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六回 フェリーの甲板で気持ち良く聴いたグレイトフル・デッドの「ケイシー・ジョーンズ」

第十六回 フェリーの甲板で気持ち良く聴いたグレイトフル・デッドの「ケイシー・ジョーンズ」

2016.08.01

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 20代のころ、ホンダの90ccのオートバイにテントや寝袋を積んで、和歌山県まで行きました。
 それで、山の中、海辺、川べり、いろんなところにテントを張って、ウロウロしていたのですが、あるとき海沿いでテントを張って寝ていたら、天気が荒れ、ものすごい風と雨で、気づいたらテントの中は浸水し、自分も荷物もビショ濡れになって、風で吹き飛ばされそうになりながら、「やっぱ自然には敵わないや」と夜明けまでビビって眠れなかったり、山奥でテントを張ったら、なんだかわからない生き物の鳴き声が聞こえてきて怖くなったりしていたのです。思い返せば、ビビってばかりでしたが、わたしは旅人気取りで、「やっぱ自由ってのはいいもんだ」と、ひとり悦に入っていたのです。
 そんでもって、ようやくウロウロするのを終わりにして、帰りは、日和って、フェリーで東京に戻ることにしました。
 フェリーは、夜に乗り込んで、翌々日の明け方に東京に到着する予定でした。だから翌日の昼間は、まるまるフェリーで過ごしていたのです。
 このときは天気も良くて、わたしは甲板に出て、ラジオを聴きながら寝ころがっていました。これがものすごく気持ち良かった。
 それで、なんの番組か忘れてしまいましたが、浅野忠信さんがゲストで出ていて、「じゃあ、ジェリー・ガルシアが死んじゃったんで、グレイトフル・デッドの曲を」と言って流れはじめたのが、アルバム、『ワーキングマンズ・デッド』に入っている「ケイシー・ジョーンズ」だったのです。つまりジェリー・ガルシアが亡くなった年だったのですね。
 旅も終わり、フェリーの甲板で、太陽に照らされ寝ころがっていた、わたしには、どういうわけか、それがバッチシの曲だったのです。あとで調べたら、ケイシー・ジョーンズは機関車の運転手で、船とはまったく関係なかったのですが、曲を聴きながら、あまりにも気持ち良くて、気絶しそうになりました。
 浅野さんは、旅が終わり、甲板に寝転がっているわたしの状態を知っていてこの曲をかけてくれたのではないかと思えたくらいで、勝手に親近感を覚えてしまいました。
 その後、知り合いのイベントとかで二回ほど、浅野さんをお見かけしたことがあって、「あのとき、『ケイシー・ジョーンズ』をかけてくれてありがとうございます」と言いたかったのですが、見ず知らずの者に、そんなこと言われても気持ち悪いだろうし、「ケイシー・ジョーンズ」をラジオでかけたことも忘れているかもしれないので、感謝の気持ちは伝えられていません。
 そんでもって、わたしもラジオに出て選曲できることがあったら、フェリーの甲板で聴いてる人がいるかもしれないということを考慮して、「じゃあ、だいぶ前にジェリー・ガルシアは死んじゃったけど、グレイトフル・デッドで、『ケイシー・ジョーンズ』を」と言ってみたいのです。
 
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