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【ライブレポート】余すことなく隅々までライヴレヴュー~HEREワンマン公演完全レポート~ 2017.02.17

怒涛のハイテンションと絡みつくような愛でLIQUID ROOMを狂わせた2時間20分

IMG_9954_.JPG “日本で最もハイテンションのロックバンド”HEREが、恵比寿LIQUID ROOMで、ワンマン・ライヴを、フリー・ライヴとして行なった。その名も“死ぬくらい無料なの愛してるバカみたい ~ロックスターに会いに行こう~”。

 “恵比寿LIQUID ROOMで”“ワンマン・ライヴを”“フリー・ライヴとして”って…並べると、凄くないか。…元はといえばHEREが新曲のPVを作るためにクラウドファンディングで資金調達を行ない、結果として予想以上の金額が集まったため、それでフリー・ライヴも実現したのだという。そして、更なる新曲のPV制作も行なわれることになったのだった。以下にそのライヴの模様をお届けしよう。
 

ROCKSTARたちの武者震い~バックステージ編~

IMG_9870_.JPGIMG_9877_.JPGIMG_9888_.JPGIMG_9907_.JPG 寒波襲来の2月9日。恵比寿LIQUID ROOMでは16時から、前身バンド・インビシブルマンズデスベッド(現在は復活してHEREと並行で活動中)時代からの付き合いである写真家・高畠正人氏によるHEREの写真展&HEREメンバーの衣装の展示が行なわれ、場内は早い時間から賑わっていた。この日はみぞれ混じりの雨で、気温も恐ろしく低かったのだが、ライヴの開演時間が近づくにつれ、人波はどんどん大きくなって行く。

 15年以上もインビシブルマンズデスベッド~HEREを撮り続けて来た高畠正人氏の写真の数々は、流石とうならされるカッコよさ。サイズが大きいので迫力も十分。写真はいずれも販売されていたが、たくさん売れたかしら。歴代の衣装も、間近に見る貴重なチャンス。デザイナーさんによるこだわりのポイントを解説したカードも掲示されていて、非常に興味深いモノが。

 開演を前に、楽屋を訪れた。宮野大介(ドラム)の第一声は「感慨深いですね」と。一方で、事前の予約などもなく(クラウドファンディングの出資者に対して入場順を優先するなどはあったものの)、基本的にはただ「無料だから来て下さい」と告知しただけの、異例とも言える方式でのフリー・ライヴ開催に対し、「どうなるかわからない」とも。とはいえ、楽屋には浮ついた感じのない、静かな熱気が渦巻いていた。ソファーで一人穏やかにベースを爪弾く壱(サポート)、黙々と弁当を頬張る武田将幸(ギター)、メイクに余念のない尾形回帰(ヴォーカル)…客入りがどうあれ、素晴らしいパフォーマンスが観られることは間違いなさそうだ。

 果たして19時からフロアへの入場が開始されたが…開演予定時刻の5分前になってもどんどん人が入ってくるぞ。恵比寿LIQUID ROOMの定員は900名と聞いたが、フロアにはパンパンに人が詰まっている。間違いなく定員に近いオーディエンスがフロアに詰めかけていた。場内の会話をそれとなく聞いていると、やはりというか初めてHEREのライヴを観る人もかなり多い様子。

 

いきなりハッスル

IMG_0037_.JPG 定刻を約5分過ぎてSEが流れ、そろいの衣装に身を固めたメンバー登場。「はっきよい」からライヴが始まる。メタリックなビート・ダウンのパートを持つこの曲から、HEREのスーパーハイテンションなグラム歌謡ロックは既に全開だ。2曲目「くらいやがれ」に続いてワンマン・ライヴのテーマ的な演奏(インストゥルメンタル+MC)が始まると、サポート・キーボーディストのハジメタルと二人のダンサー“IN-pish”が登場。

 そして「ああYEAHもうYEAH」から、セクシーなワンピース(配色はHEREメンバーの衣装に共通)で舞い踊るIN-pishの魅力も全開となる。サポート・ベーシストである壱のプレイも前面に(哲学者のような表情にして、頭部が光り輝く)。HEREの正式メンバーは4人だが、ライヴではベース、キーボード、ダンサーらサポート・メンバーも分け隔てなくフィーチュアされ、実際正式メンバーと並んで誰もが存分に活躍するのである。

