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COLUMN

l.1 若泉

vol.1 若泉

2018.03.01

〜ステータスポイントを『投稿』に振り分け過ぎた者たち〜

 私はハロプロ関連のライブやイベントに行くことが多いのだが、共に行動し、時には遠く離れた現場にまで行く人物がいる。それが若泉氏である。実はこの若泉氏、雑誌投稿では老舗かつ高い水準を誇るファミ通の『ファミ通町内会』で優勝した投稿者なのである。第1回目である今回はそんな若泉氏の投稿人生に迫ってみよう。

 
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【投稿者プロフィール】
若泉:1986年11月13日生まれ。神奈川県出身。
サラブレ『ますざぶ』優勝。ファミ通『ファミ通町内会』優勝。
カレーライス、家系ラーメン、横浜DeNAベイスターズが好き!
 
 

『小学四年生』へのクレームが投稿初採用

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──投稿はいつから始めたの?
若泉:『小学四年生』という小学館の学年別雑誌にグレートチキンパワーズの投稿ページがあって、それが最初ですね。
──グレチキ! 懐かしいな。
若泉:ちょうど『MIX JUICE』を唄ってた頃ですかね。
──『忘れないスクールデイズ』を唄ってた頃ではなく?
若泉:そうですね。『んなことあるか』を唄ってた頃でもないです。『MIX JUICE』です。そこのノベルティが缶バッジで、毎月3択クイズの正解者の中からも抽選でノベルティが貰えて、ネタとは別にそこにも送ってたんですけど、ある時3択の選択肢が全部不正解だった時がありまして……。
──3択全部不正解! それは三択の女王、竹下景子でもお手上げだね。
若泉:これはきっと大人が子どもに缶バッジあげたくないから全部不正解にしたんだと思って、「騙す気か!」って怒りに任せたイラストを描いて送ったんですよ。それが載りました。そこに「この前のは誤植でした〜」って書いてありました。
──クレームが初採用! それは珍しい経歴だね。ハルク・ホーガンがロックミュージシャン出身ってくらいの。それからどうなったの?
若泉:投稿ページは好きでいろいろ読んでて、ファミ通も読んでて、そしたらダビスタの攻略ページが載ってて、ダビスタにはまったんですよ。で、『サラブレ』っていう競馬雑誌を買うようになって。それが中1くらいですかね。
──中1で競馬雑誌を! 随分おませだな!
若泉:それで中3の時にその雑誌の『ますざぶ』っていう投稿ページに本格的に送り始めて新人王をとったんですよ。
──その頃のペンネームは若泉じゃないんだよね?
若泉:『二度寝』です。最初は「二」をローマ数字の「II」にして『II度寝』でした。ファイナルファンタジーIIのIIですね。
──ドラゴンクエストIIのIIか。
若泉:ストリートファイターIIのIIでもありますね。
──クイズ!ヘキサゴンIIのIIだな。
若泉:それでいいです。構成的には聖飢魔IIでした。その後ひらがな表記にしたり、カタカナ表記にしたり。
──ひらがな二度寝って欅坂みたい! その後は坂本一生に変わって大旗一生になって……。
若泉:いえ、なってません。二度寝のまま高校入ってもずっとそこに投稿して、大学入ってようやく優勝できました。
──町内会の前にも優勝してるのか!
若泉:そうなんですよ。でも優勝したら、なんか投稿を休むようになって。もう本当に疲れてしまって。
──パトラッシュのように疲れちゃった?
若泉:パトラッシュは疲れてないですよ。疲れたのはネロじゃないですかね。
──じゃあ、リングスロシアのコピィロフくらい疲れたのかな?
若泉:それよりも疲れました。死にものぐるいでハガキ書いて、テストとかもサボってハガキ書いてて、それで大学留年して。月刊誌で毎月〆切が決まっていて、目安として20枚ちょっとは出さなきゃダメだって自分の中でノルマを作ってました。〆切までとにかく書いてないと不安で不安で……。
──自主的な〆切やノルマは作るよね。俺もそうだったよ。
若泉:ある時、〆切に間に合わなそうになって、これはヤバいと思って、ハガキを出版社のエンターブレインに直接持ってったんですよ。1階にいた受付のお姉さんに「今日ますざぶの〆切ですよね!」って言って。そんなこと言ってもわかるはずないのに。
──なんだかヤバい匂いしかしないな……。
若泉:お姉さんはキョトンとして。その顔を見て、ハッと我に返って。
──あ、我に返ったんだ。良かったあ。ちゃんと謝罪して帰った?
若泉:いえ、ちゃんと説明しなきゃと思って「サラブレに投稿ページがあって、そこに僕は投稿している者なんですが、〆切にハガキを間に合わせたいので、これを届けて頂けないでしょうか」と言いました。
──ほぼ狂人! きっと早口だったんだろうなあ。
若泉:そしたら編集部の方が降りてきてくださって。その人は別に投稿ページを担当してた人じゃなかったんですけど、この人ならきっと通じると思って「今日ますざぶの〆切ですよね?」って言って。7、8枚ですかね、ハガキを手渡して。
──もはや狂人と紙一重! いや、ハガキ一重!
若泉:でも結局その時に直接届けたネタは一つも載らなくて。しかも誌面には『ダイレクト投稿禁止』って書いてありました。
 

