トップ > コラム >おじさんの眼 > 第228回「トークライブハウスの歴史本が出版されるぞ!」

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我が家の裏玄関に6月の紫陽花が咲き誇った
 

ロフトプラスワンの歴史本いよいよ発刊

 私はもう70歳を超え、いつ死んでもおかしくない年齢になった。そこでなんとか私の命がこの世にあるうちに「トークライブハウス ロフトプラスワン」の歴史本だけは残したいと強く思うようになった。
 ちょうど70歳になった時、この年齢は想像できないほどで、なかなか自身で受け入れられなかった。しかし、まだ私は生きていてこれからも何年か生きてゆくだろうと思ったら、この本を書く勇気が湧いてきた。そしてついに、長年の念願が叶って『TALK is LOFT 新宿ロフトプラスワン事件簿』(ロフトブックス刊)が出版されることになった。発行予定は来月7月15日。今、編集作業が大詰めを迎えている。
 

トーク専門に聞かせるライブハウス誕生

 何度も書くが日本に生まれたトークライブハウスの歴史はもう22年にもなる。私がロフトプラスワンという空間をぶち上げたのは1995年。ちょうど50歳になった時だった。ロフトプラスワンが新宿(というより四谷に近い)富久町にできた年は、阪神・淡路大震災、オウム事件が起き、「終わりなき日常」という言葉が生まれ、女子高校生達が下着を売るブルセラが話題になった時代だ。
 新宿の片隅、キャパ50人にも満たない隠れ家的な店で、「新宿情報発信基地」なんてキャッチフレーズを名乗っていた。1998年には歌舞伎町ど真ん中、コマ劇場前に移転をし、キャパ160人にもなった。なんともすごい場所に引っ越したものだ。この移転からプラスワンのブレイクが始まった。いつ潰れてもおかしくないと思いながらの挑戦だった。

 
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世界初のトークライブハウス ロフトプラスワン
 

20年以上経って今やトークブーム

 そして今は嬉しいかな、トークブームなのである。それぞれの主義主張やエンターテイメント性を持ったイベントが全国各地で開催されている。このサブカル文化は週末の午後の喫茶店や映画館、珍しい所では教会やガレージなどを舞台に浸透し、書店での作家のトークライブも盛んだ。それはまるで今から40数年前、東京では1軒もなくなってしまったロック/フォーク系ライブハウスが誕生し、発展していった情景と速度の差はあるが似ているような気がする。
 こうしたトーク空間の成立は、今まで不特定多数の聴衆の前で自分の足跡を喋ったり、流儀やこだわりを熱っぽく説いたりしたことがあまりなかった芸術家、作家、演出家、おたくやスケベやお笑い……有名無名を問わず、あらゆるジャンルの表現者たちにその門戸を開いたことにあるのだと思う。
 そういった小さな空間にライブ・チャージを払って話を聞きに来る習慣なんてなかったので、当初はライブ・チャージを取るという発想を廃しての開店だった。ふらっとビールを飲みに入った居酒屋で、自分の知らない「こだわり」を持った人の話を聞いてしまう。今までそんな居酒屋が存在しただろうか? 市井の人が何十年にも渡ってこだわり続けてきた奥深いぶし銀の世界を、そこに居合わせた人たちが酒を飲みながら垣間見る。議論する。そんな空間があったら面白いと刹那的に思った。居酒屋で一番面白そうな話をしているテーブルにマイクを置いたらどうなるのだろう? と。
 出演者に出すギャラについては、初めの頃はわずか数千円程度の交通費しか払わなかったが、店の企画が充実してくるとお客さんがたくさん入る話題の著名人を招くために、どうしてもギャラや交通費が必要となってきた。ノー・チャージの試みは数ヶ月でパンクし、どこにでもあるライブハウスと同じようにライブ・チャージを取って採算を合わせるしかなくなってしまったのは残念だった。
 
 
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一番新しい店舗LOFT9 Shibuya
 

発展するトークライブハウス

 歌舞伎町のロフトプラスワンが20年以上潰れないで持ち応えているのも、私にとっては脅威だ。さらに、店舗の数は大阪や渋谷を含めると5軒に増えた。あれから企画スタッフもどんどん若くなって「もうあんないつ暴力沙汰や警察の介入があるかわからない過激なことは出来ない」とばかりに、多くのヒットは飛ばすが緩やかで混乱のない穏健路線に行っているように見える。私みたいに、わけのわからない革命を叫んだ学生運動で青春を送ったアナーキーな人間は去るのみ。私自身も、もう毎日のようにロフトプラスワンに顔を出すことはなくなった。いつだって「もうオレの役目は終わった。後は若い連中がこの血を受け継いでやるしかないのだ。老兵は去るのみ」というのが私の口癖だ。
 

ロフトプラスワンの歴史を書ける者は私しかいない

 「世界初のトークライブハウス・ロフトプラスワンの20年もの歴史を書ける者は私しかいない」というどこか自分勝手な妄想と、変な使命感を持った気持ちになった。
 ロフトプラスワンでは様々な社会的風景をステージに載せてきた。その出演者の数も膨大だ。街の隅々に息づいている、あるいは埋もれている日本のサブカルチャーを発掘する旅に出たい。それが私が店を立ち上げた時のイメージだった。始めてみると、大手マスコミでは観ることが出来ないような面白いことがたくさんあった。ロフトグループにはロックの店も含めると7店舗ある。我々は毎月約350本の企画を立案している。このトークライブの現場はどんどん拡大再生産されて、さらにその波は全国各地に広がってゆく。月に何度かトークライブを開催している空間を入れれば東京では30軒を数え、全国には100軒あると言われている。出演者はその何倍にもなるのだ。
 
 
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新社長 加藤梅造とロフトの発展を誓う

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