 続く「絶望をブッ飛ばせ」で、早くもコール&レスポンスが盛り上がる。そしてここでMC。尾形回帰は「無料だからってこんなに集まりやがって!」と軽口を飛ばしつつ、オーディエンスで埋め尽くされたフロアの様子には本当に嬉しそう。

IMG_0117_.JPGIMG_0271_.JPGIMG_0276_.JPG MCと前後してIN-pishがステージからハケると、ドラマティックな「この世界よりこんにちは」に突入。その曲がハジメタルの重厚なキーボードで終わると、間髪入れず「VS相思相愛ダイアログ」。続いて尾形回帰のMCにより、クラウドファンディングによるPV制作→フリー・ライヴ実現に至った経緯が語られると、次の曲はもちろん、そのクラウドファンディングで実現したシングル曲「タイアップは君だ」だ。ここでIN-pishもステージに戻る。

IMG_0505_.JPGIMG_0713_.JPG 「正義ハイテンション」で尾形がジャケットを脱ぐと、ライヴはますますヒートアップしていく。オーディエンスを煽りまくった尾形は、「己STAND UP」イントロでクラッカーを鳴らす。そして曲中、二人のギタリストによるソロ回し。端正な顔を歪めた独特の笑顔で、ブルーズに由来する王道ロックなフレーズを聴かせる三橋隼人。一方、ギブソンSGのネックを立てて狂気の片鱗を見せる武田将幸は、さしずめ小さなノイズ・マシーンといったところか。オーディエンスが全力で歌う“イェイイェイイェイイェイイェイイェイイェイ、ウォウウォウウォウウォウウォウ”というコーラスもバッチリはまる。

 実際、フロアを埋め尽くしたオーディエンスの反応は実に熱狂的だ。前方の盛り上がりはもちろんのこと、最後列までHEREのオリジナル・グッズ(Tシャツやタオル)を身にまとったオーディエンスが溢れ、腕を振り上げ声を上げる。

 

尾形がドラムに挑戦!? そして出てきたのは織田……信長!?

IMG_0298_.JPGIMG_0323_.JPGIMG_0328_.JPG ここでメンバー紹介。ソロでのライヴを行なうという三橋隼人は、ソロで歌うというボブ・ディランのカヴァー「Knockin’ On Heaven’s Door」(しかもGUNS N’ ROSESヴァージョン!)を弾き語る。HEREのファンの何割がディランを聴いているだろうと思うと心許ないが(GUNSもな)、以前のHEREワンマン・ライヴではファンを遙か彼方に置き去りにするかのごとくフレディ・キングやジミ・ヘンドリックスのカヴァーを演りまくった三橋、あれこれ心配するのは野暮というモノだろう(笑)。実際のところ、フロアの反応も上々。一方の武田将幸はもったいぶった動作で真山りか(私立恵比寿中学)の名入りタオルを手にして汗を拭き、エビ中マニアぶり(?)を露にするのだった(笑)。

 はて…宮野大介がいない。…かと思ったら、ステージには何故か織田信長が憑依した(!)宮野が、白装束に着替えたIN-pishを従えて登場し、尾形回帰をドラムに据えてソロ曲「天下統一ファイヤー」を披露。“桶狭間の戦い”から“本能寺の変”までを1曲に凝縮する歴史絵巻&宮野の狂ったハイトーン・ヴォイス(←実はけっこうメタルファン)に場内大ウケ(笑)。

 

菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)の登場にフロアも熱狂!

