《だってもっと変化を手にしたり こわして必死に生きないと嫌だ 意味がない》に始まり《息がしたい 止めたくない》というフレーズは、ドミコのロックンロールそのものに聴こえた。

 

 

止まない歓声と拍手に迎えられた二人。ひかるは「よくこんな日に来ましたね。大丈夫？お母さん心配してない？」と、また憎まれ口を叩きながら、「明日ある発表があるんですけど」という発表で終わらせようとして、再びフロアの不満を受け「うるさいって。えー、４月１日にこのツアーの追加公演がWWWであるので、それまでにいろんな事情もあると思いますが皆さんなんとかして来てください」と笑わせた。

 

そこに初期から人気でこの曲でドミコにハマった人も多いであろう「united pancake」、音源よりパワーアップした「slip in pool」をプレイしてステージを去ったが、まだ鳴り止まない声に応え、ダブル・アンコール。「おーまいがー」をイブの夜の最後にプレゼントして終演した。（石角友香　Live Photo 湯浅良介）