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【ライブレポート】荒野の獣道を突き進む9mm Parabellum Bulletの揺るぎない決意と覚悟

2016.11.25

9mm Parabellum Bullet TOUR 2016 “太陽が欲しいだけ”
2016年11月5日(土)豊洲PIT

_RUI7207.jpg_RUI0015.jpg 結果的に滝 善充のライブ活動休養前最後のステージとなった『9mm Parabellum Bullet TOUR 2016 “太陽が欲しいだけ”』追加公演&千秋楽。
 

_RUI6939.JPG_RUI0080 (1).JPG_RUI0506.JPG 共演に指名されたのは、キャリア20年以上を誇るGRAPEVINE。ジャム・セッションから生まれ、作詞・作曲のクレジットを初めてバンド名義にしたこの「FLY」を始め、ヘヴィなギターと変則リズムが絡み合う「スレドニ・ヴァシュター」、ソリッドでブルージーな「MISOGI」、アンサンブルが進むにつれて狂気とカオスが渾身一体となるサイケデリック・チューン「CORE」など、ハードかつラウドな楽曲を中心に据えたのは9mmのオーディエンスを意識しているように感じた。

 

_RUI0255.jpg お待ちかねの9mmは、前説で菅原卓郎が話していた「短い時間だからこそ、最初から全力で来て欲しい」という呼びかけに応えるように、1曲目の「太陽が欲しいだけ」からフロアの沸点は最高潮。場内後方から見渡せる激しく突き上げる拳と手拍子、地鳴りのような歓声、揺れる場内に思わず身震いする。広い会場で天井も高いせいか、五重奏の鳴りと響きが耳に心地好い。

 そんなオーディエンスの熱狂的なリアクションに感化されたのか、「行くぞ、東京!」と卓郎のコールも力強い。その言葉に導かれて披露されたのは定番中の定番曲「Discommunication」だ。この曲以降、滝は曲ごとにギターとシンセを巧みに使い分け、その曲の持つ良さを最大限引き出すことに腐心する。

 この日の滝はとにかく絶好調だった。オーバーアクション気味に速弾きもタッピングも変幻自在にこなす様はいつも通りだったし、ロシア民謡調ハードコアとも言うべき「モーニングベル」や「前説よりも短い曲です」と卓郎が紹介した「インフェルノ」でもしゃにむに弾きまくり、このツアーでは初めて披露された「ロンリーボーイ」ではお立ち台の上に立って流麗なソロを見事に決めた。

 クールな佇まいでダイナミックかつ躍動感溢れるトリッキーなドラムを叩くかみじょうちひろ、ベースをブンブン振り回しながらもアンサンブルのボトムを堅実に支える中村和彦もその強烈な個性と存在感を見る者に容赦なく刻みつける。そして、彼ら3人がいて初めて卓郎はボーカリストとしての力量を余すところなく発揮する。その逆もまた然り。3人の武骨で重厚な鉄壁合奏には卓郎の澄んだハイトーン・ボイスがなくてはならないものなのだ。

 

_RUI0018.jpg_RUI0077.jpg_RUI0312.jpg_RUI0172.jpg 「“太陽が欲しいだけ”っていうタイトルのツアーだったのに、ツアー中はあまり太陽に出会えなかったけど、今日は最後の最後に会えて良かった」と晴天に恵まれたことを喜ぶ卓郎のMCを受けて披露されたのは、6th Album『Waltz on Life Line』のなかでも屈指の名曲「スタンドバイミー」。ここでは滝の後ろで一歩引いてサポートに徹していた武田将幸(HERE)のプレイと存在感が際立って見えた。9mmの肝であるギターのリフやソロを滝の代わりに弾くプレッシャーは相当なものだったはずだが、フレーズの原型を大きく崩すこともなく、かと言って没個性になるわけでもなく、絶妙なセンスとバランスでバンドに溶け込んでいたのが素晴らしかった。

 急な救難信号に応答して窮地を救ってくれた本ツアーのすべての共演者、そして今日のGRAPEVINEに感謝の意を述べた後は怒涛の無礼講モードへ突入。いまやライブでは不可欠の「反逆のマーチ」は滝がシンセにスイッチしても楽曲の荒ぶるドライブ感が損なわれることはなく、バンドもオーディエンスもテンションの針がレッドゾーンへと踏み込んでいく。

 続く「The Revolutionary」は個人的に感慨深いものがあった。6月の野音で、滝のアクシデントを受けた卓郎が急遽弾き語りで披露した曲だったからだ。あれから4ヶ月ちょっとが経ち、サポートの存在はありつつも、いままたこうして不動のバンド編成で奏でられる不動のアンセムとして帰ってきた。これには否応なく感情が昂ぶる。ましてや、和彦と武田が向き合って熱の籠ったプレイをする姿、再びモニターの上に立ってESP SUFFERをひたすら掻きむしり、歌の掛け合いで「世界をー!」と絶叫する滝の元気な姿を見ればなおさらだ。

 本編最後は、「出しきってない人は全部出しきってくれ!」という卓郎のMCとともに放たれた「生命のワルツ」。長く続いてきた波乱万丈のツアーを締めくくるに相応しい、未来のレールをつなぐ一曲である。ありったけの気力と体力を振り絞る5人の熱演が深く胸を打つ。