IMG_0378.jpegIMG_0383_.JPGIMG_0431_.JPG IN-pishが退場して、「トイレに行っていた」と言い張る宮野大介(笑)がドラムに戻ると、ここでスペシャル・ゲストが呼び出される。9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎!…菅原と尾形回帰のツイン・ヴォーカルによる「余すことなく隅々までアイラヴュー」。しかも菅原はAメロ全部と、サビのキメフレーズまで歌ってしまう仕上がりっぷり。

 それだけでは済まず。更には9mm Parabellum Bulletのレパートリー「Black Market Blues」まで登場。HEREと9mm Parabellum Bulletはファン層もかなり重複しているし(フロアにも9mm Parabellum BulletのTシャツ着用のオーディエンスがかなりいた)、もちろん武田将幸が9mm Parabellum Bulletのサポートギターを務めていることは言うまでもない。この2曲でのフロアの盛り上がりは相当なモノだった。

IMG_0468_.JPG 菅原卓郎が退場すると、「遠くに行ってしまった大好きな友人に捧げます」というMCに続いて「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」が演奏される。ライヴの間を通して、尾形回帰の口からその“友人”の名前が出ることは一度もなかったが、それがこのライヴの前日に急死した私立恵比寿中学のメンバー、松野莉奈を指しているのはオーディエンス全員がわかっていたはずだ。

 尾形回帰はエビ中のBS番組に出演していただけではなく、楽曲も提供し、演奏もHEREが担当したという仲。ライヴ前日の悲報に、メンバーの心中がどのようであったことか…ギター・ソロの前に「届いてくれええ!」と叫んだ尾形の声が悲痛に胸を打った。フロアもサビの大合唱と、松野莉奈のカラーである青のペンライトで応える。

IMG_0546_.JPGIMG_0549_.JPGIMG_0554_.JPGIMG_0557_.JPG しかし、HEREには“Show Must Go On”(←byフレディ・マーキュリー)しかないのだ。場内が湿っぽくなるようなことはなく。IN-pishがステージに戻り、スーパーハイテンションラテン歌謡ロック「アモーレアモーレ」に突入。俺がこの曲を初めて聴いたのはもう8年ほども前のこと。流行語になる遙か以前からHEREはアモーレしまくっていたのである。IN-pishを含むフロント陣がステージ手前に居並ぶ様は実に壮観。

IMG_0654_.JPGIMG_0660_.JPGIMG_0673_.JPG そして楽曲の、あるいはライヴ全体のハイライトとなる、尾形回帰のフロア突入パフォーマンス。屈強な男性ファンたちに担がれ、尾形はフロアタムと一緒にフロアへと乗り出し…オーディエンスの頭上でフロアタム乱打! いつ観ても圧巻だが、今回は広いLIQUID ROOMの相当後ろの方まで行っていた(笑)。

IMG_0729_.JPG それにしても、最近の尾形回帰の歌の進化・成長ぶりは著しい。「この世界よりこんにちは」や「死ぬくらい大好き愛してるバカみたい」あたりではギリギリの高音を張り上げなければならないし、「アモーレアモーレ」のサビメロは実はかなり難しい。しかし今の尾形は、ライヴでもハイトーンや音程を取りにくいメロディが乱れたりすることはほとんどない。もちろん多少苦しげな時もあったりするが、苦しげではあっても聞き苦しくはならない。しかもそれがステージ上を縦横に動き回りながらの歌唱なのだから(尾形に限らず、とにかくメンバー全員動くこと動くこと)。15年を超えるバンド活動の中で歌が上手くなり続ける…尾形の不断の、そして真摯な努力が窺われるというモノだ。

 

タダじゃ済ませない新曲PV撮影も決行!

IMG_0739_.JPGIMG_0742_.JPGIMG_0751_.JPGIMG_0798_.JPGIMG_1007_.JPG HEREのメンバーがいったんステージを去り、IN-pishのソロ・コーナーで二人が妖艶なダンスを披露。そしてIN-pishと入れ替わりにバンドが衣装を替えて戻ってくる。ここで新曲のPV撮影。3月1日にシングルとしてリリースされる新曲「Let’s Go Crazy」を、まず生演奏で、次に“アテブリ”で。生演奏では青いペンライトを、アテブリの時は腕を振るようにとオーディエンスに指示が出るが、まるで以前からのレパートリーのように大ノリで盛り上がるフロアの対応力も素晴らしかった(笑)。撮影前にメイクを直そうと、アイシャドーと鏡を要求する尾形回帰に対し、スタッフ然としてアイシャドーと鏡を持ってきたのは菅原卓郎(笑)。
 ちなみにあのプリンスにも同名曲がある「Let’s Go Crazy」だが、かなりポップかつキャッチーな曲。武田将幸のギター・ソロも実に軽やかな感じだった。

