トップ > コラム >おじさんの眼 > 第222回 「See the old year out and the new year in」(旧年が去り、新年がやってくるのを見る)

 
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なんとも豪華な台北駅
 
 新しい年がやってくるなんて毎年言っている気がする。そして万国共通に誰もが歳を重ねる。私はそれをもう70回以上やってきた。正月料理は好きではないのでほとんど新年を迎える感動はない。繰り返し繰り返し…その繰り返しを繰り返しているだけのような気がしてならない。そして、いつか終わりが来る。
 

日本に住みたくない~台北に行ってきた

 この1年、なんだかもう日本の社会状況にはまっぴらという気分が昂じていた。どこまでも堕ちてゆく日本。原発もそうだし、年金問題、人殺しの武器輸出解禁、安倍ファシスト内閣にうんざり、さらには50%以上の若者が安倍政権を支持している状況にイラついていた。そんな時、作家の松沢呉一さんが「平野さん、もう日本はいいでしょ。台湾は若い力が充満している。台湾でアパートを一緒にシェアしないか」という提案があった。
 ふむ、これは面白そう。「素人の乱」の松本哉も台北にコミュニティを持っているらしい。今や熱い若者文化は日本ではなく、ソウル・香港・台湾にあるのだという。条件が良くて気が向いたら、台北に小さなライブハウスをこしらえるのも愛嬌で面白いかもしれないと密かに思った。
 たった一週間の滞在だったが、台湾は暑かった。そして人々も熱く優しい。ちょうど訪れた時「同性婚」の大集会が大統領官邸前の道路を占拠し、集会とコンサートを開いており、なんと雨の中20万人以上が集まっていた。松沢さんは興奮していた。「見ろ! この熱気! 日本とは違うよ」と言い続けていた。そんな喧騒を離れ、ふっと気がつくと私は台北を離れ、ひとり高雄の海でサンセットを見ていた。
 やはり日本が好きだというのは基本変わりそうもないが、老後は台湾に住むのも悪くないと思った。
 
 
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台北で開かれた同性婚支持集会
 
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温泉列車

自由な思想は世界をめざす

 1985年、私は4軒のライブハウス(西荻、荻窪、下北、新宿)、2軒のロック酒場(烏山、自由が丘)、ビクターでのレコードレーベル、プロダクション等を持って、日々の仕事に忙殺されていた。その意味を立ち止まって考えることもせず、毎日がそれはシステマチックに流れてゆくことに苛立っていた。それまでロフトは日本のロックの中心点であり続け、常にそのシーンを牽引していたつもりだった。しかし日本のロックが市民権を得て大手レコード会社や巨大プロダクション、無関係業種な不動産屋までが触手を伸ばすにつれて、それは巨大なマネーゲームになり、これまで手作りで日本のロックのライブを作り続けてきたライブハウス「ロフト」の位置さえ、必要のないものになっていくのを苦々しく眺めていた。
 「なんの為にこれほどまで働くのか」といった思いが支配し、全てを放り投げてしまいたい衝動に駆られた。折しも時代はあの愚かなバブルを迎え、バンドブーム(イカ天、ホコ天)によるレコード会社の青田刈りが始まっていて、多くの若き演奏家が、突然入った契約金に飜弄されていった時代だ。
 

35歳バツイチ独身……

 私は日本の音楽状況や、政治・社会にどこか絶望していた。会社さえなければ基本的にどこまでも自由なはずだった。世界のどこの地域でも生きて行ける、揺るぎない若き自信がみなぎっていた。
 80年代、世界は激動していた。大国の植民地支配を脱して、アジア・アフリカのいたるところで独立運動が起きていたし、ソ連赤色帝国主義の支配下にあった東欧諸国にも革命運動の気配があった。
 「今、世界は激動している。そんな時に俺はこの甘っちょろい日本で何をやっているんだ!」という苛立ちが支配した。
 同年9月、私は自室で「こんな日本で死にたくない」と痛切に思った。
 次の日、「俺はこれから無期限世界放浪の旅に出る。ロフトは解散する。それぞれの店はその店長に暖簾分けする。店を継ぎたい者は、私が家主に払った店の保証金を何年月賦でもいいから返すだけでいい」と宣言した。だが、幸か不幸か、新宿ロフトは腹心の佐藤が「新宿ロフトを買う気はないがしばらくやらせて欲しい」ということで私の手元に残った。
 それから5年、私は世界中を周り(84カ国制覇)バックパッカーをやめたのちカリブ海の「ドミニカ共和国」に居住権をとり、5年もの間、日本レストランなどを経営していた。
 そして海外での夢は破れ、92年日本に帰還。ロフト再建に乗り出す。
 ふむ……これ以上書くと終われなくなる。
 
 あれから、一軒だけ手元に残した新宿ロフトを現小林社長と共に再構築を手がけた。そして20数年の時が流れ、私の年齢は70を超え、気がついたらまた7軒の店をはじめ、アルバイトを含めて100人の従業員を持つようにまでなってしまった。
 そして、また私は日本を捨てようとしているのだろうか。
 確かにもうこの歳になり「どこで死のうと勝手なんだ」と思ったら、なんでもできるような気がしてならない。
 
 ……さて、今年はどんな年になってゆくのだろう。興味は尽きない。
 
 
 
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今月の米子
お米に困らないように米子という名前をもらった。
アメショー、10歳。
 

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