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2回 ボクサー川崎タツキと反抗のシンボルとしての刺青

第12回 ボクサー川崎タツキと反抗のシンボルとしての刺青

2010.12.01

 刺青ボクサーとして人気を集めた(川崎タツキ)こと本名(川崎竜希)が突然に浅草にある私の出版社に現れたのは、10月13日の夕暮れ時。
 丁度その頃、広末涼子の再婚相手、キャンドル・ジュン氏の全身刺青写真とプロフィールが話題となっていた…。
 その上に、ノリピーこと酒井法子が、足首と指先の刺青を消去手術した事も少しだけ報じられてもいた。10月10日には人気地下格闘技「クランチ」が茨木で開催され、約1500名の刺青を入れた不良の群が集った。代表の杉浦氏はある週刊誌で刺青を入れた押尾守容疑者を弁護士を通して「クランチの試合に出たら」と誘っている事実を明じたばかりだった。
 翌11日には、横浜で格闘家前田日明氏が開催する「THE OUTSIDER」が第13戦目を向え、いつもの倍に値する約5000名の刺青だらけの観客で、横浜文化体育館は超満員。前田の実父は、開催された11日に逝去した直後だったが、誰にも訃報を告げず、約30試合の全てを見届けた後、前田は実父が待つ大阪に帰省した。
 その大阪・名古屋では、刺青を生業にしている「彫師」に対し、“医師法”を巡っての逮捕が相次ぎ、比較的刺青に対する偏見が少ない東京に、関西、中京地区の彫師は民族移動をはじめている…。
 寛政期から文化・文政期に移る1800年前後の江戸時代の変化の中で、刺青は、江戸で急速に降盛した。
「刺青コンクール」が日常化した余りの反道徳的な刺青の新風俗流行に対し、当然のように幕府は弾圧に出た。
 市井の若者の間に刺青の風俗が流行した理由は、刺青がわが身を傷つけるという代償の代わりに得たやり直しのきかない自分だけの異風と異相、そして「生き過ぎたりや廿三」なんて言いながらケンカに明け暮れた傾奇者の考えに通ずる“伊達”・“意気(粋)”というかぶきの精神に合致もした結果…。
 当然、幕府は、儒教の道徳の「親から受けた身体髪膚を意図的に傷つけてはならない」と言いつづけたが、江戸の若い傾奇者は、世間の良俗秩序に対する集団的反抗の“シンボル”として刺青を見なした!! 歌舞伎の弁天小僧が“女装”の盗っ人であることを見ぬかれた時、「知らざァ言って聞かせやしょう」の名ゼリフと共に半ぬぎになって刺青を見せるのは、当時の“傾奇者”の証だ。
 現在和彫は“刺青”・洋彫は“タトゥ”と区別して呼称をしているが、彫り物は彫り物で、刺青もタトゥも一度肌に入れたら消えない!!
 川崎タツキは、「ヤクザもやりました! 違法薬物もやりました! 刺青も入れました!」とボクシングのパンチドラッガーの為か、少し口調ははしる。
 場所を浅草から川崎の地元に近い北千住のモツ焼屋「加賀屋」に移し、“ホッピー”の“なか”(焼酎のこと)を何回もオーダーし、気が付いたら夜2時。
「高須さん、私の身体は、父母の遺してくれた“遺体”です!! 背中に刺青が入っていますし、ボクシングでダメージもありますし、薬物で歯は総入歯です。でも今は身体を大切にしています。」と言いながらも、「生まれた子を想う時、これからどう生きていくのかと迷う。」と言い、七転八倒しながらも生きている…。

 

 

高須基仁 PROFILE

1949年生まれ。中央大学在学中の1968年、丸太を抱えて防衛庁に突入し実刑判決を受ける。卒業後は玩具メーカーのトミーに入社。UNOカードなどのヒット作を連発する。その後、芸能プロダクションを経て、モッツ出版を起業し多数のヘアヌード写真集をプロデュース。現在はラジオ、新聞で連載多数。ロフトプラスワンでは1996年から高須基仁プロデュースイベントを定期開催し、現在同店では最長開催イベントとなっている。

【ブログ】高須基仁の"百花繚乱”独り言


TakasuRT1011.jpg(写真)ボクサー川崎タツキとモツ焼屋で。

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