IMG_0764_.JPG 続く最後のMCタイムでは、ツアー・ファイナルとして6月30日代官山UNITでのワンマン・ライヴがアナウンスされる。そのあとの話の中で尾形回帰は「辛いことがあったけど、いつか笑顔で“彼女”のことを話せるように頑張りましょうよ…!」と言った後、言葉が続かず。よく見ればメンバーの腕には喪章が。

 この日のライヴは、期せずして単にHEREのワンマン・ライヴという以上の意味を持ってしまったのだった。しかし、HEREの熱演は必ずや“彼女”にも届いたに違いない。

 

風船と花びらが舞い散る大団円

IMG_0806_.JPGIMG_0831_.JPGIMG_0971_.JPG とにかく、残された者たちは前へと進むしかないのだ。HEREのライヴにはアンコールがない。ここからは最後のパート、それまで以上に怒涛の勢いで突き進んでいく。

IMG_1015_.JPGIMG_1035_.JPGIMG_1039_.JPG 実際、「CHAOTIC SYMPATHY」「PASSION」「ゾッコンROCK ON」「感情超常現象」という最後の流れはまさにあっという間だった。IN-pishが踊りまくり、クラッカーが鳴らされ、紙吹雪が舞い、大小とりどりの風船がフロアを跳ねまわり、三橋隼人はギターを投げ出して歌い。そして尾形回帰は改めて高らかに「日本で最もハイテンションなロックバンド、HEREです!」と叫ぶ。

IMG_0995_.JPGIMG_1147_.JPGIMG_1149_.JPGIMG_1166_.JPGIMG_1183_.JPG エンディング/クライマックスはメンバーが折り重なっての組体操(?)、あるいは人間タワー。尾形回帰に「コレがロックの形だ!」と宣言されてしまえば、もう納得するしかない(笑)。そうしてオーディエンスの熱狂的な拍手と歓声の中、バンドはステージを去った。

 

終章 ~エンディングハッスル~

IMG_1202_.JPG 気が付けば22時近くなっていた。実に19曲(「Let’s Go Crazy」のアテブリも含めれば20曲)、2時間20分の大熱演。フロアも熱気と汗の匂いに包まれている。

 ここでフツーのライヴならオーディエンスはぞろぞろと帰って行くのだが、終演後のドリンクカウンターに長蛇の列が出来ていたのは実に印象的だった。入場時にドリンクコインを交換していなかった人も多かったのだろうが、かなり多くの人が会場に残って余韻を楽しんでいでいたように思う。

 終演後、バックステージに尾形回帰を訪ねる。「出し切りました…!」と語る尾形の表情は、まさに出し切った者のそれだった。一方で尾形の口をついて出たのは「安心した」という一言だった。無事にライヴを完遂出来た安心、無事にフロアを埋めるだけのオーディエンスを集められた安心…いろいろな安心があったと思うが、尾形にも他のメンバーにも、ここで安心し切ってほしくはない。HEREというバンドは、まだまだ1段も2段も上を目指せるバンドだ。もちろんそんなことは本人たちが一番よくわかっているはずだが。

IMG_1229_.JPGIMG_1222_.JPG 今回のフリー・ライヴで初めてHEREを観た人たちは、間違いなく度肝を抜かれたはずだ。そしてこの文章を今読んでいるHERE未体験の人には「次はアナタの番だ」と言っておこう。断言するが、ロックに刺激と高揚を求める人は、HEREを観るべきだ。絶対に。(了)

IMG_0602_.JPG【文】大越よしはる:MOTORHEAD、IGGY POPをこよなく愛するテンガロンハットがトレードマークの音楽ライター。『FOLLOW-UP』、『EL ZINE』、『EURO-ROCK PRESS』などに執筆中。インビシブルマンズデスベッド時代から足繁くライブに通い、熱いレポを各誌で掲載。HEREの節目ライブには欠かさず通い、毎回自身のブログに記事を書いていた。過去のレポートはここを遡れば見られるはず。

【撮影】高畠正人(エレキジュース)

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