 だが当然、オーディエンスはアンコールを求めてやまない。およそ数分後、おなじみのエンディングSEであるGIPSY KINGSの「My Way」を掻き消すほどの大歓声に迎えられて現れたのは、卓郎と和彦とかみじょうの3人だけだった。今回もまた滝はアンコールに不参加なのか……と考えていたところ、卓郎が思わぬことを言い放った。

 「せっかくなので、武田君なしで演奏していいですか? 最後に俺たち4人だけでやります!」

 その言葉に導かれて舞台下手から現れる滝。万雷の拍手喝采。6月の野音以来となる純粋に4人だけの9mm。四者四様の迸る激情が音になって熾烈にぶつかり合う。これぞまさにグランドフィナーレを飾るビッグサプライズであり、とても心憎い演出だった。

 

_RUI0446.jpg 「9mmはこれからも山あり谷あり…海ありいろいろありでやっていくので、力を貸してください! これからもよろしくお願いします!」という卓郎の呼びかけと、それに応える割れんばかりの拍手。苦境のツアーを何とか乗り越えられたのは9mmを愛してやまない彼らオーディエンスの渾身の応援があってこそだ。ファンはバンドを写す鏡と言うが、実に頼もしい存在である。

 そんな彼らに、さらなるビッグサプライズが訪れる。終演後に突如ステージに現れたスクリーン、そこで「特報! 2017年春 7th Album発売決定!」という衝撃のニュースが発表されたのだ。フロアから喜びと驚きがないまぜになった大きなどよめきが起こる。逆境をバネにして何度でも立ち上がるその姿は七転び八起き、いや、9mmだけに九転び十起きと言うべきか。いずれにせよ、彼らはまた一歩前へ進むことを選んだ。独立独歩の道を歩み始めて3年半、どれだけ辛酸を舐めても9mmは荒野の獣道を突き進む。その揺るぎない決意と覚悟を確かに受け止められたことがこの日最大の収穫だった。

 滝のライブ活動休養は確かに残念だが、9mmが立ち止まることなく進化の道を選んだのは英断だったと思う。その成果が如実に表れるであろう、来春に発売される7th Albumに大いに期待したい。(文:椎名宗之/撮影:橋本 塁〈SOUND SHOOTER〉)
 

商品情報

6th Album
Waltz on Life Line

初回限定盤(CD+DVD):COZP-1155〜6/3,800円+税
通常盤(CD):COCP-39538/2,800円+税
アナログ盤:COJA-9304/3,800円+税(初回生産限定)

【通常盤】
[CD]
01. 生命のワルツ
02. Lost!!
03. 湖
04. Mad Pierrot
05. 反逆のマーチ
06. ロンリーボーイ
07. Kaleidoscope
08. Lady Rainy
09. ダークホース
10. 誰も知らない
11. 火祭り
12. モーニングべル
13. 迷宮のリビングデッド
14. スタンドバイミー
15. 太陽が欲しいだけ

【初回限定盤】
[CD]
通常盤同様
[DVD]
◆QUATTRO A-Side Single『反逆のマーチ/ダークホース/誰も知らない/Mad Pierrot』Release Party at SHIBUYA CLUB QUATTRO 2015.09.09
01. 荒地
02. Invitation
03. Mr.Suicide
04. Mad Pierrot
05. 黒い森の旅人
06. Trigger
07. Mr.Brainbuster
08. 悪いクスリ
09. 反逆のマーチ
10. Punishment
◆ゲリラライブ at TOWER RECORDS SHIBUYA 2015.09.09

Live Info.

We Come One
2016年11月28日(月)埼玉:北浦和 KYARA
共演:dustbox/ドミコ
DJ:松本誠治(FINAL FRASH/Migimimi sleep tight)/DJ YOKOTA/PLEASURE×SPACE(BU$HI/YAGI/925)
OPEN 18:00/START 18:30
前売¥3,500(税込/Drink代別)
問い合わせ:KYARA 048-825-6519

echoes vol.3
2016年11月29日(火)東京:渋谷 WWW X
共演:きのこ帝国
OPEN 18:15/START 19:00
前売¥3,800(税込/Drink代別)
問い合わせ:VINTAGE ROCK std. 03-3770-6900

rockin'on presents COUNTDOWN JAPAN 16/17
2016年12月31日(土)千葉:幕張メッセ国際展示場1〜11ホール、イベントホール
OPEN 13:30/START 15:00
出演者、チケット料金などの詳細は、rockin'on presents COUNTDOWN JAPAN 16/17オフィシャルホームページをご覧ください。
※9mm Parabellum Bulletの出演は上記日程のうち1日になります。
問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999

uP!!! SPECIAL LIVE HOLIC extra supported by SPACE SHOWER TV
2017年3月20日(月・祝)東京:新木場 STUDIO COAST
共演:アルカラ/androp/TOTALFAT/04 Limited Sazabys/MY FIRST STORY/UNISON SQUARE GARDEN
OPEN 13:00/START 14:00
前売 1Fスタンディング ¥5,500(税込/Drink代別)・2F指定 ¥6,000(税込/Drink代別)
問い合わせ:H.I.P. 03-3475-9999

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