トップ > エクストライシュー > BOØWY、30年の歳月を経て初めて全貌が明かされる解散GIGの真実(Rooftop2017年11月号)

BOØWY、30年の歳月を経て初めて全貌が明かされる解散GIGの真実(Rooftop2017年11月号) 2017.11.01

main_bo.jpg
 
 1987・12・24 BOØWY解散。
 氷室京介×布袋寅泰×高橋まこと×松井恒松
 4人でしか探せなかったモノ。自分達で有り続ける事へのこだわり。今度はひとりひとりで有り続ける事にこだわる為にBOØWYは昨日のクリスマスイブを選びました。
 最後のGIGSは必ず来年プレゼントします。
 
 ──言わずと知れた、1987年12月25日(金)に全国の主要新聞に掲載されたBOØWYの解散を伝える広告だ。この「昨日のクリスマスイブ」の全貌が、実に30年の歳月を経て初めて明かされることになった。それが今回新たに発表される映像作品『BOØWY 1224 -THE ORIGINAL-』である。
 本来は翌年4月の『LAST GIGS』の映像と合わせて彼らの解散に焦点を当てたドキュメンタリー作品の素材として記録されたものだが、各メンバーのソロ活動に対する配慮からドキュメンタリー製作の計画は頓挫。その後、『1224』と名づけられたカメラ5台分の16mmフィルムは14年ものあいだ倉庫に保管され、2001年12月24日にVHS・DVD化(監督は永石勝)。2012年12月24日にはBlu-ray BOX『BOØWY BLU-RAY COMPLETE』の中の一枚としてBlu-ray化。また、2013年3月21日(デビュー記念日)にはその映像をデジタル処理・音質を向上させた映画『BOØWY 1224 FILM THE MOVIE 2013』として全国の劇場で上映された経緯がある。
 
BOOWY_A-sha-1224.jpg
 
 今回の『1224 -THE ORIGINAL-』のポイントは大きく二つ。
 まず何より、今年新たにオリジナル・フィルムが発見され、フィルムの劣化により40秒ほど欠損していた「ONLY YOU」が初めて復元されたこと。初商品化から16年を経て、満を持して完全版の登場というわけだ。
 もう一つは、2K(1920画素×1080画素)でフィルムをスキャンする従来の手法ではなく、手間もコストもかかる4K(3840画素×2160画素)でスキャンしたデジタル・データをマスターとして使用したため、HD(ハイデフィニション=高い解像度を持つ高精細な映像)および4K・HDR(ハイダイナミックレンジ=輝度の幅を拡大した高画質映像)化に成功したこと。それも画面アスペクト比はこれまでの正方形に近いスタンダード・サイズ(4:3)から横長のワイド・サイズ(16:9)へと変化した。人間の視野に忠実でもっとも見やすい画角に変貌を遂げることができたのは、ひとえにフィルムで記録保存されていたからこそだ。
 もちろん音源も新たにリマスターされたものが使用されており、臨場感が数十倍増したソリッドなサウンドが存分に楽しめる。また、DVD、Blu-ray、日本の音楽ソフトでは初となる4K Ultra HD Blu-rayという三形態で発売されるという異例の試みも、6thシングル『MARIONETTE』をいち早くCDVでも発売するなど新規格のメディアを積極的に取り入れていたBOØWYらしい。
 編集を務めたのは、「わがままジュリエット」のMV(1986年2月)や『BOØWY VIDEO』(1986年7月)などBOØWYの映像作品を数多く手がけてきた前嶋輝。バンドの真髄を知り尽くした前嶋のリミックス手腕と驚異の高画質映像が相俟って、今まで見たことのない、まったく新しい『1224』が完成した。音源と映像の違いはあれど、2009年にザ・ビートルズのオリジナル・アルバムが次世代に向けて初めてデジタル・リマスター化されたように、今回の『1224 -THE ORIGINAL-』もまた次世代に受け継がれていくのを視野に入れた、現代の最高峰の技術と考え得る限り最適のオーソリティの技巧による最新鋭のアップデートと言えるだろう。
 
boowy1224_br.jpg
 
 まさに今年のBOØWYデビュー35周年プロジェクトの集大成に相応しいアイテムなのだが、『1224』はやはり何度見返しても胸が詰まる思いのする作品である。同じく映像化されたライブで言えば、わずか数カ月前の『CASE OF BOØWY』、すべてが吹っ切れた後の『LAST GIGS』で見られる余裕や笑みが曲を追うごとに消え失せていく。間奏で布袋が「ジングルベル」を即興で奏でる「BLUE VACATION」、氷室がそばに駆け寄ってスライディングしても毅然とベースを弾く松井が印象的な「ハイウェイに乗る前に」、ブレイク部分で氷室にマイクを向けられた布袋が素っ頓狂に唄ってはぐらかす「IMAGE DOWN」、高橋のスティック投げが炸裂する「NO. NEW YORK」など、思わず笑みがこぼれるシーンもあるが、総じて張り詰めた緊張感が場内を包み込んでいる。
 言うまでもなくそれは、言うも言わぬも氷室に委ねられていた解散宣言という時限爆弾のタイマーがすでに作動していたからに他ならない。だから真の意味でのフェアウェル・ソング「CLOUDY HEART」は、本来のイントロに入る前に爪弾かれる布袋の悲壮感溢れるギター・パートからして重い。前後の『CASE OF BOØWY』と『LAST GIGS』で披露されたバージョンと聴き比べても、その重さは歴然としている。
 4人が闊歩するオープニング・ムービーから1曲目の「LIAR GIRL」で幕を開ける部分にはいつ見ても言い知れぬ高揚感とカタルシスが去来するが、ぼくらはこれから先に待ち受ける悲しい結末を知っている。だから気が重い。事実、布袋も松井も発売前に届けられていた『1224』のDVDを「一人では見るのが怖かった」と後年上梓されたそれぞれの著書で吐露している。二人が『1224』を鑑賞したのは2001年に布袋宅で催されたクリスマス・パーティーで、見終えた後に布袋と松井が感極まって泣きながら抱き合ったというエピソードはファンのあいだでよく知られている。
 
