トップ > コラム >おじさんの眼 > 第214回 大海原を行く〜世界一周ピースボートの船旅乗船記その1 「桜の散る頃、わたしゃ又世界一周船ピーズボートの旅に出た。」

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老兵は去るのみなんだな〜

 なんとも渋谷にロフトプロジェクトの店舗出店が決まった。わたしゃ老人だし、もうそんなことは最重要事項ではなくなっていて、「自分の老後のテーマをどう実現するか・どうやって過ごすか」しか頭にない。まあ、銀行借金や家主への保証人は私だから、そんなことを言ってはいられないのだが。今度の計画が失敗しても「いいんではないの?」と軽く言える自信はある。所属するロフトプロジェクトの基礎固めは終わったし、わたしゃますます用無しの老兵に成り下がっているのを、日々、痛切に感じていたんだ。
 

とにかく会社に行っても誰も仕事をくれないし(笑)

 ちょうど2年前、大坂にロフトをオープンさせたことで、もう私の役目は終わったと思っている。最後に、老骨に鞭打つ感じで、全力投球した。あとは小林社長や梅造副社長を先頭に、ロフトを潰すも発展させるも好きにやってくれ、という感じで、もう、会社に自分の居場所を見つけられていないと思うのだ。「ロフトの広告塔」と呼ばれて久しいが、そろそろ広告塔業務も卒業かな? でもそうなると、わたしゃどこにも行くところがないので、今まで通り好きにやらせてもらう「嘱託社員」になるしかないかな。わたしゃ、これまでロフトという会社を好きにいじくって来た。独断と偏見で、強引に仕切って来た。でも、もうやり尽くした。
 

ロフト44年の歴史はあっという間だ

 ライブハウス経営とロックに興味がなくなって、それまで維持してきたロフトの解散宣言をしたのは、確か今から33年前だ。東京各地に散らばる店舗6軒や、レコード会社なんかを経営していたが、突然、全て放り投げることにした。まさに刹那だった。6年もの間に5軒(自由が丘ロフトはその後だ)の店を作ってきたんだけど、突然、その情熱がなくなってしまったんだ。それで、新宿ロフトだけ残して、あとは暖簾分けをしたり潰したりして、世界に向かって無期限放浪の旅に出た。目標は世界100カ国制覇だった。まあ、よくそんな乱暴なことができたものだ、と今さらながら思っている。5年もの間、世界を放浪し、最終的にはカリブ海のドミニカという島を「終の住処」に決め、そこで日本食レストランを立ち上げたが、いろいろうまくいかなかったな。ダメだね。発展途上国で商売をするのはどんなに難しいか、わかった気がした。喋る言葉はスペイン語だし。そして、日本から連れて来た親友の自殺を機に、私は5年いたドミニカから完全撤退をして、日本に帰って来た。敗北感丸出しだったな。消耗していた。紺碧のカリブ海に浮かぶ、小さな美しい島だった。
 
 
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南支那海のサンセットは美しすぎる。

ロフト再建をめざす

 それから、90年に日本に帰って来て、当時の新宿ロフト店長・小林茂明と共に、よれよれの「ロフト再建」をめざした。小滝橋沿いにあった「新宿ロフト」立ち退き闘争を一緒に戦った同志が、現社長の小林茂明だ。一番信用できる私の盟友だ。そしてなぜか、ロフトはちょっと発展を遂げて大きくなった。95年には「トークライブハウス」という新しい空間も立ち上げた。「新宿情報発信基地」なんて言ってさ。その空間は、それなりに社会へ一定程度影響を与えられる存在になった。私は今、変な意識に落ち込んでいる。なんか33年前と同じように、「ロフト解散」なんてことを考えたりしていた。でも、そんなことはもう、できるはずはないよね。「なんだ、偉そうなことを言っているけど、やっていることは昔と同じ轍だったな」という、ちょっと自傷気味な意識が入りこんでいるんだ。もう私も、長くはないのかもしれないな(笑)。
 
 

連載前の能書き

 困ったな。この船に乗るのは、もう3回目なのだ。わたしゃ、なぜかこの世界一周船にハマっている。私のコラム「おじさんの眼」や「楽天有名人ブログ」にも載っているから、興味のある人は検索をかけてみるのもいいかもしれない。
 さらに困ったことは、あの総合読書情報サイト「shimiruhon」から「この航海記を書いて連載してみませんか」という注文が舞い込んだのだ。不確かだけど、過去3回にわたるこの船旅を「単行本にしないか?」なんという素っ頓狂な話まであった。まさか、原稿料をもらっている記事と同じものを、ルーフトップに載せるわけにはいかない。しかも、トークライブハウス・ロフトプラスワンの本「サブカル三昧.ロフトプラスワン事件簿」の原稿を書き上げて、編集者に預けてあるので、その本の発行に向けた仕事もある。全国に約15人いる私のファンは、TwitterやFacebookで「この乗船記を楽しみにしている」なんてコメントを送ってくれたりするんだ。一番しんどいのは、船上ではなかなかネットが繋がらないので、いろいろと調べることもままならず、写真なんか重たくて遅くて最悪だし、衛星中継を経るので料金が高い。だから、寄港地でのちょっとした時間を狙って、ネットカフェかスタバで頑張るしかないのだ。
 
 
 
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個室の窓からも海が見える。

退屈な船内ではないんだ

 などなど、船上の生活は退屈でしょ? なんて言われるが、とんでもない。船上で開催されるいろいろなイベントや、各種ツアーに参加したり、夜な夜な酒場を徘徊してネタを探さねば、記事が面白くならない。前回の航海は、南アフリカの喜望峰の崖の上で佇んでいる親父を見つけ、話しかけると「なんか生きているのがめんどくさいから、ここから飛びこんでサメに食われて死んじまおうか」なんて言っていた。その親父を、数ヶ月にわたってウォッチしたんだ。これは面白かったな。もちろん、つきまとうと、その親父からは拒否されたけどさ。
 今、一番、面白がっているのはダンス講習会なんだ。なんともこれは、男女の愛憎関係が複雑に入り込んでいて、さらに参加者は圧倒的に女性が多いから、男の奪い合いになるんだそうだ。今までは、恥ずかしいから、ダンス講習会に参加したことはなかったけど、今回はぜひ参加しなければと思っている。ただ、船内や日本での家族がTwitterやFacebookを見ているわけで、こんなヤバいことを書いたと知れると、私は船の上では誰にも相手にされなくなる。
 

どうするロフトラジオの再開

 さて、あれだけマイナーながら好評? を博したロフトラジオの再開だが、まだ決断できていない。帰国したらオリンピック三昧を予定しており、オリンピックが終わるまでは、間違っても再開はない。さらに私は今また、日本嫌いが生じており、できたら日本には住みたくないと思っている。台湾かオーストラリアあたりに住んで暮らそうか、なんて計画していたんだけど、ちょうどあの松沢呉一御大から「台湾で一緒にルームシェアしないか?」という話もあって、ちょっと迷っているんだ。なんとも東京では、ロフトからも、息子たちからも、かみさんからも三行半状態だから、日本を去ることを真剣に考えている。すぐにピースボートに乗るのもいいかもしれない、一番安い「4人部屋、窓無し、上段ベット」なら3ヶ月半100万ちょっとですむ、そうすると東京で生活するより安く済むというわけだ。
 
一ヶ月に数回は「鬱(軽いやつ)」に入って孤独になりきるのを、結講辛いけど面白がっている自分がいる。だが、今回の船旅はそんな鬱になっている暇はない。
 
 
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朝も昼も晩も酒を飲む時も海を見ながらだ。

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