Rooftop ルーフトップ

COLUMN

8回 無題

第28回 無題

2018.03.01

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 先月、彼女と別れた。
 ここ数日なにも気力が湧かない。今回のことについて落胆している部分もあり、細かい経緯については申し訳ないが、割愛させていただきたい。語る気力ももうボクにはない。このルーフトップのコラムも締め切りに一日遅れで提出をしている。
 仕事のメールも友人からの連絡も滞りがちだ。ダメだなぁ……と思う。しかし、奮起する気も起きない。ただ泥のように眠っていたい。
 最近はただ日々が早く過ぎていくことを望んでいる。酒をあおるが眠れない。彼女と付き合ってからやめていた煙草もまた吸い始めるようになった。久しぶりに吸って思うが、そんなに美味いものでもない。ただ煙が肺を満たしては、少々の吐き気を伴いながら身体を通り過ぎていくだけ。セックスに似ている。
 満たされない欲はなにかの代償で埋まるものでもない。酒、煙草、性行為。いつからかそういうものが、本来得たいと思っていたものの代わりになるものではないと気づいてしまった。かといって、今回の場合でいえば彼女がその空いた穴にピタリとはまるピースなのかというとそうでもない。もはやその穴を埋めるピースはボクの中にしかないのだ。
 幻想。まやかし。机上の空論。ボクらはいつもそういうものを追い求める。人間は心地の良い嘘が好きだ。同時に虚しさも知っている。
 ここまで来て不思議と「死にたい」と思ったことは一度もない。そう思うのであれば、おそらく自分の場合はもっともっと早い時分にそんな時期がやって来たはずだ。人が死にたいと思うときは絶望したときなのだと思う。人によっては我慢できないほどの苦痛を与え続けられたときや、永遠に癒えることのないであろう悲しみに対面したときだったりする。自分の場合はそのどれにも当てはまらない。ボクが絶望するのは世の中がつまらないと感じたときだ。
 幼いころから夢見がちな少年だったが、空想を膨らませれば膨らませるほど、それが叶わない現実とのギャップに失望したものだ。だが、まだ絶望はしていないのだと感じる。まだ世の中には楽しいことがなにかあるはずだ。それだけで生きる希望になってしまうような何かが。そんなものを求めることが、考えてみればボクという人生なのかもしれない。
 時期が来たらまたそんな日々に戻ろう。だから、時が過ぎていくに任せることにする。だからいまは、ただ眠っていたい。
 
 
大島 薫:1989年6月7日生まれ。ブラジル出身。ノンホル(女性ホルモン未使用)、ノンオペ(性転換手術をしていない)を公言している、純粋な男の子。Twitterフォロワー約15万人を誇る。女性よりも可愛らしい容姿を武器にセクシー女優として活躍していたが、2015年6月に引退。現在はマルチタレントとして幅広く活動中。
 
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