トップ > コラム >ケラリーノ・サンドロヴィッチ ロック再入門 > 第三十一回「忘れられない安岡力也さんの言葉」

十一回「忘れられない安岡力也さんの言葉」

第三十一回「忘れられない安岡力也さんの言葉」

「見た目でわからねぇ分、厄介なんだ。わかるか?」

2012.06.13

 『NEW YEAR ROCK FESTIVAL』がいつから開催されているのか、私は疎いのだが、高校2年の時、1980年の大晦日には、観に行ったのだから、すでにやっていたのは間違いない。
 何部かに分かれていて、記憶が正しければ、パンタ&ハルやARB、ビートたけし等が出演するブロックを観たハズである。それから6年後に、まさか自分達が出演することになるなんて、思いもしなかった。
 どうしてこんな季節ハズレな時期にこのようなネタを書いているのか。少し前に安岡力也さんが亡くなったからだ。
 「マリファナやめろよ、今日はマリファナはやめとけよ」と各楽屋を注意して回る裕也さんも凄かったが、ほぼ骨だけになった鯛の入った重箱を「好きなだけ食え、遠慮すんな」と勧めてくる力也さんも凄かった。
 楽屋では酔いのまわったミュージシャン達が、よくわからない喧嘩をしていた。ベテランのロッカーが、うなだれている若手のパンクスに向かって「おめぇらのやってるのはパンクじゃねぇんだよ」と説教していたと思ったら、いきなり若手がキレて、「大体ファッションでパンクが…」と言いかけた先輩につかみかかった。力也さんは「ガラス割るなよ」とか「壁に穴あけんじゃねぇぞ」とか言いながら、正月だ、めでたい、とばかりに微笑んでいた。
 我々の帰り際、力也さんは、受付近くの階段に腰かけ、神妙な表情で静かに話をしていた。相手はグールというパンク・バンドで歌っていたマサミというパンクスだ。マサミは当日、スタッフとして受付と場内整備をやっていた。彼は、どちらかの腕が、手首までしかなかった。工場で切断したとか、ヤクザとの喧嘩で切り落とされたとか、噂は多々あったが、真偽のほどはわからない。
 力也さんは、目に涙を浮かべ、というのは私の記憶による脚色だとしても、心には確実に涙を浮かべているに違いない、慈しむような表情でマサミに言っていた。「おまえも腕がないから大変だよな…」。
 ミもフタもない言い様に感じて、もちろん見えないようにして、クスッと笑ってしまった私だが、そのあと、力也さんはこう言った。
 「俺もこう見えてよぉ、いろいろなもんがねぇんだよ。見た目でわからねぇ分、厄介なんだ。わかるか?」
 マサミがなんと答えたか、もう覚えていないし、もしかしたら聞こえなかったのかもしれない。彼も随分前に亡くなった。確認のしようがない。
 力也さんの言葉が、ずっと心から離れなかったという話だ。合掌。

1206kera.jpg

▲故・安岡力也氏は、60年代にGSグループ「シャープ・ホークス」のボーカリストとしてその名を馳せた。野性味に溢れた迫真の歌声とパフォーマンスでグループの中でも一際目立つ存在だった。

ザ・ベスト・オブ・ケラ&ザ・シンセサイザーズ

電子音楽部 DDCH-2326/2,940円(税込)
絶賛発売中

amazonで購入

01. 神様とその他の変種
02. ケムリの王様
03. CASE OF INSANITY
04. 猫と和尚さんと象
05. ゴメンナサイ
06. サヨナラのセオリー
07. そのテはないよ
08. フリークスも人間も〜点子ちゃんの人間賛歌〜
09. やつつけ仕事
10. LIVES
11. 永遠のつづき
12. 新しい椅子
13. Happy Talk
14. BODY AND SONG
15. Too Late Jones
16. だいなし
17. 夜のスポーツ
18. ハッピー/アンラッキー
bonus track
19. オンガク(remix by 戸田宏武)

Live info.

INU-KERA vol. 25
2012年6月30日(土)ロフトプラスワン
OPEN 18:30/START 19:30
ADV ¥2,500/DOOR ¥3,000(共に飲食代別)
Lコード:34372
問い合わせ:ロフトプラスワン 03-3205-6864

ケラ&ザ・シンセサイザーズ×新宿ゲバルト
2012年7月19日(木)新宿ロフト
OPEN 18:00/START 19:00
ADV ¥3,500/DOOR ¥4,000(共にドリンク代別)
Pコード:170-292/Lコード:77739
問い合わせ:ロフト 03-5272-0382

ナイロン100℃ 38th SESSION『百年の秘密』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:犬山イヌコ、峯村リエ、みのすけ、大倉孝二、萩原聖人ほか
【北九州公演】北九州芸術劇場 中劇場/6月2日(土)13時・18時/6月3日(日)13時
【新潟公演】りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場/6月9日(土)17時/6月10日(日)13時

連載コラム一覧
  • おじさんの眼
  •  朗読詩人 成宮アイコの「されど、望もう」
  • さめざめの恋愛ドキュメンタリー
  • 今野亜美のスナック亜美
  • 大島薫の「マイセルフ、ユアセルフ。」
  • 能町みね子 新中野の森 アーティストプロジェクト
  • 能町みね子 中野の森BAND
  • アーバンギャルド浜崎容子のバラ色の人生
  • THE BACK HORN 岡峰光舟の ああ夢城
  • ゲッターズ飯田のピンチをチャンスに変えるヒント
  • 戌井昭人の想い出の音楽番外地
  • 最終少女ひかさ 但野正和の ローリングロンリーレビュー
  • 吉村智樹まちめぐ‼
  • いざゆかんとす関西版
  • エンドケイプの室外機マニア
  • 日高 央(ヒダカトオル)のモアベタ〜よ〜
  • ザッツ団地エンターテイメン棟
  • 劔樹人&森下くるみの「センチメンタル「非」交差点」
  • 三原重夫のビギナーズ・ドラム・レッスン
  • ポーラーサークル~未知なる漫画家オムニバス羽生生純×古泉智浩×タイム涼介×枡野浩一
  • the cabs 高橋國光「アブサロム、または、ぼくの失敗における」
  • “ふぇのたす”ちひろ's cooking studio
  • JOJO広重の『人生非常階段』〜今月のあなたの運勢〜
  • マリアンヌ東雲 悦楽酒場
  • 大谷雅恵 人生いつでも初体験
  • ジュリエットやまだのイケメンショッキング
  • ケラリーノ・サンドロヴィッチ ロック再入門
  • 岡留安則 “沖縄からの『書くミサイル』”「噂の真相」極東番外地編
  • 高須基仁 メディア論『裏目を読んで半目張る』
  • 田中 優 環境はエンタメだ!
  • 吉田 豪の雑談天国(ニューエストモデル風)
  • 雨宮処凛 一生バンギャル宣言!
  • 大久保佳代子 ガールズトーーーク!!!!!
  • DO THE HOPPY!!!!!