高校の同級生がペンネームの由来

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──新たにルールを作ったわけか。まあ、そうやってルールは整備されていくものだからね。初期UFCとか凄いからね。
若泉:あと、書き損じハガキを郵便局に持っていくと5円で交換してくれるのって知ってます?
──知ってるよ。あれは勇気が必要だよね。ネタとか見られちゃうわけだから。
若泉:そうなんですよ! 僕も郵便局の人に見られるのが嫌で嫌で。しかも郵便局員に投稿者がいたら俺のネタがパクられるかもしれないじゃないですか!
──まあ、可能性はゼロじゃない……。
若泉:だからハガキを黒く塗りつぶしたんですよ。何も見えなくなるように。
──えっ、黒く塗りつぶしたの! そんなの戦時中の教科書か、蝶野正洋くらいだよ。
若泉:真っ黒になったハガキを、何ヵ月かにいっぺん、まとめて交換しに行ってました。
──郵便局の人、怖かっただろうなあ……。
若泉:その後、大学中退して。その頃になると投稿よりもBerryz工房がメインの生活になりました。2011年まで投稿はほとんどしてません。
──Berryz工房は桃子だっけ?
若泉:桃子です。嗣永桃子です。
──でもまた投稿中心の生活に戻るんだよね。
若泉:そうです。中退した後はずっとフリーターをやってて、ある日、高校の同級生と飲みに行ったんですよ。若泉君っていう人なんですけど。
──若泉? もしかしてペンネームはそこから?
若泉:そうなんですよ。若泉君と久々に飲みに行って、彼はオードリーのオールナイトニッポンのリスナーで。それを聞いて「よし、若泉君をびっくりさせてやろう!」と思って、ネタを送ったんですよ。ラジオネームを『若泉』にして。そしたら、一発で読まれて。
──若泉が誕生した瞬間だ!
若泉:でも若林さんがラジオネームを読み忘れてしまって……。
──若泉誕生ならず! 名前読み忘れは投稿者にとっては悲しすぎるミスだよね。
若泉:それで萎えちゃって。でもまあ久々にネタを考えたので、投稿熱みたいのは上がってきてて、今なら『町内会』もいけるかなと思って投稿をまた始めたんですよ。2013年の3月くらいですね。ちょうどBerryz工房のバンコクから帰ってきたくらいから。
──やっと若泉が誕生した!
若泉:そして優勝したというわけです。
──結構、絵のネタも送ってたよね。工藤静香ばりに。
若泉:工藤静香より送ってたと思います。僕、絵を習ってたんでそこそこ描けるんですよ。でもプロというほど上手くない。かと言って、ヘタウマみたいな味のある感じのでもない。結局、中途半端だったから、自分の絵にコンプレックスがあって。だから、わざと物凄くへたくそに描いたりしましたね。
──わざと! わかるよ。俺も好きな子にはわざと意地悪しちゃう。50歳近いけど。『ますざぶ』の時と『町内会』の時では、どっちが頑張った?
若泉:ハガキを黒く塗りつぶすとか、直接ハガキを届けるとか、そういう狂っていたところをみると、多分『ますざぶ』の方が頑張ったと思います。
──痛みに耐えて?
若泉:痛みに耐えてよく頑張ったわけではないですが、頑張りました。感動もしました。でも、今考えたら「ちゃんと大学行けば良かった」って思いますね。行きながら書けばいいじゃんって思います。だって、結局そこから、大学生活、転落していったんで……。
──馬鹿野郎! そんなこと言うな!
若泉:すみません!
──大きな声を出して悪かった。とにかくそんなことはないと思うよ。そういう時期があって、何か情熱をかけるものがあって、試行錯誤したり必死になったりといろんな経験があったからこそ、今こうして出会って、話して、つばきファクトリーにお金をつぎ込んでいるわけだからさ。
若泉:そうですね!
──では最後に嗣永桃子の魅力をお願いします。
若泉:やっぱ、芯が通ってますよね。芯が強いというか、なんか、かっこいいと思う。いや、本当にかっこいい! 自己プロデュース力みたいなのとかも凄いし、とにかくかっこいい。嗣永桃子は本当にかっこいいよ。こうやって話してるだけで泣きそうになりますよ。今、ちょっと話しただけでもう泣きそうです。だって凄いんですよ嗣永桃子は。魅力はたくさんありますよ。嗣永桃子はもう魅力の塊で……(泣き始めて解読不可能)。
 

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【著者プロフィール】
せきしろ:1970年北海道生まれ。
主な著書に『去年ルノアールで』『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』『たとえる技術』『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』など。
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