 だが、この5カ月前に6thシングル『MARIONETTE』が、3カ月前に6thアルバム『PSYCHOPATH』がそれぞれオリコン初登場1位を獲得し、名実ともにピークを迎えていたバンドのアンサンブルの妙と一体感はやはり伊達ではない。つい忘れがちだが、この日のライブは『PSYCHOPATH』のリリースに伴うツアー(『ROCK'N ROLL REVIEW DR.FEELMAN'S PSYCOPATHIC HEARTS CLUB BAND TOUR』)の最終日である。布袋が複数のエフェクトを効かせて万華鏡のように煌びやかなギターを奏で、フュージョン的なアプローチを試みる「PSYCHOPATH」などはオリジナル音源とは趣が異なる素晴らしいテイクで、活動の末期でもなおバンドとして進化していこうとする貪欲さと強い意志を感じるのだ。
 
 そして訪れた二度目のアンコール。「今日はみんなにちょっと言わないといけないことが一つあります」と氷室が切りだした途端に沸き起こった悲鳴とどよめきは、活動末期の作品(7thシングル『季節が君だけを変える』のカップリングに「CLOUDY HEART」のリアレンジ・バージョンをあえて選ぶなど)や生き急ぐような活動内容の加速度から年内の解散を敏感に嗅ぎ取った一部のファンによるものだろう。渋谷公会堂の外でも同じように解散を察知したファンが場内のキャパと同じく2,000人ほど集まり、警備スタッフと揉み合いになった末に正面入口のガラス戸が割れる事態にまで発展した。その騒然とした模様は本作にも断片的に収録されている。
 「6年間……」。氷室がそう何度も言いかけようとするが、ファンの喚声にかき消されてしまう。ずっと支え続けてくれた大切なファンに向けて、フロントマンとして解散を伝えなければならない当時27歳の氷室には想像を遥かに超える過酷さと重圧があったことだろう。バンドとスタッフのあいだで解散は決定事項だったとはいえ、氷室は最後の最後、ぎりぎりのところまで思い悩んだに違いない。その極限の葛藤と苦悩のさまをカメラは冷淡無情に捉え続ける。
 
 「6年間、BOØWYをやってきました。誰が何と言おうといちばん格好いいバンドだったと思います。高橋まことと、それから松井恒松と、布袋寅泰と、氷室京介が……4人が……(声を詰まらせて言葉が途切れてしまう)4人が、思いっきり4人でできる音楽を6年間やってきました。これから一人ひとりが一人ひとりのために、今まで4人でしかできなかった音楽をやってきたように、一人ひとり、これからやっていこうと思います」
 「フォークのバンドじゃねぇんだから、ジメッとすんのは似合わねぇと思うから! 最後にビシッと贈るぜ! 『DREAMIN'』!」
 そうしてメンバー各自がありったけの力を込めて奏でられた「DREAMIN'」はまさに壮絶の一言だ。この満身創痍の「DREAMIN'」こそ、BOØWYが6年間のキャリアに終止符を打った歴史的瞬間である。安定した人気とセールスを蹴飛ばし、カットアウトの美学を貫くことでBOØWYが不世出のバンドとして永遠の伝説となり得た瞬間でもある。成すべきことをすべて成し遂げて頂点を極めたら潔く散る。再結成は絶対にしない。それゆえにBOØWYは日本のロック・シーンにおいて傑出した特異な存在として輝きを失うことがない。
 
 余談だが、いま思えば『LAST GIGS』は「最後の」GIGという意味ではなく「最新の」GIGだったと解釈するべきである。なぜならBOØWYにとって「最後の」GIGとはあくまでこの『1224』であり、『LAST GIGS』は早すぎる再結成であり壮大な後夜祭だったからだ。つまりBOØWYは「最新の」まま解散した。その迷いのなさ、洗練されたセンスとスタンスが時空を超えて支持され、2017年の今なお「最新の」ロックンロールとして色褪せることなく新たな世代にも聴き継がれているのだ。
 「永遠より永く」記憶と記録に残る宿命を背負ったバンドの最後に打ち上げた花火が残像と残響に変わる瞬間。その刹那がフィルムに焼きつけられたことで永遠となるアイロニー。30年前のクリスマスイブに渋谷公会堂でバンドとファンが創りあげたドラマティックな空間の一部始終を後世に伝えるドキュメンタリー・フィルムの傑作として、ロック・バンドの理想型を描いたバイブルとして、この『1224 -THE ORIGINAL-』は幾久しく愛され続けるだろう。ここにはロックンロールを愛する者なら誰しも共感し得る、儚くも美しい青春の瞬きが刻み込まれているのだから。(text:椎名宗之)
 


 


 

エクストライシュー アクセスランキング
最新ニュース

RSS


  • mamono
  • lpo