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トップコラムおじさんの眼第235回 再びロックへ ~ロフトは原点回帰する その1

35回 再びロックへ ~ロフトは原点回帰する その1

第235回 再びロックへ ~ロフトは原点回帰する その1

2018.02.01

 

荻窪ロフトタイトルバック候補1.jpg

荻窪ロフト

 

ROCK CAFE LOFT is your room〜新宿歌舞伎町

 ロフトグループが3月20日、新宿歌舞伎町にオープンさせる「ロック喫茶&居酒屋」は70年代の「ロック喫茶」の復権を目指している。

 この店のメインテーマは「ロックを聴いて、語って酒を飲もう」だ。二階にはロックを大音量で聴ける15名の視聴室があり、毎週末、プロと素人の入り交った「ロック講座イベント」を開催する予定だ。

 どうやら店でかける音楽やトークの中心は、ロフトが47年間育んできた「日本のロック」が主流になりそうだ。

 

ロックはもはや音楽の情報が膨大に集積してきてしまっている

 ずいぶん前のサエキけんぞうさんと交わしたトークがこの店を作るきっかけとなった。

「……僕は、トークというものに注目していたんです。というのは、ロックは情報がもはや膨大に集積してきてしまっている。つまり、演奏することも大事なんだけど、話で決着つけなきゃいけない部分もすごく出てきていると。例えば今、隣(コマ劇場)でQUEEN(のミュージカル『WE WILL ROCK YOU』)をやってますが、何でコマ劇でQUEENをやってるのか? 今QUEENは再結成していて、それを揶揄するのは簡単なんだけれど、いい話もたくさんあるんですよ。QUEENって何だったんだろうってことから始まって、あの頃のロックに何があって、今は何があるのかを考えたりしていくと話は止まらない。(中略)ライブハウスというものは、もし『荻窪ロフト』(サエキ曰く、日本の本格的ライブハウスの草分け)がなかったとしても、他の誰かがやったでしょう。でも、トークライブハウスはできることそのものが革命的だったから……」(サエキけんぞう)

 

ロフトの始まりは 〜ロフトの簡単な歴史

 今から47年前、1971年の春、東京世田谷の京王線千歳烏山に誕生したロフトは当初ジャズスナックだった。当時、東京のサブカル文化といえばやはりジャズであり、少なからず若者の支持を集めていた。特に新宿を起点として中野、高円寺、阿佐ヶ谷、吉祥寺なんかは強烈にジャズやロックの音楽、演劇などのサブカルっぽい店が集まっていた。吉祥寺にはパラゴンのスピーカーシステムと数万枚のレコードを揃えた名門『ファンキーチェーン』、JBLのスピーカーで質の良い音を出していたジャズ道場『メグ』、日本のフォークミュージシャンが集まる『がらんどう』などがあった。70年代初期のはっぴいえんど等の日本語ロックの台頭とともに、ロック喫茶が多くできた。すなわち中央線文化は、私たち若者の憧れ的存在でもあった。

 

JAZZスナックから雑多な音楽スナックへ

 71年に開店した15人も入ればいっぱいになってしまう『烏山ロフト』は、レコード枚数も100枚前後と巷のちょっとしたマニアが持っている枚数より少ないとても情けないJAZZスナックだった。

 当時、京王線にこういったスナックができたのが珍しかったのだろう、若者を中心とするお客さんはレコード枚数が極端に少ないのに同情をして、自らが所持しているレコードを持ち寄ってくれた。レコード室にはお客さん専用のレコード棚までできて、みんなが勝手にレコード室に入りそれぞれが自由に針を落とした。極力お客さんと店の壁を低くしたのだ。深夜のスナックにはいろいろな人が集まる。そのうちお客さんがロックやフォークや歌謡曲までを勝手にかけるという、なんとも不思議な若者空間になった。烏山に実家があった坂本龍一さんや、ロック好きで最後の全共闘と言われた二木啓孝さんや、当時気鋭のジャーナリストの生江有二さんなどがお客の中心だった。

 

烏山ロフト.jpg

 

初めて聞くロックに、フォークに仰天した

 ビートルズも無視してジャズばかりを聞き、それを信じていた私は、初めて出会うレッド・ツェッペリン、エマーソン・レイク・アンド・パーマー、ピンク・フロイド、ローリング・ストーンズの音の重厚さにぶっ飛んだ。「へぇ~今までバカにしていたロックって面白いんだな」というのが私の感触だった。

 さらに私は、日本語ロックとフォークのはっぴいえんどや頭脳警察、高田渡や友部正人、浅川マキなどを聞くと「なんてことだ! 俺は今まで結局なんの音楽も聞いてこなかったんじゃないか」と驚嘆したものだった。

 雑多な音楽をかける『烏山ロフト』は評判が良かった。当時、店は私のとって新しく良い音楽の勉強部屋だった。そして、私は店で若者相手に「店主のジャズ講座」なども開催していた。もちろんこれらを愛する若者はとても少数派だったし、演奏家の数も圧倒的に少なかった。だから、いくらはっぴえんどや頭脳警察のライブを聴きたくても、その頃の日本は聞く場所すらなかったのだ。唯一、年に一回開催される「日本ロックフェスティバル」ぐらいだっただろう。

 

聞く場所がないなら俺が作る~73年ライブハウス『西荻窪ロフト』誕生

 開店1年半、7坪のJAZZスナックではお客を収容しきれなくなった。私はもう一軒の店を作ることにした。当時、店の常連だった音楽ライターの石田さんからの「中央線に店を出すのか。できたらそこはライブがやれる店にしないか? 日本にはそういった店は一軒もない。プロダクションも紹介できるし、自分も手伝う」と言う悪魔の囁きがあった。私は決断した。「そうか、そこではっぴいえんどや高田渡や山下洋輔ができるのか、是非挑戦したい」

 新店舗『西荻窪ロフト』の出現は、演奏する場を渇望していた多くの若き表現者に歓迎された。しかし当時、防音や近所迷惑なんて何も考えていなかったため、ロックの演奏は不可能となってフォーク中心の店になった。だがオープニングのスケジュールは今では考えられないくらい素敵だ。

 

西荻ロフトスケジュール.jpg

 

 

74年ライブハウス『荻窪ロフト』が誕生する

 70年代、日本のロックは目覚しい成長を遂げる。魅力的な新しい日本のバンドが全国から続々と名乗りを上げてきた。風雲急を告げているかのような感じで、ロックが自由に演奏できる店が急ぎで必要となった。そんなことに挑戦できるのは当時ロフトだけだった。

 そうしてできた『荻窪ロフト』は多くの伝説を作った。もちろん毎日のライブの動員は少ないし、演奏家の数も少なくライブ演奏は週末だけとした。普段はロック喫茶・ロック居酒屋として運営をし、経営を支えたのだ。日本のロックは深夜放送などを中心に支持を広げていった。『荻窪ロフト』ははっぴいえんど系の拠点となって、日本の音楽シーンに大きな業績を残した。日本のロックの誕生はこの辺から生まれたのだろう。

 

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次号は下北ロフト〜新宿ロフト〜シェルターと続きます。

 

 

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